73 みんなの日常
文字数 2,520文字
なぜかそこにレサトとシャムも混ざっているのだが、彼らもクルバトのノートを覗いている。
「ここにハウメア、蛍に続く『ソラ』という逸材が入って来た…。」
「空手、柔道の道場からも数人入っている。まだ未知数だな。」
「ソラが高2というのがミソだ。これから伸びる。」
「聞いたところによると、キックボクシングからも男女1人ずつ1人入っているらしい。」
おおーーー!!!!!
アホな歓声が広がる。
「しかもな、最新情報…。今回は大房の枠を超えて、南斗の方からも来ているらしい…」
ウオオオーーー!!!!!!!
「ヤベー!
男たちが盛り上がるので、レサトが不思議そうに聞く。
「何それ?強いの?」
「いや、男子の憧れ、昴星女子学校がある…。女子一貫校…。」
「…。」
誰もそれ以上話さない。
「分かった、お前らかわいそうだな。」
レサトが憐みの目で言う…。
「昔の憧れだから…。」
ラムダがさみしそうに言った。あの高校近くを通る時、誰もがドキドキしたものだ。
「なに女子高に夢を抱いてるの?」
「うわ!」
リーブラがやって来た。
「女子高なんてスカートにズボンはいて、冬はさらに毛布も巻いて、超テキトウだよー!ウチらなんて大きい毛布持ってきて、こたつまで作っちゃったよ。」
「お前らの女子高と、昴星は全然違う!」
「女子に話し掛けることもできないのに、何言ってるのー。それに私は共学です!」
「うるさい。リーブラ!今ミーティング中だ!」
妄想のミーティングである。
「アーツ2期は3チームに分けるはずだったけれど、なぜか増えて4チームになるらしい。」
「俺らと変わんないじゃん。」
リーブラもノートをのぞき込む。
「…そういえばシャウラがこっちに来たら、誰がアストロアーツにいるの?」
シャウラは大房の食堂の現店長。
「…。」
またしても沈黙が続く。
「整備屋はヴァーゴのじいちゃんが入っているらしいけれど、店の方はウヌクが入ったらしい。」
「ウヌク?」
何者かは知らないが、かなりかったるそうに生きている男である。
「ウヌクはケガしてテコンドー休んでる奴。高校の時店長バイトでカフェ回していたから呼んで来た。俺の友達。」
クルバトはパルクールはしないが、それなりにスポーツはできるので、ウヌクとは一緒にバスケなどもする仲だ。
「……」
みんな思う。
嫌な予感がする。
それは絶対に後でベガスに来たがるタイプだ…。
こっちで軍隊仕込みの格闘術とか習っていると知ったらめっちゃ怒るであろう。大房アストロアーツは、一人入ったら替わりを連れてくるまで抜け出せないという、ホラーな場所になりつつある。
「まあ、今回最も変わったのはな…」
クルバトがノートを見ながらもったいぶる。
「…ラムダ!お前だ!!」
みんながラムダに注目した。
「え?僕?」
思わず自分を指す。
「うん!ラムダは変わった。」
それまで無言だったファクトがVサインを送る。
腹筋1回で呼吸困難になりそうだったのに、すっかり贅肉が取れてほっそりした。そして元々目がくりくりしていたので、くりくりかわいい少年になったのだ。20歳だけれど。
「元のラムダも好きだけれどね…」
ファクトがさみしそうに言うと、リーブラも同意する。
「分かるー!ぷにぷにラムダも好きだったー!」
「僕もそんな自分が好きでした!でも、長生きしたかったらもう少し頑張れって言われて…。というか、ここにいたら勝手に痩せたのだけれど…。疲れすぎて、お腹の空き具合に関係なくご飯食べられなかった…。」
ラムダや一部のメンバーは、毎晩倒れ込むように寝入っていた。
「ビフォアアフター撮っておけばよかったよね…。ベガスに来たら、こんなに自動で痩せられますって。」
「あるよ、写真。」
前向きラムダは、過去の自分も全く卑下していないので自撮りもちゃんとある。
「がんばったなあ!」
3人が訳の分からない友情をかみしめ合っている間に、ジェイたちは話を続けた。
「でもさ、ここまで踏み込んでいいのかは知らないけどさ、結局カウスさんは強いの?弱いの?」
「強いだろ。」
シャムが即答するが遮る。
「違う!前に自分は部下の中で弱い方だって言っていたから。あのカウス同僚の中でどのくらい強いのか…真実を知りたい…。」
「そうなのか?」
シャムが驚く。
「レサト、お前知らないのか?」
「さあ、カーフなら知ってるかもな。」
「なんでお前は知らないの?」
「学校しか通っていない。」
「それはカーフもだろ?」
「あいつは戦場にいたから…」
「……」
全員が停止する。
「あ、戦場っていうか、そういう地域にいたから。対戦状況があったかは知らないし、あの頃は子供だったし。まじめな話だからな。あんまり言うなよ。」
格闘経験豊富に留めておくことにみんな同意した。
後に知ることになるが、カウスより強い奴もいるらしい。
ただ、全く義体を着けていない中では、世界のトップクラスではあるだろうとのこと。つまりサイボーグ化していない中では世界トップクラスなのだ。対戦中は強化スーツは着用するが。
そのままカウスに向かったら、鍛錬した軍人でも一発で骨が砕けるらしい。
絶対に怒らせないようにしようと誓ったアーツ妄想チームであった。
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ここまでお読みいただきありがとうごさいます。
『ZEROミッシングリンクⅠ【1】』ストーリー版はこれで終了になります。
アンドロイドはほとんど出て来ませんでしたが、これから少しづつ登場してきます。ただこのストーリーの中心たちは人間。飛びぬけてものすごいパワーとかは出て来ませんが、今いる私たちとほぼ同じ力量の面々が、日進月歩で等身大の活躍をしていきます。
登場人物が多過ぎて混乱するという方は、この小説のアイコンの登場人物欄をご覧ください。一部キャラのイラストがあります。イメージのご参考に。
この後は『ZEROミッシングリンクⅡ【2】』に続きます。
https://novel.daysneo.com/author/nekorea/
作者ページからお入りください。
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