第62話 藤原家の毒薬

文字数 5,046文字

御神鏡が安置されている温明殿(うんめいでん)の近くに尚侍薬子(ないしのかみくすこ)の執務室があり、夕餉の後で臣下から提出された書類を整理するのが薬子の日課であった。

尚侍の職務は常に天皇の側に仕えてお世話をし、臣下から奏上された書類を天皇に取り継いだり、天皇から臣下に向けての命を宣旨するといういわば天皇の秘書室長である。
尚侍に任命されてから約一年半、薬子は激務の日々を送っていた。

ああ疲れた。40過ぎたらもう年ねえ…

と薬子は一人になるとまず脇息にもたれかかって四半時休憩してから甘葛(あまづら)で固めた餅菓子を頬張るのが、薬子の何よりの楽しみであった。

かような上等な菓子を毎日食することが出来るのが宮中女官の醍醐味なのよね。

と口中に広がる甘味を味わい尽くして呑み込み、白湯を啜ってから溜まっている書類に取り掛かるのだが、

この時は表に何も書かれていない封書がぽとり、と膝の上に落ち、何事か?と思って開いてみると女人の手の腹程の大きさの布切れ。この布切れの紋様に薬子は見覚えがあった…

もし、お前が思っている事を実行したのならば、この布に染み込んだ毒が何倍も返ってくる。

と、添えられていた薄紙に書かれていた一文に薬子は凍りついた。

…朝原内親王!

あの時、朝原内親王に酌した酒が彼女の霊力で毒入りと見抜かれ、「飲みなさいよ」と迫られた恐怖。
わざと杯を取り落として難を逃れたつもりが相手の裳を毒酒で濡らして証拠を渡してしまった失態をまざまざと思い出し、薬子は思わず布切れと文を灯火の中に投げ込んだ。

文と布切れは小さかったのであっという間に燃え尽きたが、煙を吸った薬子は胸苦しさを覚え、慌てて外に出て嘔吐した。

尚侍さま、いかがなされましたか!?と顔色を変えて駆け寄る女官たちに薬子は

「何でもない、何でもないのです…」と言い訳し続けた。

こうして朝原が薬子に警告の文を送ったのが伊予の変の一月(ひとつき)まえ。

伊予親王の死を知らされた時、伊予の姉で平城帝の妃朝原内親王は
「私が何をしても視たものは止められないのね…」
と一番起こって欲しくなかった予見が実現してしまった事に打ちのめされ、妹の大宅内親王(おおやけないしんのう)の肩に顔を埋めて嘆いた。


「毒消しはあるかい?」

と衰弱しきった男が這うように小屋を出て杖をついた私度僧に薬をせがんだ。
「そいつは金を貰ってからの話さ」
頭をすっぽり布でくるんだ私度僧が嗄れた声で男に言うと男は「ある」と言ってはち切れんばかりに金の詰まった革袋を目の前に置いた。

「お前さんどうやって毒にあたった?」
という私度僧の質問に男は最初口ごもっていたが胸苦しさに耐えられず「犬に噛まれた」と答え、どれ見せてみな、という私度僧の診察に素直に応じた。

男の右手に付いた歯形を確認した私度僧が

「お前さん、この噛み跡は犬ではなく人のものじゃないか!嘘を吐かれちゃこちらも療治の仕様がない」と叱り付けるように言うと

「その通りだ」と男はうなだれ、ある高貴な方に無理矢理毒を含ませたものの抵抗されて深く噛みつかれ、その毒が体じゅうに回って苦しいのだ。
「それはいつだい?」
「二日前の朝だ」
とあっさり伊予親王殺しを認めた。
「さあ!金は欲しいだけ払うし罪も白状した…早く毒消しをくれよぉ!」
と哀願する男に一瞥をくれ、

「そんなものはない」

と言い捨てると男は絶望と衝撃で胸の発作を起こし、体を丸めながら死んだ。

小屋から出た私度僧は近隣の住人に革袋の金を一掴みずつ配り、
「この金であの小屋の骸を弔ってやってくれないか?」と頼むと集落から姿を消した。

「皇族の方を閉じ込めておける立派な牢があるのは河原寺ぐらいですからね、近くの住人に聞き込みをしたらすぐに犯人が見つかって証言が取れた、という訳です」

しかしまあ、と徳一は溜め息を付いてから
「やましく生きてきた人間の死に様は…醜い」
と語尾にもうあんなやつの事など口にものぼせたくない!というほどの嫌悪感をにじませてこの話を打ち切った。

