第1章 第9話
文字数 1,357文字
宴が終わり、店の時計は土曜日になっている。後片付けを終えたクイーンがカウンターの俺の横に座る。
「あーー、つっかれたあ」
と言いながら、iQOSを一本吸い始める。
「お疲れ。でもこんなにこの店が盛り上がったの、初めてじゃないか?」
「そーだな。健太とかオマエとか、友達連れてきてくれっから、最近忙しいったらありゃしねえわ、ったくよ」
は? なんでキレられる?
「何だよ、売上げに貢献してるだろうが」
クイーンはプッと膨れっ面をしながら、
「でもよお、忙しすぎてよお」
彼女がジョッキを一口啜る。
「キングと… ゆっくり話せねーじゃん…」
顔面急速赤面化を感じつつ俺はボソッと、
「それ、な」
思わず俯いてしまった顔を上げると、iQOSの薄い煙越しにやはり顔面赤化したクイーンが照れた顔をしていた。
それにしても、修学旅行。
正直言って、生徒会長だった俺は旅行の立案企画の大変さは何となく覚えているのだが、実際に行った日光のことを殆ど覚えていない。ことが今宵よく分かった。ホント、つくづく旅行が好きでない俺なのである。それ故かどうか分からぬが、クイーンが修学旅行に不参加だったとは思わなかった。
「なんか… 悪いな。俺、全然知らなかったわ、オマエが修学旅行に行けなかったこと…」
何故か彼女は咥えたiQOSをポロリとカウンターの上に落っことす。
「あ、ああ… ま、まあウン十年前のことだしな… 忘れてて当然だわ、な…」
生徒会会長だったのだが、正直あの頃の生徒会に関わる事、特にクイーンに関する事がイマイチ鮮明に思い出せない。あの頃のことで思い出せるのは、健太達や先生のこととバスケ部のことばかりである。
「そーだ。上にさ、卒アルあるから、一緒に見よーぜ」
パッと嬉しそうな顔でクイーンが上を見上げる。
「へ? 今から、か?」
「いーだろ。明日土曜だし、会社ねーんだろ? たまにはゆっくりしてけよ。よし、ちょっと待ってろぉ」
「おいっ、ちょっ……」
ふー。ま、いいか。確かに明日と言うか今日は土曜。仕事も予定も何もない。それに… こうして彼女と二人きりの時間は滅多にないのだし。
しばらくしてクイーンが階段をテケテケ降りてくる。
「へへへっ アタシもこれ見んの、スッゲー久しぶりなんだよなあ」
などと言いながら俺の横に座りアルバムを開く。そう言えば俺のアルバムは何処にあるのだろう。母親に聞かねばその所在もわからない。
「オマエ、3Bだったよな、どれどれ… きゃは、いたいた! ほれっ!」
あはは。ホントだ。俺ガイル…
しかし… 久しぶりに見ると、相当痛いなコイツら… クラスの七割はツッパリだ。剃り上げたリーゼントやパンチパーマ、ニグロもいる。そして太いズボン、ドカン、ボンタン、今の子供が見たら、唖然とするようなファッションセンスである。それに上着は単ラン、長ラン、確か裏地は紫色で金の刺繍を入れている奴が多かったな。ダッサ。
しばし懐かしの旧友を眺め、そういえばクイーンの若かりし頃… あれ…
「あれ、オマエ何組だったっけ?」
一瞬ギョッとし、瞬間悲しそうな顔をした後、作り笑いをしながら
「へへ、ちっと貸してみ。アタシはねえー」
ダメだ。本当に、思い出せない。あの頃のコイツのことを俺は何一つ…
「これなっ うわ… 若けーーだろーーへへ。」
「あーー、つっかれたあ」
と言いながら、iQOSを一本吸い始める。
「お疲れ。でもこんなにこの店が盛り上がったの、初めてじゃないか?」
「そーだな。健太とかオマエとか、友達連れてきてくれっから、最近忙しいったらありゃしねえわ、ったくよ」
は? なんでキレられる?
「何だよ、売上げに貢献してるだろうが」
クイーンはプッと膨れっ面をしながら、
「でもよお、忙しすぎてよお」
彼女がジョッキを一口啜る。
「キングと… ゆっくり話せねーじゃん…」
顔面急速赤面化を感じつつ俺はボソッと、
「それ、な」
思わず俯いてしまった顔を上げると、iQOSの薄い煙越しにやはり顔面赤化したクイーンが照れた顔をしていた。
それにしても、修学旅行。
正直言って、生徒会長だった俺は旅行の立案企画の大変さは何となく覚えているのだが、実際に行った日光のことを殆ど覚えていない。ことが今宵よく分かった。ホント、つくづく旅行が好きでない俺なのである。それ故かどうか分からぬが、クイーンが修学旅行に不参加だったとは思わなかった。
「なんか… 悪いな。俺、全然知らなかったわ、オマエが修学旅行に行けなかったこと…」
何故か彼女は咥えたiQOSをポロリとカウンターの上に落っことす。
「あ、ああ… ま、まあウン十年前のことだしな… 忘れてて当然だわ、な…」
生徒会会長だったのだが、正直あの頃の生徒会に関わる事、特にクイーンに関する事がイマイチ鮮明に思い出せない。あの頃のことで思い出せるのは、健太達や先生のこととバスケ部のことばかりである。
「そーだ。上にさ、卒アルあるから、一緒に見よーぜ」
パッと嬉しそうな顔でクイーンが上を見上げる。
「へ? 今から、か?」
「いーだろ。明日土曜だし、会社ねーんだろ? たまにはゆっくりしてけよ。よし、ちょっと待ってろぉ」
「おいっ、ちょっ……」
ふー。ま、いいか。確かに明日と言うか今日は土曜。仕事も予定も何もない。それに… こうして彼女と二人きりの時間は滅多にないのだし。
しばらくしてクイーンが階段をテケテケ降りてくる。
「へへへっ アタシもこれ見んの、スッゲー久しぶりなんだよなあ」
などと言いながら俺の横に座りアルバムを開く。そう言えば俺のアルバムは何処にあるのだろう。母親に聞かねばその所在もわからない。
「オマエ、3Bだったよな、どれどれ… きゃは、いたいた! ほれっ!」
あはは。ホントだ。俺ガイル…
しかし… 久しぶりに見ると、相当痛いなコイツら… クラスの七割はツッパリだ。剃り上げたリーゼントやパンチパーマ、ニグロもいる。そして太いズボン、ドカン、ボンタン、今の子供が見たら、唖然とするようなファッションセンスである。それに上着は単ラン、長ラン、確か裏地は紫色で金の刺繍を入れている奴が多かったな。ダッサ。
しばし懐かしの旧友を眺め、そういえばクイーンの若かりし頃… あれ…
「あれ、オマエ何組だったっけ?」
一瞬ギョッとし、瞬間悲しそうな顔をした後、作り笑いをしながら
「へへ、ちっと貸してみ。アタシはねえー」
ダメだ。本当に、思い出せない。あの頃のコイツのことを俺は何一つ…
「これなっ うわ… 若けーーだろーーへへ。」