第50話 反世界メガネ

文字数 860文字

「反世界メガネ」

■人物
宮本理生ちゃん(17)高校2年生。
岸田君(17)高校2年生。

■本編
岸田君「宮本さん、ゴメン!」

理生のMO「そう言って、岸田君が私のメガネを取った。それが男子の間での罰ゲームだって事、わかっていたから。私は抵抗しなかった」

理生のMO「世界は腐っている。休み時間は地獄だ。胡散臭い友達トーク。ああ、聴いているだけで耳が腐る……。え? 無視されている私は可哀想? なんですかその独断偏見。逆ですよ。私が世界を無視しているんです、これは拒絶なんですよ」

理生のMO「岸田君が、放課後になって、のこのことメガネを返しにやってきた」

岸田君「あの……宮本、さん、メガネ……」
理生「もういいの?」
岸田君「うん……」
理生「そっ」
岸田君「宮本さん、ごめん……!」
理生「男子のくせに友情ごっこ好きだよね」
岸田君「僕、ゲーム弱いから……」
理生「それ、ハメられてるんだよ」
岸田君「わかってる……でも、僕、みんなと友達でいたいから」
理生「友達ねえ……」
岸田君「実は、まだ罰ゲームあって……」
理生「今度は何?」
岸田君「宮本さんとキスして来いって……」
理生「あのね、岸田君。それはさすがに無理!」
岸田君「でも……話だけでもいいから、合わせてくれない?」
理生「なんで? そこまでする義理はない」
岸田君「だって……そうしないと、僕、生きて行けないから……」
理生「悪いけど。私には関係ない話」
岸田君「お願いします!」
理生「誰かにすがってないと生きてけないなんて、気持ち悪すぎ!」
岸田君「ぼ、僕は……宮本さんみたいに強くないから……」
理生「アンタ、寄生虫みたい……!」
岸田君「ぼ、僕は……」
理生「私とキスしたことにすればいいよ。私は何も言わないし。君は君の偽物の世界で生きて行けばいい」

理生のMO「私は返されたメガネをかけ直し、その場を立ち去った。世界は水色に狂っている。ああ、全くなにもかもが気持ち悪い」
              
     (おしまい)
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