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文字数 955文字

 林京子が妊娠したらしいとのうわさを、眠から聞いた。
 京子は僕と同じ中学出身で、この高校にはサルと同じように私立をすべったために不本意ながら入った組である。
 中学時代は教師の娘でもあり頭もよくスポーツもできた、いわゆる優等生タイプだった。しかし、早くから男好きな一面ものぞかせていた。
 小学校六年の時、誰もいない教室で京子が本を読んでいた。
 高部と僕が遊び終わって教室にもどった。高部がニヤつきながら僕を誘い京子の机の前でかがんだ。高部はキャップの付いた鉛筆の先で京子のパンツを突っついた。京子はやや開いた足を閉じるでもなく、表情一つ変えずに、されるがままにしていた。高部は次に消しゴムを京子の陰部に押し当てた。それでも京子は、涼しい顔して本を読んでいる。
 僕は、京子がいたずらに抵抗しないのは、逆にいたずらされることを喜んでいると、本能的に感じた。
 中学の時に京子は陸上部で短距離の選手で、僕は野球部だった。
 部室が隣り合わせで、ある日の練習後、着替えをしていたら京子が隣の部室に入る気配を感じ、そこにいた部員達と京子の着替えを覗いた事があった。盗み見ると言うようなものでなく、完全に「今俺たちは覗いてるぞ」と相手にわからせるように覗くのである。しかしこの時も、京子は怒るどころか、薄ら笑いを浮かべて僕たちに自由に覗かせたのであった。
 これらの印象が脳裏に焼き付いていたから、それほど僕は京子の妊娠のニュースに驚きはしなかった。優等生の表の顔とは別の、男好きの京子の本質を知っていたから、「やっぱりね」というのが本当のところだった。
「どうも、妻子ある男と付き合いようみたいぞ。ほんで、妊娠したことで、男に責任取るよう迫ったらしいぜよ」
 寮にいる関係か、眠や谷本はこの手の情報を多くしいれるので、白木のアパートでは思わぬ話しを聞くことができた。
 京子は白木のアパートのすぐ近くのコーポに住んでいたため、時々は僕たちと白木のアパートで飲んだりもしたし、よく飲んでいて食料が不足したりした時など京子のコーポに行って調達して来たりした。
 京子のコーポの前を通る時に干してある、黒いパンティーを艶めかしく思うことがあった。
 京子の妊娠の話しは本当か嘘か定かでないままだったが、妻子ある男と付き合っていたのは事実だった。


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