転機・そして邂逅
文字数 2,531文字
―――翌朝。
―――あの後。
螺理多からせがまれ続けて断りきれなくなった豊秩は、汗の滲みたハンカチを別乃世に提供していた。
別乃世がそのハンカチをどう取り扱ったかは豊秩も預かり知らない。
というか知りたくない。
依頼の対称は以下の二名。
この二人が取引先とのライフラインとなっているため、一刻も早く探し出してほしいとの依頼です。
具体的な期限は設けられていませんが、おそらく一週間―――
今日を入れて、あと4日以内に居所を突き止める必要があると思われます。
僕は事務所で待機しています。
目撃情報が入りましたら豊秩さんに連絡を入れて、細かい指示を出しますのでよろしくお願いします。
目的の駅前に到着し、意気揚々とビラ配りを始めてから暫らくして。
何故他の二人の配るチラシの方が受け取る人が多いのか。
それについては別乃世も十分に理解させられているところである。
その美貌から男はもちろん女性ですら惹き付けられる美しさ。
差し出されたチラシを拒む者は皆無である。
もっとも、こちらに寄ってくるのは100%が男であるが。
容姿は女神に遠く及ばないが、その驚異のボリュームに、道行く男の視線やらハートやら、その他の邪悪な下心なんかを一身に引き受けている。
食事も終わり、のんびりと食後のお茶を楽しむ3人。
別乃世は当然、水すら飲めないが。
ぴっぴっぴっ・・・
とぅるるるるる―――
とぅるるるるる―――
とぅるるるるる―――
とぅるるるるる―――
とぅるるるるる―――
とぅるるるるる―――
とぅるるるるる―――
―――たしかに。
一同、視線を巡らせると、通りの向こうによたよたと、くたびれたスーツを着た一人の中年男性が歩いているのが目にとまった。