第44話 玄象

文字数 5,191文字

昔、異国の市場の中でつかの間の自由を満喫している若者がいた。


「それと、それをくれ」

と拙い唐語で棗飴(なつめあめ)(あがな)うとそれを直ぐに口に入れてかろかろと溶かし、やがて口中に広がる甘味と酸味を楽しみながら店の呼び込みの韻を踏んだ軽快な唐語の歌や、大道芸人たちの二胡の演奏など様々な音が響き渡る西市の賑わいの中を歩いていると、人ごみの中に学友の姿を発見したので

「おーい、くーかーい!」
と叫ぶと橘逸勢(たちばなのはやなり)は仔犬のように走り出し、二、三歩もいかぬうちに足元の小石につまずいて仰向けに体勢を崩し、
同時に隙を窺っていた盗人から銭入れをかすめ取られ、
さらには突き飛ばされた衝撃で背負っていた楽器の布包みが宙を飛ぶ。

という一度に三重の災難に見舞われた友を救ったのは常人とは思えぬ俊敏さで駆け出してまずは追いついた盗人の手首をねじって銭入れを奪い返し、取って返して逸勢の肩を掴んで起こし、そして、落ちて来た布包みを空いた左手ですとん、と受け止めた空海であった。

片手に逸勢、片手に楽器を持って地面に片膝を付く小柄な僧侶の姿に市場の人びとは最初呆気に取られ、しばらく黙って見ていたがやがて、大きな歓声と溢れんばかりの拍手で空海の活躍を称えた。

「…ここじゃ悪目立ち過ぎます、帰りましょう」
と羞恥で顔を真っ赤にした空海は逸勢を連れて逃げるように西明寺へ帰って行った。

「ですから、異国の貴人の若様が伴も付けずに楽器を担いだままふらふら西市をほっつき歩くからそうなったんです!
この国ではどうぞ盗んで下さい、って言ってるようなもんなんですからねっ!あなたの故国とは常識が違うのです!解ってますか!?」

と西明寺に寄宿する遣唐使の世話役である唐僧、談勝(だんしょう)が滑らかな日の本の言葉で逸勢に危機管理の甘さを指摘して説教すると、最初は頭を垂れて神妙にしていた逸勢だが、説教が途切れるのを待ってから顔を上げると、

「いやあしかし長安はこわい所だねえ」

という実にのんびりとした口調でぼりぼり頭を掻いているのを見て談勝は

あ、解ってらっしゃらないな。

とこれで同じよう内容で4度目の説教になることを思いだして深く嘆息した。

逸勢の隣で空海が

「もっとちゃんと頭を下げて謝らないと失礼ですよ逸勢さま!すんまへん、このお方は高貴の血筋でかなり浮世離れしたところがあるのです…」

と代わりに謝るのは空海。

この寺に入った時から「言葉が解らず学舎で何を学んだらいいか解らない!」と泣きじゃくる逸勢に
(じゃあなんで故国で唐語を習わなかったのか?と談勝は思うのだが)

「ならば、話さなくとも師に通じる書や楽を学ばれては?得意な楽器は何ですか?」
「私は琴が好きだ…そうか、なら書と琴を学ぶ!」と空海がいちいち相談に乗って世話を焼いていた経緯を思い出して

「おまえ本当に大変だな…」と空海に心からの労りの言葉を掛けた。そして話題を変えようと、

「これが楽の師匠から成績優秀のご褒美として頂いた琵琶ですか?大層美しい…」
と逸勢が師の家から持ち帰って来た黒塗りの琵琶に見惚れた。うん、と逸勢は肯くと

「なんでも師匠の家の家宝で西方渡りのとても珍しい文様らしい」

と二体の白い象が四弦の糸の間で鼻と片脚を持ち上げている螺鈿細工の琵琶を抱いて久しぶりに得意げな笑顔を見せた。

「しかし、貰ったのは嬉しいが私の修行しているのは琴だし、琵琶を弾くのは坊さんと相場が決まっている。それでだ空海」

「へえ」
「この玄象(げんじょう)と呼ばれる琵琶をお前にやる」

へえ?と今度は語尾をはね上げて明らかに空海は狼狽えた。
「あの、楽って貴族の方々たしなみやないですか…経を読んで山中をほっつき歩いて来ただけのわしには楽は」

とやんわり断ろうとする空海に
「弾き方は私が直接教えるから」と半ば無理やり玄象を抱かせてから逸勢は談勝に向き直り、

「…という訳で夕べのお勤めが終わってから一時(ひととき)はこの者の拙き琵琶の音でうるさくしても構いませんでしょうか?」
と、許可を取るための一礼がなんとも優美な仕草なので、

