人と人
文字数 2,441文字
ここはとある倉庫の中。
霊体であることを活かして、先行させたアーマに中の様子を確認してもらい、ほどよく箱荷が残っているところを選んで潜り込んだ。
さて、それを踏まえたところで。
向こうとしては、絶対に始末しないといけない優先順位というものがあります。
無論、全員逃がさないのが前提ですが・・・
まず第一にアーマさん。
次に別乃世さん、僕、豊秩さんの順番ですね。
アーマさんは、彼女らの言うところの悪魔です。
本来であれば、当然最優先で対処すべき標的ではありますが・・・
逆に言えば、最悪逃げられてしまっても仕方がない相手とも言えます。
悪魔祓いといえども、所詮は人の身ですからね。
仮に逃げられても言い訳は立つ、ということです。
そのとおり。
悪魔相手では逃げられる可能性も非常に高い。
しかし、これ以上は失態を重ねられないとなると・・・
同じく逃げられるわけにはいかないが、確実に仕留められる。
僕たち人間に標的を絞るのが妥当でしょう。
豊秩さんの優先順位が最も低いのは説明するまでも無いでしょう。
運動能力が一番低いし、最悪、逃がしてしまっても問題はない程度の背徳度です。
僕と別乃世さんの優先順位については、ほぼイーブンですね。
ただ、先程投げ飛ばされたことに加え、天使に対する挑発行為。
―――心情から言えば、標的にするならまぁ僕からでしょうね。
―――僕が姿をちらつかせて、シスターを誘導します。
多少は警戒されるかもしれませんが・・・
あちらとしても眺めているだけでは埓があきません。
必ずこの倉庫の中に入ってきますので、僕が相手をします。
そのまま何とか投げるなり組伏せるなりしますので、それが成功したら、皆さん一緒に押さえ込んで下さい。
―――付け加えて言うならば、相手は今、非常に消耗している。
昨夜、何があったかは具体的には分かりませんが、何者かとの戦いがあった様子。
そのあとはベッドもない倉庫の中で、碌に身体を休めることができない状態で一夜を過ごし、今日は今日で逃げる僕たちの車を走って追いかけ、さらにはゴム弾での銃撃を受けています。
あの阿波津・怜子を相手にしたと言うのであれば、ただでは済まないでしょう。
それ相応の対価は支払っているはず。
―――例えば、あの神秘術。
我々の車を追う時にも使っていましたが、昨夜の戦いでも使っているはず。
無制限に使えるのであればお手上げですが、無から有は生み出せない。
使用するにも何かしらの消耗があるはずです。
―――違いますか、アーマさん?