第81話 隘路

文字数 8,087文字

昔、一人の朝臣が拘禁を解かれ軍馬にまたがり勇ましく平安宮から躍り出た。

彼の名は文室綿麻呂(ふんやのわたまろ)
藤原仲成と同じく平城上皇に仕え、文室朝臣姓まで賜り重用された上皇の側近である。

上皇から任を解かれて藤原真夏と共に平安京入りした途端、彼だけが捕縛された。

一日ちかく宮中のどこかの一室に拘禁された後、
「綿麻呂どの、貴方の嫌疑が晴れましたので拘禁を解きます」

と戸越しから聞き覚えのある声がかかり、入口が開け放たれたので急に入って来た朝の眩しい光に綿麻呂は目をしばたかせた。礼儀正しく頭を下げ入って来たのは…

「あなたでしたか」
と同じく平城上皇の寵臣で平城京の離宮で共に同じ主に仕えていた藤原真夏が今ここに居て自分に謝罪している。という事実に綿麻呂は、

ああ、とうとう上皇さまは朝敵になっておしまいになったのだな。と全てを悟った。

平城朝の頃から上皇の側近で癇気の強い主に振り回されて日々堪え忍んできた綿麻呂はこの事態が来ることを上皇のご即位前から予期していた。

真夏の顔を見て疑いが晴れた、という安堵の次に「ただちに帝の御前に」と真夏に促されて武官の正装で嵯峨帝に拝謁した。

「文室綿麻呂、お前を従四位上、参議に叙する。大納言田村麻呂の嘆願によりお前に上皇追討の命を下す。急ぎ東国に赴き、田村麻呂と合流して敵の動きを塞ぐのだ」

は!と武装に身を包んだ綿麻呂は活力漲る声で「謹んでお受けいたします」と一礼してから御前を下がり、外に用意された兵と最上級の青毛(黒毛)の馬を見ると…

やれありがたや、話の解る王を戴いた我はなんと幸せであるか!

とかつて田村麻呂と共に蝦夷討伐の最後まで戦い抜いた猛将は盛んだった頃の血をたぎらせて田村麻呂の元に向かった。

昼御座(ひのおまし)から夜寝所(よのおとど)に向かう途中にある着替えの部屋で真夏から、
上皇が密かに土蜘蛛たちを放たれ、既に宮中に入り込んでいる。
という報告を受けた嵯峨帝は一瞬、

我ながらなんと迂闊な。と眉目を翳らせたが、

これは内裏の構造全体を生かした遁甲でございますぞ。自信をもって策を実行するのみ。

と策を授けてくれた空海の言葉を思い直し威儀を正して真夏に、

「土蜘蛛が結集して内裏を襲うとするなら今夜だろうな」
とお尋ねになられた。
「はい、玉体と神璽(勾玉)を奪いに土蜘蛛は闇に紛れてここに入るでしょう」
と嵯峨帝の着替えの手伝いをしている蓼と背後の二人の少年に交互に目をやりながら、

「道中、この子供たちに救われましたよ」

とこいつ、本当にあの堅物の冬嗣の兄か?

と疑うほど小春日和を思わせる柔らかな顔で頼りなく微笑した。

嵯峨帝は夜着の帯を締めてくれる蓼に向かって、
「それにしても、五人の土蜘蛛を倒した少年二人のうちの一人がお前の息子だとはねえ」

とお笑いになってから真夏の背後で額を床に擦り付けている少年二人に向かって

「面を上げよ」と仰せになり、言われた通りにした少年たちに

「名は?」とお尋ねになられた。

「は、修験者前鬼こと蓼の息子の素軽(すがる)でございます」
と右側の穏やかな顔つきの少年が名乗り、

「我はタツミ様の弟子の素早(そはや)でございます」
と左側の彫りの深い顔立ちの少年が名乗った。どちらも胆の据わったいい面構えをしていた。

「よし、素軽は父と共に朕の警護をし、素早は師の元へ行って指示を仰ぐがよい」

ひと目で二人を気に入った嵯峨帝は今宵が決戦の時、とばかりに内裏に最大限の警戒態勢を敷くように伝えよ、傍らの明鏡に命じた。

「全ては手筈通りにな」と嵯峨帝に命じられた明鏡ははい、とはっきりとした眼で肯いてから落ち着いた足取りで後宮へ戻った。

間もなく陽が落ちて、夜の帳が降り晩秋の宮中の各所に篝火が灯される。

何もかもがいつも通りの、不気味なくらい落ち着いた夜であった。

篝火と篝火の間を巡回の武官が通り抜け、交代の度に名と役職を告げてから定位置に付く。

特別に警戒している風でもないのになにかが潜んでいる気がする。この胸騒ぎは何だ?