「ねえ…正しさって一体何なんでしょうかねえ?
嘘を一切吐いてない伊予さまが死ぬ破目に陥り、虚言で伊予さまを死に追いやった宗成は流罪どまり。南家の人びとはとばっちりで厳罰に処されてしまった…正しい人が報われない世の中を作った私たち貴族は、本当に駄目なやつらだ」

と和気広世は懐から幾重にも巻いた紙包みを取り出し、医術の師である実忠に渡した。

実忠は包みを開き、中から出てきた茶褐色の丸薬を見ると青い目に緊張の色を浮かべ、「今から布で口を覆え。直接匂いを嗅ぐな」と目の前にいる広世と徳一に伝えてその通りにさせると丸薬の一つを慎重に小刀で割る。

丸薬の中央にある薬物の臭いを手で仰いで少し臭いを嗅いだだけで実忠はすぐ包みを閉じ、
附子(ぶす)(トリカブトの塊根)だ」
と告げると広世は徳一に目配せし、徳一はすぐに部屋中の戸を開け換気を始めた。

「附子は服用するとすぐ死に至るが、このようにいくつかの生薬を蜜蝋で固めて丸薬で包むとほんの少し死を遅らせる事が出来るのだよ。胃の腑で溶けるまでの間だが、な。広世、お前はこれを確かに?」

との実忠の問いに広世は居ずまいを正し、

「検死の結果、伊予親王さまのお口の奥からこの9粒を見つけました」

お前が?帝の命で?とわざと実忠は言葉尻を上げて、

「わしが帝だったら絶対検死を任せたくない相手だな」と鼻で笑った。

「命じられた時は私も信じられませんでしたが、私が『毒で自殺なさった』と言えば皆疑わないですからねえ。おもて向き帝にはそう報告しましたよ。

でも伊予親王のご遺体には吉子さまに出ていた服毒の兆候はありませんでした。
折れた前歯、奥歯に挟まった何かの皮と血の塊、死因は何者かに鼻と口を塞がれての窒息死です。
感服すべきは死の瞬間まで抵抗し続け、わざと毒を含んだ口で刺客に噛みつき息を止められるよう仕向けた伊予さまの執念。
我は殺された、という声と『しるし』が私には伝わってくるのです」

「物言わぬ死者はお喋りな生者よりも正直である。か…

広世でかした、この丸薬で朝原さま毒殺未遂と伊予さまの冤罪。
二つの事件が式家の尚侍でつながっている、という証拠を得た」

と実忠が箸につまんで見せたのは、薄紙に包んだ布切れ。一年半前、朝原内親王から依頼を受けて送られた裳の酒の染みた部分を調べてみると…

「これにも附子の毒が染み込んであったわい」と実忠は端正な顔にぐすり、と不敵な笑いを浮かべた。

外はさあさあと雨が降り、重く暗い冬から明るい春へと移り変わる大同3年の始まり、

空海のもとに、師の勤操和尚(ごんぞうおしょう)から手紙が届いた。

お前の叔父、阿刀大足(あとのおおたり)どのは和泉国の槇尾寺に匿っている。

政変の時、難波に里帰りしていたのが幸いして大足どのは罪に問われなかったが…
急な事件で主の伊予親王さまを失い、大層気落ちなされている。

ついては空海、智泉を連れて槇尾寺に来てくれないか?お前たちが側にいれば大足どのも心強いだろう。

「都に入らなければ謹慎中」ということですでに僧網所にも話は付けてある。

共に学んだ奈良の僧侶たちもお前の帰還を心待ちにしている。

頼む、空海。

伊予さまのご不幸で人心は絶望に満ちている。
遍昭金剛と呼ばれるお前の光で日の本の闇を晴らしてくれ。

勤操

読み終えるとすぐに空海は手紙を藤原縄主(ふじわらのただぬし)に見せ、
「大宰府から出ることを許す」という許可を得て荷物をまとめ、世話になった観世音寺の僧や田中少弐をはじめとする大宰府の官人たちに懇ろに礼を述べてから馬にまたがり、太宰府から出立したのは朝日が昇り始めた時であった。

