原因
文字数 2,703文字
相談してみよう。
探偵事務所へ向かう車の中。
別乃世たちは、トリカラ・マイウーが戻らないことについて螺理多に話し、意見を求めた。
例えば、別乃世さんはその悪魔の呪いを受けているとのことでしたが・・・
仮にその悪魔がいなくなった場合、別乃世さんに何か変化は見られないのでしょうか？
―――ああ、そうです！
別乃世さんの身体を保っているのはトリィの魔力です。
トリィの身に何かあれば、その魔力も途絶えているはず・・・
まぁ何にせよ、別乃世さんの身に何の変化もないようであれば、少なくともその悪魔はまだ生きているのでしょう。
あぁ、よかったトリィ・・・
ところで・・・
女神様と悪魔、一体どういうご関係で？
余裕ができたらまた、是非お聞かせ願いたいですね。
会議室に集まり、螺理多から今後の方針についての説明が始まった。
昨日、あれから考えて・・・
そして、今朝あなた方から悪魔が居なくなったとの話を伺って。
あとひとつ、考えなければならないことが出てきました。
・・・つまり、「守上は何故ゾンビとなったのか」。
一つ、別乃世さんをゾンビにした悪魔の仕業。
二つ、それとは別の、全く無関係の悪魔の仕業。
そして三つ・・・
別乃世さんの仕業―――
何らかの理由で、ゾンビを増やす必要があった。
ただし、別乃世さんと守上の状態があまりにも違い過ぎるのが疑問ではあります。
別乃世さんは一見、何の変化も見られませんが、守上は明らかに異常な言動をしていて、見るからにゾンビでした。
無関係の他の悪魔が、別乃世さんの生活圏内で偶然ゾンビを造ったというのは出来すぎです。
別乃世さんをゾンビにした悪魔と守上をゾンビにした悪魔・・・
仮に別の悪魔であったとしても、何らかの関係性があると考えるのが妥当でしょう。
・・・なんだ、前の二つの言い分からして、三つめの可能性が一番高いと思ってるんじゃないか。
―――そして三つめ。
・・・これについては別乃世さんが一番良くご存じでしょう。
何か、心当たりは？
私はずっと別乃世さんと一緒にいました。
別乃世さんが何かしたということはありえません！
身に覚えはある。
一番初めに食人衝動がきたときに、食うまではいかなかったが、噛み付いてしまった女が一人いる。
あ・・・
なるほど、映画などでよくあるパターンですね。
三つの可能性といいながら、初めから俺が原因だと確信していたわけだな。
ですが結論としては、やはり別乃世さんが今おっしゃった「別乃世さんに噛み付かれた女性」にゾンビ症状が移り、広がっているものと考えるのが妥当ではないかと思います。
―――それでもよろしいので？
・・・いや、初めからそのつもり、か？
いいえ、そこまでは。
ただ、お二人に告げずにおいて、ご自分で今の結論に達したとしたら・・・
お二人だけで行動されると、より危険であると判断したので、あえてお話しさせて頂きました。
昨日の時点で議題に上げることもできたのに、それはしなかったな。
アンタのことだ、昨日の時点で気付いていたんだろう？
あのときに話さなかった理由は？
・・・これは、非常に残酷な現実です。
別乃世さんには悪意はなく、やむにやまれぬ事情の下に起こった事件だ。
話さずに済むのならば、それに越したことはない。
また、話すにしても全体的な方針を組んでから・・・
そう考えての判断です。
これからもよろしく頼む。
こちらこそ、よろしくお願いします。
―――さて、それでは今後の方針を発表します。
まずは、僕と豊秩さんでシスターを。
豊秩さんも了承済みです。
豊秩さん一人で事務所に泊まるのは不安だということでしたので。
僕も一緒に泊まり込みましたので、そのときに。
何でもありません、何でもないです。
ただ、怖いから一緒に泊まって頂いただけです！
はい、そうですね。
・・・そして別乃世さんとアーマさん、お二人には「別乃世さんが噛み付いた」という女性を探して頂きたい。
そもそもまだ無事であるとも限りません。
守上のようにゾンビになった上で、シスターに灰にされていたらそれこそ見つかりようがない。
無駄足になる可能性を考えると、優先順位は下がります。
この二人を探しているうちに、杵崎や悪魔のトリィさんを見つけられる可能性は非常に高い。
・・・シスターの方は大丈夫なのか？
あくまでも足取りを追うだけです。
直接接触するつもりはありませんのでご安心ください。