ああ、このお方はやはり育ちが良いのだな。と心の深いところで感心した談勝は
「いいでしょう。楽はこの寺の住む者たちの慰めになりますから」
と破顔一笑して許可したのだった。

それから二十日に及ぶ逸勢の空海への特訓は最初は琵琶の構造や撥の持ち方、音階など童に教えるような手取り足取りのものだったが、十日目に簡単な曲をさらえるようになると急に厳しくなり、
「琵琶の音調は楽団の基礎でその音が駄目なら他の全ての奏者の音も台無しにしてしまうのだぞ!そんなことでどうする!?」と激しい叱声が飛ぶほどであった。

これは、昼間梵語の勉強で禮泉寺に通い、疲れて帰ってくる空海に酷なのではないか?と一つ屋根の下に住まう西明寺の僧や遣唐使たちは思ったが、次第に空海の腕が確かなものになってくると、
暗くなるとその音色を楽しみに酒と肴を持って空海と逸勢を取り囲み、

「練習の邪魔はしないから、ただ聴かせてくれるだけでよいのだ。なんというか…聴いている間ここでの生活の不安や焦りを忘れられるのだ」
と言って聴いている間じっと目を瞑って遣唐使たちはそれぞれの物思いに浸り、時には故郷を思い出して涙ぐむ者までいた。

練習が終わると逸勢は盃を二つ出して、
「この酒ならお前は抵抗ないんじゃないか、と思って」と市場で買った葡萄酒を少し注いでから空海の掌の上に乗せると空海は
「花のような香りですね」と言って一舐めして「甘い…!このお酒なら大丈夫な気がします」と杯の酒を一気に飲み干した。
はは…そんなに急ぐと酔うぞ。と笑って逸勢は杯を重ね、やがて酔いが回ると

ここから先は異国でしか言えない話なんだがな、と念を押してから

「私みたいな貴族の息子がどうして危険を冒してこの唐国で学んでいるのか、と不思議に思ってたんじゃないか?はは…解ってる」

貴族や役人は出世の為、僧侶は最新の仏教を学ぶため、と理由は決まっている。

私はひいじいさんが皇族葛城王(こうぞくかつらぎおう)こと橘諸兄(たちばなのもろえ)だが、じい様の代に冤罪を着せられて今や橘の家は落ちぶれだ、父の入居(いりい)は5年前に死んだ。

周りの者たちは私が橘氏再興の野望を持って遣唐使を志願したのだろう、と思っているだろう。
でも違う本当は…故国から、貴族政治の醜さから逃げているのだ。

空海、私は幼い頃から表に出ない侮蔑と嘲笑を受けて育ってきた。
賜姓皇族というのは血筋がいいから表面上は丁重に扱われるが、いざ政争の負け組となったらその命は紙よりも軽い。

私のじい様、奈良麻呂は謀反の罪を着せられ
藤原仲麻呂に逆らえなかった藤原永手(ふじわらのながて)百済王敬福(くだらのこにしききょうふく)船王(ふなのおう)に寄ってたかって殴り殺された。もちろん冤罪でだ。

父上もそんな奴らに媚びへつらって生きていくのは辛かったであろうと今では思う。

私は生来人一倍他人の気持ちに敏感な性質で、人の多い所から帰ると決まって吐いて寝込んだ。

父上に相談された陰陽師は、逸勢さまは人の悪意を吸い取りやすい体質なのでしょう、このままでは業の深い貴族たちの中で長くは生きられません。と答えた。

ではどうすればいいのか?と父上が問うと

「楽を、特に糸ものの楽器は体の邪気を祓います。そしてできるだけ美しいものに触れさせてお育てするのです」と陰陽師が勧めた通り父上は最高の師を付け私に楽を習わせた。腕が上がるにつれて私は人並みの健康を取り戻した。

