見舞い
文字数 602文字
「あんちゃんも放っときゃいいんだよ。相手にするからいい気になるんだ。」
客は、今度は左半次に向かって説教を始めた。
「助けを求められちゃ放っておけねえ。それが、川越っ子ってやつだ。」
「なら、お金取ってショーにすりゃいいんじゃねえの?」
別の客が割って入る。
「正義に金なんていらねえ。時の鐘で十分だ。」
雨上がりの翌日、左半次は風邪で寝込んでいた。彼は日用雑貨店の若旦那。若旦那といえば聞こえはいいが、ニートである。
「今でこそ、しがない雑貨屋だが、世が世なら将軍になる血筋だ。」
彼の親父の口癖である。どこまで本当かは誰にもわからない。だが、幼いときから聞かされていた左半次にとっては、仮に姿で街をぶらつくのが世直しと信じていた。
「用事が無いなら、油なんか売ってないで楊枝のひとつも売ったらどうだい。」
幼馴染にちょくちょくからかわれる。
店の2階で布団に包まって寝ていると、
「早く治せよ。」
そういって、団子屋のジョウがやってきた。
「さては、病気で弱った相手に戦いをしようという魂胆だな。」
「見舞いだよ。ほれ、うちの団子だ。これでも食って元気出せ。」
ジョウは手に持った袋から団子のパックを取り出した。
「さては、毒団子だな。食中毒にさせようったってそうはいかねえ。」
「やだな。そんなことしたら営業停止になるじゃねえか。だいたい、おめえが来ねえと売上が落ちるんだよ。」
客は、今度は左半次に向かって説教を始めた。
「助けを求められちゃ放っておけねえ。それが、川越っ子ってやつだ。」
「なら、お金取ってショーにすりゃいいんじゃねえの?」
別の客が割って入る。
「正義に金なんていらねえ。時の鐘で十分だ。」
雨上がりの翌日、左半次は風邪で寝込んでいた。彼は日用雑貨店の若旦那。若旦那といえば聞こえはいいが、ニートである。
「今でこそ、しがない雑貨屋だが、世が世なら将軍になる血筋だ。」
彼の親父の口癖である。どこまで本当かは誰にもわからない。だが、幼いときから聞かされていた左半次にとっては、仮に姿で街をぶらつくのが世直しと信じていた。
「用事が無いなら、油なんか売ってないで楊枝のひとつも売ったらどうだい。」
幼馴染にちょくちょくからかわれる。
店の2階で布団に包まって寝ていると、
「早く治せよ。」
そういって、団子屋のジョウがやってきた。
「さては、病気で弱った相手に戦いをしようという魂胆だな。」
「見舞いだよ。ほれ、うちの団子だ。これでも食って元気出せ。」
ジョウは手に持った袋から団子のパックを取り出した。
「さては、毒団子だな。食中毒にさせようったってそうはいかねえ。」
「やだな。そんなことしたら営業停止になるじゃねえか。だいたい、おめえが来ねえと売上が落ちるんだよ。」