第4章 第11話

文字数 589文字

ゆっくりと彼の胸の動きが止まる
うっすらと目が開き笑みを浮かべた顔

ダメ

アタシがいる
アタシがする

翔、どうやるんだっけ アンタに教わったよね 今思い出すね

まずは 確認 息 してない 脈 ない

健太 えーいーでー 持ってきて!

先生 救急車 呼んで!

両手をこう 彼の胸に当てて もうちょっと上 そう
三十回 数えながら リズミカルに

終わったら 顎を少し上げて 鼻をつまんで
口を覆うように口を当て 息を吹き込む

胸がせり上がっているかな うん 上がった

それを二回 ゆっくりと
それからまた 三十回
それからまた 二回

ゴメンよし子 涙を拭いてくれる?

ありがとう でも大丈夫アタシがやる アタシが助ける
願いが叶ったのだから

この人が叶えてくれたから

一緒になれなくていい
遠くから見てるだけでいい
そう思っていた

でもずっと忘れられなかった
忘れることなんてできなかった

10年、20年、そして30年経っても
一日も忘れた日はなかったよ

だから貴方が目の前に現れた四月
あの頃よりももっと素敵になった貴方に
息が止まったんだよ

夢かと思った
夢なら覚めないでと思った

初めてちゃんと話をした
やっぱり貴方は最高のキングだった

翔と貴方の娘が付き合っていると知り
運命の存在を確信したの

ホント
生きててよかった
生まれてきてよかった

ずっと一緒に
これからずっと一緒にいたいよ

だから貴方を必ず助ける

あ、先生 大丈夫 アタシがやるから

え、救急車来た?
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