白無垢の曼珠沙華
文字数 281文字
曼珠沙華の咲き誇る道を歩いておりました。あの方の元へ一歩ずつ歩いておりました。先に行って待っている。あの方の優しい声を思い出す。戦争は私の大事な方を奪って行きました。もう50年も待たせてしまいました。お婆ちゃんになった私を嫌いにならないでね。私はそっと花を摘み・・紅を差した。
追記。
お気に入りの作品です。
神風特攻隊で恋人を失った女性をイメージしました。愛しい人が命をかけて守った戦後の日本を50年逞しく生きました。彼女は未婚のまま天寿を全うしました。曼珠沙華の咲く黄泉の道を恋人の元へ向かいます。少女の様に心をときめかせ、曼珠沙華の紅を、老いた頬に差すのでした。