土蜘蛛の頭領で傀儡師(くぐつし)のタガミは焦っていた。

彼ら土蜘蛛のおこりは66年前、

聖武帝の皇女、阿部内親王(あべのないしんのう)を立太子させるために阿部の従兄で藤原武知麻呂の息子、藤原仲麻呂が無頼の渡来人たちを集めて結成させた暗殺集団であり、

彼らの最初の犠牲者は聖武帝の皇子でまだ17才の安積親王(あさかしんのう)であった。

皇子を失われた聖武帝は仕方なく阿部を後継とお決めになり、後の女帝考謙と仲麻呂による暗殺と粛清の嵐吹く暗黒の世が始まった。

というのが土蜘蛛たちの代々の言い伝えであり、殺しに見えない殺しの技では彼らの仕事ぶりは芸術、と言ってもいいくらいの完璧さを誇り代々の天皇に仕えてきた。

しかし、弟を殺すために土蜘蛛を使った桓武帝は己を恥じて土蜘蛛を放逐してしまわれた。

桓武帝崩御後に平城帝に時々用いられたが最澄暗殺は和気広世と泰範に阻まれ失敗、

最近の成果といえば投獄されていた伊予親王を自殺に見せかけ暗殺したくらいで、

平城帝の早急な退位によりこの一年、畿内の集落を渡り歩いて見世物の芸で食いつなぐしか生きる手段の無かった彼らにやっと千載一遇の活躍の機会が来たのだ。

今宵、日が開けるまでに闇に紛れて今上帝と妃とお子らのお命と、内裏にある天皇の証、神璽を奪って上皇さまのところに馳せ参じなければならない。

上皇さまの最側近であった仲成どのが処刑された今、彼ら土蜘蛛にとって今夜しか内裏襲撃の機会は無いのだ。

しかし…
と広い内庭を見下ろせる御殿の屋根にしがみついていたタガミは黒い頭巾の下で苦渋の面をした。
集結した45人で夜御殿を襲う計画だったのに、ここに辿り着いた土蜘蛛は我を含めたったの30。

平城京から出立する前に何処かから我々土蜘蛛の情報が漏れてしまった。

仲成さまを警護していた土蜘蛛5人、田村麻呂からの密書を携えている藤原真夏を襲った土蜘蛛5人。

そのうち二人は綿麻呂に斬られ、一人は真夏に斬られ、あと三人の騎乗した土蜘蛛たちは、

突如樹上から降りてきた白装束の二人組にしがみつかれ、
一人は膝で相手の首を挟みながら座禅の姿勢のまま半回転する。

という奇妙な技で首の骨を折られて馬上で命を落とし、もう一人は蝦夷の戦士が用いる蕨手刀で背後から心の臓を突き刺されて即死した。

「あの…凄まじき体術…我々の敵はやはり修験、者」
と、わざと綿麻呂に急所を外され腹を刺された手下が這う這うの体でタガミに報告すると間もなくこと切れた。

彼の実の兄、タブセが出立前の夜に姿を消した。

タブセの情報収集能力は一流で土蜘蛛の長老格で冷徹無比なことこの上ない兄者だったが、

唯一の欠点は女が大好きで饅頭売りで稼いだ金で毎晩のように色を買っていた。

天河の踊り巫女たちは別嬪揃い、と朝帰りして笑っていた兄者が深夜、突如と消えた。恐らく正体を知られ、相手の女に殺されたのだろう。

「お前らに聞く、夜に女買いをした者はこれから目を固く瞑ること。
…解った、ほぼ全員か。もしや我々土蜘蛛の正体を喋ったりはしていないな?」

とタガミが念のため険しい目で集まった手下たちを見下ろすと、

「酒食らってから女を抱いただけでそれ以外のことはしちゃいませんぜ」

「そうだそうだ、事の後で寝入っちまうくらい天河の踊り巫女たちはいい女だったぜ!」

と部下たちから抑えめの哄笑が上がった。

天河、
という単語を聞いてタガミは我とあろうものが何たる失態!
天河の地は元々修験道の開祖、役行者が
開いた修行道場だったではないか。

間違いない、天河の巫女たちの正体は葛城山に結界を張る修験者たちだ。

特に一族の頭で畿内一の鉱山師(やまし)、賀茂のタツミを敵に回してしまったとしたら?

これは急がねば。

「天河の巫女たちの正体はおそらく女修験者だ。何人かで女たちの(あげはり)の様子を見に行って抵抗されたら殺せ」

と4人の手下を巫女たちの住む幄に行かせたが、帰ってこなかったのは手下たちの方だった。

焦れたタガミが手下5人連れで向かうと幄も柱も跡形も無く、残ったのは青黒い顔で倒れている手下たちの骸だけ。骸の頭の骨がへこんでいたので手下たちは忍び入った途端…柱を抜いた女たちに厚くて重い布ごと押し潰され、窒息死させられたと思われる。頭のへこみは崩れた柱によるものだろう。

まさに神出鬼没。タガミは脇の下に本気で冷たい汗をかいた。なんてことだ、これで土蜘蛛が5人消されてしまったではないか!

「あと40人、俺たち全員ただちに平安京へ行くぞ!」

タガミたちが芸人に化けて平安京に入った時には土蜘蛛はさらに10人殺されていた事実を見張りの武官同士のお喋りを盗み聞いて知った。

残りの30人で事を成し遂げねばなるまい…
この計画には、上皇さま直々に命じられたいくつかの制限がある。

上皇さまのお子で皇太子、高岳親王を無事救い出すこと。高岳の母で寵姫の伊勢継子と正妻の朝原内親王だけは殺すな。

天皇を弑して、ご妻子を殺して、神璽を奪って戻ってこいだなんて全て実行するのは無理だ…
とタガミは黒頭巾ごしに頭を掻いて嘆息した。こうなれば一番成功しやすいご命令から実行するか。

