第96話 ひなたとマフラー

文字数 1,677文字

 ひなちゃんの白いマフラーがかわい過ぎるって男子の中で話題になっている。プレゼントしたあたしとしては嬉しいけど、なんか男子の中では変な方向に行っている。やっぱり俺はひなちゃんが好きだとか。それは絶対アカンで。男子なんかにあたしのひなちゃんをあげる気ないで。ひなちゃんはあたしだけものもや。そんなとき教室にたまたまひなちゃんと西野君、清水グループがいない時間があった。すると1軍男子たちがひなちゃんの話を始めた。
「3学期になってから白のマフラーして来るひなちゃんって、めっちゃかわいくない?」
「かわいいってもんやないよ。俺、ひなちゃんのことがますます好きになったもん」
「俺もめっちゃかわいいと思うけどな~、ただ服が体操服やねんなぁ。あれが女の子の制服やったら堪らんと思うわ。それこそ一発でノックダウンしてる」
「それにひなちゃん、色白いねんな~」
「そやな、冬になって一段と白くなった感じがするわ。やっぱり寒いせいかな?」
「血行とかあるしな」
「俺、あかんわ。ひなちゃんが男やとわかっててもひなちゃんが好きやわ」
「それ、すごくわかるわ。清水が1番かわいいガチの女の子って頭ではわかってても、ひなちゃんにはかなわないんやよね」
「俺もわかるわ~。俺、ひなちゃんに性癖壊されそう」
「俺もやわ。それにひなちゃん、清水と違って性格もええし」
「それは言えてるわ~」とみんなで大笑いしていた。するとそこに清水グループが帰ってきた。
「楽しそうになに話してたん?」と清水が男子グループに聞く。
「いや、それは…。男同士の話や。女子には言えん」
「なんか、いやらしい」と清水は男子たちを見下す表情で自分の席に取り巻きを連れて戻って行く。なんか嫌やなこの空気を思いながら、あたしは佐藤さんと話を続けた。

「佐藤さんもマフラーして登校してるよね」
「うん、朝は寒いから」
「そのマフラーもかわいいよね」
「ひ、ひ、ひなちゃんには、ま、ま、負ける。…あ、あれは、は、はん、反則」
「ひなちゃんは特別としてあっちに置いといて、佐藤さんも十分にかわいいよ」
「あ、あ、ありがとう」と佐藤さんは少し照れる。
「2年参りのときの服もかわいかったし、前川君なんて、ずっと佐藤さんのこと見てたし」
「そ、そ、そう、い、い、言われると、な、なんか、て、て、照れる」
そんな雑談をしているとひなちゃんと西野君が戻ってきた。
「鹿渡、今日の弁当は何?」とひなちゃんが聞くので、あたしは「ミニロールキャベツや」と答えた。するとひなちゃんは「俺の弁当のアスパラの肉巻きと交換して」とお願いする。「もちろんええよ」とあたしは微笑む。ひなちゃんにあたしの料理食べてもらうのも嬉しいんだけど、最近ひなちゃんのお母さんの料理を食べるもの楽しみなんだよね。特に今年ひなちゃんに教えてもらった鶏飯もうちで作ったらすごく美味しくて家族に大人気やったし。
「布袋に行ってから、母さんアスパラの肉巻きが気に入ってな。良く作るけど、夜でみんな食べてしまうねんな~」
「そうなん、それならお弁当に入ってることがレアなんや」
「そうやで。なあ、新太も食べたことあるやろ」
「そやな。正月にごちそうになったけど、あれはうまい」
そんな話をしていたら佐藤さんがいきなりこう切り出した。
「さ、さ、さっきまで、だ、だ、男子がひな、ひなちゃんの、し、白い、マ、マフラーがかわいいって、は、は、話していたけど、あ、あ、あれはひ、ひなちゃんがか、か、買ったの?」
「あれは俺の誕生日にある人からプレゼントしてもらったものや。俺もめっちゃ気に入ってるわ」
「あれってハニーズやろ? てっきり愛さんが買ってきたものやと思ってたわ」
「ちゃうねん。だから俺にとっては宝物や」
ひなちゃんがそう言うと西野君は、ははんって顔であたしを見た。あたしは照れて下を向く。
「まあ、俺は誰から貰ったん? とか野暮なことは聞かへんけど。ひなちゃんのこと、よくわかっている人なんやね」
「そうやな、俺のことよく理解してくれてる大切な人や」
そんなひなちゃんの言葉を聞いて、あたしはますます照れて顔をあげられなくなった。
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