しかし、長ずるにつれ自分の立場が血筋がいいだけの落ちぶれ、というのが解って来て私はもう生きているのも嫌なくらいの気鬱に襲われるようになった。

私はますます人を避けて書や絵画など美しいものの探求にのめり込み、人付き合いの悪い若様、と呼ばれるようになった。

ああ、人の本音が作り出すこの世とはなんと汚いものか。
 
このまま諦めて生きて死ぬのを待つしかないのか…と思いながら生きていた18の時、人生に光が差した。

それは亡き叔父、橘清友(たちばなのきよとも)の邸に食糧を届けに行った時だった。ちょうど雪解けの陽が邸のある一画の廊下を照らし、中から一人の少女が出てきた。

私はあんなに美しい姫は初めて見たよ…雪のような白い肌に涼やかな目鼻立ち。

清冽、と表現していいくらいの美貌だった。程なく姫は廊下に出たことを母親の田村媛に叱責されて部屋に閉じ込められてしまった。

その姫が4つ年下の従妹、嘉智子(かちこ)であると後で父に知らされ、

「あの姫はいずれ親王様に差し上げるお方だ。決して寝所に忍ぶなど軽はずみな真似をしてはいけない!」 

と念入りに注意されたよ。
一年後、嘉智子は親王様の元に召され格別な御寵愛を受けていると聞く。
ふふ…大それた話だろう?空海。

確かに、親王様の寵姫に恋しているという打ち明け話はこの唐国の空の下、皆が寝静まった夜中にしか聞けない。と空海は思った。

「では、逸勢さまが海を渡ったのは…その姫の為に」

こくり、と肯いた逸勢は

「嘉智子の夫君である親王様が皇嗣に決まった時、あの姫を外戚として守ろう。と初めて人生に目標が出来たのだ。そのためになら出世だってなんでもしてやる。遣唐使の話が上がった時真っ先に志願して、いまはこうしてお前と酒を飲んでいる…人生とは不思議だな」

「ほんまそう思います」

そろそろ酔いが回って眠くなってきた逸勢は杯をしまうと

「なあ空海、人間とは今日一日さえ生きていたくない位の絶望を胸に抱えていても、現世にひとかけらの美を見いだせていればなんとか生きていけるものなのだな…」

と言って自分の部屋に帰って行った。

二十日目の夜は満月の美しい夜だった。逸勢は自分の琴を寺の広場に置いて空海の琵琶と楽合わせをやることにした。
この急ごしらえの月見の宴に遣唐使や寺の僧だけでなく近所の住人まで珍しがって見に来ている。

「やあ、月が清らかで美しいな」とたどたどしい唐語で挨拶すると逸勢はすっと腰を落として琵琶を構えた空海に目で合図すると呼吸を合わせて、

夜の帳を白く照らして落ちる月の光よりも澄んだ音色と音と音の合間にかき鳴らす甘い音声の琵琶との完璧な調和による調べに、皆、息をするのも忘れたように聴き入った。

ああ逸勢さま。こうやって音を合わせて初めて分かるものがあります。

楽を鳴らす者や歌を歌う者
和歌や詞を作る者
絵を描く者や花を飾る者…

およそこの世に美しさを体現しようとする者は

虚心であらねばならぬ。

美を飾ろうとするものその心に一片の野心でもあれば、心の月に曇りが差して、

やがてそれはたやすく他者にも伝わるのだ。

逸勢さまの音はまさしく虚心の音色、よくぞここまで!

