第52話 謀

文字数 6,735文字

ねえねえ、最近春宮さまはご機嫌斜めのようね。

え?春宮になられてご住居も広くなられて大好きなご入浴の回数が増えてもですか?

えーえ、それはそうなんだけど…

肌がひりひりするほど熱い蒸気の中で(もとどり)を解いて髪を下ろして大量の汗と共に全身の垢が浮き出るのを待つ。
熱で体中の毛穴が開き、羽織っている麻の単衣(浴衣)汗でじっとりと重くなる。仕上げに入浴係の若者二人が交互に桶の水をかけて洗い流してくれる。
この瞬間が東宮での窮屈な生活の中で神野がいちばん、

解放された。と思う時なのであった。

この時代、皇族貴族などの高貴な方々にとって入浴とは、日ごろの邪気を取り払うための(みそぎ)の儀式であり、いくら神野が皇太子といっても吉日しか湯殿に入る事は許されず、故に月に四、五回ぐらいしか髪と体を洗えない。

きょうはちょっと働いただけで汗が滴り落ちる程の夏日。

ご入浴なさった春宮さまはさぞかしお体もお気持ちもさっぱりして上機嫌であらせられることでしょう…と思いきや、

「あのごつごつした手と遠慮の無い力加減、いちいち男どもに触られるだけで私は不機嫌になるのだ。やっぱり柔らかい肌を持ついい匂いのする女人の方がいいっ!」

と嘉智子の太腿に顔を埋めて泣き出すのはこの国の皇太子、神野親王で、

「だからといって入浴係を女人に変えろとでも?
無理です春宮さま。皇太子の身の回りのお世話をするのは春宮坊の若者たちとしきたりで決まっているのですから。いい年した大人がそんな我儘を言うんじゃありません」

と主人を叱りつけたのは嘉智子づきの侍女、明鏡であった。
だって…と嘉智子に頬を撫でられながら抗弁しようとする神野に明鏡は

「いいですか?
春宮坊の役割は次代の天皇のお世話と教育と…護衛という重要なもの。
だから、身元確かで教養があって、武力に秀でた若者たちが神野さまのお世話をするのですよ。
それに最側近の春宮坊は神野さまご自身で選抜なさったじゃありませんか?

いつだって三守さま冬嗣さまなど心やすい殿方をお傍に呼ぶことが出来るんですよ。

ほんっと、いーいご身分ですわねー…」

と相手がぐうの音も出ない位に正論と嫌味を言い返して「次代の天皇」を黙らせた明鏡は「じゃあ私は雑用がありますので」と言ってさっさと部屋から出て行ってしまった。

「なんで私は口げんかで一度も明鏡に勝てぬのだ!?嘉智子」
と悔しがって妻の裳裾の太腿の上に顔を埋める夫に嘉智子は

「明鏡ちゃんは一度も間違ったことは言ってませんから」と何の邪気も無く答えた。

「嘉智子」
「はい、春宮さま」
「お前は兄弟とは親しいか?」
「兄たちとはほとんど顔を合わせぬまま宮中に入りましたが、藤原三守どのに嫁した姉上とは頻繁に文のやり取りをしています」

「そうか、羨ましいな」
「え?」

「私が兄帝のお顔をまともに見たのは、父桓武帝の危篤の時であったよ…なぜか幼い頃から私たち兄弟はお互い近づかぬように育てられた。
同じ母から生まれた兄弟なのにな。

父上にどんなご意向があったのか?崩御なされた今ではもう聞くことも出来ない」

「そんな…両親を同じくする兄弟なのに、ですか?」

嘉智子は驚いた。結婚の形が一夫多妻であるこの時代、一緒に育てられた同母兄弟の絆は強いものだ。と嘉智子は思っていたのだが。

「皇族とはそういうものだよ」

と言ったきり神野は嘉智子の膝の上で眠り込んでしまったので嘉智子は夫の真意を聞けずじまいになった。

兄帝が本当はどういう御方か分からない。

というのが神野が初めて兄平城帝と会話した時の印象であり、腑に落ちぬ点でもあった。

「もう50年前のことだ。父が若き頃、皇族というのは藤原氏にとっては血筋がいいだけの権威の盾でしかなく、皇統として役立つ人間以外は皆、犬でも殺すかの如く粛清されていた時代だったそうな。皇族は絶滅寸前だったと…」

「はい、その話は右大臣神王(うだいじんみわおう)から繰り返し聞かされてきました」

「お前もか?」
と聞いた兄はそこで初めてお顔をほころばせて

「東宮で朕を人として尊重してくれたのは、参議の葛野麻呂と、父の従兄弟の神王だけだったよ。

神王は朕の手を取り

『いいですか?安殿さまの五体には偉大なる天智帝の血と、その第六皇子で一切政争には関わらぬ、と誓った志貴皇子さまの血が流れているのです。誰が何と言おうと誇るべきです』
と言い聞かせてくれた…志貴皇子の子孫である我々が生き残ったからいま天皇家はあるのだ、ともな」

