第107話 立后

文字数 5,076文字

藤原美都子(ふじわらのみつこ)の父方の祖父は藤原巨勢麻呂(ふじわらのこせまろ)といい天平宝字八年(864年)、藤原仲麻呂の乱で仲麻呂に連座し、官軍に斬殺された。

以来謀反の罪人の孫として美津子は弟の三守と共に不遇の幼少期を過ごした。

が、藤原北家の内麻呂の子息との結婚話が持ち上がった時、父の真作(まつくり)は「もうこれ以上の縁談は無いから!」と驚喜で顔を真っ赤にして結婚まで推し進めた。

それは従五位下で出世が止まってしまった父にとって降って湧いたような有難い話だったろう。

私みたいな地味な娘が北家の俊英と呼ばれる殿方に気に入られる筈が無い…と自信が無いまま何度か婚儀の為の贈物が交わされて夫の冬嗣と初めて顔を合わせたのが新枕(初夜)の時。

寝所に入って来た白衣に袴という夜着姿の夫の顔を灯火の明かりの中で間近で見た美都子は、

「まあ…まあまあ、なんて目元涼やかで美丈夫なお方なのでしょう!」

と嬉しさの余り思った事をそのまま口に出して言うと冬嗣は呆気に取られ、次に、

「今まで目つきが恐いと父上や同僚からさんざん言われてきたが、俺の眼を褒めてくれたのは貴女が初めてだ」
と初夜の緊張で強張らせていた顔を緩めて笑った。

「お笑いになればよろしいかと思います」

「え?」
「今見ていて思ったのですがお笑いになるともっと美丈夫ですよ」

と決して派手な顔立ちでは無いが頬がふっくらとして目じりが垂れて愛らしい美都子の微笑みを見て冬嗣は…

ああ、初婚の相手がこの人で本当に良かった。この人となら生涯仲良くやっていけそうだ。と思った。

それは美都子も同じであった。

「我の名は冬嗣。あなたの名は?」
「美都子と申します。よろしくお願いします」


結婚から十三年、冬嗣との間に三男一女をもうけた美都子は夫が他に何人側室を迎えようが外に何人愛人を作ってようが生真面目な反面けっこうな艶福家だと知っても…

なにより自分を大切にしてくれるし、
夫を信じているので

何一つ心揺るがず北家の正妻としてゆったりと過ごして来た彼女にいきなり人生の
転機が訪れた。


弘仁五年四月二十八日(814年5月21日)。
嵯峨帝、御輿に乗りて藤原冬嗣邸(平安左京三条二坊)に行幸。

この時美都子は緊張の極みに居た。

嵯峨帝は実に気さくなご様子で冬嗣と美都子夫妻の歓待をお受けになり四人の子供たち長良、良房、順子(のぶこ)(後の仁明天皇女御で文徳帝の母)、良相(よしみ)に順々に「健やかに育つのですよ」とお声かけなさった後、と御自ら、

「藤の美都子。あなたを従五位下に叙する」

無位の人妻を殿上人の地位まで引き上げる宣言をなさったのだ。

嵯峨帝は冬嗣夫妻としばらく談笑なさってから輿に乗ってお帰りになり、自邸への天皇の行幸という臣下として最高の栄誉の日を滞りなく終えた。

その夜、
「はあ、帝があんなにお若くて闊達で殿にも負けないくらい美丈夫な御方だったなんて…今でも動悸が止まりませんわ」

何もかもが終わったのにまだ緊張している妻を冬嗣は何年経っても初々しく可愛いと思った。

「気後れしてしまったのかい?しょうがない人だねえ」

と背中をさすってあげながら「実は美都子、あなたに尚侍(ないしのかみ)になってもらいたい。と帝が仰せなのだが」と言った途端、美都子の顔からいつもこにこやかさが消えた。