およそ四半時(30分)かけての演奏が終わり、息を付いて逸勢が顔を上げた時、

「空海、なぜ泣いているのだ?」
と怪訝そうに声を掛けた。空海だけではない、周りの聴衆の全てが或いは目頭を押さえ或いは嗚咽さえ漏らして、泣いているのだ。

はて、私何かしたかな?というように首をひねってから逸勢は改まって空海に向き直り、諭すように言った。

「私はもうひとりで大丈夫だから…心配いらないからお前も人生の大事は一人で行け。青龍寺に無理に霊仙どのを誘おうとするから不仲になるんだ」

と胸の内の悩みをずばりと言い当てられた空海は玄象をしまってから涙を拭き、

「今から霊仙はんに謝って来ます」と言って広場を後にした。

果たして、楽の音で一番慟哭している僧、霊仙が裏口の地面に額と両手を打ち付けている姿を見つけた空海だが、

済まない…空海、済まない。二年で帰るだなんて私には無理だ!私にはお前ほどの若さも覇気も無い。この国で生き甲斐を見つけてしまったのだ…。

という呟きを聞いて思わず物陰に隠れてしまった。

「どうやら霊仙は二人の三蔵法師に籠絡(ろうらく)されたようだ」と背後から空海に囁いたのは西明寺の唐僧、志明(しめい)である。

「かいつまんで言うとこうだ…
般若三蔵(はんにゃさんぞう)さまはご自分の事業である大乗本生心地観経(だいじょうほんじょうしんちかんぎょう)の翻訳の後継者を禮泉寺に通う優秀な僧から選ぼうとお考えになった。空海と霊仙、おまえらが候補に上がったのだよ。
しかし、牟尼室利三蔵(むにしりさんぞう)さまはそれは外国の留学僧の引き抜きになるから倭国を怒らせはしないか?誘うなら一人にした方が、と年上の方の霊仙を選んで口説いた。結果、霊仙は落ちた」

そうか、ここひと月ほどの霊仙はんのどこかよそよそしい態度は、自分が青龍寺に一緒に行こうと誘ったからではなく…

帰国せず般若三蔵さまのもとに留まろうと心に決めていらっしゃったからや。

「なあ空海、お前はまだ若いが霊仙は四十半ば。帰国して出世したところであと何年生きられる?経典翻訳の第一人者に認められ、輝かしい方の途を見せられたら帰国するより…」

とそこで言葉を切って空海の肩をぽん、と叩いて、

「ま、頭のいいお前にも、年を取らなきゃ解らん人の気持ちもあるんだよ」
と言ってから志明はその場を去った。

月光の下で哭き続ける霊仙の影に空海は、

霊仙はん、貴方のお気持ちも知らずにほんますんまへんでした…と心から謝した。

わし、ひとりで青龍寺に行きます。
















































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登場人物紹介

空海、本名は佐伯真魚。香川県善通寺市出身の裕福な豪族のせがれ。学業優秀で長岡京の大学寮に入るが、そこで遭った悲劇が彼を仏門に向かわせる。

嵯峨天皇(神野親王)桓武天皇の第二皇子。

問題だらけの平安京に真の平安をもたらす名君。空海とは生涯の友になる。欠点、浮気性でパリピ。

橘嘉智子

嵯峨天皇に最も愛され、橘氏出身の唯一の皇后となる。仏教への傾倒は人生から逃げる術。

私は和気清麻呂。「これから起こる悪い事全部怨霊のせいにしちゃいましょう」と御霊信仰の悪知恵吹き込みました。

本音?桓武帝が起こした人災だろーが。

藤原薬子です。後に悪女呼ばわりされる私も言い分いっぱいあるんですのよー

嘉智子さまお付きの女童、明鏡です。薬子登場でなんだか不穏な予感…

空海に山岳修行教えた勤操ですぅ〜。時々奈良仏教の中間管理職としてぼやきます。桓武帝と戒明じいさんとの因縁ってなんやろな?


役行者六代子孫にして作中最もヤバいおっさんタツミ登場。わし空海のエグい修行生活のはじまりです。

新キャラ藤原葛野麻呂、空海を唐に連れて行く貴族です。私の顔は東寺の帝釈天像がモデルです。イケメンですよー。

兄貴、自分の息子の誕生祝いで不倫ばれてんじゃねーよ…って親父に対して正論で返してるし!義理の叔父、田村麻呂初登場。

by嵯峨帝

ふっふっふ。俺様は修験者の頭タツミ。真魚よ、よくぞ試練を乗り越えたな…っていつまでも妻の手握ってんじゃねえ!

若き日の坂上田村麻呂も絡む平安ミステリー、藤原種継暗殺事件の真相です。


最新話まで話を読んできた登場人物全員の心の声


「そりゃ祟られるわ!!」

実在した前の遣唐使僧、戒明です。史実上の真魚との接点は不明です。唐から偽経を持ち帰ったとして失脚してた私の名誉回復をしてくれたのは空海だから最初に出会った師として登場。

荒行の末に悟ったもの。仏性、すなわち人の心なり。善行も悪行もそれを行う人の心次第。

やっぱりわたくし、親王さまを好きになっていたのね。(浮気者だけれど)

多治比高子です。嵯峨帝側室として寵愛された理由はインテリだった設定。

あれ?「あの四重奏ドラマ」のエンディングシーンみたいなことしてない?