「3人は東宮に入って春宮さまと伊勢継子さまをお救い申し上げよ。12人は後宮に入って特に子供と身籠った女を殺せ。俺たち15人は帝の玉体を狙う。生きていたらここで落ち合おう、では」

とタガミの素早い判断による命で黒装束に身を包んで宵闇に紛れた土蜘蛛たちは各々割り当てられた場所へ向かった。

後宮の橘の夫人の部屋には二つの燭台が灯っていて、その間で囲碁に興じる二人の貴人は橘逸勢と伴雄堅魚(とものおかつお)

「征夷大将軍どのが東国の関を固めたら何人たりとも突破は不可能だろうねえ…まずは伊勢」

と雄堅魚が呟き、逸勢が白石で東国と見立てた雄堅魚の陣を破ろうとするも真ん前に黒い碁石を置かれて防がれた。

逸勢が次の一手で左上方に逃げようと石を置くと、「つぎは近江」と薄情な相手はそこも防いでしまった。

そして伊勢の関に見立てた碁石の後方に「そして最後は…美濃」

と堅守の石を置かれて逸勢はもう何処へ白石を置いても、敗けだ。
と悟って「参った」と言って降参した。

そもそも碁とは、
古代の大陸の軍師見習いが囲碁の盤を戦場に見立て、相手と軍略の知識を学ぶために用いられた戦略の遊びである。

「俺が上皇さまだったら東国ではなく西国に行って畿内の豪族に助力願うんだけどなあ」

「落ち延びた元天皇なんて、余程の人望が無い限り豪族たちに殺されて終わりだ」

帝位簒奪の策をあっさり逸勢に却下され、雄堅魚は部屋の隅で震えている豊かな黒髪の貴婦人に向かって、
「ご安心下さい(きつ)の夫人さま、私たちが賊から守って差し上げますよ」
と声をかけると、

今だ!

という合図で天井板を踏み抜いて一人、柱の陰から四人の黒装束の刺客たちが逸勢と雄堅魚、夫人を取り囲み、

「橘の夫人、お腹のお子と共にこの世から消えていただく」と、天井から降りた刺客が告げて短刀で一斉に斬りかかった。

平城上皇の一番の危惧は橘の夫人こと橘の嘉智子が将来皇子を生むこと。

弟神野がこの世で最も寵愛する夫人が生んだ皇子ならば神野は必ず次代の天皇にするだろう。

そうなれば高岳はどうなる?

生まれてくる前にその芽を摘むが得策。と上皇の一番の密命、

橘の夫人を腹の子ごと殺すこと。

を最優先に後宮に忍び入った土蜘蛛たちは後宮にいる橘の夫人、と呼ばれた貴婦人こそ標的だと思って反撃覚悟で襲いかかった。

次の瞬間、飛び上がる勢いで夫人が立ち上がると両手の短刀で同時に刺客二人の喉をかき切ってしまった。

か弱き貴婦人にあるまじき行いに一瞬刺客は戸惑ったがすぐに夫人が替え玉である事が解った。

嘉智子自身の髪の毛を集めて拵えたかもじ(かつら)がずるり、と滑り落ちて現れたのはほの暗い室内で輝く白銀の髪。

「馬鹿ね、囮にまんまと騙されて分隊全てで攻めてくるとは笑止」

「そ、その髪と目は…お前は(しろがね)のトウメ!」

と刺客が言い切らない内にトウメは右脚からたん!と踏み出してくるくると舞うような俊敏な動きで刺客の喉元を掻き切り、旋回のたびに一人ずつ斬り伏せて行った。

それは、以前空海から聞かされた天竺の血と殺戮を好む女神、迦哩(カーリー)の舞い狂う姿と重なった。

「土蜘蛛これで25人。殿方たち、芝居ご苦労さま。ではごきげんよう」

と血に濡れた美しい顔で艶然と笑いながらトウメはとっくに避難している嵯峨帝の妻子たちを守るために後宮から辞した。

「美しい女は恐さを秘めているものなのだな…」

と土蜘蛛たちの骸の中で二人の貴人たちは一種の陶酔状態になってしばらくその場に立ち尽くした。

実は、後宮にいる女子供たちは全て武官の家族にすり変わった替え玉であり、本当の嵯峨帝の妻子は何処に避難していたかというと…

「ご安心下さい、この建物の作りは内側の声が外に漏れぬよう戸を幾重にも重ねた作りでございます」

と主に嵯峨帝の15人の子供たちとその母、さらに身籠った宮女たちを守るために取り囲んでいる内供奉十禅師たちの先頭で最澄は人の背丈程もある棍棒を握りしめた。

彼の両脇には護衛のために最澄の弟子になった元武官の僧侶が二人。
かつての蝦夷での激戦を思い出したのか、出家の身でありながらぎらついた眼をして入口を見つめている。

ぎゃああ、とかうわぁぁ、とか獣の咆哮のような叫び声と足音。

…来る!

