異端断罪天使 ~メンタイ・ハクマイナー~
文字数 2,981文字
車のキーは取り上げられていましたが、いざという時のためにスペアキーを持ち歩いておりまして。
縄を解いてもらったあとで、アーマさんにキーを預けて車を取ってきてもらったんですよ。
車自体は、シスターさんに捕まった時に、私がここまで運転させられて来ましたので置き場所も分かっていました。
―――ああ、すまないね、心配をかけた。
僕も下見だけのつもりだったんだけど・・・
昨日の昼間に聞き込みをしたときに得たシスターの目撃情報の中に、杵崎の経営していた廃ホテルのある辺りで見かけたというのがあってね。
どうにもそこが気になったので車で見に行ったら、突然最上階から爆音とともに閃光が―――
別乃世の声に後ろを振り返る一同。
そこには車の十メートルほど後ろを走って付いて来るシスターの姿が。
そう言いながら助手席の窓を開けて、身を乗り出してライフルを構える螺理多。
当然シスターもそれに気が付くが、走る速度は緩めない。
しかし、その直前に走る軌道を大きくずらし、シスターはライフルの射線から身を交わした。
ライフルの弾が発射されるが、シスターはその悉くをまるで見えているかのように綺麗に交わす。
別乃世の合図と同時に、左右の窓から催涙弾が投げ放たれる。
それは地面に落ちると同時に激しく白煙を巻き上げた。
―――そして、それを見計らっていたかのように、一気に加速したシスターが白煙を突き抜けて車に急接近してくる。
車の後部、トランクにシスターの拳が突き立てられる。
これでもう、そう簡単には車からは離されない。
無造作に、螺理多が運転席奥に手を伸ばし、何かのスイッチを押す。
そのスイッチがどういう仕組みでどう作用したのか。
車のトランク部分がきれいに分離し、拳を突き立てていたシスターもろとも地面に転がり落ちていった。
そうして今度こそ。
別乃世たちは、シスターを完全に振り切った。
突如。
落雷でもあったかのような轟音とともに、眩い閃光が車の進行方向に現れた。
そして、その光の中から現れた者は―――