加茂の端神社

文字数 702文字

 京都。ここにも日常マンはいる。加茂川の外れに小さな神社がある。加茂の端神社。先代が急逝して、今は妻ある巫女の岩代が神主をしている。
 日常を守る日常マンに非日常的な神事を行う神官がふさわしいか本部はおおいにもめた。しかし、しょせんはボランティアヒーロー。プライドの高い京都市民が人の言うことを真面目に聞くわけもなく、だれもやりたがらない。ただ、信仰心の厚い彼らにとって坊主や神官といった人間には一目置く存在なのである。

 京都の朝は早い。それは鹿の死骸が玄関先にないことを確かめるためといわれている。しかし、今では朝寝坊も多い。岩代も朝は苦手だ。巫女の時はのんびりできたが、神主ともなれば朝のお務めがある。

 6時半、境内の掃除をしていると一角からラジオ体操の陽気で能天気な音楽が聞こえてくる。
「毎朝、精が出ますな。きょうび、いつコロッと逝くか解りまへんからな。気い付けてや。」
 薄笑いを浮かべながら去っていった。
 他県の者がこれをきいたら、
「ありがとう。」
 というだろう。しかし、京都人なら顔が引きつる。
 大阪風に直せば
「いつも朝早くからうるさいんじゃ。とっとと死にさらせボケ。」
 となる。

 ちなみに、神社の朝といえば巫女さんたちが箒で境内を掃除しているイメージがあるが、あれは落ち葉をはいているわけではない。毎朝、大量にばら撒かれている犬や猫の糞を参拝客が踏まないように片付けて回っているのだ。

 朝も七時となると、神社のすがすがしい空気を求めて、参拝客が集まってくる。賽銭を入れ、おみくじの内容に一喜一憂している。神頼みするよりは先ず努力しろ。心とは裏腹に笑顔で見送る。
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登場人物紹介

日比野左半次(ひびのさはんじ)

食後にお茶を飲むと日常マンになり悪と戦う。

響ジョウ(ひびきじょう)

川越の団子屋店主。恐怖団団長。

お団子ヘアが特徴。

違法営業で商店街を乗っ取ろうとしている。

新喜六(しんきろく)

桐生の酒屋の店主。

酒饅頭を食べると日常マンになる。

五月蝿岩代(うるさいわよ)

京都の小さな加茂の端(かものはし)神社の神主。

先代の神主である夫・五月蝿以蔵(うるさいぞう)の後を次いだ。

餅を食べると日常ウーマンになる。

井伊ユダ(いいゆだ)

浅草で活動する唯一の外国人、日常マン。

湯上りのコーヒー牛乳で変身する。

牧師である彼は手ぬぐいの白地を表にして首から下げている。

達磨大使(だるまたいし)

日常本部2代目本部長。

全国の日常マンたちの活動を視察して回る。

本部長キャッチコピー『悪が生んだ正義の達磨』

坂野マチ(さかのまち)

尾道で魚の行商をしている。

コロコロ団のゴッドマザー。

茶々戸ネコ(ちゃちゃどねこ)

名古屋の日常ウーマン、茶々戸ネネが飼っているネコ。

その鳴き声を聞くと誰でも名古屋弁がでてしまう。

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