蒼白になった妻が「すいません、気分がすぐれませぬもので」と背中を向けて自室である北の対に籠ってしまった。

「美都子?どうしたというのだ美都子!?」

臣下一の切れ者と呼ばれる藤原冬嗣も、妻の心の機微には疎かったというところか。

「家の事しかしてきていないわたしには尚侍という重職とても務まりませんわ…」

今の時代で言うならずっと専業主婦だった女性がいきなり女性官僚の最高職である宮中女官長になるよう請われたようなものだ。

出たこともない世間、とりわけ宮中、という未知の領域への美都子の怯えは無理もないのである。

「国の重要な書類を作るだなんて大それたことできません…」

「それは今は蔵人(くらんど)(天皇の秘書官)たちがしてくれるからいいんだよ」

「でも、前の尚侍(故・藤原薬子)みたいに宮中の嫌われものになるのでしょ?」

「そ、それは式家のあの女官が本当に悪い事をしたからであって…あなたはそんな人ではないだろ?新しい御代(みよ)の尚侍に篤実なあなたが適任なんだ。お願いだから参内して俺を助けてくれ!」

と閉じられた戸越しに冬嗣は嘆願したが、「でも…」と妻に返されて夫婦の会話は堂々巡り。一晩経っても出てこないので困り果てた冬嗣は家族総出で美都子説得にあたり、美都子が受諾するまでさらに丸一日かかった。

「で、最後は誰が美都子の天岩戸を開けたのかな?」

と水盆に花を生けながら事と仔細をお聞きになる嵯峨帝の横顔はなんだか楽しげでもあられた。

は…と畏まる三守は、きっと帝は内裏では決して隙を見せない冬嗣の困っている顔をご想像なさっているのだろう。
相変わらずお人が悪い。と思いながら報告を続けた。

三守の正妻、橘安子が勅が降りるまで黙っているべき事だけれど…今ここで言ってしまおう!と吃と顔を上げた。

「実は私にも典侍(ないしのすけ)(尚侍の次官)として宮中に参内するよう帝からお話がありました」

内側からがたっ、と物音がして美都子が戸の傍まで来たのが気配で解る。
「それで安子どのはお受けするつもりなの?」
「はい、喜んで受けます。妹である橘の夫人さまにやっとお仕えできる時が来たのですから」
「…」

「美都子さまの外の世界が恐いお気持ち、私にはよく解ります。

だって、世間の人間の大半は人を貶めて自分のいる『底』に引きずり込むのが大好きな冷酷な生き物の群れなのですから。

謀反の罪人の孫として生まれた私には解るのです」

「私…本当は他人が恐いの」

今まで夫にも話せなかった本心を美都子は涙声で義理の妹に打ち明けた。

「だからってそれが何だというのです?あなたはこれからもずっと心の中の他人に怯えながら生きるの?いいですか、会ったことの無い他人は居ないのと同じです。

そんなもの、無視して生きて幸せになってもいいのですよ」

戸の向こうで美都子ははっと顔を上げた。

「美都子どの、私が味方しますから一緒に宮中に参りましょう。お義姉さま」

その一言で美都子の心は決まった。
内側から文机で塞いでいた戸を開いた美都子はちょうど正面に居た安子と

「安子どの」
「お義姉さま」

と涙ぐんで両手を合わせてから夫の向き直り、

「今までの不調法まことに恥ずかしゅうございます…尚侍の件謹んでお受けいたします」

と今まで見せたことの無い強い眼差しと口調でそう告げたのだった。

天鈿女(あめのうずめ)は橘安子であったか、とお笑いになられた嵯峨帝はそこで急に

「後宮には後宮の(まつりごと)がある」
と表情をお引き締めになられた。
「夫や息子たち、弟のお前の説得にも応じなかった冬嗣の妻が義理の妹の言葉一つで動いた。三守、女人同士の連帯は同じ目標を持つと他のどんな絆よりも強いぞ」

「それを目の前にして思い知りましてございます」

「後宮は朕の意思が全て通る領域ではない。新しい尚侍と典侍は朕が信用できる女人たちでないと困るのだ」

菖蒲(あやめぐさ)杜若(かきつばた)。見た目は酷似しているけれど異なる紫の花をお取りになりそれを美都子と安子に見立てて水盆に並べてお生けになられた。

こうして、

政変以来空席になっていた尚侍に冬嗣の正妻藤原美都子。

典侍に三守の正妻橘安子が就いて嘉智子を皇后に押し上げる後宮政治への下地は全て整い、同時に妃の高津内親王は急速に後宮での居場所を失って行った…

例え業良皇子の一件が無くても高津廃妃は予定されていた流れだったのかもかもしれない。

弘仁六年七月十三日(815年8月21日)。

白粉を塗った顔に額と両頬に紅色の花子を差し、金銀玉枝で飾られた宝髷を結った嘉智子は…
深紫(こきむらさき)の大袖に蘇芳と深紫の縁がかった添帯を前で締めて腰より下に纏った蘇芳の裳という最高位の女人が赦される色の礼服を身に纏って裳裾を広げて廊下に端座する一世一代の晴れ姿。