いつまでも東宮に引きこもりの暗愚な皇子。

即位なさったら碌なことにはならない。

と貴族たちは噂していたが、噂流言の類は本当に当てにならないな。と神野はほとんど初対面の兄に対して、
兄上は決して暗愚ではない。むしろ父上よりも強くご自分の天皇としての立場を、自覚なさっているお方だ。
と神野は「私たちは同じ母を持つ兄弟、こうして手を取って問題山積の内政を整えて行こう」と兄帝に優しく手を握られながら思った。

しかし、心の何処かで兄上を信じきってはいけない。という危惧を同時に抱いたのも事実である。

その様子を傍で見ていた冬嗣から
「帝はご自分が弱い人間と解っていらっしゃる故『人たらし』を武器にしようとなさっているのが見え見えですね。あなたは次の天皇だからこそたらされてはなりませぬぞ」と後で忠告されたので神野は

「では、人は何によって人の虜になると思う?」と冬嗣に問うと即座に

「甘い言葉、丁重なもてなし、そして施しですね」と答えが返り、

さらに
「力の弱い民は施しを受けたら一生恩に着るという習性があります」
と重ねて付け加えたので
「何が言いたい?冬嗣」と問うと、

「施しとは、安い経費で人を虜にする最上の手段だ、ということです」

と涼しく笑って冬嗣は答えた。

兄帝の危険性を告げるとともに朝廷が仏教勢力を利用してきた本当の理由を端的な言葉で伝えた冬嗣はとはとんでもない切れ者であるよ。
だが、自分より能力が無い、利用価値がないと思った人間に対してはどう出るのかな?

「私がこの世で最も信用できる義理の兄でございます」と三守が推薦したので北家の藤原冬嗣を春宮坊に任じて傍に付け、彼が大判事として行ってきた仕事の内容や今の政への意見を聞くにつけ、

百年近く前に制定された律令自体が、今の世の現状とは合わないものになってきている。律令改正を急ぐべきだ。と強く思うのだが…今の自分は律令どころか東宮のしきたり一つ変えられないではないか。

律令を変えられるのは、天皇に即位して詔を出してからだ。自分はいつになったら即位できるのか?

と最愛の女人の膝でまどろみながらも頭の中は政治の事で思考が止まらない神野であった。

春宮さまは今日はお休みのようね…
と御簾の外から様子を窺っていた明鏡が休憩部屋に行くために廊下を渡ろうとすると、前を歩きながら文を見ている貴命のうしろ姿があった。

高く結い上げた一髷に簪二本を差した豊かな黒髪、少しうつむいた睫毛の長い横顔に何か不安なものを感じ取った明鏡は、

「何かございましたか?」とつとめて穏やかな口調で貴命に背後から声を掛ける。
驚いて振り返った貴命は相手が明鏡だと解るとなんだ…とほっとした表情になって「ねえ、次の春宮さまの吉日は確か七日後でしたわね?」といきなり尋ねた。

「はい、そうですが」と答えた明鏡に彼女は黙って持っていた文を差し出した。
文は貴命の兄で陸奥鎮守将軍の教俊(きょうしゅん)から送られたもので、その内容はというと…
今度の吉日に我が娘を春宮さまに差し上げるので、叔母であるお前によろしく頼む、という内容であった。

「では、姪御さまが七日後に東宮にいらっしゃるのですか?」
「そういうこと」と貴命は鷹揚にうなずいて「年は十四になるからあまり世話はかからないと思うわ。名は慶命(きょうみょう)というの。ま、よろしくね」と軽く明鏡の肩を叩いた。

「貴命さまの姪御さまだからさぞかし華やかな美人なんでしょうね」
と文を折りたたんで貴命に返しながら明鏡が言うと貴命はこの子は…とでも言うように大仰にため息をついて
「あんたほど自分の美しさに無頓着な娘はいない。そろそろ気を付けなさいよ」と今度はばん!と明鏡の背中を叩いてから先に機織り部屋に戻って行った。

