第56話 グリーン・レモン

文字数 789文字

「グリーン・レモン」

■人物
ちこちゃん(16)高校1年生。
誠くん(16)高校1年生。

■本編
誠「受け取れ!」

ちこのMO「10月のうろこ雲が流れる空の下。誠くんが投げてきたのは、瑞々しい、緑色したレモンだった」

ちこ「え? レモン?」
誠「ナイスキャッチ!」
ちこ「危ないでしょ、いくらレモンだからって」
誠「お前運動神経いいから」
ちこ「そういう問題ではありません」
誠「それさ。うちのばあちゃんちから昨日届いたんだよ」
ちこ「このレモン?」
誠「そう。たくさんあるからひとつお前にやるよ」
ちこ「いいの?」
誠「おすそわけ的な」
ちこ「なんか古風」
誠「いつも勉強教えてもらってるから。そのお礼もかねて」
ちこ「なるほど。感謝の気持ちな小さい気もするけど。では遠慮なくー」
誠「ま、鮮度と酸っぱさは保証するよ」
ちこ「えーっ! すっぱいの!?」
誠「そりゃあレモンだからな」
ちこ「それなら蜂蜜漬けにしようかな」
誠「お好きにどうぞ」
ちこ「でも。レモンって夏のイメージがあったけど。採れるの秋なんだね」
誠「今の時期でもまだ旬には早くて、グリーンレモンっていうんだ」
ちこ「へえー。グリーンレモン」
誠「ふつうの黄色のレモンは冬が旬らしい」
ちこ「そうなんだね。あ! またおばあさん、冬になったら送ってくれるかな!?」
誠「まあ、たぶんな」
ちこ「今度は一個じゃなくてたくさんほしいなー」
誠「急に欲張りか!」
ちこ「だって、勉強する気のない誠くんの赤点回避だけのための勉強に付き合ってあげている私の労働力の対価を考えれば、安い取引だと思うけど?」
誠「う、うう……返す言葉もない!」
ちこ「でもさ、こんなすてきな報酬もらえるなら、誠くん頭悪いままでいいや!」
誠「は、はあ!?」
ちこ「だって! 報酬もらえなくなると困るからね!」

    (おしまい)
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