と弟子二人は棍棒を持ったまま震える最澄はじめとする十禅師たちを背中で庇い、このような非常事態では仏教の教えである不殺の戒めを破って破門されてもやむ無し。

と覚悟を決めて棍棒を構えた時、
どおーん!!とまるで熊がぶち当たってくるような衝撃が何度かし、道場の戸はいとも簡単に破られ、黒装束の大男が突入して来た。

「こんなところにいやがったのか…」
と大男ははあはあと肩で息を付く。後宮に標的はいないと知り随分探し回ったのだろう。

幅の広い鉈を背中から抜いた男は「俺に力で敵うものはいねえ、まとめて死ね!」と鉈を振り上げ、

今より仏を捨てるぞ。と覚悟を決めた僧侶二人が前に出ようとした時、
二人の背後からひゅるるる、と円盤が音を立てて飛び、刺客の大男の額に命中した。
額の骨が割れて、どくどく流れる血が視界を塞ぐ。男の足元に落ちたのは大人の頭ほどの大きさの銅鏡。

朝原内親王が機転を利かせて持っていたご神鏡を投げつけたのだ。

「上皇妃さま、いくら何でもそれは!」
と年老いた命婦が卒倒しそうな声で朝原を叱り付けるが、
「どうせ複製なんだからいいのよ」
としれっとして朝原は言い放った。

目が…目があ!と刺客がよろめく隙を突いて最澄と弟子たちは棍棒で男の首の後ろを何度も叩いてやっと気絶させた。
が、あと6、7人の刺客たちが頭を低く屈めて道場に飛び込んでくる。

「僧侶たちに戒を破る汚れ仕事はさせません」

三善高子の言葉を合図に若い娘から老女まで命婦全てがずらりと懐から剣を抜き、刺客に立ち向かった。

特に高子は夫の田村麻呂から預かった黒光りのする直刀を両手で振り回して先鋒の刺客の頭部を垂直にかち割った。

この時代の命婦のほとんどは武官の妻か娘から選抜され、このような事態に備えて武術に長けた女たちが皇族の御身を守るために宮中の内に仕えていたのだ。

いくら手練れの土蜘蛛でも一人が女5,6人に一斉に押し包まれたら誰を相手にしたらよいか迷い、隙が出来る。今だ!とばかりに女たちはずぶ、ずぶ!と同時に刺客の腹部を刺した。
こうして高子が三人、他の命婦たちがあと三人、内侍藤原和子が一人刺客を殺して内道場を襲った部隊は全滅したかに見えた。が…

本当の敵は女たちの集団の中にいたのだ。

守られている女人たちの一番中央にいる腹の膨らんだ女が橘の嘉智子に違いない。
おのれ…
懐から取り出した家宝の刀で侍女の一人が大きなお腹を抱えてうずくまる嘉智子めがけて走り寄り、彼女の正面に立つと、
「橘の夫人、覚悟!」
と叫んで剣を振り下ろそうとした刹那、嘉智子が立ち上がって素早く両手を前に出し、侍女のこめかみの両側に激痛が走った。

「紀道子、ではなく藤原継子。おまえが薬子の娘だってこととっくに解ってたんだからね」

いつの間にか嘉智子とすり変わった明鏡が常に髪に仕込んでいる峨嵋刺(がびしん)を継子のこめかみに突き刺したのだ。

しまった一生の不覚…と薄れゆく意識のなかで藤原継子は刀を取り落とし、

これで私に名前をくれた祖父種継の、母薬子の夢だった式家再興の望みは潰えた。

でもいいの。生きていても甲斐の無い人生だったもの…明鏡が峨嵋刺を抜き、こめかみから血を吹き出して藤原継子は息絶えた。

式家再興。という夢の形をした解けない呪いから解放された娘の死に顔は薄く微笑んでいるようであった。

生家の呪いに縛られて人生を狂わされた継子は私と同じだ。と明鏡は自ら手を掛けた娘に深い哀れみを抱いた。

「お子さまに見せぬよう骸に布を」とつとめて冷厳な口調で侍女たちに指示する彼女の睫毛に光るものがあった。

残りあと15人の土蜘蛛は頭領のタガミを先頭に夜御殿の前庭で背中から刀を抜き、

「せめて神璽さえ奪えば上皇さまのお役に立てる。皆、行くぞ」

と真夜中の闇に紛れて奇襲攻撃をかける命令を下して嵯峨帝が御寝なさる建物に向けて走り出してすぐである。

突然前方でぽん、ぽん!と大きな篝火が点火し、良岑安世率いる射的部隊が一斉に矢を放ってきた。

「今なら何処を狙っても当たるぞ、矢が切れたら後列と交替!」
と指示を出す安世自身も一篇に二本の矢を弓に掛けて弦を引き絞り、放った矢で同時に二人の刺客の額を貫いた。

闇の中地を這うように生きてきた土蜘蛛たちは急に(まばゆ)い光に照らされ、焦燥で己が心を無くした。

ある者は逃げ出そうとして背後から十数本の矢で射られ、またある者は決死の覚悟で飛び上がって安世に斬りつけようとした、が後宮から追ってきた白装束の修験者たちに斬られ、一人また一人と土蜘蛛たちが減らされてゆく。
最後に頭領のタガミだけが生き残り、両太腿を弓で射られてその場で膝からくず折れた。