やがて天皇のご意志を伝える宣旨の職にあたる典侍、橘安子がしずしずと廊下を渡り嘉智子の前に止まるとやや緊張ぎみに勅書を広げて…

「此に依って夫人橘嘉智子を皇后に立てるものとする」

と告げた瞬間、嘉智子は皇后となった。

「謹んで、お受けいたします」
すぐに嘉智子は皇后の住居である常寧殿に移り、その間裳裾の両脇を持つ明鏡と貴命の心中は、
この極めて野心も覇気も、ご自分の意思というものも薄い御方が、とうとうここまで上り詰めなさったか…
という深い感慨に満たされていた。

嵯峨帝の母、藤原乙牟漏薨去以来実に二十七年ぶりの立后に実家の橘家と姻戚の藤原北家では盛大な宴が開かれ、
「とうとうここまで来たな」「ああ…」と嘉智子の兄、氏公と従兄の逸勢はしみじみと美酒を酌み交わした。
都の人々も貴族から庶民に至るまで皇后誕生の報に、

これから何となくなにかいいことが起こるんじゃないか。

という明るい気分に包まれ皇后さまばんざい!とあちこちで声が上がり都は活気に包まれた。

さっきまで住んでいた夫人の部屋よりはるかに広い皇后の部屋に移った嘉智子は入侍の頃に実家から持ってきて大切にしてきた厨子を部屋の隅に置かせると、おもむろに扉を開けて中の観音像に手を合わせて拝んだ。

不思議なものです。
このような大事な日を迎えたというのに、わたくしの心は普通の一日を過ごすように落ち着いている。

それというのも先日、空海阿闍梨に「わたくしのような者に皇后という重責つとまりましょうか?」と不安を打ち明けて帰ってきた答えが…

「僭越ながら申し上げます。
仏の教えでは草木や虫、鳥や獣など数多いる生き物たちがいる現世で人として生まれてくるのは、必ず何かしらの意味を持っている。と考えられております。

夫人さまがこれから果たすべき皇后というおつとめは、

例えばご夫君である帝が朝から夕まで政務を行い国土と民の為に働いていらっしゃる天皇と言う名の太陽ならば、

皇后というのは夕べに太陽が沈み(あした)まで短い時を御休みになる間、夜空に昇りて優しい光で人々の心の不安という闇を照らす月そのものなのではないでしょうか?」

この阿闍梨の例えばなしを聞いていた時に思い出されたのが亡き父清友が渤海大使の史都蒙(しともう)さまから受けた月の後ろに太陽有りて橘家は次代で栄達するという予言だった。

それは父清友から皇后が生まれ、その皇后が次代の天皇を産む。という意味。
予言は半分当たったのだ。
再び月に例えられたわたくしはもうこれ以上自分の運命の何を疑う事があろうか。

これは偶然ではなく必然なのだ。

思えば入侍以来わたくしを寵愛し、没落した家の娘から今の地位にまで引き上げて下さった帝を御恩に報いる時が来たのだ。

「ありがとうございます阿闍梨、やはりあなたに相談してよかった」といつもは柔らかく微笑むだけの夫人さまのお目に、初めて意思が宿ったかのような強い光が見て取れた。

じきに皇后になるお方に相応しい表現かどうか分からないが、やっと生きた仏に魂が入りましたな。夫人さまはもう大丈夫や。と空海は安堵しながら退出したのであった。

観音像に捧げた香が燃え尽きた時、子供たちを連れた嵯峨帝が部屋にお入りになり、長女で今年六歳の正子内親王(まさこないしんのう)は「このお部屋、ひろーい、ひろーい!」とぱっ、と父帝から離れて嬉しそうにはしゃぎ回り、長男で今年五歳の正良親王(まさらしんのう)は初めて見る母の礼装に「母上、きれい…」と父の傍でぼうっと見惚れながら小さなくしゃみをした。

