ネコ抹茶蔵

文字数 742文字

 ネネから本部に連絡があった。
 「ネコが引きこもってしまった。」

 詳しい話を聞くと、名古屋弁にならない一行に出っくわしたらしい。
 「ここが、名古屋だっぺか。」
 「腹減ったな。」
 「なんか、だぁすべぇか。」
 「いやしっぽだな。」
 「おめえこそ、ただの飲んだくれだべ。」
 「わしゃ、アル中でちゅう。」
 茨城からの一行だった。水戸の三ぽい(3POI)というだけあって、『だぁすべぇか』は強力だった。茨城といえば、あんこう鍋。あんこう食う面々には通用しなかった。

 すっかりネコがいじけてしまい、裏の抹茶蔵の梁の上にこもってしまった。猫というものは水がきらいだ。しかし、蔵の中では放水するわけにもいかない。ネコもここならホースが届かないことをよく知っている。

 名古屋が一番。名古屋弁こそが日本語。

 そんな強烈な名古屋気質がネコにもあるのかもしれない。
 「ネコ、出てきゃあせえ。」
 「様子はどうです?」
 「どぎゃんもこぎゃんも、だちかんでえかんわ。」
 「ねこじゃらしでおびき寄せては?」
 「やっとるがね。」
 「では、餌で釣ってみては?」
 「見向きもせんだがや。」
 「鳴き声の名人を向かわせます。」

 各地に鳴き真似芸があるが、空いていたのが大宮まんま。
 「ニャー。」
 ひと鳴きすると、ネコはむっくり起き上がった。
 「ミャー。」
 鳴き返したきた。これは脈がありそうだ。
 「おみゃーさん、もっと、呼びかけてちょ。」
 「やっとるがや。ほんだで素人はいかんで。だまっとってちょ。」
 すっかり名古屋弁になってる。いやな予感は的中した。ネコの前で餌を振りながら叫ぶ。
 「おみゃあ、みゃんみゃじゃ。」
 鳴きまね名人まで名古屋人になっている。
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登場人物紹介

日比野左半次(ひびのさはんじ)

食後にお茶を飲むと日常マンになり悪と戦う。

響ジョウ(ひびきじょう)

川越の団子屋店主。恐怖団団長。

お団子ヘアが特徴。

違法営業で商店街を乗っ取ろうとしている。

新喜六(しんきろく)

桐生の酒屋の店主。

酒饅頭を食べると日常マンになる。

五月蝿岩代(うるさいわよ)

京都の小さな加茂の端(かものはし)神社の神主。

先代の神主である夫・五月蝿以蔵(うるさいぞう)の後を次いだ。

餅を食べると日常ウーマンになる。

井伊ユダ(いいゆだ)

浅草で活動する唯一の外国人、日常マン。

湯上りのコーヒー牛乳で変身する。

牧師である彼は手ぬぐいの白地を表にして首から下げている。

達磨大使(だるまたいし)

日常本部2代目本部長。

全国の日常マンたちの活動を視察して回る。

本部長キャッチコピー『悪が生んだ正義の達磨』

坂野マチ(さかのまち)

尾道で魚の行商をしている。

コロコロ団のゴッドマザー。

茶々戸ネコ(ちゃちゃどねこ)

名古屋の日常ウーマン、茶々戸ネネが飼っているネコ。

その鳴き声を聞くと誰でも名古屋弁がでてしまう。

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