此処とは異なる別の世界を望む者

文字数 650文字

別乃世・望はこの世界に絶望していた。

死ぬほど勉強して大学に入って、必死で就活して会社に入ったあとは、さらに死ぬ気で働いて・・・

そんな生に意味はあるのか?

彼は、いわゆるニートであった。

しかもムダに意識高い系の。


生きる希望も見出せず、ただ日々を送る男。

そんな中、彼の心に与えられた一筋の光明―――


・・・異世界転生、だと?

それはいわゆるネット小説。

不遇な主人公が現実世界で死ぬことにより異世界に転生し、様々な活躍をする冒険譚。

すごい・・・こんな世界があったなんて!

彼は、その素晴らしい世界観に瞬く間に魅了されてゆく。

だが分かっている。

それは所詮フィクション、ただの絵空事であることは。


―――そう、その書き込みを見るまでは。

「異世界転生して戻ってきたけど質問ある?」
釣りにもならない、あからさまなジョーク・スレッド。
おいおい、さすがにこれはないだろう。

いっちょ、からかってやるか。

初めは彼も信用してはいなかった。

だが、スレ主と言葉を交わすうち、次第にその話術の虜になっていく。

いいか、ただ死ぬだけじゃダメなんだ。

即死しちまったら転生もクソもない。

だからそこはだな・・・

なんと、そんな方法が・・・!


―――まてよ?

その理論でいくならば、あれをこうしてこのタイミングで・・・

―――まぁなんだ、何よりも重要なのはアレだ。

「意地でも異世界に転生してやる」っていう気概だな。

あとは女神が何とかしてくれる。

―――よし!
そして、男はついに決心をする。
―――ちょっと異世界に行ってくる!
これが、この物語の幕開け―――
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登場人物紹介

【主人公】

 別乃世・望(コトノヨ・ノゾム)


現代社会への不満故に、軽トラに引かれることにより異世界に転生することを決意したポジティブ・ニート。


紆余曲折を経て異世界転生に失敗。

なんやかんやあってゾンビとなる。

【異界転生女神】

 アーマ・シュクレイム


時空神アナザを主神とする女神。

死に至る者の強い願いの力を使い、その者を異世界に転生させる。


別乃世・望の強い思いに呼応して降臨するが、思いの外即死に至らなかった別乃世が苦痛のあまり、異世界転生よりも傷を治して生き返りたいと思う願いを強めてしまい失敗。

機転を効かせてフォローに成功するも、その代償として神界に帰れなくなる。

アーマ・シュクレイム

(実体化)


食事によるエネルギー摂取のために霊体濃度を高め、実体化した姿。

服も霊体であるため、服装は自由自在である。


摂取した食料を消化・吸収・排出しきるまでは霊体には戻れない。

【操霊邪法悪魔】

 トリカラ・マイウー


別乃世・望を蘇生させるためアーマに呼び出された悪魔。

地獄の7大魔王サンダース・トゥモロウアース配下。

死霊を操る邪法を司る。


別乃世とアーマの要望を最大限に叶えるため、別乃世を「人肉を食らうことにより傷が癒えるゾンビ」にする。

トリカラ・マイウー

(実体化)


アーマのご飯を買いに行くために霊体濃度を高め、実体化した姿。

元が霊体であるため、角・羽根・尻尾・顔の傷などの悪魔的アクセントは出し入れ可能である。

【異端断罪天使】

 メンタイ・ハクマイナー


唯一神に仕える天使。


唯一神の縄張りである現世から魂を掠め取る異界転生、神の名を騙る邪女神、魂を弄ぶ糞悪魔、小汚いゾンビなど、神に逆らう有象無象の一切を許さず断罪する。

【エクソシスト】

 シスター・カッドロゥ


唯一神教徒。

メンタイ・ハクマイナーを守護天使とする悪魔祓い。

空手をベースとした体術と神秘術を組み合わせた戦法を得意とする。


街に増殖するゾンビの元を断つため派遣される。

【ゾンビ・クィーン】

 阿波津・怜子(アワヅ・レイコ)


街ですれ違った別乃世に因縁をつけて、連れの男にボコらせた極悪女。


お腹のすいた別乃世にがぶりとやられてゾンビとなるが、ちょっと噛まれた程度であったため屍にはならず。

人肉を食らう欲求とゾンビ感染能力を受け継ぎレッツ・パーリィする。

【探偵】

 螺理多・極(ラリタ・キメル)


螺旋のごとく捻れ絡み合う、幾多の世の理を見極めることを信念としており、その信念はときに利益や倫理をも度外視する。


理屈さえ通れば神も悪魔も許容する柔軟な思考の持ち主。

【探偵事務所アルバイト】

 豊秩・満子(トヨチツ・ミチコ)


螺理多探偵事務所のアルバイト。

年の割に落ち着いており、色々な話題に即座に対応できる感性の持ち主。


螺理多にはちょっとした憧れを抱いている。

通称ちち子。

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