三行指帰現代語訳コント風、はじまりまじまり〜

何これ⁉︎空海の書いた話おもしれーじゃん!と吠えて宮女に叱られる神野。三教指帰は日本初の小説と呼ばれる。

空海、実家に帰る。真魚が一番可愛いお母さん。激烈お兄ちゃん、実家あるあるな心配するお父さん。

空海の実家をそのまま父親の名前にしたのはオヤジ、ありがとう…グスッ(泣)の気持ちやったんや。

後の法相宗のトップにして東日本に仏教を伝える男、徳一の本心。

高雄山寺プロレス回。奈良仏教の裏番長、実忠しれっと初登場。

やっと最澄登場。美坊主泰範のせいで既に不穏な比叡山寺。

ある意味最強キャラ、朝原内親王登場。

飛べない小鳥、から明鏡の出生の秘密編へ。

尚侍明信の罪は亡国の姫、明信の若き日の過ち。

「陽の下の露」冬嗣の長男、藤原長良誕生。ちなみに薬子と葛野麻呂の不倫関係は史実です。

「風が吹く」遣唐使に選ばれなかった空海に起こったありえへん奇跡。それにしても徳一口悪ぃな。

桓武帝が仏教勢力を叩いた理由は脱税摘発のため。しかし宗教法人を使った脱税って1200年経った今でもやってますなあ。

「受戒」どーもどーも、三論宗のアイドルにして空海の頭を剃った勤操ですぅー…ってじいさんどないしたー⁉︎

最初の師戒明との別れ。わし、行ってきます。

「船乗り星」朝廷も一目置く宗像氏の濃いマダム登場。

どうもー、空海を唐に送り最澄を唐から連れ帰ってながらも後世にほとんど知られていない葛野麻呂。ここでは準主役です。

徳政論争回。現実的にこれ以上の東国進出は無理だった。徳川家康の次に鷹狩り好きな歴史上の人物として有名な桓武天皇の最後の鷹狩り。

仙境天台山、思えばこのひと時が最澄の一番の幸福だったかもしれない。

「崩御と即位」皇帝陛下の崩御と新皇帝の即位に立ち会っちゃった俺って持ってる〜。からの、カネが無いから2年で逃げ帰れ命令。

「聖俗同船」帰国できなかった遣唐使もいるんですよ…葛野麻呂の最澄へのツンデレっぷりをお楽しみ下さい。

「密の罠」帰国した途端最澄に降り掛かる悪意。

平安京を開いた帝の最期。これから不穏な平城朝が始まるー

秀才、橘逸勢にトリプルの悲劇。留学生たちの寂しさを癒す楽の音。

恵果と戒明との邂逅から三十年。やっと後継者に出会えた恵果。

まるで唐密教の滅びを予測していたかのような恵果の発言。実際にそうなります。

「遍照金剛」かくして遍照金剛空海誕生。で、何で俺様がナレーション?

