第11話 朝、6時50分

文字数 725文字

「朝、6時50分」                 

■配役
少年:望月君
少女:美島さん

■本編
少年のMO「一瞬が永遠に感じられる時がある。それは朝、6時50分。僕にとって胸高鳴る秘密の時間だ」

少年のMO「毎朝、駅につくと、僕は決まって美島さんの姿を探す。美島さんは違う高校に通っている同じ中学出身の女の子。中学時代、一度も話たことはないし、向こうが僕の事を知っているかも実は怪しいのだけれど、遠くに彼女の姿を見つけると、なんだか一日が動き出す気がするんだ」

少年のMO「美島さんの事が気になりだしたのは、中学2年の時だった。いつも一人で教室の窓辺にたたずんでいた美島さんは、近寄り難くて、でも、何かを秘めていると感じさせるものがあった。地味で日陰の僕は、教室の端っこで机にかじりつくように本を読みながら、彼女の様子をこっそりとうかがっていた。今思うと明らかに怪しいかったし、どうかしていたんだと思う」

少年のMO「そんなことを思い出しいると、駅のホームに現れた美島さんが僕の方を見ていた。視線が合った。思わず僕は視線を外した。それなのに、彼女はこっちに向かって歩いてきた」

少女「あの! もしかして……望月君?」
少年「は、はい!」
少女「やっぱりそうだと思った。久しぶり!」
少年「お、お久しぶりです!」

少年のMO「まさか美島さんが僕の事に気づいてくれるなんて。しかも名前まで憶えていてくれた。たったそれだけのことなのにどうしてこんなに嬉しいんだろう。僕たちはたわいのない会話を交わしながら、まもなくホームにやってくる電車を一緒に待った。一瞬が永遠に感じられる、そんな時の中で」          

    (おしまい)
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