interlude Devil Side/悪魔の企み

文字数 2,246文字

―――時は戻って1日前。

別乃世とアーマが買い出しに出かけた時に遡る。



では行ってくる。

気楽に寛いでいてくれ、トリカラ・マイウー。

貴様に言われるまでもない。

さっさと行って暫く帰ってくるな。

心得た。



・・・・・・



さて・・・



別乃世たちが十分に離れた頃合いを見計らい、すぅっと屋根の上に浮き上がる。









奴はリビング・デッドではない。


―――リビング・デッドではないが、ゾンビ・パウダーを用い、悪魔が魔力注ぎ、儀式を行ったのだ。


ならば奴は、紛れもなくゾンビであると言える。



意識を集中し、気配を探る。



アタシの魔術で生み出された、アタシの魔力が込められたゾンビだ。

居場所の感知は当然できる。


・・・ゆっくり離れていくのがあのアホだな。


そして・・・やはり。

遠く離れた場所に小さな気配がひとつ。

それと一緒に、さらに小さな気配が3つ、か・・・


くっくっく・・・



半信半疑であったが、これで間違いない。

悪魔トリカラ・マイウーは邪悪な笑みを浮かべた。



「ゾンビに噛まれた者」は「ゾンビ」になる。

こいつは古典だよ。



夜の闇に―――

誰にも聞こえない悪魔の高笑いが響き渡る。








―――街外れのとあるビル。


といってもこのビルは古く、放置されているものである。

それを勝手に使っているのか、はたまた誰かの身内の持ち物なのか。


そこはいつしか、若者たちがたむろするようになっていた。



そんなビルの一室に、複数の男女が集まっていた。



え、と・・・
・・・面白いことするからって呼ばれてきたけど、このメンツで何かすんの?
ケンジはともかく・・・このおっさんたちは関係ないよね?
・・・
・・・
・・・
大丈夫♪

あなたたちには、お友達をたくさん呼んでほしいだけだから。

怜子ちゃん、パーティーか何かするの?
そう。

いっぱい集めて、「集まったみんな」で楽しいパーティーをするの。

こんなおっさんもここにいるんだ。

どうせ金目当てのエロいやつなんだろ。


キモいの相手にさせられたらたまんない、アタシはパスな。

・・・ほかの二人は?
あ、あたしも、その・・・
そこのおっさんみたいなのがいっぱい来るんなら、わたしもちょっとなぁ・・・

ああ、このおじさんたちは参加しないよ。

裏でお仕事してもらうだけだから気にしないで。


それに、あなたたちには人を集めて欲しいだけだから。

人さえ集めてくれたら、その後参加するかは自由にしていいよ♪

それならいいけど・・・
あ、あたしは、ちょっと、考えてからで・・・
あっそ。

アタシはやんないから。

胡散臭い、パス。

そう?

残~念。


―――ケンジ?



怜子に促され、ケンジは誘いを断った女性の背後に近づき羽交い締めにする。



な!

ちょっ・・・なにすんだ!

触んな、離せ!

・・・
え、え?
・・・まぁいいんだけどね。

ナツミには、はじめっから別のことをしてもらうつもりだったし。

ああ!?

ざけんな、さっさと離せよ!

だぁめ♪



暴れる少女を気にも留めず、怜子はずいっと少女の首筋に顔を近づけ・・・


僅かな躊躇いもなく犬歯を突き立てた。



痛って!?



血の筋が首を伝う。

だが、その量からしてあまり深い傷ではないようだ。



何しやがるテメェ、このヘンタイが!

ふふふ。

これであなたはわたしの仲間。


それでぇ・・・



ぶつっ



ひ!?

あぁ・・・!



少女の下腹部には、深々とナイフが突き刺さっていた。



これであなたはケンジの仲間♪
え、やだ、何・・・!?
ふぇ・・・!?



―――何が起こっているのか。


にわかに信じがたい出来事に思考が麻痺していた二人は、いつの間にか後ろに回っていた中年男2人に、がっしりと両肩を押さえつけられていた。



は~い、いいコにしててね二人共。


いいコにしてないと・・・

ナツミと一緒に、食べちゃうよ?

あ・・・ひ・・・!

が、あ・・・



ナツミが背を向けた状態であり、押さえつけられた二人からは死角となっているため、何が起きているのかはっきりとは分からない。


分からないが、ナイフで刺した傷口付近をまさぐる怜子と、それに合わせて上がるナツミのうめき声から、猟奇的な何かが行われていることは容易に察することができた。



あんまり動いちゃダメよ、ナツミ。

せっかくのご馳走が傷ついちゃうから。


ケンジもしっかり押さえといてね。

穴は、あとでキレイに塞いであげる。



見る間にナツミの足元に血溜まりができていく。


初めは暴れていた彼女も次第に抵抗する力が弱くなり、今や弱々しく呻き声を上げるだけとなっていた。



な・・・なんなの?

