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文字数 496文字

 白木のアパートには、入れ替わり立ち代り、授業をさぼってタバコを吹かしにくる連中が増えてきた。その中には、同級生の奥宮アイや、一学年下の奥宮ミチコもアイと連れ立ってくるようになった。
 女の子達も何をするでもなく、ただ僕達と一緒にハイライトを怠惰に吸っていた。ミチコは、可愛らしい外見だけではとてもタバコを吸うようには見えなかった。
 この夏休み中に、童貞を捨てたと僕に囁いた奥宮テツヤも、アイやミチコと白木のアパートに来ては、ただ黙ってハイライトを吹かしていた。
 テツヤはアイやミチコと同じN市の隣町にある被差別部落から通学していた。テツヤは授業中、いつも太宰治を読んでいた。
 テツヤが童貞を捨てた相手がミチコであることを、白木のアパートに授業をさぼってタバコを吹かしている時に聞いた。
 その話しによれば、テツヤはミチコの部屋に夜這いをして、そこで事を成したとのこと。しかし、僕にはこの話しはどうやらテツヤの、文学好きがこうじた創り話に思えてしかたなかった。
 僕は、目の前の可愛らしいミチコが、テツヤになかば強姦された場面を想像しては、「クソー、コンチクショウ」と内心穏やかではいられなかった。
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