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　谷本平助と眠清志郎と僕は、放課後いつものように白木和男のアパートにたむろして、だるそうにハイライトを吹かしていた。
　高校二年の落ちこぼれの怠惰な学生だった僕達にとって、放課後白木のアパートに集まってタバコを吹かしては、馬鹿話をすることで、お互いの傷を舐めあっていたのかもしれない。
　谷本と眠は寮に入っていた。僕は下宿をしており、二人から面白い情報を仕入れていた。
「昨日は、一年の宮本連れて女子風呂を覗きよったら、ええ女が入ってきたがよや、あわててこきよっち、よう見たら、姉やんやっちよ、やられたぜよ」
　と、谷本が頭を掻きながら言った。
　僕と眠は笑いこけたが、
「谷本は、前にも夏休みに家に帰ってセンズリこきよった時に、前の山で木切りようおんちゃんに見られたことあるいいよったけんど、谷本んセンズリこくときは、よいよついちょらんにや」
　と僕が言った。
　その頃の話題と言えば、もっぱら性に関することだった。
　谷本は田舎の中学では生徒会長をし、バスケ部のキャプテンをしていたことをよく自慢した。髪がモジャモジャの天然パーマで、顔といい髪型といい当時のボブ・ディランを野暮ったくしたような男だった。天然パーマとどこか怪しい雰囲気のため、よく生徒指導の立山ににらまれていた。
　谷本はバスケ部で真面目に練習に取り組んでいたが、気に入らない先輩を殴って自ら部を辞めてしまった。
　眠は父親が県会議員をしており、いわゆるオボッチャンなのだが、これがとんでもなく怠惰な男で、授業はかたっぱしからさぼり、朝など気の向かない日には、呼びに行くまで寮で眠っているのである。
　眠はまったくの運動音痴であった。油絵を描く趣味をもっていたが、生来の怠け者であり、一つとして作品が完成することはなかった。眠は彫りの深い顔立ちで、ジェームス・ディーンをイナカッペにして軟弱にした感じだった。
　僕達は、僕と同じ中学の出身である白木が、一時期寮に入っていたことから白木を通して知り合いになった。
　白木は真面目な男だったため、寮の不真面目な体質になじめず、早々に寮を出て下宿をした。それをよいことに、白木の下宿を溜まり場にした。
　白木の下宿は、高校のすぐ近くにあり、下宿に行くまでの角に小さなタバコ屋があった。
　店には七十過ぎのおばあさんがいて、僕達が学生服のまま窓越に「ハイライト」と言うと、黙って売ってくれた。
　僕達はこのおばあさんのおかげで、いつも白木のアパートに行く前に、ハイライトを買っていけたのである。
　白木はタバコは吸わず、酒は付き合い程度に飲む程度だったので、僕達は休み時間や放課後、いつも主抜きで、かってに下宿を使いタバコを吸い、たまに酒を飲みながら女やセックスの話しばかりしていた。しかし、白木は僕達の勝手な行動に、決して不平を言わなかった。本当のところは、言えなかったのかもしれない。