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文字数 684文字

 実家に帰って、何をするでもなくボーと過ごしていたら、父親に小言を言われ、そのことで口論となり、僕は家にいることの気まずさから母親に頼み、大阪の伯母のところに行くことにした。
 伯母は、母親の姉で田舎が嫌いで都会に出てきたというだけあって、考え方が開けていた。僕が停学になったことも、
「後になれば、笑い話になることやん、ケンちゃん、気にせられんよ」
 と言ってくれた。
 伯母には二人の娘がいた。長女の鶴見由紀子は短大の二年生で、次女の加代子は中学三年である。由紀子達に会うのは五年振りだった。由紀子が随分大人になっており、また綺麗になっているのに驚いた。前に会った時の由紀子は高校で軟式テニスをしており、日に焼けて全身真っ黒で、髪はショートカットで、まるで男のようだと思ったことがある。それと以前会った時のような、暗い目をしていなかった。
 由紀子は、短大に入学した頃からK大の野球部の男と付き合い始めた。この頃から由紀子は変わっていき、女性として開花していった。僕が滞在した間にも、外泊して帰らないことは度々あった。由紀子の外泊には慣れているのか、伯母は気にする風もなかった。僕は都会の家族が、どこもこんな風に開けているのかと、羨ましく思った。
 伯母は、四年ほど前に離婚し、女手一つで娘二人を育てていた。伯母は、ホテルに勤めていることから、帰る時間も不規則だった。由紀子は妹の加代子の面倒をよく見てきたし、伯母の帰りが遅い時は、由紀子が家事などやってきた。しかし、ここ二年ほどは、加代子も自分のことは出来る年頃にもなったことから、夜も遅く帰ったり、外泊もするようになった。
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