「そんなに走り回っては贈り物にけつまずいて(まろ)びてしまいますわよ!」

生まれてまだふた月の次女、芳子を抱いた明鏡がめっ!と正子をたしなめると嵯峨帝は「子供はこれくらい元気なくらいがちょうどよいのだ」
とお笑いになり、
「さてこの部屋を気に入ってくれたかな?皇后」と嵯峨帝はそこで初めて嘉智子を皇后とお呼びになり、明鏡は芳子を抱きながら、部屋に居た女人たちは皆、新しき御代の皇后に向かって団扇を掲げて拝跪した。

「はい帝、たいへんうれしゅうございます」
嘉智子はすっくと立ち上がると、嵯峨帝のお手を取ってにっこり微笑んだ。

…もしも予言が全てまことならば、これからのわたくしの果たすべき勤めはご病弱な我が子、正良親王がご即位あそばされるまで無事ご養育し申し上げる事。

そして、この日のもとに輝く日輪であらせられる帝が御身も御心もお休みになられておられる間、わたくしは仏の背後に輝く月輪のように夜の闇を照らしましょう。


神野さまが天皇としてこの国の国土と民と共に生きる決心をなさった太陽ならば、
この嘉智子、喜んで月となりましょう。

それが数多の生き物の中で人として生まれて来たわたくしの役目なのですから。























































































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登場人物紹介

空海、本名は佐伯真魚。香川県善通寺市出身の裕福な豪族のせがれ。学業優秀で長岡京の大学寮に入るが、そこで遭った悲劇が彼を仏門に向かわせる。

嵯峨天皇(神野親王)桓武天皇の第二皇子。

問題だらけの平安京に真の平安をもたらす名君。空海とは生涯の友になる。欠点、浮気性でパリピ。

橘嘉智子

嵯峨天皇に最も愛され、橘氏出身の唯一の皇后となる。仏教への傾倒は人生から逃げる術。

私は和気清麻呂。「これから起こる悪い事全部怨霊のせいにしちゃいましょう」と御霊信仰の悪知恵吹き込みました。

本音?桓武帝が起こした人災だろーが。

藤原薬子です。後に悪女呼ばわりされる私も言い分いっぱいあるんですのよー

嘉智子さまお付きの女童、明鏡です。薬子登場でなんだか不穏な予感…

空海に山岳修行教えた勤操ですぅ〜。時々奈良仏教の中間管理職としてぼやきます。桓武帝と戒明じいさんとの因縁ってなんやろな?


役行者六代子孫にして作中最もヤバいおっさんタツミ登場。わし空海のエグい修行生活のはじまりです。

新キャラ藤原葛野麻呂、空海を唐に連れて行く貴族です。私の顔は東寺の帝釈天像がモデルです。イケメンですよー。

兄貴、自分の息子の誕生祝いで不倫ばれてんじゃねーよ…って親父に対して正論で返してるし!義理の叔父、田村麻呂初登場。

by嵯峨帝

ふっふっふ。俺様は修験者の頭タツミ。真魚よ、よくぞ試練を乗り越えたな…っていつまでも妻の手握ってんじゃねえ!

若き日の坂上田村麻呂も絡む平安ミステリー、藤原種継暗殺事件の真相です。


最新話まで話を読んできた登場人物全員の心の声


「そりゃ祟られるわ!!」

実在した前の遣唐使僧、戒明です。史実上の真魚との接点は不明です。唐から偽経を持ち帰ったとして失脚してた私の名誉回復をしてくれたのは空海だから最初に出会った師として登場。

荒行の末に悟ったもの。仏性、すなわち人の心なり。善行も悪行もそれを行う人の心次第。

やっぱりわたくし、親王さまを好きになっていたのね。(浮気者だけれど)

多治比高子です。嵯峨帝側室として寵愛された理由はインテリだった設定。

あれ?「あの四重奏ドラマ」のエンディングシーンみたいなことしてない?

