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文字数 908文字

「アタシな、誰に処女奪われたと思う」
 憂歌団の何枚目かのLPを聞きながら、無口になった由紀子が唐突に言った。
「ほんなもん、普通は同級生とかやろ」
「そんなきれいなもんやないねん、アタシな、おとうちゃんにおかされたんや」
 僕は思わず、自分の耳を疑った。近親相姦という言葉は知っていたけれど、まさかという気がして後の言葉が出なかった。
「中学二年の時に、おかあちゃん仕事でその日はおそかったんや。そしたら、クソオヤジが酒飲んで酔っ払って帰りよって、アタシの寝ていたフトンにもぐりこんできて……、目覚ました時には、クソオヤジアタシの上に乗っていたんよ、アタシ、びっくりして大声あげそうになったけど、隣の部屋で加代子寝てたから、こんなオヤジでも加代子は好いてたから……」
 嫌な思い出に触れて感極まった由紀子は泣き出した。憂歌団のLPも何時の間にか終わっていた。
「けど、アタシが我慢したら加代子にとっては、何時までも優しいおとうちゃんなんよね、そう思うたら……」
 由紀子は、しばらく肩を震わせて泣いていた。泣き終えて落ち着いた由紀子は、
「アタシの体には、クソオヤジの血が流れてるやろ、そやからアタシ、自分の体メチャクチャにしたいんや」
 そう言い終えた、由紀子は僕に、
「アタシのこと抱いて」
 と僕の首に腕を回し、優しくそして深いキスをした。
 僕は由紀子にリードされながら、何が何やらわからないまま由紀子の中に夢中で入っていった。その後も、狂った野獣のように、何回も繰り返しセックスをした。気が付くと外は暗くなっていた。
「最後に、一つだけ聞いていい。おばちゃんは、由紀ちゃんとおんちゃんのこと知ららったがやろうかねえ」
 僕は由紀子と壁にもたれ、寄り添っている由紀子の髪をなぜながら聞いた。
「どうなんやろう、変態オヤジがアタシのフトンにもぐってきて、いたずらしてたのはずっと前からやからな、薄々感じとったかもしれへんけど、どうやろ、処女奪われたことまでは、知らないんとちがうやろか」
「そうか……」
 僕は由紀子のセブンスターを吹かしながら、多分伯母は知っていたからオジと離婚もし、今の由紀子の奔放な生活にも何にも言わないのだろうと思った。
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