第2章 第5話
文字数 999文字
その時、ガラガラと店の扉が開き、
「誰がひいお婆ちゃんなんですかー 先輩!」
翔が救いの女神を仰ぎ見るように、
「あっ 間宮先生! こんばんは!」
俺の怒りと切なさは一瞬で吹き飛び、
「ゆうこちゃん、久しぶり。忙しそうだね」
久しぶりの眩いばかりの笑顔が、
「せんぱいー 会えなくて寂しかったですー」
苦笑いしているクイーンは、
「ゆーこ、テメ… 生でいいか?」
間宮由子が久しぶりにやって来た。
天然美人俳人としてマスコミにもよく出ており、西中の出世頭だ。かつてクイーンの舎弟? 舎妹? であり、西中の『赤蠍』と言えばクイーンの次くらいに名の知られた不良娘であった事は、世間様はあまりご存知ない。
「修学旅行! いいなー 私も参加いいですかねー?」
俺は一瞬、由子と一緒に入る温泉を思い浮かべ、軽く前屈する。
「バーカ。オマエいっこ下じゃんか。ダメダメ」
「えーケチ。金八っつあんかー。懐かしい… お元気でした?」
「元気だったよ、変わらず。あれ、ゆうこちゃん達も教わったんだっけ?」
「いいえ。生活指導の方で、ね」
「ははは。君らの代も荒れてたんだっけか?」
「まあボチボチでしたー。でも私が高校進学しようと思ったのは金子先生のご指導なんですよ」
なんと。俺たちの下の学年の生徒にも、変わらぬ愛情と熱情を与えていたんだな。
「そうなんだ?」
「はい。『お前は自頭が良い。勉強の仕方を学べば大学いけるぞ』って。最初はウザかったんですが、中三の一学期に私たちの代の先生連中を巻き込んで私の勉強会を始めたんです」
それはかなり大掛かりな… 今度先生にお会いしたら、由子のこと聞いてみよう。
「へーーー。そうだったの?」
「そう。そうしたら、それまで何も勉強しなくって学年の半分くらいだったのがー」
翔が驚きの表情で
「えー、半分取れてたんですか… 凄い… そ、それで?」
「中間テストで15位くらい。期末テストで3位だったかなー」
俺と翔は顎が外れんばかりに口を開き、目の前の美魔女に平伏す。
「おい翔、ウチの娘、どうよ…? ちゃんと高校、行けそうか?」
翔は真顔で何事か考えながら、
「…… 僕が、何とか、します…」
「頼むぞ!」
「承知」
「キャー 俺が彼女の勉強を見てやるぅー アオハルですね、ア・オ・ハ・ル!」
由子は嬉しそうに翔の頭を撫でる。無意識のうちに俺も頭を差し出していたらしく、そこにはクイーンの鉄拳が落ちたのは言うまでもなし。
「誰がひいお婆ちゃんなんですかー 先輩!」
翔が救いの女神を仰ぎ見るように、
「あっ 間宮先生! こんばんは!」
俺の怒りと切なさは一瞬で吹き飛び、
「ゆうこちゃん、久しぶり。忙しそうだね」
久しぶりの眩いばかりの笑顔が、
「せんぱいー 会えなくて寂しかったですー」
苦笑いしているクイーンは、
「ゆーこ、テメ… 生でいいか?」
間宮由子が久しぶりにやって来た。
天然美人俳人としてマスコミにもよく出ており、西中の出世頭だ。かつてクイーンの舎弟? 舎妹? であり、西中の『赤蠍』と言えばクイーンの次くらいに名の知られた不良娘であった事は、世間様はあまりご存知ない。
「修学旅行! いいなー 私も参加いいですかねー?」
俺は一瞬、由子と一緒に入る温泉を思い浮かべ、軽く前屈する。
「バーカ。オマエいっこ下じゃんか。ダメダメ」
「えーケチ。金八っつあんかー。懐かしい… お元気でした?」
「元気だったよ、変わらず。あれ、ゆうこちゃん達も教わったんだっけ?」
「いいえ。生活指導の方で、ね」
「ははは。君らの代も荒れてたんだっけか?」
「まあボチボチでしたー。でも私が高校進学しようと思ったのは金子先生のご指導なんですよ」
なんと。俺たちの下の学年の生徒にも、変わらぬ愛情と熱情を与えていたんだな。
「そうなんだ?」
「はい。『お前は自頭が良い。勉強の仕方を学べば大学いけるぞ』って。最初はウザかったんですが、中三の一学期に私たちの代の先生連中を巻き込んで私の勉強会を始めたんです」
それはかなり大掛かりな… 今度先生にお会いしたら、由子のこと聞いてみよう。
「へーーー。そうだったの?」
「そう。そうしたら、それまで何も勉強しなくって学年の半分くらいだったのがー」
翔が驚きの表情で
「えー、半分取れてたんですか… 凄い… そ、それで?」
「中間テストで15位くらい。期末テストで3位だったかなー」
俺と翔は顎が外れんばかりに口を開き、目の前の美魔女に平伏す。
「おい翔、ウチの娘、どうよ…? ちゃんと高校、行けそうか?」
翔は真顔で何事か考えながら、
「…… 僕が、何とか、します…」
「頼むぞ!」
「承知」
「キャー 俺が彼女の勉強を見てやるぅー アオハルですね、ア・オ・ハ・ル!」
由子は嬉しそうに翔の頭を撫でる。無意識のうちに俺も頭を差し出していたらしく、そこにはクイーンの鉄拳が落ちたのは言うまでもなし。