第48話 タナバタ・ディスタンス

文字数 813文字

「タナバタ・ディスタンス」

■人物
薫ちゃん(16)高校1年生。
森本君(16)高校1年生。

■本編
薫のMO「好きな人に好きだとわかってもらうことってなんでこんなに難しいの! もう7月なのにぜんぜん進展しない! 一歩も先に進めない! なぜなんだーっ!」

森本「七夕、何か願い事した?」
薫「ううん。小学生以来、願い事なんて全然してないなー」
森本「俺も」
薫「夢がないね、私たち」
森本「確かに」

薫のMO「高校で隣のクラスの森本君とは同じ文芸部。帰り道が一緒で本の趣味も似てたから、仲良くなるのに時間はかからなかった。でも、友達って距離が固定化してしまった」

森本「今日の薫の詩、よかったよ。夏空の情景が頭に浮かんだし」
薫「あ、ありがと! 照れるなー」
森本「お世辞だよ!」
薫「えーっ、お世辞なの!?」
森本「本当は、嫉妬半分、うらやましさ半分ってところかな」
薫「森本君はいま小説書いてるんだよね?」
森本「まだプロット。俺、いっつも設定でやめちゃうから。今度こそ最後まで書きたいんだよな」
薫「じゃあさ! 七夕の願い事! それにしたらいいよ」
森本「え? 最後まで書けますように、って?」
薫「そうそう!」
森本「願い事ってより、それじゃ目標って感じじゃね?」
薫「あ、そっか……じゃあ! 私がお願いするよ! 森本君が小説書けますように、って! それならいいよね?」
森本「なんだそれ……」
薫「いいじゃん! 期待していますので!」
森本「すごいプレッシャーだし! 薫と違って、俺言葉にするの時間かかるし、期待にこたえられるように書くなんて、うまくできる気しないよ……」
薫「短冊に書いておくから。森本君! 頑張れ!」

薫のMO「ちょっとお節介だったかな? でも、私にできることなんてこれくらいだ。一歩も前進しない恋心は横に置いて、七夕の夜空に私はお願い事をしたのでした」

       (おしまい)
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