文字数 381文字

 僕とミユキのデートは、もっぱら四万十川の堤を歩くことだった。
 その頃の僕は、おくてのシャイを絵に描いたような学生であり、ミユキと付き合い始めてから手も握らなかったし、キスするなんて思いもしなかった。
 僕はミユキと夕暮れ迫る四万十川の堤を黙って歩くだけで充分だった。
 雨降りの日など相合傘で学校から帰る道で、眠や谷本に会った時など、
「どうだ、うらやましいろう」
 と言う勝ち誇った顔で、優越感に浸っていた。
 女の子と付き合っていること、それだけで満足していた。
 ミユキの自宅は老舗の旅館だった。休日の忙しい時はよく手伝いをしていた。結構しつけに厳しい家であり、門限内には必ず帰宅するようにしていた。
 僕達は、四万十川の堤を歩く以外は、休日に映画を観にいくか、コンサートにいくか、後は電話で長話をするだけだった。
 しかし、それでミユキも満足しているものと思っていた。
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