大同3年6月、藤原乙叡(ふじわらのたかとし)が死んだ。
何の落ち度も無いのに伊予親王の政変に巻き込まれて中納言を解職され、厳しい詮議を受けて自邸に戻ると急に病み、引きこもって失意の内に死んだ。享年47才。

乙叡…乙叡!どうしてこんなことに…
明信は息子の遺体に取りすがって泣いた。が、泣いている内に意識の隅で3年前、宮中の廊下ですれ違った時の事を思い出した。
確かに私は、
「天皇の『女』というだけでは尚侍という重責、務まらなくてよ」
と忠告めいた嫌味を式家のあの女に言ったが、あの時の報復?と思い至ると明信は「乙叡許してえ!」と絞るように叫んだ。
藤原種継の娘。これがお前のやり方なのね…


やった…あの女の息子をとうとう死なせてやった。先帝の愛人あがりの明信め。

あんたはこれから死ぬまで子を亡くした無念に苛まれて生きるのよ!

実家で乙叡の訃報を聞いた薬子は、それまで宮中で抑え込んでいた感情を解放し高らかに笑った。
殺したい程憎い女が居れば、本人ではなくその子供を死に追いやればいい。さすれば相手を簡単に生き地獄に突き落とせるのだ。

ああせいせいする、ざまをみろ!
あはははは!と激しい雨音をかき消すけたたましい声で薬子は気が済むまで笑い続けた。


胸の動悸と息切れで目覚めるようになったのはいつからだろうか?

父の崩御後、解放感と爽快感で目覚めていた頃が今では遠い昔のように感じられる。

平城帝は汗を吸って重たくなった夜着を煩わしく思いながら身を起こし、
お加減はいかがですか?と朝の仕度に来た女官に
「いい筈ないではないかっ!」
と水の入った角盥(つのだらい)を投げつける。相手が薬子だったらこんなことはしないのに、ええい気の利かない女官どもめ!

「帝の癇気の発作が『また』起こっていると?」
葛野麻呂(かどのまろ)は内裏の女官から寝物語で帝の状態を聞かされた。

「常に尚侍さまがいないと不安でたまらないご様子。暴れたと思ったら急に大人しくおなりになったり…振り回される周りも大変ですよ」
とこぼす女官の白い肌を撫でて「おつとめ大変だねえ」と慰めてやる代わりに帝の近辺の情報を入手する。それが葛野麻呂のやり方だった。

母親のようにあの坊やを慰撫しろ。と申し付けたのに薬子め、その程度の女だったか…と落胆しながら自分の下で息弾ませる宮女を満足させるまで可愛がった。

即位して3年、天皇としての重責と激務で平城帝の心臓は悲鳴を上げていた。

「ですから味の濃いもの、特に塩気を控えたお食事をなさるべきです」という広世の小言を最初は

食事だけが楽しみなのに煩わしいな。
と思っていたが、最近は聞き入れるようになって少し体調が良くなった。

が、それだけではない。薬子にも広世にも言えぬ秘密が一番自分を追い詰めているのだ。

伊予が死んでから、夢に毎晩伊予が出るようになった。

夢はいつも朝議の場で、自分は椅子に座っているのだがそこに臣下は一人も居ない。見下ろす先には伊予だけが立っていて、何を考えているのか分からない静かな目で自分を見上げるだけ。

その状況で平城帝は毎晩、死んだ弟と、自分の本音に向き合わされるのである。

生まれつきひ弱な朕は父に疎まれ、周りに蔑まれて育ってきた。取り柄と言えば式家の皇后から生まれた、ということだけ。

宗成の言う事が正しいか嘘かなんて関係ない。
父から一番可愛がられ、朕よりも天皇に相応しいと言われるお前が妬ましくて疎ましくてたまらなかったよ。

伊予、嫉妬でお前を殺した朕を恨んでいるのか?