はて、自分の美しさとは?と首をひねりながらも明鏡は
そうか、神野さまが春宮になられたんだから貴族家がこぞってお妃に、と娘を差し出すのは当然のことよね。

嘉智子さまが近い将来他の妃と寵を争うことになるとは…と休憩部屋で好物の瓜をかじりながら考えた。

後宮争いなんて、あのお方には一番向いていない事なのに。


この日の夕方は西日が邸に当たり、高貴な男たちが苛々してまうくらいの暑さであった。

「まったく帝の人を見る目の無さにはほとほと呆れ果てたぞ。仲成(なかなり)のごときどこにも使いようがない『くず』を右衛門督に任じ重用なさるとはな!」

と同じ北家の参議、葛野麻呂に毒づくのは単衣に袴姿でくつろぐ右大臣、藤原内麻呂。いつも蝋燭のような白い顔が怒りと暑さで赤くなっている。

「しかし内麻呂どの、仲成は出雲、越後、山城、大宰、大和、伊勢といくつも地方任官を重ねてようやく宮中に参内できる身になったのですぞ。式家藤原種継の長男と血筋も確かで、尚侍の実兄なのですからその人事は当然かと」

と、ぬるい酒を口に付けながら葛野麻呂が意見すると内麻呂は目線を上げて葛野麻呂の顔を見据え、

「おまえ、解っててわざと我に意見しおるな」
と急に意地の悪い笑みを浮かべた。

「仲成のやつが長年地方任官を繰り返してきたのは、低能過ぎて素行も最悪だから先帝がわざと中央に呼ばなかったのだ。
…いや、やはり種継の息子だから後ろめたさもあったのかな?」

「私もそのように思います」と言い置いてから葛野麻呂は杯を置き、
「何者かに暗殺された種継の遺児が兄妹そろって帝に侍るようになった…
薬子は色を使うことしか能の無い女で、仲成は何処とも使いようがない屑、じきに専横するのが目に見えております。式家も人材が尽きましたね」

脱いでもよろしいですか?と邸のあるじに断ってから葛野麻呂も汗を吸った衣を脱いで内麻呂と同じ格好になった。

まったくだ、と内麻呂はうなずき
「式家で使えるのは参議の緒嗣と大和守の縄主しかいなかったのに、帝は妻を奪うために縄主を太宰府に左遷してしまった。帝は六年前の不祥事をちっとも悪いと思っていない。むしろ問題の女を呼び戻して地位を与えて佞臣どもを集めなさる一方…頭が痛いわ」と苦い顔をした。

「式家も終わる時が来たんじゃありませんか?」

と葛野麻呂がにべもなく言ったので内麻呂ははっと顔を上げた。彼は、薬子と葛野麻呂が肉体関係であったことをもちろん知っていた。
「情を通じていた女にようもそこまで言えたもんだな…」と内麻呂は呆れたが、

「至尊の地位にあるあのぼうやを喜ばせる閨事は仕込みましたが、私はあの女には一片の情も寄せてはいませんよ?」

その言葉で内麻呂はようやく葛野麻呂の真意を汲み取り、ふ…ふははは!と肚の底から笑い声を上げた。

ひとしきり笑ってから
「お前は我よりも恐ろしい男だな。解った。この内麻呂いま決めたぞ。北家一丸となって力を合わせようではないか。我は何をすればよい?」

との右大臣内麻呂の申し出に
「なに簡単なことです」と一言意見を述べてから今度来る時は氷で冷やした酒を所望してから葛野麻呂は夜遅くに内麻呂邸を辞した。

北家内麻呂の長男、真夏と次男、冬嗣が揃って呼び出され、起こされたのは真夜中で熟睡していた時だった。

腫れぼったい顔を見合わせた兄弟は父上のこのような刻限での呼び出しとは余程のことだろうな、と思い程なく父内麻呂が夜着のまま現れ、兄弟は揃って畏まった。

「真夏、冬嗣。かかる夜分に呼び出して済まない。しかしこれから北家全員で事にかからねばならない一大事と心得よ…今度の吉日、我が娘の緒夏(おなつ)を春宮さまに差し上げる!」

いよいよ北家も後宮に姫を送り出す時が来たか!
せがれ達の目つきが鋭くなるのを確認した内麻呂は、
冬嗣に比べて真夏は心優しく覇気が足りぬ、と不甲斐なく思うておったが…やはりこの子達に藤原の血が流れておったか!と思うと愉快でならなかった。

帝の妃、朝原内親王さまと尚侍薬子に不和あり。

との情報が命婦の三善高子から明鏡にもたらされたのは、春宮神野が新しい妃ふたりを娶る前夜のこと。

「…それで、どのような事があったのです?」
朝原さまを怒らせるとはあの式家の女、どんな失態をしでかしたのか?
東宮宣旨の職にあった時もあの女の仕事ぶりは優秀だった。
娘婿である安殿さまと通じた以外は。
と明鏡は元東宮の宮女たちから聞いていたので意外な気持ちで高子の話に耳を傾けた。

「子細はこうです」

自分の杯に酒が注がれた時、朝原内親王はそれが毒入りだ、とすぐに見破った。
13年間斎王として伊勢神宮に住まうていた朝原には、常人には見えないものが見え、人の運命の行く先が解る、強い霊力が備わっていた。

