日常本部

文字数 884文字

 日常マンたちは、本部によって密かに選ばれる。ボランテイアとして登録された人間を徹底的に調査する。
 1.お友達優遇
 2.保身のために嘘や恫喝など
 3.公文書改ざんなど
 4.権力者に媚を売る
 5.特定の人間とゴルフなどで見せかけの親密さをアピール
 6.異様に目が泳ぐ、論点をはぐらかす、都合が悪くなると言いなおす
 7.反社会的組織とつながりがある
 以上のような項目に半分以上当てはまると登録は抹消される。まあ、さすがに全部当てはまる人間などいないだろうが。
 クリーンな人間が地域にいればいいが、いない場合は時効が過ぎていれば矯正されたとみなす。ちなみに響ジョウの恐怖団は地域で容認されているので反社会的組織にはなっていない。

 こうして選ばれた日常マンには定期的な活動報告の義務がある。といっても支給された手ぬぐいに仕込まれたマイクロチップで会話が自動通信されているので、手ぬぐいを通信モードにするだけでいい。通信のできない場所では自動記録の後にまとめて通信される。基本戦闘はしないので映像はとらない。あとは、AIが不適切な表現などがないか自動判定する。評価が基準以下になると本部で直接事情を聞く。

 この日は、岩代の再評価時期にあたり、雨止めの祝詞が適切だったか、審議されていた。AIは雨乞いの祝詞と判断した。そもそもAIは神事のような非科学的な行為を評価していない。
「神事のような非日常行為を日常の活動とするのはどうだろう。」
 本部長が問題提起をする。
「これが、ここでの日常。私の仕事。」
 岩代は役員の取り囲む部屋の中央で毅然と言い放った。
「まあそうなんだが。川越の商業利用の件もあるしなあ。」
 どうやら、左半次のほうも何やら問題になっているようだ。
「祈祷するには玉串料もらうでしょ。ボランティアじゃなくなっちゃうんですよね。経費とかならともかく本人の収入になるとちょっとねえ。」
 本部長は諭すように話した。
「はいはい。以後気をつけま~す。」

「まったく、イチイチうるさいったらないわよ。」
 岩代は怒りながら帰っていった。
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登場人物紹介

日比野左半次(ひびのさはんじ)

食後にお茶を飲むと日常マンになり悪と戦う。

響ジョウ(ひびきじょう)

川越の団子屋店主。恐怖団団長。

お団子ヘアが特徴。

違法営業で商店街を乗っ取ろうとしている。

新喜六(しんきろく)

桐生の酒屋の店主。

酒饅頭を食べると日常マンになる。

五月蝿岩代(うるさいわよ)

京都の小さな加茂の端(かものはし)神社の神主。

先代の神主である夫・五月蝿以蔵(うるさいぞう)の後を次いだ。

餅を食べると日常ウーマンになる。

井伊ユダ(いいゆだ)

浅草で活動する唯一の外国人、日常マン。

湯上りのコーヒー牛乳で変身する。

牧師である彼は手ぬぐいの白地を表にして首から下げている。

達磨大使(だるまたいし)

日常本部2代目本部長。

全国の日常マンたちの活動を視察して回る。

本部長キャッチコピー『悪が生んだ正義の達磨』

坂野マチ(さかのまち)

尾道で魚の行商をしている。

コロコロ団のゴッドマザー。

茶々戸ネコ(ちゃちゃどねこ)

名古屋の日常ウーマン、茶々戸ネネが飼っているネコ。

その鳴き声を聞くと誰でも名古屋弁がでてしまう。

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