もう死人なら何か言えばいいだろうに。

怨霊ならば読経なり加持祈祷なり行ってお前を追い払ってやるのに。

「何か言え!伊予!」
激しくわめいて跳ね起きた平城帝は傍に薬子がいたのでその手にすがり付いた。
「帝、どうなされました!?」
「ああ薬子…もう朕のそばを離れないでくれ」と薬子の肌の匂いを嗅いで安心した時、いつになく激しい胸の締め付けに平城帝は襲われ、喘ぎながら空を掴む。

その様子をただ事でない!と思った薬子は「早く和気広世さまを!」と命じて広世の他に緒継(おつぐ)、葛野麻呂など藤原家の腹心たち、薬子の兄の仲成が平城帝の枕元に呼ばれた。

おい、いよいよ帝が危ないらしいぞ。
やって来たことが全て跳ね返ったのさ!この際…

と噂する貴族の横を平城帝の第一皇子、阿保親王が通りすぎたので「この際」で貴族たちは口をつぐんでしまったが、阿保も実は同じ気持ちでいた。

この際お隠れになって欲しいものだ。

とあなたたちは思っているんでしょう?気持ちは解りますよ。我ながら父親に対して薄情だとは思いますが。

でも、婿入り先の大舅である乙叡どのを理不尽に解職して病死に追いやった父を今更哀れむのは無理です。

息子の阿保、高岳まで枕元に集まるのを見て平城帝は
ああ、もう自分は駄目なのか。と視界が狭まる中で周りの者たちを見回した。

自分を見下ろす深刻な顔が並ぶ中、ある人物が片頬を上げて笑っているのを見付けると、

そんな、最も信頼していたお前までが!?もう私は駄目だ…

と昏倒し、平城帝の意識は漆黒の闇の中に沈んだ。


























































































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登場人物紹介

空海、本名は佐伯真魚。香川県善通寺市出身の裕福な豪族のせがれ。学業優秀で長岡京の大学寮に入るが、そこで遭った悲劇が彼を仏門に向かわせる。

嵯峨天皇(神野親王)桓武天皇の第二皇子。

問題だらけの平安京に真の平安をもたらす名君。空海とは生涯の友になる。欠点、浮気性でパリピ。

橘嘉智子

嵯峨天皇に最も愛され、橘氏出身の唯一の皇后となる。仏教への傾倒は人生から逃げる術。

私は和気清麻呂。「これから起こる悪い事全部怨霊のせいにしちゃいましょう」と御霊信仰の悪知恵吹き込みました。

本音?桓武帝が起こした人災だろーが。

藤原薬子です。後に悪女呼ばわりされる私も言い分いっぱいあるんですのよー

嘉智子さまお付きの女童、明鏡です。薬子登場でなんだか不穏な予感…

空海に山岳修行教えた勤操ですぅ〜。時々奈良仏教の中間管理職としてぼやきます。桓武帝と戒明じいさんとの因縁ってなんやろな?


役行者六代子孫にして作中最もヤバいおっさんタツミ登場。わし空海のエグい修行生活のはじまりです。

新キャラ藤原葛野麻呂、空海を唐に連れて行く貴族です。私の顔は東寺の帝釈天像がモデルです。イケメンですよー。

兄貴、自分の息子の誕生祝いで不倫ばれてんじゃねーよ…って親父に対して正論で返してるし!義理の叔父、田村麻呂初登場。

by嵯峨帝

ふっふっふ。俺様は修験者の頭タツミ。真魚よ、よくぞ試練を乗り越えたな…っていつまでも妻の手握ってんじゃねえ!

若き日の坂上田村麻呂も絡む平安ミステリー、藤原種継暗殺事件の真相です。


最新話まで話を読んできた登場人物全員の心の声


「そりゃ祟られるわ!!」

実在した前の遣唐使僧、戒明です。史実上の真魚との接点は不明です。唐から偽経を持ち帰ったとして失脚してた私の名誉回復をしてくれたのは空海だから最初に出会った師として登場。

荒行の末に悟ったもの。仏性、すなわち人の心なり。善行も悪行もそれを行う人の心次第。

やっぱりわたくし、親王さまを好きになっていたのね。(浮気者だけれど)

多治比高子です。嵯峨帝側室として寵愛された理由はインテリだった設定。

あれ?「あの四重奏ドラマ」のエンディングシーンみたいなことしてない?