「だって、薬子自ら酌してくれたお酒が、私には墨汁みたいに真っ黒に見えたんですもの」

それは、平成帝が妃たちを集め親睦を深めようと開いた宴席での事だった。

それは分かりやすく言えば一番位の高い妃である朝原に、平成帝の愛人薬子が一服盛ろうとして見破られた。そういう大事である。

黒い酒で満たされた杯を見つめながら朝原は、いまここでこの女を咎めてはお兄様は逆上して裏目に出るわね、と状況を冷静に考え…
「私はお酒は好きなのですけど、今宵は潔斎に入っているので飲めないの。だから、薬子あなたがお飲みなさい」とそのまま薬子に杯を渡しただけである。

やはり朝原さまの霊力は本物だったか!と自分の黒い謀を見破られた薬子は…

「どうした?薬子」とお側にいた平城帝がいぶかしがる程狼狽した。

「飲みなさいよ」
朝原は落ち着き払った態度で薬子に毒酒を勧める。杯から酒がこぼれる程に薬子はがたがた震え、しまいにはあ…と声をあげて杯を取り落としてしまった。

その酒が朝原内親王の裳裾を汚してしまったので
「なんという不始末なの!気分が悪しゅうなりましたわ。行きましょう大宅」
とその場で妹の大宅内親王を連れて宴席を立ち去り、それ以来後宮の自室に引きこもったままである…

「立ち去る時に
『もし後宮の女たちに何かがあれば、尚侍の不始末として責任を取って貰いますからね』

と薬子に釘を刺しておいたけど、私の一言で後宮の全てを守りきれる訳ではない…まずは東宮の神野を守らなければ」

と朝原内親王は三善高子に命じて神野に一番近い侍女である明鏡に危険を知らせたのだ。

「では、侍女、春宮坊の中から式家寄りの者を洗い出してそれとなく神野さまから遠ざけなくては、ですね。お任せ下さい」
言って明鏡はぎゅっと片目をつぶってみせた。

「ええ、今夜の内に東宮にいる者すべての身元を洗い出すから」
と高子は優秀な侍女に育ったわね。
と自ら教育した少女を頼もしく見つめ、では、と神野と嘉智子が共寝する部屋の前から辞した。

「朝原の姉上に一服盛ろうとするとは…大胆過ぎる女だね」

と背後から神野の声が聞こえたので明鏡は「起きてらっしゃったのですか!?」と嘉智子を起こさぬように声をひそめて御簾ごしに神野に話しかけた。

「父上がいつも言っていた…『佞臣は全ての悪政の元だ』と。兄上はそうと気づかずに佞臣を集めていらっしゃるようだ」

「でも和気の広世さまは佞臣ではありませんよ」

「うん、あの者は望まず宮仕えになり、医僧の代わりをさせられているだけだ。可哀想に」
神野と明鏡は御簾越しに背中合わせになって座り、互いの体温を背で感じながら会話した。
「また…誰かが狙われるのでしょうか?」
「そうだろうね」
「またそんなお気楽な!」
と明鏡が眉を跳ね上げるといきなり御簾の下から神野に手を握られ、明鏡は一瞬たじろいだ。

殿方と手を繋ぐ。それは明鏡にとって生まれて初めての体験だった…
「どうした?やけに汗ばんでいるぞ」自分の胸の鼓動が頭の中でとくとくと鳴り響く。
指をからめてくる神野に何故か抗えない自分が不思議でならない。

御簾の向こうから出てきた神野に抱き締められても唇を吸われても力が抜けて愛撫される心地よさにされるがままになった。

「私が一番好きなのは…」熱い吐息混じりに言おうとする明鏡を
「分かってる」とその花びらのような唇を吸って神野は嘉智子が熟睡している横の帳の裏に明鏡を抱いたまま引き入れ膨らんだ乳房に顔を埋めた。

私、今夜どうしちゃったんだろう?
と戸惑いながら神野を受け入れている明鏡は神野の身体から漂う香の匂いと初めての体の感覚に陶然となり、やがて頭の中いっぱいに夜空の星が弾けた。

好きです神野さま…
気を失う直前に呟いた明鏡の言葉に、
「ずっと前からわかってた」
と神野は律儀に答えた。

























































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登場人物紹介

空海、本名は佐伯真魚。香川県善通寺市出身の裕福な豪族のせがれ。学業優秀で長岡京の大学寮に入るが、そこで遭った悲劇が彼を仏門に向かわせる。

嵯峨天皇(神野親王)桓武天皇の第二皇子。

問題だらけの平安京に真の平安をもたらす名君。空海とは生涯の友になる。欠点、浮気性でパリピ。

橘嘉智子

嵯峨天皇に最も愛され、橘氏出身の唯一の皇后となる。仏教への傾倒は人生から逃げる術。

私は和気清麻呂。「これから起こる悪い事全部怨霊のせいにしちゃいましょう」と御霊信仰の悪知恵吹き込みました。

本音?桓武帝が起こした人災だろーが。

藤原薬子です。後に悪女呼ばわりされる私も言い分いっぱいあるんですのよー

嘉智子さまお付きの女童、明鏡です。薬子登場でなんだか不穏な予感…

空海に山岳修行教えた勤操ですぅ〜。時々奈良仏教の中間管理職としてぼやきます。桓武帝と戒明じいさんとの因縁ってなんやろな?


