遭遇
文字数 2,969文字
目の前で人が殺され、燃やされたのだ。
理解を越えた恐怖で足がガクガクと震え、力が入らない。
ですが、見て見ぬふりなどして頂かなくても結構ですよ。
先程浄化した男性は、いわゆるゾンビと呼ばれているものでして。
私にやましいところは御座いませんので、それを理由に口封じなどということは致しません。
豊秩のスマホの着信音だ。
手が震え、うまく操作できない豊秩からスマホを受け取り、別乃世が電話に出る。
殺意を持って間合いを詰めようと、歩を進めたシスターと別乃世の間に、割り込むようにアーマが身を乗り出す。
シスターが身構えるよりも早く、アーマが叫ぶ。
手をかざして発した言葉が終わるや否や、シスターの姿が忽然と消えた。
素早く地を蹴り、シスターの身体が宙を舞う。
常人では考えられないほどの跳躍力を見せ、シスターは別乃世たちの頭上を軽々跳び越えて、彼らが走り去ろうとする前方に回り込んだ。
突如、クラクションの音が鳴り響く。
別乃世たちが向かおうとしていた方角。
シスターの後ろ、駅のある方向から、車が猛スピードで向かって来るのが見えた。
別乃世とアーマは咄嗟に道の端に寄り身を隠す。
背を向けていたシスターは一瞬反応が遅れたが、先程見せた跳躍力により迫り来る車の上を飛び越えて、無事に身を躱すことに成功する。
だが、それにより別乃世たちとの距離は大きく離れることとなった。