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文字数 857文字

 白木のアパートで僕と谷本と眠と白木が白木の十七歳のバースデイを祝って飲んだ。白木は自分の誕生日を、こんな風に友達に祝ってもらったことは初めてだと喜び、いつになくはしゃいで飲んだ。
 OLの獣の声はここのところ、ずっとご無沙汰しており、彼氏も来ていないとのことだった。
「もしかしたら別れたがかもしれん」
 白木は真っ赤になった頬をなぜながら言った。
 僕達は、ここのところの自分の性欲に、翻弄され、やり場のない感情の高ぶりに、ややもすると打ちのめされそうだった。
「隣の女と、おまえ話したことあるがか」
 谷本が座った目をして、からかうように白木に聞いた。
「いや、挨拶はするけんど、特別になにかを話したことはない」
 かなり酔ってはいるが、こんな時にも白木の態度は真面目な感じである。
「そりゃ白木、今日のバースデイにお招きして、近づきにならんといかんがやないか」
 いたずら好きの眠は、酔いに眠そうな目をさらに細めて言った。
「そりゃそうじゃ、ここらで一回お近づきのしるしに、是非呼ぼう」
 と酔いが回ってきた僕も、それに調子を合わせた。
 しかし、いざとなるとからきし意気地のない僕達は、誰が言いに行くということでもめているうちに、隣のOLは外出してしまった。
「おまえバカやにや、男がこんなったがやない、この時間から外に行くゆうことは、男とモーテルにいきようがよや」
 と、未練を断ち切るように谷本が強い口調で言った。
 僕達は妙に白けてしまって、ハイライト片手に安いウイスキーを黙って飲んだ。飲みなれない酒を大量に飲んだ白木は、完全にノックダウンしてしまった。
 明け方、「苦しい、苦しい」との白木の声に目が覚めると、白木が仰向けのままブクブクブクとゲロをしだした。「オイオイオイ」と、白木の洗面所に慌てて洗面器を取りに行ったがもう遅かった。白木の顔と敷布団は、ゲロまみれになった。眠も谷本も騒ぎに目を覚まし、「ウェー」と自らも戻しそうな声をあげた。
 しかし、当の白木は吐いたゲロで気分が良くなったのか、目を覚まさずにそのまま寝ていた。

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