なんなのよコレ・・・!



あまりの出来事に頭が真っ白になり、ただただ震える少女。



ひぃ・・・

ひ・・・や・・・・



目の当たりにしたあまりの惨状に、恐怖のあまり失禁する少女。



・・・あ・・・が・・・



そして、もはや息も絶え絶えの少女。



ふふふふふ・・・



そして。

場違いに明るい笑みを浮かべる少女。



大丈夫、大丈夫♪

あなたにはケンジたちと一緒にお人形さんになってもらうから。


だから、安心してね。

・・・ぁ――――――







―――さて、と。



ひとしきり、取り出した「ご馳走」を堪能した怜子が残りの少女たちに語りかける。



・・・・・・
・・・・・・



二人は怯えて声も出せない。



大丈夫、あなたたちは食べないから。

はじめに言ったとおり、あなたたちのお友達をたくさんここに呼んでほしいの。

それが終わったら帰っていいよ。


―――やってくれるわよね?

やります、やりますやりますやります・・・
!・・・!・・・!・・・



二人はただ、壊れた機械のように首を縦に振るしかなかった。



そう、よかった。

―――楽しいパーティのはじまりね。




~ interlude END( and death is open … )~

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登場人物紹介

【主人公】

 別乃世・望(コトノヨ・ノゾム)


現代社会への不満故に、軽トラに引かれることにより異世界に転生することを決意したポジティブ・ニート。


紆余曲折を経て異世界転生に失敗。

なんやかんやあってゾンビとなる。

【異界転生女神】

 アーマ・シュクレイム


時空神アナザを主神とする女神。

死に至る者の強い願いの力を使い、その者を異世界に転生させる。


別乃世・望の強い思いに呼応して降臨するが、思いの外即死に至らなかった別乃世が苦痛のあまり、異世界転生よりも傷を治して生き返りたいと思う願いを強めてしまい失敗。

機転を効かせてフォローに成功するも、その代償として神界に帰れなくなる。

アーマ・シュクレイム

(実体化)


食事によるエネルギー摂取のために霊体濃度を高め、実体化した姿。

服も霊体であるため、服装は自由自在である。


摂取した食料を消化・吸収・排出しきるまでは霊体には戻れない。

【操霊邪法悪魔】

 トリカラ・マイウー


別乃世・望を蘇生させるためアーマに呼び出された悪魔。

地獄の7大魔王サンダース・トゥモロウアース配下。

死霊を操る邪法を司る。


別乃世とアーマの要望を最大限に叶えるため、別乃世を「人肉を食らうことにより傷が癒えるゾンビ」にする。

トリカラ・マイウー

(実体化)


アーマのご飯を買いに行くために霊体濃度を高め、実体化した姿。

元が霊体であるため、角・羽根・尻尾・顔の傷などの悪魔的アクセントは出し入れ可能である。

【異端断罪天使】

 メンタイ・ハクマイナー


唯一神に仕える天使。


唯一神の縄張りである現世から魂を掠め取る異界転生、神の名を騙る邪女神、魂を弄ぶ糞悪魔、小汚いゾンビなど、神に逆らう有象無象の一切を許さず断罪する。

【エクソシスト】

 シスター・カッドロゥ


唯一神教徒。

メンタイ・ハクマイナーを守護天使とする悪魔祓い。

空手をベースとした体術と神秘術を組み合わせた戦法を得意とする。


街に増殖するゾンビの元を断つため派遣される。

【ゾンビ・クィーン】

 阿波津・怜子(アワヅ・レイコ)


街ですれ違った別乃世に因縁をつけて、連れの男にボコらせた極悪女。


お腹のすいた別乃世にがぶりとやられてゾンビとなるが、ちょっと噛まれた程度であったため屍にはならず。

人肉を食らう欲求とゾンビ感染能力を受け継ぎレッツ・パーリィする。

【探偵】

 螺理多・極(ラリタ・キメル)


螺旋のごとく捻れ絡み合う、幾多の世の理を見極めることを信念としており、その信念はときに利益や倫理をも度外視する。


理屈さえ通れば神も悪魔も許容する柔軟な思考の持ち主。

【探偵事務所アルバイト】

 豊秩・満子(トヨチツ・ミチコ)


螺理多探偵事務所のアルバイト。

年の割に落ち着いており、色々な話題に即座に対応できる感性の持ち主。


螺理多にはちょっとした憧れを抱いている。

通称ちち子。

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