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文字数 1,047文字

 文化祭が終わった夜、白木のアパートで僕と眠と谷本と白木で酒を飲んだ。
 今日の文化祭の最後に、学生達のミニコンサートが行われ、森田と一緒にミユキも出て、森田のアコースティックギターに合わせて、ユーミンの「卒業写真」を歌った。この曲はミユキの大好きな曲で、いつか二人で、ユーミンのコンサートに行こうと約束していた。
 ユーミンの「卒業写真」を歌うミユキの声を、体育館の後ろの方で聞きながら、すっかり変わってしまったミユキを歌詞のようにしかりつけてやりたかった。そして、悦にいって隣でギターを弾く森田に無性に腹が立った。僕はむしゃくしゃして、眠達を誘い飲むことにしたのである。
 ある程度酔いが回ってきた頃、情報通の谷本が、
「オレの部屋の、二段ベッドの上に女連れこんでやりまくりよう先輩から、ええ話を聞いたがやけんど、聞きたいか」
 谷本は、ニターと笑い、じらすようにハイライトに火をつけた。
 僕達はその様子からきっと女のことだろうと思い、
「もったいぶらんと、はよ言えや」
 と話しの続きを催促した。
「その先輩が連れて来てやりよう女は、農高の三年でよ、その女の友達にめちゃくちゃ好きもんがおるらしいわ。京町の一条アパートにおってよ、なんでも五百円でやらせてくれるらしいぞ」
「そりゃ、本当かよ」
 僕達は、半信半疑ながらも、うれしさのあまり手を叩いて喜んだ。
「ほんならよ、その話しが本当かどうか、今晩行ってみたら面白いやん」
 いたずら好きで好奇心だけは人並み以上に旺盛な、眠が言った。
 僕達は、狂おしいような童貞喪失願望も叶わず、もっぱら万引きや覗きやセンズリといった、ひたすらマイナーな日常を送っていたため、久々に浮かれた気分になった。
 時間は八時を少し過ぎていたが、
「まだやらせてくれるろう、ほんで、一人三十分として二時間か、ほんなら十時には終わるにや」
 と谷本が、時計を見ながら言った。
 谷本や眠には、寮の門限はあってないようなもので、再々夜中に帰っては窓から忍び込んでいた。
「オレは、やめちょくけん」
 白木が、気弱に言った。
 僕達も白木の性格がわかっているから、無理強いはしなかった。
「そりゃそうと、誰からやるか決めちょかんと、むこういって喧嘩になるぞ、ジャンケンで決めちょこうや」
 僕の提案でやる順番をジャンケンで決めた。一番が眠で、二番が僕、三番が谷本になった。
「残り物に福があるゆうろう、女ちゅうもんは、やればやるほどよくなるゆうけん、オラん時が一番感度がええぞ」
 知ったかぶって、谷本が言った。
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