第77話 石燈籠の謎

文字数 1,570文字

 最近暗くなるのが早いのと夏場にあれだけ暑かったから身体が慣れていないせいか、夕方でも寒いと感じるようになって来た。それでもあたしとひなちゃんはおりいぶ公園のベンチでおしゃべりをしている。本格的な冬が来るとここではおしゃべり出来ないなと思う。放課後に教室に残っておしゃべりする手もあるけど、今みたいにひなちゃんと2人きりっていかない。必然的に佐藤さんも一緒になる。佐藤さんが嫌なわけではないし一緒にいて楽しいけど、ひなちゃんを独り占めできなくなるのがちょっと嫌かも。ひなちゃんはあたし1人のものであってほしいなんて考えていたら、ひなちゃんが突然話題を変えてきた。
「鹿渡はウイングスに石燈籠(いしとうろう)が何個かあるの知ってた?」
「石燈籠って神社にあるやつ?」
「そんな立派なやつやないけど、あるねん」
「知らんわ。どこにあるん」
「俺たちの座っているベンチからも見えるで。ほら、あの横断歩道の安全地帯の入り口用の車のゲートのところ」とひなちゃんが指さす。
「あっ、ホンマや。燈籠の屋根みたいなとこ見えるわ」
「植え込みの中にあって気づきにくいやろ」
「そやな、気づきにくいわ」
「金土日って三連休やったやんか。暇やったし俺ウイングスのまわりぐるっと1周して調べてん」
「あ~、あたしも暇やったわ。誘ってくれたらよかったのに」
「でも、こんなくだらんことで鹿渡を呼び出すのは悪いやろ。せっかくの休みなのに」
「そんなことないで、ひなちゃんと3日も会われへん方がつらいわ」と答えるとひなちゃんは少し照れた顔をして「ごめん、次から誘うわ」と素直に謝ったのであたしはひなちゃんの頭をなでて「次からはしょうもないことでも誘ってや」と言った。ひなちゃんはあたしの右手を優しく払いのけ「わかった」と答えた。
「それよりなんやけど、石燈籠な1個目はそこ。2個目は車の出口の植え込みの横。3つ目は30号線へ業務用車が出る裏道あるやん。あそこの木の裏。4個目が東横入り口の自転車置き場の植え込みの中で全4個あったわ」
「あたし自転車置き場の入り口はよく使うけど、石燈籠があったなんて気が付かんかったわ」
「そやねんな、なぜかみんな植え込みの中とか気づきにくいところにあるねん」
「なんでそんなわかりにくいところに建てたんやろ?」
「これは俺の勝手な憶測なんやけど、多分風水やと思う」
「風水ってここに物置いたら運気が悪くなるとか良くなるとかの?」
「うん、その風水。俺も全然風水はわからんけど、鬼門って言われる北東に石燈籠2個も置いて東にも1個置いてるし、裏鬼門って言われる南西にも1個置いてるし、わざと目立たんようにしたのはショッピングセンターやからかな。ホンマこれ俺の勝手な憶測やから」
「そうなんや。でも説得力あったよ。あたしなんか風水なんて全然考えへんからな~」
「俺も風水は気にしないけどな。でもウイングスが出来たのってもう43年も前やねん。当時はまだそういう考え方も影響あったんと違うかな?」
「そうかもしれへんな。さすがひなちゃんやな。なんか納得できたわ。今度からあたしも石燈籠を意識して見てみるわ」
「意識しても俺たちに何か影響あるわけでもないけどな」
「そやけど、面白い発見やったで。それでなんであたしを誘ってくれへんかったん?」
「それはさっき言ったやん。せっかくの休日をくだらないことで潰したら悪いと思ったから」
「次からは誘ってや」とあたしはちょっと怒ってみせる。するとひなちゃんは「悪かったって」と謝る。そんなひなちゃんもとてもかわいくてあたしはひなちゃんに抱きつく。
「寒くなって来たね」
「そうやな」とひなちゃんはあたしの胸で答える。
「こうしてるとあったかいやろ?」
「あったかいけど、恥ずかしい」と言うひなちゃんからあたしは離れて、本格的な冬が来たらどこでひなちゃんと2人で会おうかと思っていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み