三行指帰現代語訳コント風、はじまりまじまり〜

何これ⁉︎空海の書いた話おもしれーじゃん!と吠えて宮女に叱られる神野。三教指帰は日本初の小説と呼ばれる。

空海、実家に帰る。真魚が一番可愛いお母さん。激烈お兄ちゃん、実家あるあるな心配するお父さん。

空海の実家をそのまま父親の名前にしたのはオヤジ、ありがとう…グスッ(泣)の気持ちやったんや。

後の法相宗のトップにして東日本に仏教を伝える男、徳一の本心。

高雄山寺プロレス回。奈良仏教の裏番長、実忠しれっと初登場。

やっと最澄登場。美坊主泰範のせいで既に不穏な比叡山寺。

ある意味最強キャラ、朝原内親王登場。

飛べない小鳥、から明鏡の出生の秘密編へ。

尚侍明信の罪は亡国の姫、明信の若き日の過ち。

「陽の下の露」冬嗣の長男、藤原長良誕生。ちなみに薬子と葛野麻呂の不倫関係は史実です。

「風が吹く」遣唐使に選ばれなかった空海に起こったありえへん奇跡。それにしても徳一口悪ぃな。

桓武帝が仏教勢力を叩いた理由は脱税摘発のため。しかし宗教法人を使った脱税って1200年経った今でもやってますなあ。

「受戒」どーもどーも、三論宗のアイドルにして空海の頭を剃った勤操ですぅー…ってじいさんどないしたー⁉︎

最初の師戒明との別れ。わし、行ってきます。

「船乗り星」朝廷も一目置く宗像氏の濃いマダム登場。

どうもー、空海を唐に送り最澄を唐から連れ帰ってながらも後世にほとんど知られていない葛野麻呂。ここでは準主役です。

徳政論争回。現実的にこれ以上の東国進出は無理だった。徳川家康の次に鷹狩り好きな歴史上の人物として有名な桓武天皇の最後の鷹狩り。

仙境天台山、思えばこのひと時が最澄の一番の幸福だったかもしれない。

「崩御と即位」皇帝陛下の崩御と新皇帝の即位に立ち会っちゃった俺って持ってる〜。からの、カネが無いから2年で逃げ帰れ命令。

「聖俗同船」帰国できなかった遣唐使もいるんですよ…葛野麻呂の最澄へのツンデレっぷりをお楽しみ下さい。

「密の罠」帰国した途端最澄に降り掛かる悪意。

平安京を開いた帝の最期。これから不穏な平城朝が始まるー

秀才、橘逸勢にトリプルの悲劇。留学生たちの寂しさを癒す楽の音。

恵果と戒明との邂逅から三十年。やっと後継者に出会えた恵果。

まるで唐密教の滅びを予測していたかのような恵果の発言。実際にそうなります。

「遍照金剛」かくして遍照金剛空海誕生。で、何で俺様がナレーション?