三行指帰現代語訳コント風、はじまりまじまり〜

何これ⁉︎空海の書いた話おもしれーじゃん!と吠えて宮女に叱られる神野。三教指帰は日本初の小説と呼ばれる。

空海、実家に帰る。真魚が一番可愛いお母さん。激烈お兄ちゃん、実家あるあるな心配するお父さん。

空海の実家をそのまま父親の名前にしたのはオヤジ、ありがとう…グスッ(泣)の気持ちやったんや。

後の法相宗のトップにして東日本に仏教を伝える男、徳一の本心。

高雄山寺プロレス回。奈良仏教の裏番長、実忠しれっと初登場。

やっと最澄登場。美坊主泰範のせいで既に不穏な比叡山寺。

ある意味最強キャラ、朝原内親王登場。

飛べない小鳥、から明鏡の出生の秘密編へ。

尚侍明信の罪は亡国の姫、明信の若き日の過ち。

「陽の下の露」冬嗣の長男、藤原長良誕生。ちなみに薬子と葛野麻呂の不倫関係は史実です。

「風が吹く」遣唐使に選ばれなかった空海に起こったありえへん奇跡。それにしても徳一口悪ぃな。

桓武帝が仏教勢力を叩いた理由は脱税摘発のため。しかし宗教法人を使った脱税って1200年経った今でもやってますなあ。

「受戒」どーもどーも、三論宗のアイドルにして空海の頭を剃った勤操ですぅー…ってじいさんどないしたー⁉︎

最初の師戒明との別れ。わし、行ってきます。

「船乗り星」朝廷も一目置く宗像氏の濃いマダム登場。

どうもー、空海を唐に送り最澄を唐から連れ帰ってながらも後世にほとんど知られていない葛野麻呂。ここでは準主役です。

徳政論争回。現実的にこれ以上の東国進出は無理だった。徳川家康の次に鷹狩り好きな歴史上の人物として有名な桓武天皇の最後の鷹狩り。

仙境天台山、思えばこのひと時が最澄の一番の幸福だったかもしれない。

「崩御と即位」皇帝陛下の崩御と新皇帝の即位に立ち会っちゃった俺って持ってる〜。からの、カネが無いから2年で逃げ帰れ命令。

「聖俗同船」帰国できなかった遣唐使もいるんですよ…葛野麻呂の最澄へのツンデレっぷりをお楽しみ下さい。

「密の罠」帰国した途端最澄に降り掛かる悪意。

平安京を開いた帝の最期。これから不穏な平城朝が始まるー

秀才、橘逸勢にトリプルの悲劇。留学生たちの寂しさを癒す楽の音。

恵果と戒明との邂逅から三十年。やっと後継者に出会えた恵果。

まるで唐密教の滅びを予測していたかのような恵果の発言。実際にそうなります。

「遍照金剛」かくして遍照金剛空海誕生。で、何で俺様がナレーション?