その彼の真ん前に立ちはだかる背の高い男を見上げて、

「やはりあんただったか…」

と修験者の頭領、賀茂のタツミの精悍な顔を見上げて血と脂汗にまみれた顔で笑った。

タツミは静かな目でタガミを見下ろしている。
「もう土蜘蛛は終わりだ…やれ」

と体から流れ出る血で意識を失いそうになりながらもタガミは己が首をもたげてタツミに差し出した。

短刀を腰から抜いたタツミは刃を高く掲げ、

「闇からや闇へ地を這いずるように生きて弱きものの血を啜ってきた虫よ、歴史から消えろ」

と告げてから刀身をタガミの眉間に深くめりこませた。

タガミの骸から引き抜いた刀を拭ったタツミは指笛を吹いて宮中にいた配下の修験者たちを全て集めてから夜御殿の中にいらっしゃる嵯峨帝に片足でひざまずき、目を伏せてから

「事は全て終わりましてごさいます」

と深く通る声で告げた。やがて内側から戸が開き、三守を従えた嵯峨帝が夜着の上に袍を羽織ったお姿のままで現れ、

「面を上げよ。お前たちはよくやってくれた、この夜のことは朕は生涯忘れぬ、感謝する」

と命の危機から自分を守ってくれた名も無き山の民に最大限の感謝の意をお表しになった。

民が見ることを許されぬ天皇のご尊顔を拝した修験者の女たちは、
「天皇は人間でないっていうからどんな変なお顔をなさっているかと思いきや、いい男だねえ…」とうっとりとした顔で囁き合った。

「天皇のしきたり通りに神璽と共に寝所に居なければならないこの身。不甲斐ない朕をよく守ってくれた。望む通りの褒美を与える」

とお告げになってから後の事は三守に任せてご自分は再び神璽を守るためにご寝所へお入りになられ、甥で皇太子の高岳と新しく内道場の稚子に任じた空海の弟、真雅が共に身を寄せ合い眠っている様を微笑ましく御覧になられた。

高岳親王と真雅。

この11才と9才の二人の童子は長じて空海の弟子となり、この国土に蒔かれたばかりの真言密教の種子を苗木にまで育てるかけがえのない存在となる。

こうしてこの夜、暗殺者集団土蜘蛛はこの世から消えた。

しかしいくつかの史書には、

正体の解らない何かの反抗勢力。

として土蜘蛛はその名前だけを歴史に残している。













































































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登場人物紹介

空海、本名は佐伯真魚。香川県善通寺市出身の裕福な豪族のせがれ。学業優秀で長岡京の大学寮に入るが、そこで遭った悲劇が彼を仏門に向かわせる。

嵯峨天皇(神野親王)桓武天皇の第二皇子。

問題だらけの平安京に真の平安をもたらす名君。空海とは生涯の友になる。欠点、浮気性でパリピ。

橘嘉智子

嵯峨天皇に最も愛され、橘氏出身の唯一の皇后となる。仏教への傾倒は人生から逃げる術。

私は和気清麻呂。「これから起こる悪い事全部怨霊のせいにしちゃいましょう」と御霊信仰の悪知恵吹き込みました。

本音?桓武帝が起こした人災だろーが。

藤原薬子です。後に悪女呼ばわりされる私も言い分いっぱいあるんですのよー

嘉智子さまお付きの女童、明鏡です。薬子登場でなんだか不穏な予感…

空海に山岳修行教えた勤操ですぅ〜。時々奈良仏教の中間管理職としてぼやきます。桓武帝と戒明じいさんとの因縁ってなんやろな?


役行者六代子孫にして作中最もヤバいおっさんタツミ登場。わし空海のエグい修行生活のはじまりです。

新キャラ藤原葛野麻呂、空海を唐に連れて行く貴族です。私の顔は東寺の帝釈天像がモデルです。イケメンですよー。

兄貴、自分の息子の誕生祝いで不倫ばれてんじゃねーよ…って親父に対して正論で返してるし!義理の叔父、田村麻呂初登場。

by嵯峨帝

ふっふっふ。俺様は修験者の頭タツミ。真魚よ、よくぞ試練を乗り越えたな…っていつまでも妻の手握ってんじゃねえ!

若き日の坂上田村麻呂も絡む平安ミステリー、藤原種継暗殺事件の真相です。


最新話まで話を読んできた登場人物全員の心の声


「そりゃ祟られるわ!!」

実在した前の遣唐使僧、戒明です。史実上の真魚との接点は不明です。唐から偽経を持ち帰ったとして失脚してた私の名誉回復をしてくれたのは空海だから最初に出会った師として登場。

荒行の末に悟ったもの。仏性、すなわち人の心なり。善行も悪行もそれを行う人の心次第。

やっぱりわたくし、親王さまを好きになっていたのね。(浮気者だけれど)

多治比高子です。嵯峨帝側室として寵愛された理由はインテリだった設定。

あれ?「あの四重奏ドラマ」のエンディングシーンみたいなことしてない?