「柳枝の別れ」長安出立前夜に明かされる霊仙の正体。次回から日ノ本、平城朝編。

「平城朝」最後の薬子の表情は読者さんのご想像にお任せします。

「春宮神野」

宮中も 女子回なければ やってらんない

by明鏡 字余り

「天皇の侍医」官僚として、医師として苦労する弘世の人生が始まる。

「謀」とうとう粛清に向けて動きだした薬子。朝原内親王、神野に迫る毒殺の危機。

「比叡山夜話」最澄に迫る危機。平城帝の悪意。

「翡翠の数珠」空海のせいでまた逸勢がヒドい目に遭うお話。

「阿保の本音」父平城帝への不信感が募る阿保親王。後に彼と妻の伊都内親王から生まれたのが在原業平。

前半の薬子の兄、仲成が起こした暴行事件。これ史実です。後半の勤操の述懐は創作ですが。

「咎人空海」空海、やっと帰国。あの三姉妹再び登場。

「海辺のふたり」空海だけを都に帰さなかった藤原縄主の思惑とは。この時代、芋粥は極上スイーツ扱いでした。

「白雪」兄帝の危険性を思い出す神野。

「神泉苑行幸」策謀に満ちた宮中。筑紫で布教を始める空海に届いた悲報…

「藤原家の毒薬」いつの世も女の仕返しって陰湿なのよねえ。

「譲位」嵯峨天皇が即位した夜に明かされる伊予親王の死の真相。冬嗣の胸に去来するのは怒りか、諦めか。

「実ちて帰る」主人公2人がやっと初対面。次回から第3章「薬子」のはじまり。

わたくし藤原薬子が主役の章、「薬子」、開始ですわよ。空海阿闍梨、神野の坊やとの初謁見でいきなりド不敬発言。

「橘の系譜」女性天皇が女性の部下に姓を与えた女性が始祖の橘家。

明鏡、家族と再会し、そして母になる。

「背徳」性描写あり。そして、薬子は悪女になった。

「真言の灯」最澄さまの千利休感と人手不足の密教。ある事で滅多になくブチ切れる空海。

「宮女明鏡」嵯峨後宮ベビーラッシュ。身籠った明鏡がこれまでの人生を振り返る。

「阿修羅」、怒らせるとシャレにならないレベルで怖い空海のダークサイド。

「東国の勇者」アテルイ回前編。13000vs500で朝廷軍にに勝利した巢伏の戦いと田村麻呂との対話。

「王の器」アテルイと田村麻呂の物語、後編。胆沢制圧戦後のアテルイ、田村麻呂、桓武帝。

真の王の器は誰にある?

どぅもー、宮中のイケオジ葛野麻呂です。「負の遺産」、宮女同士のマウントバトルが怖ぇわ…

「征夷大将軍殿の憂鬱」田村麻呂、愛妻とのフルムーン旅→ヒリヒリするような駆け引き。

「小鳥立つ」明鏡、13年ぶりに父との対面で思い切った決断を告げる。そして運命の子は誕生した。

「火の継承」

この時代の年明けのお祭り、修二会。ググった結果検索トップがさだまさしの「修二会」だったので公式の自分がまさしに敗けて悔しい実忠。

「智泉の祈り」

嘉智子さまへのマタハラ案件、「皇子を産め」とのたまう橘家の兄君たちにブチギレる空海阿闍梨。

「豪奢なる遁甲」嵯峨天皇vs平城上皇最後の争いが万葉サーカスの歓声の中始まる。


この回から三人目の主人公、ソハヤ登場。

「私刑」

池波か!とツッコミ上等な回。法具を本来の目的(明王の武器)で使う空海。

「なるほど、これがお役所仕事か」by嵯峨天皇

「隘路」、暗殺者集団土蜘蛛vsタツミ率いる修験者たち。薬子の変クライマックス前編。

「火宅」一万字越えの大作です。嵯峨天皇vs平城上皇最後の戦い後編。


藤原薬子と語らう老婆の正体は…

「徒花散る」失脚がそのまま死に繋がる全然平安で無かった平安初期の、最後の政変。


勝ってもあまり嬉しくない戦いでしたね…


by田村麻呂

第3章「薬子」終わり。後ろ暗い取引をしてもカッコいい俺様であーる。


by修験者タツミ

第54代仁明天皇こと正良誕生でおめでたい事からはじまる弘仁元年。

「弘仁おじさん」と呼ばないで。

by藤原冬嗣

明けましておめでとうございます。嵯峨天皇の叔母にして宮中屈指の美魔女、酒人内親王です。ここぞとばかりに気合い入った命婦たちのファッションと空海vs朝原の新春disり合い回で御座います…

若い頃の実忠さまはやさぐれていたなあ。

この世でやるべきこともやったし…じゃあね!

by和気広世

嵯峨天皇の兄、良岑安世の恋人の真名井でございます。「九条にて」はさあ、これから庶民と渡来人たちが活躍する平安アンダーグラウンドな物語の幕開け。

空海in伊勢神宮。朝原内親王より託されたとんでもない密命。

エミシ最後の戦士、ソハヤの人生のはじまり。

前半、終了。

険しい高野の山道を抜けるとそこは…異文化レベルの集落だった。

「丹生一族」パツキン彫金師、ムラートです。今回は丹生一族と秦一族と高野山のお話。



奈良の大仏建立時の人に言えない過去。老いた僧ほど暗い秘密を抱えているものなのですよ。

by実忠

「集光」実は、この話で作者は話を終わらせるつもりだったのですが、取材で高野参りをし、そこの宿坊でご住職の説法を聞いた時に「物語のラストシーン」が頭に浮かびあと50話位書く事に。