「柳枝の別れ」長安出立前夜に明かされる霊仙の正体。次回から日ノ本、平城朝編。

「平城朝」最後の薬子の表情は読者さんのご想像にお任せします。

「春宮神野」

宮中も 女子回なければ やってらんない

by明鏡 字余り

「天皇の侍医」官僚として、医師として苦労する弘世の人生が始まる。

「謀」とうとう粛清に向けて動きだした薬子。朝原内親王、神野に迫る毒殺の危機。

「比叡山夜話」最澄に迫る危機。平城帝の悪意。

「翡翠の数珠」空海のせいでまた逸勢がヒドい目に遭うお話。

「阿保の本音」父平城帝への不信感が募る阿保親王。後に彼と妻の伊都内親王から生まれたのが在原業平。

前半の薬子の兄、仲成が起こした暴行事件。これ史実です。後半の勤操の述懐は創作ですが。

「咎人空海」空海、やっと帰国。あの三姉妹再び登場。

「海辺のふたり」空海だけを都に帰さなかった藤原縄主の思惑とは。この時代、芋粥は極上スイーツ扱いでした。

「白雪」兄帝の危険性を思い出す神野。

「神泉苑行幸」策謀に満ちた宮中。筑紫で布教を始める空海に届いた悲報…

「藤原家の毒薬」いつの世も女の仕返しって陰湿なのよねえ。

「譲位」嵯峨天皇が即位した夜に明かされる伊予親王の死の真相。冬嗣の胸に去来するのは怒りか、諦めか。

「実ちて帰る」主人公2人がやっと初対面。次回から第3章「薬子」のはじまり。

わたくし藤原薬子が主役の章、「薬子」、開始ですわよ。空海阿闍梨、神野の坊やとの初謁見でいきなりド不敬発言。

「橘の系譜」女性天皇が女性の部下に姓を与えた女性が始祖の橘家。

明鏡、家族と再会し、そして母になる。

「背徳」性描写あり。そして、薬子は悪女になった。

「真言の灯」最澄さまの千利休感と人手不足の密教。ある事で滅多になくブチ切れる空海。

「宮女明鏡」嵯峨後宮ベビーラッシュ。身籠った明鏡がこれまでの人生を振り返る。

「阿修羅」、怒らせるとシャレにならないレベルで怖い空海のダークサイド。

「東国の勇者」アテルイ回前編。13000vs500で朝廷軍にに勝利した巢伏の戦いと田村麻呂との対話。

「王の器」アテルイと田村麻呂の物語、後編。胆沢制圧戦後のアテルイ、田村麻呂、桓武帝。

真の王の器は誰にある?

どぅもー、宮中のイケオジ葛野麻呂です。「負の遺産」、宮女同士のマウントバトルが怖ぇわ…

「征夷大将軍殿の憂鬱」田村麻呂、愛妻とのフルムーン旅→ヒリヒリするような駆け引き。

「小鳥立つ」明鏡、13年ぶりに父との対面で思い切った決断を告げる。そして運命の子は誕生した。

「火の継承」

この時代の年明けのお祭り、修二会。ググった結果検索トップがさだまさしの「修二会」だったので公式の自分がまさしに敗けて悔しい実忠。

「智泉の祈り」

嘉智子さまへのマタハラ案件、「皇子を産め」とのたまう橘家の兄君たちにブチギレる空海阿闍梨。

「豪奢なる遁甲」嵯峨天皇vs平城上皇最後の争いが万葉サーカスの歓声の中始まる。


この回から三人目の主人公、ソハヤ登場。

「私刑」

池波か!とツッコミ上等な回。法具を本来の目的(明王の武器)で使う空海。

「なるほど、これがお役所仕事か」by嵯峨天皇

「隘路」、暗殺者集団土蜘蛛vsタツミ率いる修験者たち。薬子の変クライマックス前編。

「火宅」一万字越えの大作です。嵯峨天皇vs平城上皇最後の戦い後編。


藤原薬子と語らう老婆の正体は…

「徒花散る」失脚がそのまま死に繋がる全然平安で無かった平安初期の、最後の政変。


勝ってもあまり嬉しくない戦いでしたね…


by田村麻呂

第3章「薬子」終わり。後ろ暗い取引をしてもカッコいい俺様であーる。


by修験者タツミ

第54代仁明天皇こと正良誕生でおめでたい事からはじまる弘仁元年。

「弘仁おじさん」と呼ばないで。

by藤原冬嗣

明けましておめでとうございます。嵯峨天皇の叔母にして宮中屈指の美魔女、酒人内親王です。ここぞとばかりに気合い入った命婦たちのファッションと空海vs朝原の新春disり合い回で御座います…

若い頃の実忠さまはやさぐれていたなあ。

この世でやるべきこともやったし…じゃあね!

by和気広世

嵯峨天皇の兄、良岑安世の恋人の真名井でございます。「九条にて」はさあ、これから庶民と渡来人たちが活躍する平安アンダーグラウンドな物語の幕開け。

空海in伊勢神宮。朝原内親王より託されたとんでもない密命。

エミシ最後の戦士、ソハヤの人生のはじまり。

前半、終了。

険しい高野の山道を抜けるとそこは…異文化レベルの集落だった。

「丹生一族」パツキン彫金師、ムラートです。今回は丹生一族と秦一族と高野山のお話。



奈良の大仏建立時の人に言えない過去。老いた僧ほど暗い秘密を抱えているものなのですよ。

by実忠

「集光」実は、この話で作者は話を終わらせるつもりだったのですが、取材で高野参りをし、そこの宿坊でご住職の説法を聞いた時に「物語のラストシーン」が頭に浮かびあと50話位書く事に。