三行指帰現代語訳コント風、はじまりまじまり〜

何これ⁉︎空海の書いた話おもしれーじゃん!と吠えて宮女に叱られる神野。三教指帰は日本初の小説と呼ばれる。

空海、実家に帰る。真魚が一番可愛いお母さん。激烈お兄ちゃん、実家あるあるな心配するお父さん。

空海の実家をそのまま父親の名前にしたのはオヤジ、ありがとう…グスッ(泣)の気持ちやったんや。

後の法相宗のトップにして東日本に仏教を伝える男、徳一の本心。

高雄山寺プロレス回。奈良仏教の裏番長、実忠しれっと初登場。

やっと最澄登場。美坊主泰範のせいで既に不穏な比叡山寺。

ある意味最強キャラ、朝原内親王登場。

飛べない小鳥、から明鏡の出生の秘密編へ。

尚侍明信の罪は亡国の姫、明信の若き日の過ち。

「陽の下の露」冬嗣の長男、藤原長良誕生。ちなみに薬子と葛野麻呂の不倫関係は史実です。

「風が吹く」遣唐使に選ばれなかった空海に起こったありえへん奇跡。それにしても徳一口悪ぃな。

桓武帝が仏教勢力を叩いた理由は脱税摘発のため。しかし宗教法人を使った脱税って1200年経った今でもやってますなあ。

「受戒」どーもどーも、三論宗のアイドルにして空海の頭を剃った勤操ですぅー…ってじいさんどないしたー⁉︎

最初の師戒明との別れ。わし、行ってきます。

「船乗り星」朝廷も一目置く宗像氏の濃いマダム登場。

どうもー、空海を唐に送り最澄を唐から連れ帰ってながらも後世にほとんど知られていない葛野麻呂。ここでは準主役です。

徳政論争回。現実的にこれ以上の東国進出は無理だった。徳川家康の次に鷹狩り好きな歴史上の人物として有名な桓武天皇の最後の鷹狩り。

仙境天台山、思えばこのひと時が最澄の一番の幸福だったかもしれない。

「崩御と即位」皇帝陛下の崩御と新皇帝の即位に立ち会っちゃった俺って持ってる〜。からの、カネが無いから2年で逃げ帰れ命令。

「聖俗同船」帰国できなかった遣唐使もいるんですよ…葛野麻呂の最澄へのツンデレっぷりをお楽しみ下さい。

「密の罠」帰国した途端最澄に降り掛かる悪意。

平安京を開いた帝の最期。これから不穏な平城朝が始まるー

秀才、橘逸勢にトリプルの悲劇。留学生たちの寂しさを癒す楽の音。

恵果と戒明との邂逅から三十年。やっと後継者に出会えた恵果。

まるで唐密教の滅びを予測していたかのような恵果の発言。実際にそうなります。

「遍照金剛」かくして遍照金剛空海誕生。で、何で俺様がナレーション?

「柳枝の別れ」長安出立前夜に明かされる霊仙の正体。次回から日ノ本、平城朝編。

「平城朝」最後の薬子の表情は読者さんのご想像にお任せします。

「春宮神野」

宮中も 女子回なければ やってらんない

by明鏡 字余り

「天皇の侍医」官僚として、医師として苦労する弘世の人生が始まる。

「謀」とうとう粛清に向けて動きだした薬子。朝原内親王、神野に迫る毒殺の危機。

「比叡山夜話」最澄に迫る危機。平城帝の悪意。

「翡翠の数珠」空海のせいでまた逸勢がヒドい目に遭うお話。

「阿保の本音」父平城帝への不信感が募る阿保親王。後に彼と妻の伊都内親王から生まれたのが在原業平。

前半の薬子の兄、仲成が起こした暴行事件。これ史実です。後半の勤操の述懐は創作ですが。

「咎人空海」空海、やっと帰国。あの三姉妹再び登場。

「海辺のふたり」空海だけを都に帰さなかった藤原縄主の思惑とは。この時代、芋粥は極上スイーツ扱いでした。

「白雪」兄帝の危険性を思い出す神野。

「神泉苑行幸」策謀に満ちた宮中。筑紫で布教を始める空海に届いた悲報…

「藤原家の毒薬」いつの世も女の仕返しって陰湿なのよねえ。

「譲位」嵯峨天皇が即位した夜に明かされる伊予親王の死の真相。冬嗣の胸に去来するのは怒りか、諦めか。

「実ちて帰る」主人公2人がやっと初対面。次回から第3章「薬子」のはじまり。

わたくし藤原薬子が主役の章、「薬子」、開始ですわよ。空海阿闍梨、神野の坊やとの初謁見でいきなりド不敬発言。

「橘の系譜」女性天皇が女性の部下に姓を与えた女性が始祖の橘家。

明鏡、家族と再会し、そして母になる。

「背徳」性描写あり。そして、薬子は悪女になった。

「真言の灯」最澄さまの千利休感と人手不足の密教。ある事で滅多になくブチ切れる空海。

「宮女明鏡」嵯峨後宮ベビーラッシュ。身籠った明鏡がこれまでの人生を振り返る。

「阿修羅」、怒らせるとシャレにならないレベルで怖い空海のダークサイド。

「東国の勇者」アテルイ回前編。13000vs500で朝廷軍にに勝利した巢伏の戦いと田村麻呂との対話。

「王の器」アテルイと田村麻呂の物語、後編。胆沢制圧戦後のアテルイ、田村麻呂、桓武帝。

真の王の器は誰にある?