役行者六代子孫にして作中最もヤバいおっさんタツミ登場。わし空海のエグい修行生活のはじまりです。

新キャラ藤原葛野麻呂、空海を唐に連れて行く貴族です。私の顔は東寺の帝釈天像がモデルです。イケメンですよー。

兄貴、自分の息子の誕生祝いで不倫ばれてんじゃねーよ…って親父に対して正論で返してるし!義理の叔父、田村麻呂初登場。

by嵯峨帝

ふっふっふ。俺様は修験者の頭タツミ。真魚よ、よくぞ試練を乗り越えたな…っていつまでも妻の手握ってんじゃねえ!

若き日の坂上田村麻呂も絡む平安ミステリー、藤原種継暗殺事件の真相です。


最新話まで話を読んできた登場人物全員の心の声


「そりゃ祟られるわ!!」

実在した前の遣唐使僧、戒明です。史実上の真魚との接点は不明です。唐から偽経を持ち帰ったとして失脚してた私の名誉回復をしてくれたのは空海だから最初に出会った師として登場。

荒行の末に悟ったもの。仏性、すなわち人の心なり。善行も悪行もそれを行う人の心次第。

やっぱりわたくし、親王さまを好きになっていたのね。(浮気者だけれど)

多治比高子です。嵯峨帝側室として寵愛された理由はインテリだった設定。

あれ?「あの四重奏ドラマ」のエンディングシーンみたいなことしてない?

三行指帰現代語訳コント風、はじまりまじまり〜

何これ⁉︎空海の書いた話おもしれーじゃん!と吠えて宮女に叱られる神野。三教指帰は日本初の小説と呼ばれる。

空海、実家に帰る。真魚が一番可愛いお母さん。激烈お兄ちゃん、実家あるあるな心配するお父さん。

空海の実家をそのまま父親の名前にしたのはオヤジ、ありがとう…グスッ(泣)の気持ちやったんや。

後の法相宗のトップにして東日本に仏教を伝える男、徳一の本心。

高雄山寺プロレス回。奈良仏教の裏番長、実忠しれっと初登場。

やっと最澄登場。美坊主泰範のせいで既に不穏な比叡山寺。

ある意味最強キャラ、朝原内親王登場。

飛べない小鳥、から明鏡の出生の秘密編へ。

尚侍明信の罪は亡国の姫、明信の若き日の過ち。

「陽の下の露」冬嗣の長男、藤原長良誕生。ちなみに薬子と葛野麻呂の不倫関係は史実です。

「風が吹く」遣唐使に選ばれなかった空海に起こったありえへん奇跡。それにしても徳一口悪ぃな。

桓武帝が仏教勢力を叩いた理由は脱税摘発のため。しかし宗教法人を使った脱税って1200年経った今でもやってますなあ。

「受戒」どーもどーも、三論宗のアイドルにして空海の頭を剃った勤操ですぅー…ってじいさんどないしたー⁉︎

最初の師戒明との別れ。わし、行ってきます。

「船乗り星」朝廷も一目置く宗像氏の濃いマダム登場。

どうもー、空海を唐に送り最澄を唐から連れ帰ってながらも後世にほとんど知られていない葛野麻呂。ここでは準主役です。

徳政論争回。現実的にこれ以上の東国進出は無理だった。徳川家康の次に鷹狩り好きな歴史上の人物として有名な桓武天皇の最後の鷹狩り。

仙境天台山、思えばこのひと時が最澄の一番の幸福だったかもしれない。

「崩御と即位」皇帝陛下の崩御と新皇帝の即位に立ち会っちゃった俺って持ってる〜。からの、カネが無いから2年で逃げ帰れ命令。

「聖俗同船」帰国できなかった遣唐使もいるんですよ…葛野麻呂の最澄へのツンデレっぷりをお楽しみ下さい。

「密の罠」帰国した途端最澄に降り掛かる悪意。

平安京を開いた帝の最期。これから不穏な平城朝が始まるー

秀才、橘逸勢にトリプルの悲劇。留学生たちの寂しさを癒す楽の音。

恵果と戒明との邂逅から三十年。やっと後継者に出会えた恵果。

まるで唐密教の滅びを予測していたかのような恵果の発言。実際にそうなります。

「遍照金剛」かくして遍照金剛空海誕生。で、何で俺様がナレーション?