「田口三千媛」今では虐待と言われる育てられ方をされたと思います。訳を聞かされて納得しても、無理に許さなくてもいいのよ。

「弘仁格式」100年ぶりの法改正にとりかかる嵯峨帝。謎の美僧、泰範の師に対する本音。

平城上皇が会いたかった東大寺の重鎮、実忠の昔語り。前編。光明皇后に仕えた日々。

「光の時代、後」実忠の過去の話。

後半は道鏡事件の真相。

遊女真名井の人生の転機。家族との再会と共に恋人との別れを覚悟する。

「軛」

丹生のシリン姫の花占い。「来る、来ない。来る、来ない…来たあー!」

「灌頂」

死んで生まれ変わりたい気持ちで空海に会いに行った泰範。

最澄はんの「泰範、行かないでくれ」

の熱烈な文が歴史的資料として残っておます。

by空海


ぐすっ、ぐすっ…生きながら生まれ変わる事って出来るんやな…


by泰範

「信源氏」日本史最初の源氏、源信です。あのね、四さいの時にお家(宮中)から出されて明鏡お母様と離されてしまったの。


信源氏物語のはじまりはじまり〜。

高野の麓、天野の里に帰ってきたムラートです。妹の結婚式がゾロアスター教通りの儀式だと⁉️


天野わっしょい物語をお楽しみに。

嵯峨帝と正妻高津内親王との離婚の真相に迫る「高津退場」後宮サスペンス回。

橘嘉智子、立后のお話。

「わたくし、覚悟を決めました」

「常の白珠」

延暦十五年四月(796年5月)、日の本初の公然セクハラ&パワハラの記録でございます。

by明信

あの時は恥ずかしい思いさせてごめんよ…まだ怒ってる?

ねえ明信、こっち向いて(焦)

by桓武帝

お二人とも、犬も喰わない痴話喧嘩を板上でやらないで下さいまし。

by葛野麻呂

「わし、とうとう最澄はんと絶交する覚悟決めました」

空海を本気でブチギレさせた最澄の言動。


そして、高野山開基に向けて動き始める弟子たち。

「高野」

私ムラート、生まれも育ちも高野山でございます。このお山の自然の洗礼に遭う実叡と泰範。

高野を舐めちゃあいけねえよ。


なぜか寅さん口調。

「時鳥」

小野篁初登場回。そして、現世での役目を果たした巫女との別れ。

「落花宴」

民を食わせるために働いた藤原、葛野麻呂の最期。日ノ本初の茶事と花見の宴の記録。



「拠り処」

天皇皇后だってもふもふふくふくで癒されたい。徳一、東国に進出宣言。

「橘秀才」

「弘法も筆の誤り、って肝心な時に大ポカをやらかすって事なんだね」

古今随一の芸術家となった逸勢、空海にツッコミを入れる。

「シリン都に行く」

はーい、私は高野山の麓天野の里に住む主婦シリン。夫に下された辞令で子供たち連れて平安京へお引越しですって⁉️ドギマギしちゃう!

…って魔法少女みたいなあらすじ紹介でいいのかしら?

「篁」

ちーっす、小野篁でーす。僕の風評「なんだかすげえ奴」みたいに言われてるけど、嵯峨帝に出会った頃は脳筋の野生児でしたよ。

「一隅を照らす」

最澄、最期のことば。戒壇認可を遅らせた嵯峨帝の真意。


そして、たそがれ空海。



「進士篁」

ちーっす!篁っす!それでは一句。


竹の子(篁)が ドラゴン桜(三教指帰)で サクラサク


物語の主人公空海阿闍梨から僕に交代っす!

