60 私たちの光
文字数 1,968文字
ミラの道場。
みんながカーフに注目する。
カーフが掌を出すと、手の周りに半径30センチほどの青白い光の輪ができパンとはじけた。
おーーー!!
歓声が起こる。
「電気溜まりをこんな感じで弾けさせられます。」
「すげー。これでファクトのコントロールと合わせれば、気功砲とかできそうだな。」
妄想CDチームは技の名前と妄想バリエーションを考える。
ファクトは思い出す。チコがコマちゃんに使っていたのだ。チコの光はもっとブワーと出て白と紫やピンクっぽかった。
もう一度カーフが同じものを出す。カーフにも同じものがあるのかと目を凝らすが今のところ見えない。
ファクトが何気なく青白い輪に自分で出した白い光を投げると、不思議な動きをして融合し軽く弾けた。
「うわ!」
痛みはないも、思いがけない光の登場にカーフが不意打ちを食らう。
「危ないだろ!」
藤湾の学生が驚く。
「あ、ごめん。きれいだなーと思って。なんとなく。」
「大丈夫だ。そんなに強くないから。」
カーフが宥めだ。
「てか、それは何なんだ?」
高校生が騒ぎ教官や先生たちも、「ほー」と言いながら感心する。
レサトたちとの居残り訓練で、アレンジして使えるようになった技だから周りは初めて見る。電気溜まりが勝手に手から離れてしまうので必死になっているうちに得た技だ。どうせ離れてしまうなら投げればいいという感じだ。
妄想CDチームは言い合う。
「あれって、ヒュージョンだよ!ヤバいよ!」
「真ん中に光があればエッジオン銀河かな?」
「違うよ。周りで光が回ってたから巨大ブラックホール?」
「命名『ギャラクシー・エレクトロニック』だな。」
「長げーよ。」
「はい!」
シグマが挙手する。
「どうぞ。」
「それって敢えて自分で受けたらどうなるんですか?」
カーフが考える。
「考えているイケメンかわいい。」
「マジやめろ。ファイ。」
男どもはげんなりだ。
「…。ビリってくるかな?弱いと電気治療にもなるし…。やけどする場合もあります。」
治療になるんか。
「強さによっては雷並みになりますが、そんなことできる人はまだほぼいません。それに現在この使い道は、回路を破壊したり狂わせることです。レベルが高いと、相手に対しある程度の操作もできます。」
「へー。」
みんな感心する。どのみち絶対電気は受けたくない。
「後は応用ですね。ファクトのように飛ばしたりすることで自分が受けないようにしたり。でも、まだ汎用な力ではないですが、10年20年後の人間はどんどん当たり前に使えるようになりますよ。」
そして思い出したように言う。
「あ、この技を使える唯一のニューロスがSR社のヒューマノイドです。レーザーや磁場のようなもので攻撃などするものは昔からありますが、そうではなく人間と似た作用で作り出すそうです。」
最後に付け加える。
「慣れるとそこまで意識しないので忘れてしまうけれど、霊性と違うのは物理的力が大きいという事。電気になる媒体がないと反応も小さくなります。でもこの力を動力にして動かす義体などもあります。」
その後、できる人間と、できない人間が組んで訓練をする。
「ファクト、先の飛ばすの教えてほしいんだけれど。」
カーフがやって来た。あまり個人で話したことがないのでびっくりする。最初はファクト君というので「ファクトにしてくれ」と言っておいたばかりだ。
「合気道とか、太極拳とかしていると多分入りやすいかも。してたことある?」
「…ないな…。」
「『気』でコントロールするんだよ。」
「『気』?」
本当は勝手に球が飛んで行ってしまっただけであるが、偉そうに答える。
コントロールできないので飛んでいるだけだが説明が分からないので、気でコントロールしたことにしておいた。
先のヒュージョンは電気同士引き合ったのだろうか。だとすると、カーフとは普段出す電気の質が自分と違うのだろう。
「ふーん。おもしろいな。」
合気道など調べてカーフが動画を見入っている。
そこに遅れてレサトが出てきた。
「あ!レサト君!先ヒュージョンが起こったよ!」
「ギャラクシー・エレクトロニックだ!」
「はあ?何言ってんだ。」
みんなうるさい。
「融合した。」
ファクトがピースをする。
「あ?」
「クソばっかしてるからいいところ見逃すんだよ。1日何回してるんだ。」
さぼり過ぎのレサトをジリが責める。
しかし本当に藤湾のこいつらはムカつく。
ファクトが電気溜まりをコントロールしているのを見て、カーフはその場で覚えてしまった。ファクトの説明が下手くそだったので、もう一度してほしいと頼む。すると数回見て、気と電気の流れを覚えてあっという間にコントロールしているのだ。ユラスは元々八徳や五行思想に近い物があるので東洋に繋がるだろうか。
この前まで手から球が5センチ以上離れなかったレサトも、両手から出して使いこなしていた。
「……。」
本当にこいつらは何なんだ。