探し人を求めて
文字数 2,549文字
いやなに。
アーマに釣られて一緒になってあれこれ考えていたが・・・
冷静に考えると、別にアタシはお前が人肉を食らおうが汗を吸おうが尿を恵んでもらおうが、どうでもいいことに気付いただけだ。
お前が人肉を拒もうと、限界が来れば望む望まないに関わらず食わざるを得ない。
仮に別の方法で解決したならば、それはそれで別に構わん。
それでも契約は成立するんだ。
過程に目を瞑りさえすれば、アタシには何の不満もない。
家に籠ってあれこれ考えていても仕方がない。
色々歩き回ってみようと思う。
ああ。
アタシがそいつに付き合う理由はなくなったからな。
とはいえ、お前らの願いが達成されるまではアタシも地獄には戻れない。
せっかくだから、適当に現世をブラブラしようと思っている。
無用だ。
昨日、買い出しに出たときにいくらか貰っておいた。
駄賃だ駄賃、気にするな。
貴様もどうせ、現世に留まる気はないんだろう?
残すだけムダだ。
―――では出掛けるか。
アーマ、ご飯は出先で適当にでいいか?
迷子になったら、ちゃんとおまわりさんに聞くんだぞ。
こうして別乃世とアーマは、人出の多いところに出るべくひとつ隣の大きめの駅までやってきた。
さて、ここがこの辺りではそこそこ大きめの駅だ。
遊ぶところもいっぱいあるぞ。
アーマ、どこに行きたい?
ひとまず、何を目的にするかですよね。
別乃世さんとしては・・・
や、やっぱりその・・・汗やごにょごにょをくださりそうな女性を探す、といったところなのでしょうか?
いや、さすがに初対面でいきなり「汗を舐めさせてください」「尿をください」では通報されてしまう。
とりあえず、何か取っ掛かりが得られないか、街をブラブラしてみようと思う。
ああ、そのへんについてはちゃんと分かってらしたんですね。
安心しました。
まぁ、まずはどこかでご飯にしようか。
・・・お、ちょうどあそこで何かビラを配ってるな。
飲食関係かもしれん、見てみよう。
あ、どうもありがとうございます。
どうぞ、よろしくお願いします。
あ、はい。
わたし、探偵事務所のアルバイトでして。
人探しのビラを配ってるんです。
どんな些細な情報でも結構ですので、何か思い当たることがありましたらご協力お願いします。
ご飯のチラシじゃありませんでしたね。
・・・別乃世さん?
探偵事務所、か・・・
キミ、探偵というのは人探しもしてくれるのか?
そうですね。
基本的には警察にご相談されることをお薦めしていますが、今回の場合は緊急を要する案件だそうで・・・
取引先の会社のツテで、当事務所に話が回ってきたそうです。
どれどれ・・・
おっさん二人が居なくなったのが一昨日の夜から?
さすがに捜索願いを出すには早すぎないか?
あ、それはですね。
そこに書いてあるとおり、お二人とも会社の重役さんだそうでして。
突然居なくなったものだから、仕事の指示も引き継ぎもなくてんやわんやの状態で。
早急に帰ってきてもらわないと、刻一刻と会社の損失が積み重なっていく状態なんだそうです。
まぁまてまて、ちょっと言ってみただけだから。
俺も本気で言ったわけじゃない。
聞きたいことがあるから、もうちょっとだけ相手をしてくれ。
俺もちょっと探し人がいてな、相談に乗ってもらいたいんだ。
―――さしあたって、お値段はいかほど?
ああ、お仕事の御依頼ですか。
・・・そうですね、探偵の報酬って結構なお値段するんですよね。
ただウチの事務所、只今絶賛仕事募集中でして。
内容によっては格安でお請けできるかもしれません。
なので、一度事務所でご相談いただけたらと思います。
お話だけでしたら無料ですので。
あとは、値段に折り合いが付くようでしたら御依頼されたらよろしいかと思います。
なるほど分かった。
場所はこのビラに書いてある地図の場所でいいのかな?
はい。
12時からはお昼休みになりますので・・・
今からでしたら、お昼を摂ってからの13時以降の方がいいと思います。
よく分かりませんが・・・
何か特殊な事情がおありのようでしたら、上手くいくかもしれませんね。
ウチの所長、変な話が大好物でして。
内容によっては利益度外視で話に乗ってくるかも・・・
なるほど?
でしたら、お昼ご飯を食べながら、どうお話しされるか考えておいた方がいいですね。
とにかく理詰めで話をするのが大好きな人でして。
あまりにも脈絡のないトンデモ話ですと、門前払いされるかもしれません。
ではお客様が来られるかもしれない旨、私からも所長に連絡入れておきますね。
己の命を繋ぐため、大量の体液を提供してくれる女性を探す―――
その無理難題に対し、探偵事務所を頼ることにより活路を見出した別乃世・望。
だが、それについても大きな課題が立ちはだかる。
果たして、探偵は別乃世の話を信じてくれるのか。
そもそも、信じたとして解決の手段はあり得るのか。
運命の一端を握る、その探偵とは―――
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