「田口三千媛」今では虐待と言われる育てられ方をされたと思います。訳を聞かされて納得しても、無理に許さなくてもいいのよ。

「弘仁格式」100年ぶりの法改正にとりかかる嵯峨帝。謎の美僧、泰範の師に対する本音。

平城上皇が会いたかった東大寺の重鎮、実忠の昔語り。前編。光明皇后に仕えた日々。

「光の時代、後」実忠の過去の話。

後半は道鏡事件の真相。

遊女真名井の人生の転機。家族との再会と共に恋人との別れを覚悟する。

「軛」

丹生のシリン姫の花占い。「来る、来ない。来る、来ない…来たあー!」

「灌頂」

死んで生まれ変わりたい気持ちで空海に会いに行った泰範。

最澄はんの「泰範、行かないでくれ」

の熱烈な文が歴史的資料として残っておます。

by空海


ぐすっ、ぐすっ…生きながら生まれ変わる事って出来るんやな…


by泰範

「信源氏」日本史最初の源氏、源信です。あのね、四さいの時にお家(宮中)から出されて明鏡お母様と離されてしまったの。


信源氏物語のはじまりはじまり〜。

高野の麓、天野の里に帰ってきたムラートです。妹の結婚式がゾロアスター教通りの儀式だと⁉️


天野わっしょい物語をお楽しみに。

嵯峨帝と正妻高津内親王との離婚の真相に迫る「高津退場」後宮サスペンス回。

橘嘉智子、立后のお話。

「わたくし、覚悟を決めました」

「常の白珠」

延暦十五年四月(796年5月)、日の本初の公然セクハラ&パワハラの記録でございます。

by明信

あの時は恥ずかしい思いさせてごめんよ…まだ怒ってる?

ねえ明信、こっち向いて(焦)

by桓武帝

お二人とも、犬も喰わない痴話喧嘩を板上でやらないで下さいまし。

by葛野麻呂

「わし、とうとう最澄はんと絶交する覚悟決めました」

空海を本気でブチギレさせた最澄の言動。


そして、高野山開基に向けて動き始める弟子たち。

「高野」

私ムラート、生まれも育ちも高野山でございます。このお山の自然の洗礼に遭う実叡と泰範。

高野を舐めちゃあいけねえよ。


なぜか寅さん口調。

「時鳥」

小野篁初登場回。そして、現世での役目を果たした巫女との別れ。

「落花宴」

民を食わせるために働いた藤原、葛野麻呂の最期。日ノ本初の茶事と花見の宴の記録。



「拠り処」

天皇皇后だってもふもふふくふくで癒されたい。徳一、東国に進出宣言。

「橘秀才」

「弘法も筆の誤り、って肝心な時に大ポカをやらかすって事なんだね」

古今随一の芸術家となった逸勢、空海にツッコミを入れる。

「シリン都に行く」

はーい、私は高野山の麓天野の里に住む主婦シリン。夫に下された辞令で子供たち連れて平安京へお引越しですって⁉️ドギマギしちゃう!

…って魔法少女みたいなあらすじ紹介でいいのかしら?

「篁」

ちーっす、小野篁でーす。僕の風評「なんだかすげえ奴」みたいに言われてるけど、嵯峨帝に出会った頃は脳筋の野生児でしたよ。

「一隅を照らす」

最澄、最期のことば。戒壇認可を遅らせた嵯峨帝の真意。


そして、たそがれ空海。



「進士篁」

ちーっす!篁っす!それでは一句。


竹の子(篁)が ドラゴン桜(三教指帰)で サクラサク


物語の主人公空海阿闍梨から僕に交代っす!