どぅもー、宮中のイケオジ葛野麻呂です。「負の遺産」、宮女同士のマウントバトルが怖ぇわ…

「征夷大将軍殿の憂鬱」田村麻呂、愛妻とのフルムーン旅→ヒリヒリするような駆け引き。

「小鳥立つ」明鏡、13年ぶりに父との対面で思い切った決断を告げる。そして運命の子は誕生した。

「火の継承」

この時代の年明けのお祭り、修二会。ググった結果検索トップがさだまさしの「修二会」だったので公式の自分がまさしに敗けて悔しい実忠。

「智泉の祈り」

嘉智子さまへのマタハラ案件、「皇子を産め」とのたまう橘家の兄君たちにブチギレる空海阿闍梨。

「豪奢なる遁甲」嵯峨天皇vs平城上皇最後の争いが万葉サーカスの歓声の中始まる。


この回から三人目の主人公、ソハヤ登場。

「私刑」

池波か!とツッコミ上等な回。法具を本来の目的(明王の武器)で使う空海。

「なるほど、これがお役所仕事か」by嵯峨天皇

「隘路」、暗殺者集団土蜘蛛vsタツミ率いる修験者たち。薬子の変クライマックス前編。

「火宅」一万字越えの大作です。嵯峨天皇vs平城上皇最後の戦い後編。


藤原薬子と語らう老婆の正体は…

「徒花散る」失脚がそのまま死に繋がる全然平安で無かった平安初期の、最後の政変。


勝ってもあまり嬉しくない戦いでしたね…


by田村麻呂

第3章「薬子」終わり。後ろ暗い取引をしてもカッコいい俺様であーる。


by修験者タツミ

第54代仁明天皇こと正良誕生でおめでたい事からはじまる弘仁元年。

「弘仁おじさん」と呼ばないで。

by藤原冬嗣

明けましておめでとうございます。嵯峨天皇の叔母にして宮中屈指の美魔女、酒人内親王です。ここぞとばかりに気合い入った命婦たちのファッションと空海vs朝原の新春disり合い回で御座います…

若い頃の実忠さまはやさぐれていたなあ。

この世でやるべきこともやったし…じゃあね!

by和気広世

嵯峨天皇の兄、良岑安世の恋人の真名井でございます。「九条にて」はさあ、これから庶民と渡来人たちが活躍する平安アンダーグラウンドな物語の幕開け。

空海in伊勢神宮。朝原内親王より託されたとんでもない密命。

エミシ最後の戦士、ソハヤの人生のはじまり。

前半、終了。

険しい高野の山道を抜けるとそこは…異文化レベルの集落だった。

「丹生一族」パツキン彫金師、ムラートです。今回は丹生一族と秦一族と高野山のお話。



奈良の大仏建立時の人に言えない過去。老いた僧ほど暗い秘密を抱えているものなのですよ。

by実忠

「集光」実は、この話で作者は話を終わらせるつもりだったのですが、取材で高野参りをし、そこの宿坊でご住職の説法を聞いた時に「物語のラストシーン」が頭に浮かびあと50話位書く事に。

「田口三千媛」今では虐待と言われる育てられ方をされたと思います。訳を聞かされて納得しても、無理に許さなくてもいいのよ。

「弘仁格式」100年ぶりの法改正にとりかかる嵯峨帝。謎の美僧、泰範の師に対する本音。

平城上皇が会いたかった東大寺の重鎮、実忠の昔語り。前編。光明皇后に仕えた日々。

「光の時代、後」実忠の過去の話。

後半は道鏡事件の真相。

遊女真名井の人生の転機。家族との再会と共に恋人との別れを覚悟する。

「軛」

丹生のシリン姫の花占い。「来る、来ない。来る、来ない…来たあー!」

「灌頂」

死んで生まれ変わりたい気持ちで空海に会いに行った泰範。

最澄はんの「泰範、行かないでくれ」

の熱烈な文が歴史的資料として残っておます。

by空海


ぐすっ、ぐすっ…生きながら生まれ変わる事って出来るんやな…


by泰範

「信源氏」日本史最初の源氏、源信です。あのね、四さいの時にお家(宮中)から出されて明鏡お母様と離されてしまったの。


信源氏物語のはじまりはじまり〜。

高野の麓、天野の里に帰ってきたムラートです。妹の結婚式がゾロアスター教通りの儀式だと⁉️


天野わっしょい物語をお楽しみに。

嵯峨帝と正妻高津内親王との離婚の真相に迫る「高津退場」後宮サスペンス回。

橘嘉智子、立后のお話。

「わたくし、覚悟を決めました」

「常の白珠」

延暦十五年四月(796年5月)、日の本初の公然セクハラ&パワハラの記録でございます。

by明信

あの時は恥ずかしい思いさせてごめんよ…まだ怒ってる?

ねえ明信、こっち向いて(焦)

by桓武帝

お二人とも、犬も喰わない痴話喧嘩を板上でやらないで下さいまし。

by葛野麻呂

「わし、とうとう最澄はんと絶交する覚悟決めました」

空海を本気でブチギレさせた最澄の言動。


そして、高野山開基に向けて動き始める弟子たち。

「高野」

私ムラート、生まれも育ちも高野山でございます。このお山の自然の洗礼に遭う実叡と泰範。

高野を舐めちゃあいけねえよ。


なぜか寅さん口調。

「時鳥」

小野篁初登場回。そして、現世での役目を果たした巫女との別れ。

「落花宴」

民を食わせるために働いた藤原、葛野麻呂の最期。日ノ本初の茶事と花見の宴の記録。



「拠り処」

天皇皇后だってもふもふふくふくで癒されたい。徳一、東国に進出宣言。

「橘秀才」

「弘法も筆の誤り、って肝心な時に大ポカをやらかすって事なんだね」

古今随一の芸術家となった逸勢、空海にツッコミを入れる。

「シリン都に行く」

はーい、私は高野山の麓天野の里に住む主婦シリン。夫に下された辞令で子供たち連れて平安京へお引越しですって⁉️ドギマギしちゃう!

