操霊邪法悪魔 ~トリカラ・マイウー~
文字数 2,572文字
は、はい!
私は異界転生しか能がありません。
ですので、蘇生に詳しそうな知り合いを呼ぶことにしました!
蘇生を司る神!
そういうのもいるのか!
では頼む、できるだけ早く!
女神は、どこからともなく取り出した子羊まるごと一頭を床?に置き、詠唱を始めた。
我差し出したるは子羊の血肉
我求め訴えたるは永遠なる魂
我呼び出したるは冥府の住人
え、あれ?
女神様の・・・知り合いですよね?
なんか、ちょっと・・・
汝来たるは北北東より
汝来たるは地獄の第六団
汝来たりて我が願い叶えたまえ
大佐の名を冠する偉大なる魔王
サンダース・トゥモロウアースの名に於て―――
空間に描き出される無数の法陣。
その中心から現れたのは―――
我は悪魔、トリカラ・マイウー。
我が主サンダース・トゥモロウアースの名に於て、汝の願いを叶えんために召喚に応じる。
―――さぁ、願いを言え!
いや、悪魔を呼んだのはお前等だろ・・・ん?
お前は―――
愛称で呼ぶな、霊格が堕ちる!
・・・って、やっぱりお前かアーマ。
何をやってるんだお前。
・・・なるほど、言わんとすることは分かった。
やろうとしていることはまるで理解できないが。
ああ、ご理解いただき感謝します、悪魔トリカラ・マイウー!
・・・そもそも何でアタシを頼る?
こんなもの、女神同士で解決しておけよ。
だって・・・!
貴女も知っているでしょう、私、友達少ないんですもの!
あ~、分かった分かった。
だがお前、職場の同僚とか同業者とはネットワークを作っておけよ。
人脈は財産だ。
・・・女神と悪魔、何やら親しげですが。
お二人はどういったご関係で?
しんまがくえん・・・神と魔の学園と書いて神魔学園?
ああ、まぁ人間の貴様に言っても分からんだろうな。
掻い摘んで説明すると、この現世は唯一神のヤツが治めている。
それ以外の神や悪魔は唯一神との争いに敗れた敗残者だ。
現世から追われ、魔界と呼ばれる異界に身を潜めている。
その魔界の上に「神界」を作ったのがそこの女神が属する神魔族で、下に「地獄」を作ったのが我ら悪魔族だ。
「魔界」に住んでる神「魔」族・・・というと、ひょっとして女神さまも魔族・・・?
神魔も悪魔も根っこは同じ。
唯一神に堕とされる前はどっかの土着神だ。
正邪の区分はそこにはなく等しく敗者である、ただそれだけだな。
それでも志は違うものがありまして・・・
現世の人々を幸せにして、その魂をこちらに引き込もうとしているのが私たち神族。
人間の欲望を満たし、魂をこちらに引きずり込もうっていうのが我ら悪魔族だ。
―――分かった。
よくわからんが、俺には特に関係ないことは分かった。
なので、そろそろ何とかしていただきたい。
痛みやらなんやらで、そろそろ会話もままならん。
ああ、はいはい。
―――でだ。
要約すると、そこの人間の望みは「傷を治して生き返りたい」。
・・・まぁ厳密に言えばまだ死んでいないから生き返るというのは語弊があるな。
―――「死なないように傷を治したい」。
これで間違いないか?
次に女神アーマ・シュクレイム。
お前の望みは「この人間を死の淵から救い、異界に送り届けたい」。
それでいいな?
―――よかろう。
我が主サンダース・トゥモロウアースの名に於て了承した。
では儀式を行う。
まずは女神アーマ・シュクレイム!
すっぱだすっぱ、素っ裸になれと言っている。
儀式にはそれが必要だ。
当然だろう?
私は悪魔だ。
悪魔への願いを叶えるには儀式が必要だ。
お前だ。お前がやるんだ、召喚者!
召喚者・・・私?
ああ、そういえば・・・
で、でも!
いくらなんでも素っ裸は・・・!
ん?
どうした、できないのか?
貴様の願いはその程度なのか?
たかが素っ裸になるだけで、その男は助かるんだぞ?
あぅぅ・・・
せ、せめて何か身に付けさせてください!
素っ裸以外なら・・・素っ裸以外なら頑張りますので!
我が儘を言ってはダメだ!
おとなしくトリカラ・マイウー様の言うことを聞くんだ!
―――ふむ、仕方あるまい。
女神アーマ・シュクレイム。素っ裸以外ならどんな格好でもする。
それで間違いないな?
は、はい!
この際恥は捨てて頑張ります。
ですので素っ裸だけはなんとか、お願いします!
やかましい。
瀕死のクセにエラく元気な人間だな。
―――では女神アーマ・シュクレイム。
貴様の主神、【時空神アナザ】の名の下に、「素っ裸以外の格好になる」ことを誓うか?
まて―――悪魔が妥協するな、トリカラ・マイウー!
俺は認めんぞ!
よし、ならば契約成立だ。
では女神アーマ・シュクレイム。
汝の主神、【時空神アナザ】の名に於いて―――
まっぱになれ!
え、え、?
で、でも、裸にはならないということだったのでは・・・?
そんなことは一言も言っていない。
「素っ裸」じゃなく「真っ裸」だ。
―――何か文句でもあるか?
やかましいっ!
悪魔の儀式は遊びじゃないんだ、妥協はないんだよ!
―――それとも、アナザを呼んで契約の成否を問うか?
いいからさっさと脱げ!
こんなアホな仕事、とっとと終わらせたいんだこっちは!
そうだ。
これは神聖なる儀式だ、何も恥ずかしがることはない。
すぱっといくんだ、女神アーマ・シュクレイム!
悪魔の儀式だと言ってるだろうが!
―――ほら、お前もまっぱになるんだよ!
女神の願いに応じて召喚された悪魔トリカラ・マイウーの儀式とは?
すでに忘れ去られていそうな別乃世の死の刻までに間に合うのか―――
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)