「柳枝の別れ」長安出立前夜に明かされる霊仙の正体。次回から日ノ本、平城朝編。

「平城朝」最後の薬子の表情は読者さんのご想像にお任せします。

「春宮神野」

宮中も 女子回なければ やってらんない

by明鏡 字余り

「天皇の侍医」官僚として、医師として苦労する弘世の人生が始まる。

「謀」とうとう粛清に向けて動きだした薬子。朝原内親王、神野に迫る毒殺の危機。

「比叡山夜話」最澄に迫る危機。平城帝の悪意。

「翡翠の数珠」空海のせいでまた逸勢がヒドい目に遭うお話。

「阿保の本音」父平城帝への不信感が募る阿保親王。後に彼と妻の伊都内親王から生まれたのが在原業平。

前半の薬子の兄、仲成が起こした暴行事件。これ史実です。後半の勤操の述懐は創作ですが。

「咎人空海」空海、やっと帰国。あの三姉妹再び登場。

「海辺のふたり」空海だけを都に帰さなかった藤原縄主の思惑とは。この時代、芋粥は極上スイーツ扱いでした。

「白雪」兄帝の危険性を思い出す神野。

「神泉苑行幸」策謀に満ちた宮中。筑紫で布教を始める空海に届いた悲報…

「藤原家の毒薬」いつの世も女の仕返しって陰湿なのよねえ。

「譲位」嵯峨天皇が即位した夜に明かされる伊予親王の死の真相。冬嗣の胸に去来するのは怒りか、諦めか。

「実ちて帰る」主人公2人がやっと初対面。次回から第3章「薬子」のはじまり。

わたくし藤原薬子が主役の章、「薬子」、開始ですわよ。空海阿闍梨、神野の坊やとの初謁見でいきなりド不敬発言。

「橘の系譜」女性天皇が女性の部下に姓を与えた女性が始祖の橘家。

明鏡、家族と再会し、そして母になる。

「背徳」性描写あり。そして、薬子は悪女になった。

「真言の灯」最澄さまの千利休感と人手不足の密教。ある事で滅多になくブチ切れる空海。

「宮女明鏡」嵯峨後宮ベビーラッシュ。身籠った明鏡がこれまでの人生を振り返る。

「阿修羅」、怒らせるとシャレにならないレベルで怖い空海のダークサイド。

「東国の勇者」アテルイ回前編。13000vs500で朝廷軍にに勝利した巢伏の戦いと田村麻呂との対話。

「王の器」アテルイと田村麻呂の物語、後編。胆沢制圧戦後のアテルイ、田村麻呂、桓武帝。

真の王の器は誰にある?

どぅもー、宮中のイケオジ葛野麻呂です。「負の遺産」、宮女同士のマウントバトルが怖ぇわ…

「征夷大将軍殿の憂鬱」田村麻呂、愛妻とのフルムーン旅→ヒリヒリするような駆け引き。

「小鳥立つ」明鏡、13年ぶりに父との対面で思い切った決断を告げる。そして運命の子は誕生した。

「火の継承」

この時代の年明けのお祭り、修二会。ググった結果検索トップがさだまさしの「修二会」だったので公式の自分がまさしに敗けて悔しい実忠。

「智泉の祈り」

嘉智子さまへのマタハラ案件、「皇子を産め」とのたまう橘家の兄君たちにブチギレる空海阿闍梨。

「豪奢なる遁甲」嵯峨天皇vs平城上皇最後の争いが万葉サーカスの歓声の中始まる。


この回から三人目の主人公、ソハヤ登場。

「私刑」

池波か!とツッコミ上等な回。法具を本来の目的(明王の武器)で使う空海。

「なるほど、これがお役所仕事か」by嵯峨天皇

「隘路」、暗殺者集団土蜘蛛vsタツミ率いる修験者たち。薬子の変クライマックス前編。

「火宅」一万字越えの大作です。嵯峨天皇vs平城上皇最後の戦い後編。


藤原薬子と語らう老婆の正体は…

「徒花散る」失脚がそのまま死に繋がる全然平安で無かった平安初期の、最後の政変。


勝ってもあまり嬉しくない戦いでしたね…


by田村麻呂

第3章「薬子」終わり。後ろ暗い取引をしてもカッコいい俺様であーる。


by修験者タツミ

第54代仁明天皇こと正良誕生でおめでたい事からはじまる弘仁元年。

「弘仁おじさん」と呼ばないで。

by藤原冬嗣

明けましておめでとうございます。嵯峨天皇の叔母にして宮中屈指の美魔女、酒人内親王です。ここぞとばかりに気合い入った命婦たちのファッションと空海vs朝原の新春disり合い回で御座います…

若い頃の実忠さまはやさぐれていたなあ。

この世でやるべきこともやったし…じゃあね!

by和気広世

嵯峨天皇の兄、良岑安世の恋人の真名井でございます。「九条にて」はさあ、これから庶民と渡来人たちが活躍する平安アンダーグラウンドな物語の幕開け。

空海in伊勢神宮。朝原内親王より託されたとんでもない密命。

エミシ最後の戦士、ソハヤの人生のはじまり。

前半、終了。

険しい高野の山道を抜けるとそこは…異文化レベルの集落だった。

「丹生一族」パツキン彫金師、ムラートです。今回は丹生一族と秦一族と高野山のお話。



奈良の大仏建立時の人に言えない過去。老いた僧ほど暗い秘密を抱えているものなのですよ。

by実忠

「集光」実は、この話で作者は話を終わらせるつもりだったのですが、取材で高野参りをし、そこの宿坊でご住職の説法を聞いた時に「物語のラストシーン」が頭に浮かびあと50話位書く事に。