「柳枝の別れ」長安出立前夜に明かされる霊仙の正体。次回から日ノ本、平城朝編。

「平城朝」最後の薬子の表情は読者さんのご想像にお任せします。

「春宮神野」

宮中も 女子回なければ やってらんない

by明鏡 字余り

「天皇の侍医」官僚として、医師として苦労する弘世の人生が始まる。

「謀」とうとう粛清に向けて動きだした薬子。朝原内親王、神野に迫る毒殺の危機。

「比叡山夜話」最澄に迫る危機。平城帝の悪意。

「翡翠の数珠」空海のせいでまた逸勢がヒドい目に遭うお話。

「阿保の本音」父平城帝への不信感が募る阿保親王。後に彼と妻の伊都内親王から生まれたのが在原業平。

前半の薬子の兄、仲成が起こした暴行事件。これ史実です。後半の勤操の述懐は創作ですが。

「咎人空海」空海、やっと帰国。あの三姉妹再び登場。

「海辺のふたり」空海だけを都に帰さなかった藤原縄主の思惑とは。この時代、芋粥は極上スイーツ扱いでした。

「白雪」兄帝の危険性を思い出す神野。

「神泉苑行幸」策謀に満ちた宮中。筑紫で布教を始める空海に届いた悲報…

「藤原家の毒薬」いつの世も女の仕返しって陰湿なのよねえ。

「譲位」嵯峨天皇が即位した夜に明かされる伊予親王の死の真相。冬嗣の胸に去来するのは怒りか、諦めか。

「実ちて帰る」主人公2人がやっと初対面。次回から第3章「薬子」のはじまり。

わたくし藤原薬子が主役の章、「薬子」、開始ですわよ。空海阿闍梨、神野の坊やとの初謁見でいきなりド不敬発言。

「橘の系譜」女性天皇が女性の部下に姓を与えた女性が始祖の橘家。

明鏡、家族と再会し、そして母になる。

「背徳」性描写あり。そして、薬子は悪女になった。

「真言の灯」最澄さまの千利休感と人手不足の密教。ある事で滅多になくブチ切れる空海。

「宮女明鏡」嵯峨後宮ベビーラッシュ。身籠った明鏡がこれまでの人生を振り返る。

「阿修羅」、怒らせるとシャレにならないレベルで怖い空海のダークサイド。

「東国の勇者」アテルイ回前編。13000vs500で朝廷軍にに勝利した巢伏の戦いと田村麻呂との対話。

「王の器」アテルイと田村麻呂の物語、後編。胆沢制圧戦後のアテルイ、田村麻呂、桓武帝。

真の王の器は誰にある?

どぅもー、宮中のイケオジ葛野麻呂です。「負の遺産」、宮女同士のマウントバトルが怖ぇわ…

「征夷大将軍殿の憂鬱」田村麻呂、愛妻とのフルムーン旅→ヒリヒリするような駆け引き。

「小鳥立つ」明鏡、13年ぶりに父との対面で思い切った決断を告げる。そして運命の子は誕生した。

「火の継承」

この時代の年明けのお祭り、修二会。ググった結果検索トップがさだまさしの「修二会」だったので公式の自分がまさしに敗けて悔しい実忠。

「智泉の祈り」

嘉智子さまへのマタハラ案件、「皇子を産め」とのたまう橘家の兄君たちにブチギレる空海阿闍梨。

「豪奢なる遁甲」嵯峨天皇vs平城上皇最後の争いが万葉サーカスの歓声の中始まる。


この回から三人目の主人公、ソハヤ登場。

「私刑」

池波か!とツッコミ上等な回。法具を本来の目的(明王の武器)で使う空海。

「なるほど、これがお役所仕事か」by嵯峨天皇

「隘路」、暗殺者集団土蜘蛛vsタツミ率いる修験者たち。薬子の変クライマックス前編。

「火宅」一万字越えの大作です。嵯峨天皇vs平城上皇最後の戦い後編。


藤原薬子と語らう老婆の正体は…

「徒花散る」失脚がそのまま死に繋がる全然平安で無かった平安初期の、最後の政変。


勝ってもあまり嬉しくない戦いでしたね…


by田村麻呂

第3章「薬子」終わり。後ろ暗い取引をしてもカッコいい俺様であーる。


by修験者タツミ

第54代仁明天皇こと正良誕生でおめでたい事からはじまる弘仁元年。

「弘仁おじさん」と呼ばないで。

by藤原冬嗣

明けましておめでとうございます。嵯峨天皇の叔母にして宮中屈指の美魔女、酒人内親王です。ここぞとばかりに気合い入った命婦たちのファッションと空海vs朝原の新春disり合い回で御座います…