白秋の章、「嵯峨野」のはじまり。淳和帝即位。遡って嵯峨帝による黄櫨染御袍プロデュース秘話。

「正子と正良」

嵯峨上皇と嘉智子お母様の息子、正良(後の仁明帝)です。十四で結婚したお嫁さんが可愛過ぎてキュートなハートにズキンドキン!です。

「祈雨(きう)」

元服した源信信です。空海阿闍梨による伝説の雨降らしの祈祷の裏に蠢く大人たちの陰謀に、

うわあああ…

皆さんお久しぶり。田村麻呂です。平安初期の貴族たちは麻呂麻呂っなくて武士武士ってたんですよ。


ごきげんよう、小野篁です。

(官吏になったのでパシリ口調はやめました)

今回は私のルーツとソハヤ、シルベに隠された秘密が明かされる回です。

「在るがまま」

平城上皇の第三王子、高岳親王です。今回は父の最期の想いと私の出家の物語。


◯ウケンシルバーのモデルになった私の人生の出発でしたねえ。

「哀しい哉」

このエピソード書くために作者、高野山にお参りに行き智泉の御廟(お墓)に手を合わせました。

「天長二年の旅立ち」

久しぶりの金髪仏師ムラートです。東寺の立体曼荼羅完成秘話。あの時の空海さんは某劇作家か!って位ダメ出しして来て参りましたよ…


そしてラスト主要人物、在原業平初登場。

「夫人たちの夏」嵯峨帝の側室、藤原緒夏です。後宮で生きる憂鬱と高子さまとの友情の回。


「頭の冬嗣」

今年の◯河はやり過ぎちまった私の愚孫どものいざこざですが一人ちゃんと遺言を守った奴がいたようです。

「心の中の明王」

篁と徳一の出会い。東国にて。

空海と最澄を支援した破天荒僧侶、勤操の最期。さよならだけが人生や。

喫茶去(きっさこ)は禅語で「ま、茶でも一服」の意味。人生最後の対面を惜しむ主人公二人。

「光明」全ての務めを終えた空海の眠り。次回から次世代編へ。

「流人篁」百人一首で有名な「わたの原」から始まる篁の反骨最骨頂行動と流人生活。


ちゃっかり現地妻作ってました。

「落日」

葛野麻呂の息子で遣唐大使、藤原常嗣サイドの最後の遣唐使節の行程。


支援者の張宝高は新羅の海将で外交官で大商人。

この回のゲストは唐代の大文人。

「円仁の旅・使命」

どうも、遣唐使団からバックれた不法滞在僧侶の円仁(最澄の弟子)です。私の9年以上に及ぶ旅はいきなりホラーな展開から始まります。

実質、最後の遣唐使である円仁の旅の後編。空海より託された三つの遺言は果たしたものの武宗による仏教弾圧を受ける苦難の復路。オカルトな場面あり。

「胡蝶」

「胡蝶の夢」になぞらえた常嗣の帰国後の辛い立場と責任を感じる篁。二人とも苦しんだんだ。

「観月」

嵯峨上皇が家族たちにそして遥か未来の子孫に向けて述べた言葉。

人生最後の観月の宴。



「草木のままに」

我が夫、嵯峨天皇の最期。お休みなさい、あなた…


あと10話で完結です。

最終章「檀林」、それはカリスマ嵯峨天皇が去るのを待っていたかのように始まった粛正の嵐。

承和の変。三筆最後の一人逸勢の退場。

「繭」政変で息子、仁明帝の行いと本心を知った皇太后嘉智子の絶望。

「反骨の種子」政変の真相を知った篁の決意と、蹂躙される政変の敗者の家族たち。

昔男、と呼ばれたチャラいクズ。在原業平の奔放な恋の本心は…な回。

「椙山にて」この日、エミシの武人親子三代の真相が知らされ祖父の願いがシルベに託された。

「橋を架ける」

言葉を大事にして秩序を保つのも、言葉をぞんざいにしてこの世を地獄同然にするのも全て、人間の行いなのだと思います。


この国の教えの百年先を見越して禅僧を呼び寄せた国母、橘嘉智子。

「参議篁」

私の少年期から始まる篁四部作これにておしまい。良房の企みなんて知ったことかよ。

「襲撃」

日本初の警察機構である検非違使に務める下級役人、志留辺の人生の転機。

「桜」宮中編「一代限りの橘」の物語、これで終わりでございます。

この長い物語、次回の「平安時代」で完結です。



「平安時代」さてさて、ラストシーンで新しいバディが組まれ、彼らの本当の人生が始まります。


皆が知っている「平安時代」はこれから始まるのです。

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