白秋の章、「嵯峨野」のはじまり。淳和帝即位。遡って嵯峨帝による黄櫨染御袍プロデュース秘話。

「正子と正良」

嵯峨上皇と嘉智子お母様の息子、正良(後の仁明帝)です。十四で結婚したお嫁さんが可愛過ぎてキュートなハートにズキンドキン!です。

「祈雨(きう)」

元服した源信信です。空海阿闍梨による伝説の雨降らしの祈祷の裏に蠢く大人たちの陰謀に、

うわあああ…

皆さんお久しぶり。田村麻呂です。平安初期の貴族たちは麻呂麻呂っなくて武士武士ってたんですよ。


ごきげんよう、小野篁です。

(官吏になったのでパシリ口調はやめました)

今回は私のルーツとソハヤ、シルベに隠された秘密が明かされる回です。

「在るがまま」

平城上皇の第三王子、高岳親王です。今回は父の最期の想いと私の出家の物語。


◯ウケンシルバーのモデルになった私の人生の出発でしたねえ。

「哀しい哉」

このエピソード書くために作者、高野山にお参りに行き智泉の御廟(お墓)に手を合わせました。

「天長二年の旅立ち」

久しぶりの金髪仏師ムラートです。東寺の立体曼荼羅完成秘話。あの時の空海さんは某劇作家か!って位ダメ出しして来て参りましたよ…


そしてラスト主要人物、在原業平初登場。

「夫人たちの夏」嵯峨帝の側室、藤原緒夏です。後宮で生きる憂鬱と高子さまとの友情の回。


「頭の冬嗣」

今年の◯河はやり過ぎちまった私の愚孫どものいざこざですが一人ちゃんと遺言を守った奴がいたようです。

「心の中の明王」

篁と徳一の出会い。東国にて。

空海と最澄を支援した破天荒僧侶、勤操の最期。さよならだけが人生や。

喫茶去(きっさこ)は禅語で「ま、茶でも一服」の意味。人生最後の対面を惜しむ主人公二人。

「光明」全ての務めを終えた空海の眠り。次回から次世代編へ。

「流人篁」百人一首で有名な「わたの原」から始まる篁の反骨最骨頂行動と流人生活。


ちゃっかり現地妻作ってました。

「落日」

葛野麻呂の息子で遣唐大使、藤原常嗣サイドの最後の遣唐使節の行程。


支援者の張宝高は新羅の海将で外交官で大商人。

この回のゲストは唐代の大文人。

「円仁の旅・使命」

どうも、遣唐使団からバックれた不法滞在僧侶の円仁(最澄の弟子)です。私の9年以上に及ぶ旅はいきなりホラーな展開から始まります。

実質、最後の遣唐使である円仁の旅の後編。空海より託された三つの遺言は果たしたものの武宗による仏教弾圧を受ける苦難の復路。オカルトな場面あり。

「胡蝶」

「胡蝶の夢」になぞらえた常嗣の帰国後の辛い立場と責任を感じる篁。二人とも苦しんだんだ。

「観月」

嵯峨上皇が家族たちにそして遥か未来の子孫に向けて述べた言葉。

人生最後の観月の宴。



「草木のままに」

我が夫、嵯峨天皇の最期。お休みなさい、あなた…


あと10話で完結です。

最終章「檀林」、それはカリスマ嵯峨天皇が去るのを待っていたかのように始まった粛正の嵐。

承和の変。三筆最後の一人逸勢の退場。

「繭」政変で息子、仁明帝の行いと本心を知った皇太后嘉智子の絶望。

「反骨の種子」政変の真相を知った篁の決意と、蹂躙される政変の敗者の家族たち。

昔男、と呼ばれたチャラいクズ。在原業平の奔放な恋の本心は…な回。

「椙山にて」この日、エミシの武人親子三代の真相が知らされ祖父の願いがシルベに託された。

「橋を架ける」

言葉を大事にして秩序を保つのも、言葉をぞんざいにしてこの世を地獄同然にするのも全て、人間の行いなのだと思います。


この国の教えの百年先を見越して禅僧を呼び寄せた国母、橘嘉智子。

「参議篁」

私の少年期から始まる篁四部作これにておしまい。良房の企みなんて知ったことかよ。

「襲撃」

日本初の警察機構である検非違使に務める下級役人、志留辺の人生の転機。

「桜」宮中編「一代限りの橘」の物語、これで終わりでございます。

この長い物語、次回の「平安時代」で完結です。



「平安時代」さてさて、ラストシーンで新しいバディが組まれ、彼らの本当の人生が始まります。


皆が知っている「平安時代」はこれから始まるのです。

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