若い頃の実忠さまはやさぐれていたなあ。

この世でやるべきこともやったし…じゃあね!

by和気広世

嵯峨天皇の兄、良岑安世の恋人の真名井でございます。「九条にて」はさあ、これから庶民と渡来人たちが活躍する平安アンダーグラウンドな物語の幕開け。

空海in伊勢神宮。朝原内親王より託されたとんでもない密命。

エミシ最後の戦士、ソハヤの人生のはじまり。

前半、終了。

険しい高野の山道を抜けるとそこは…異文化レベルの集落だった。

「丹生一族」パツキン彫金師、ムラートです。今回は丹生一族と秦一族と高野山のお話。



奈良の大仏建立時の人に言えない過去。老いた僧ほど暗い秘密を抱えているものなのですよ。

by実忠

「集光」実は、この話で作者は話を終わらせるつもりだったのですが、取材で高野参りをし、そこの宿坊でご住職の説法を聞いた時に「物語のラストシーン」が頭に浮かびあと50話位書く事に。

「田口三千媛」今では虐待と言われる育てられ方をされたと思います。訳を聞かされて納得しても、無理に許さなくてもいいのよ。

「弘仁格式」100年ぶりの法改正にとりかかる嵯峨帝。謎の美僧、泰範の師に対する本音。

平城上皇が会いたかった東大寺の重鎮、実忠の昔語り。前編。光明皇后に仕えた日々。

「光の時代、後」実忠の過去の話。

後半は道鏡事件の真相。

遊女真名井の人生の転機。家族との再会と共に恋人との別れを覚悟する。

「軛」

丹生のシリン姫の花占い。「来る、来ない。来る、来ない…来たあー!」

「灌頂」

死んで生まれ変わりたい気持ちで空海に会いに行った泰範。

最澄はんの「泰範、行かないでくれ」

の熱烈な文が歴史的資料として残っておます。

by空海


ぐすっ、ぐすっ…生きながら生まれ変わる事って出来るんやな…


by泰範

「信源氏」日本史最初の源氏、源信です。あのね、四さいの時にお家(宮中)から出されて明鏡お母様と離されてしまったの。


信源氏物語のはじまりはじまり〜。

高野の麓、天野の里に帰ってきたムラートです。妹の結婚式がゾロアスター教通りの儀式だと⁉️


天野わっしょい物語をお楽しみに。

嵯峨帝と正妻高津内親王との離婚の真相に迫る「高津退場」後宮サスペンス回。

橘嘉智子、立后のお話。

「わたくし、覚悟を決めました」

「常の白珠」

延暦十五年四月(796年5月)、日の本初の公然セクハラ&パワハラの記録でございます。

by明信

あの時は恥ずかしい思いさせてごめんよ…まだ怒ってる?

ねえ明信、こっち向いて(焦)

by桓武帝

お二人とも、犬も喰わない痴話喧嘩を板上でやらないで下さいまし。

by葛野麻呂

「わし、とうとう最澄はんと絶交する覚悟決めました」

空海を本気でブチギレさせた最澄の言動。


そして、高野山開基に向けて動き始める弟子たち。

「高野」

私ムラート、生まれも育ちも高野山でございます。このお山の自然の洗礼に遭う実叡と泰範。

高野を舐めちゃあいけねえよ。


なぜか寅さん口調。

「時鳥」

小野篁初登場回。そして、現世での役目を果たした巫女との別れ。

「落花宴」

民を食わせるために働いた藤原、葛野麻呂の最期。日ノ本初の茶事と花見の宴の記録。



「拠り処」

天皇皇后だってもふもふふくふくで癒されたい。徳一、東国に進出宣言。

「橘秀才」

「弘法も筆の誤り、って肝心な時に大ポカをやらかすって事なんだね」

古今随一の芸術家となった逸勢、空海にツッコミを入れる。

「シリン都に行く」

はーい、私は高野山の麓天野の里に住む主婦シリン。夫に下された辞令で子供たち連れて平安京へお引越しですって⁉️ドギマギしちゃう!

…って魔法少女みたいなあらすじ紹介でいいのかしら?

「篁」

ちーっす、小野篁でーす。僕の風評「なんだかすげえ奴」みたいに言われてるけど、嵯峨帝に出会った頃は脳筋の野生児でしたよ。

「一隅を照らす」

最澄、最期のことば。戒壇認可を遅らせた嵯峨帝の真意。


そして、たそがれ空海。



「進士篁」

ちーっす!篁っす!それでは一句。


竹の子(篁)が ドラゴン桜(三教指帰)で サクラサク


物語の主人公空海阿闍梨から僕に交代っす!

