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文字数 633文字

 谷本は一月末で自主退学することになった。
 退学の日を明日に控えた寒さが身に凍みる日の夕方、谷本と僕と眠は校舎のすぐ側を流れる四万十川の河川敷に降り立ち、もうすぐ現われるであろう三年の新田達を待った。
 待ち合わせ時間を少し過ぎた頃、新田と連れの二人がやって来た。
「アレん卒業するまでに、絶対やっちゃる」
 と、谷本はよく口癖のように言っていた。
 新田は谷本のバスケ部の先輩にあたり、下級生をいじめる根性の悪い奴だった。不良グループに属し喧嘩も強かったことから、下級生達も新田に反感を持っていたが歯向かう者はいなかった。
 谷本は心底バスケが好きで、中学時代にはキャプテンとして活躍していたことから、N校に入学するやいなや迷わずバスケ部に入部した。
 入部してみると一年を指導する立場にあった新田に、散々しごかれた。それはしごきと言うより、いじめに等しい嫌らしいものだった。一年の他の部員が新田から嫌がらせにあい半泣きになっているときなど、正義感の強い谷本がよくかばってやった。
 谷本のことを面白くなく思った新田が、いつの頃からか谷本個人に集中的に嫌がらせを行うようになった。
 しかし、谷本は大好きなバスケをやりたい一心で我慢し続けた。
 そんな谷本だったが、ある日魔が差したのか、はたまた余程虫の居所が悪かったのか、新田の言った、
「ワレの姉やん、オメコ好きらしいにや」
 という挑発に切れて、新田の顔面を殴ってしまった。
 このことがきっかけとなり、結局谷本は退部してしまった。
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