「田口三千媛」今では虐待と言われる育てられ方をされたと思います。訳を聞かされて納得しても、無理に許さなくてもいいのよ。

「弘仁格式」100年ぶりの法改正にとりかかる嵯峨帝。謎の美僧、泰範の師に対する本音。

平城上皇が会いたかった東大寺の重鎮、実忠の昔語り。前編。光明皇后に仕えた日々。

「光の時代、後」実忠の過去の話。

後半は道鏡事件の真相。

遊女真名井の人生の転機。家族との再会と共に恋人との別れを覚悟する。

「軛」

丹生のシリン姫の花占い。「来る、来ない。来る、来ない…来たあー!」

「灌頂」

死んで生まれ変わりたい気持ちで空海に会いに行った泰範。

最澄はんの「泰範、行かないでくれ」

の熱烈な文が歴史的資料として残っておます。

by空海


ぐすっ、ぐすっ…生きながら生まれ変わる事って出来るんやな…


by泰範

「信源氏」日本史最初の源氏、源信です。あのね、四さいの時にお家(宮中)から出されて明鏡お母様と離されてしまったの。


信源氏物語のはじまりはじまり〜。

高野の麓、天野の里に帰ってきたムラートです。妹の結婚式がゾロアスター教通りの儀式だと⁉️


天野わっしょい物語をお楽しみに。

嵯峨帝と正妻高津内親王との離婚の真相に迫る「高津退場」後宮サスペンス回。

橘嘉智子、立后のお話。

「わたくし、覚悟を決めました」

「常の白珠」

延暦十五年四月(796年5月)、日の本初の公然セクハラ&パワハラの記録でございます。

by明信

あの時は恥ずかしい思いさせてごめんよ…まだ怒ってる?

ねえ明信、こっち向いて(焦)

by桓武帝

お二人とも、犬も喰わない痴話喧嘩を板上でやらないで下さいまし。

by葛野麻呂

「わし、とうとう最澄はんと絶交する覚悟決めました」

空海を本気でブチギレさせた最澄の言動。


そして、高野山開基に向けて動き始める弟子たち。

「高野」

私ムラート、生まれも育ちも高野山でございます。このお山の自然の洗礼に遭う実叡と泰範。

高野を舐めちゃあいけねえよ。


なぜか寅さん口調。

「時鳥」

小野篁初登場回。そして、現世での役目を果たした巫女との別れ。

「落花宴」

民を食わせるために働いた藤原、葛野麻呂の最期。日ノ本初の茶事と花見の宴の記録。



「拠り処」

天皇皇后だってもふもふふくふくで癒されたい。徳一、東国に進出宣言。

「橘秀才」

「弘法も筆の誤り、って肝心な時に大ポカをやらかすって事なんだね」

古今随一の芸術家となった逸勢、空海にツッコミを入れる。

「シリン都に行く」

はーい、私は高野山の麓天野の里に住む主婦シリン。夫に下された辞令で子供たち連れて平安京へお引越しですって⁉️ドギマギしちゃう!

…って魔法少女みたいなあらすじ紹介でいいのかしら?

「篁」

ちーっす、小野篁でーす。僕の風評「なんだかすげえ奴」みたいに言われてるけど、嵯峨帝に出会った頃は脳筋の野生児でしたよ。

「一隅を照らす」

最澄、最期のことば。戒壇認可を遅らせた嵯峨帝の真意。


そして、たそがれ空海。



「進士篁」

ちーっす!篁っす!それでは一句。


竹の子(篁)が ドラゴン桜(三教指帰)で サクラサク


物語の主人公空海阿闍梨から僕に交代っす!