白秋の章、「嵯峨野」のはじまり。淳和帝即位。遡って嵯峨帝による黄櫨染御袍プロデュース秘話。

「正子と正良」

嵯峨上皇と嘉智子お母様の息子、正良(後の仁明帝)です。十四で結婚したお嫁さんが可愛過ぎてキュートなハートにズキンドキン!です。

「祈雨(きう)」

元服した源信信です。空海阿闍梨による伝説の雨降らしの祈祷の裏に蠢く大人たちの陰謀に、

うわあああ…

皆さんお久しぶり。田村麻呂です。平安初期の貴族たちは麻呂麻呂っなくて武士武士ってたんですよ。


ごきげんよう、小野篁です。

(官吏になったのでパシリ口調はやめました)

今回は私のルーツとソハヤ、シルベに隠された秘密が明かされる回です。

「在るがまま」

平城上皇の第三王子、高岳親王です。今回は父の最期の想いと私の出家の物語。


◯ウケンシルバーのモデルになった私の人生の出発でしたねえ。

「哀しい哉」

このエピソード書くために作者、高野山にお参りに行き智泉の御廟(お墓)に手を合わせました。

「天長二年の旅立ち」

久しぶりの金髪仏師ムラートです。東寺の立体曼荼羅完成秘話。あの時の空海さんは某劇作家か!って位ダメ出しして来て参りましたよ…


そしてラスト主要人物、在原業平初登場。

「夫人たちの夏」嵯峨帝の側室、藤原緒夏です。後宮で生きる憂鬱と高子さまとの友情の回。


「頭の冬嗣」

今年の◯河はやり過ぎちまった私の愚孫どものいざこざですが一人ちゃんと遺言を守った奴がいたようです。

「心の中の明王」

篁と徳一の出会い。東国にて。

空海と最澄を支援した破天荒僧侶、勤操の最期。さよならだけが人生や。

喫茶去(きっさこ)は禅語で「ま、茶でも一服」の意味。人生最後の対面を惜しむ主人公二人。

「光明」全ての務めを終えた空海の眠り。次回から次世代編へ。

「流人篁」百人一首で有名な「わたの原」から始まる篁の反骨最骨頂行動と流人生活。


ちゃっかり現地妻作ってました。

「落日」

葛野麻呂の息子で遣唐大使、藤原常嗣サイドの最後の遣唐使節の行程。


支援者の張宝高は新羅の海将で外交官で大商人。

この回のゲストは唐代の大文人。

「円仁の旅・使命」

どうも、遣唐使団からバックれた不法滞在僧侶の円仁(最澄の弟子)です。私の9年以上に及ぶ旅はいきなりホラーな展開から始まります。

実質、最後の遣唐使である円仁の旅の後編。空海より託された三つの遺言は果たしたものの武宗による仏教弾圧を受ける苦難の復路。オカルトな場面あり。

「胡蝶」

「胡蝶の夢」になぞらえた常嗣の帰国後の辛い立場と責任を感じる篁。二人とも苦しんだんだ。

「観月」

嵯峨上皇が家族たちにそして遥か未来の子孫に向けて述べた言葉。

人生最後の観月の宴。



「草木のままに」

我が夫、嵯峨天皇の最期。お休みなさい、あなた…


あと10話で完結です。

最終章「檀林」、それはカリスマ嵯峨天皇が去るのを待っていたかのように始まった粛正の嵐。

承和の変。三筆最後の一人逸勢の退場。

「繭」政変で息子、仁明帝の行いと本心を知った皇太后嘉智子の絶望。

「反骨の種子」政変の真相を知った篁の決意と、蹂躙される政変の敗者の家族たち。

昔男、と呼ばれたチャラいクズ。在原業平の奔放な恋の本心は…な回。

「椙山にて」この日、エミシの武人親子三代の真相が知らされ祖父の願いがシルベに託された。

「橋を架ける」

言葉を大事にして秩序を保つのも、言葉をぞんざいにしてこの世を地獄同然にするのも全て、人間の行いなのだと思います。


この国の教えの百年先を見越して禅僧を呼び寄せた国母、橘嘉智子。

「参議篁」

私の少年期から始まる篁四部作これにておしまい。良房の企みなんて知ったことかよ。

「襲撃」

日本初の警察機構である検非違使に務める下級役人、志留辺の人生の転機。

「桜」宮中編「一代限りの橘」の物語、これで終わりでございます。

この長い物語、次回の「平安時代」で完結です。



「平安時代」さてさて、ラストシーンで新しいバディが組まれ、彼らの本当の人生が始まります。


皆が知っている「平安時代」はこれから始まるのです。

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