…って魔法少女みたいなあらすじ紹介でいいのかしら?

「篁」

ちーっす、小野篁でーす。僕の風評「なんだかすげえ奴」みたいに言われてるけど、嵯峨帝に出会った頃は脳筋の野生児でしたよ。

「一隅を照らす」

最澄、最期のことば。戒壇認可を遅らせた嵯峨帝の真意。


そして、たそがれ空海。



「進士篁」

ちーっす!篁っす!それでは一句。


竹の子(篁)が ドラゴン桜(三教指帰)で サクラサク


物語の主人公空海阿闍梨から僕に交代っす!

白秋の章、「嵯峨野」のはじまり。淳和帝即位。遡って嵯峨帝による黄櫨染御袍プロデュース秘話。

「正子と正良」

嵯峨上皇と嘉智子お母様の息子、正良(後の仁明帝)です。十四で結婚したお嫁さんが可愛過ぎてキュートなハートにズキンドキン!です。

「祈雨(きう)」

元服した源信信です。空海阿闍梨による伝説の雨降らしの祈祷の裏に蠢く大人たちの陰謀に、

うわあああ…

皆さんお久しぶり。田村麻呂です。平安初期の貴族たちは麻呂麻呂っなくて武士武士ってたんですよ。


ごきげんよう、小野篁です。

(官吏になったのでパシリ口調はやめました)

今回は私のルーツとソハヤ、シルベに隠された秘密が明かされる回です。

「在るがまま」

平城上皇の第三王子、高岳親王です。今回は父の最期の想いと私の出家の物語。


◯ウケンシルバーのモデルになった私の人生の出発でしたねえ。

「哀しい哉」

このエピソード書くために作者、高野山にお参りに行き智泉の御廟(お墓)に手を合わせました。

「天長二年の旅立ち」

久しぶりの金髪仏師ムラートです。東寺の立体曼荼羅完成秘話。あの時の空海さんは某劇作家か!って位ダメ出しして来て参りましたよ…


そしてラスト主要人物、在原業平初登場。

「夫人たちの夏」嵯峨帝の側室、藤原緒夏です。後宮で生きる憂鬱と高子さまとの友情の回。


「頭の冬嗣」

今年の◯河はやり過ぎちまった私の愚孫どものいざこざですが一人ちゃんと遺言を守った奴がいたようです。

「心の中の明王」

篁と徳一の出会い。東国にて。

空海と最澄を支援した破天荒僧侶、勤操の最期。さよならだけが人生や。

喫茶去(きっさこ)は禅語で「ま、茶でも一服」の意味。人生最後の対面を惜しむ主人公二人。

「光明」全ての務めを終えた空海の眠り。次回から次世代編へ。

「流人篁」百人一首で有名な「わたの原」から始まる篁の反骨最骨頂行動と流人生活。


ちゃっかり現地妻作ってました。

「落日」

葛野麻呂の息子で遣唐大使、藤原常嗣サイドの最後の遣唐使節の行程。


支援者の張宝高は新羅の海将で外交官で大商人。

この回のゲストは唐代の大文人。

「円仁の旅・使命」

どうも、遣唐使団からバックれた不法滞在僧侶の円仁(最澄の弟子)です。私の9年以上に及ぶ旅はいきなりホラーな展開から始まります。

実質、最後の遣唐使である円仁の旅の後編。空海より託された三つの遺言は果たしたものの武宗による仏教弾圧を受ける苦難の復路。オカルトな場面あり。

「胡蝶」

「胡蝶の夢」になぞらえた常嗣の帰国後の辛い立場と責任を感じる篁。二人とも苦しんだんだ。

「観月」

嵯峨上皇が家族たちにそして遥か未来の子孫に向けて述べた言葉。

人生最後の観月の宴。



「草木のままに」

我が夫、嵯峨天皇の最期。お休みなさい、あなた…


あと10話で完結です。

最終章「檀林」、それはカリスマ嵯峨天皇が去るのを待っていたかのように始まった粛正の嵐。

承和の変。三筆最後の一人逸勢の退場。

「繭」政変で息子、仁明帝の行いと本心を知った皇太后嘉智子の絶望。

「反骨の種子」政変の真相を知った篁の決意と、蹂躙される政変の敗者の家族たち。

昔男、と呼ばれたチャラいクズ。在原業平の奔放な恋の本心は…な回。

「椙山にて」この日、エミシの武人親子三代の真相が知らされ祖父の願いがシルベに託された。

「橋を架ける」

言葉を大事にして秩序を保つのも、言葉をぞんざいにしてこの世を地獄同然にするのも全て、人間の行いなのだと思います。


この国の教えの百年先を見越して禅僧を呼び寄せた国母、橘嘉智子。

「参議篁」

私の少年期から始まる篁四部作これにておしまい。良房の企みなんて知ったことかよ。

「襲撃」

日本初の警察機構である検非違使に務める下級役人、志留辺の人生の転機。

「桜」宮中編「一代限りの橘」の物語、これで終わりでございます。

この長い物語、次回の「平安時代」で完結です。



「平安時代」さてさて、ラストシーンで新しいバディが組まれ、彼らの本当の人生が始まります。


皆が知っている「平安時代」はこれから始まるのです。

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