白秋の章、「嵯峨野」のはじまり。淳和帝即位。遡って嵯峨帝による黄櫨染御袍プロデュース秘話。

「正子と正良」

嵯峨上皇と嘉智子お母様の息子、正良(後の仁明帝)です。十四で結婚したお嫁さんが可愛過ぎてキュートなハートにズキンドキン!です。

「祈雨(きう)」

元服した源信信です。空海阿闍梨による伝説の雨降らしの祈祷の裏に蠢く大人たちの陰謀に、

うわあああ…

皆さんお久しぶり。田村麻呂です。平安初期の貴族たちは麻呂麻呂っなくて武士武士ってたんですよ。


ごきげんよう、小野篁です。

(官吏になったのでパシリ口調はやめました)

今回は私のルーツとソハヤ、シルベに隠された秘密が明かされる回です。

「在るがまま」

平城上皇の第三王子、高岳親王です。今回は父の最期の想いと私の出家の物語。


◯ウケンシルバーのモデルになった私の人生の出発でしたねえ。

「哀しい哉」

このエピソード書くために作者、高野山にお参りに行き智泉の御廟(お墓)に手を合わせました。

「天長二年の旅立ち」

久しぶりの金髪仏師ムラートです。東寺の立体曼荼羅完成秘話。あの時の空海さんは某劇作家か!って位ダメ出しして来て参りましたよ…


そしてラスト主要人物、在原業平初登場。

「夫人たちの夏」嵯峨帝の側室、藤原緒夏です。後宮で生きる憂鬱と高子さまとの友情の回。


「頭の冬嗣」

今年の◯河はやり過ぎちまった私の愚孫どものいざこざですが一人ちゃんと遺言を守った奴がいたようです。

「心の中の明王」

篁と徳一の出会い。東国にて。

空海と最澄を支援した破天荒僧侶、勤操の最期。さよならだけが人生や。

喫茶去(きっさこ)は禅語で「ま、茶でも一服」の意味。人生最後の対面を惜しむ主人公二人。

「光明」全ての務めを終えた空海の眠り。次回から次世代編へ。

「流人篁」百人一首で有名な「わたの原」から始まる篁の反骨最骨頂行動と流人生活。


ちゃっかり現地妻作ってました。

「落日」

葛野麻呂の息子で遣唐大使、藤原常嗣サイドの最後の遣唐使節の行程。


支援者の張宝高は新羅の海将で外交官で大商人。

この回のゲストは唐代の大文人。

「円仁の旅・使命」

どうも、遣唐使団からバックれた不法滞在僧侶の円仁(最澄の弟子)です。私の9年以上に及ぶ旅はいきなりホラーな展開から始まります。

実質、最後の遣唐使である円仁の旅の後編。空海より託された三つの遺言は果たしたものの武宗による仏教弾圧を受ける苦難の復路。オカルトな場面あり。

「胡蝶」

「胡蝶の夢」になぞらえた常嗣の帰国後の辛い立場と責任を感じる篁。二人とも苦しんだんだ。

「観月」

嵯峨上皇が家族たちにそして遥か未来の子孫に向けて述べた言葉。

人生最後の観月の宴。



「草木のままに」

我が夫、嵯峨天皇の最期。お休みなさい、あなた…


あと10話で完結です。

最終章「檀林」、それはカリスマ嵯峨天皇が去るのを待っていたかのように始まった粛正の嵐。

承和の変。三筆最後の一人逸勢の退場。

「繭」政変で息子、仁明帝の行いと本心を知った皇太后嘉智子の絶望。

「反骨の種子」政変の真相を知った篁の決意と、蹂躙される政変の敗者の家族たち。

昔男、と呼ばれたチャラいクズ。在原業平の奔放な恋の本心は…な回。

「椙山にて」この日、エミシの武人親子三代の真相が知らされ祖父の願いがシルベに託された。

「橋を架ける」

言葉を大事にして秩序を保つのも、言葉をぞんざいにしてこの世を地獄同然にするのも全て、人間の行いなのだと思います。


この国の教えの百年先を見越して禅僧を呼び寄せた国母、橘嘉智子。

「参議篁」

私の少年期から始まる篁四部作これにておしまい。良房の企みなんて知ったことかよ。

「襲撃」

日本初の警察機構である検非違使に務める下級役人、志留辺の人生の転機。

「桜」宮中編「一代限りの橘」の物語、これで終わりでございます。

この長い物語、次回の「平安時代」で完結です。



「平安時代」さてさて、ラストシーンで新しいバディが組まれ、彼らの本当の人生が始まります。


皆が知っている「平安時代」はこれから始まるのです。

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