第98話 光の時代・前

文字数 5,211文字

いくら僧姿に身をやつしていても、
太上天皇という立場からは死ぬまで降りることが出来ないのだな…

と出家して一年余、平城上皇は日々痛感していた。

「費用がかかるゆえもういちいち離宮にご機嫌伺いに来なくてもよい」

と形式だけ奈良の離宮に遣わされる使者たちを追い返す度、掲げた杓ごしに自分を見上げる貴族たちの、

こちらも不承不承なのですが、しきたりですので。

と言いたげな目つきが煩わしかった。

政変に負けてからは離宮に仕える人員が削減され、宮女たちに交じって特に選抜された奈良の僧侶たちが自分の世話係となった。

政からも離れ、読経をして朝暮の勤めを終えて気が付けば季節が移ろいゆく…

こうした日々を上皇は惨めだ、とも寂しい、とも思わずただ静かだ。と安らかな心持ちで過ごしていた。

上皇には幼少の頃から多くの人に囲まれると心の臓が躍る、という持病があった。

生まれつき感受性が高く、人からの刺激が許容量を超えると心の臓が締め付けられるようなり、目の前の相手を追い払わねば!という恐怖に駆られた。

思えば自分の暴力癖は、人への怖さからくるものだったのだ。と気付いたのは出家して三月(みつき)経ってからのことだった。

もし出家していなかったら自分のどうしようもない欠点の原因に向き合うこともなく人生を終えていただろう。

ああ、私は皇族ではなく人間安殿としてこのような暮らしを切に望んでいたのだ。

と上皇は満足して暮らしていたが…

一つだけ、上皇には人に言えぬ悩みがあった。

異母弟の伊予親王が死して間もなく夢に現れるようになり、最初は御椅子に座る自分を見上げる。

退位してからは薬子の後ろに立つ。

そして出家してからは、朝夕拝んでいる厨子の前に座って何も言わず、ただじっ…と自分を見つめているのだ。

わかっている伊予。お前のその眼差し、今は何が言いたいか解るぞ。

お前は私に向かっていつも、

兄上、あなたはこれでいいのですか?

と問いかけていたのであろう。
…なれど、いま抱えているものを自分でもどうしたらよいかわからぬのだ。

堂々巡りの思考に疲れて脇息にもたれる上皇に「徳一和尚がお見えになりました」と舎人が報せに来て上皇の頬にぱあっと血色が差した。

生まれて初めて上皇を心から笑わせ、いちばん心を許している徳一和尚が「我にとって養父同然のお方です」と東大寺の老僧、実忠を連れて来たのだ。

華厳宗実忠(けごんしゅうじっちゅう)、罷り越しました」

上皇に礼儀を尽くして頭を垂れる老僧の一部の隙も無い身のこなしに

さすがは長年東大寺を支えて来た柱、実忠和尚であるな。といたく感心した上皇が

「お前に会えるのを楽しみにしていたぞ、面を上げよ」と命じるままに顔を上げた老僧は、瑠璃色の目をしていた…。

ほう、と上皇は息を吸い込み、

「なんて深く青い瞳なのだ」
と感嘆のため息を洩らすと

「きょうはこの私の話し相手になってくれぬか?なに、そう畏まるでない」

と僧侶としての大先輩である彼に自分の方から近づいて彼のすぐ前で床座した。

「この老い先短い我が身、上皇さまの御前(みまえ)に召され、恐悦の極み。さて、どこから話せばよいのやら」

と抜けるように白い肌はところどころ皺が寄り、縮れてはいるものの一体何歳なのか解らない実忠はくすん、と小さく笑った。

「思い出しながらでよいではないか、そなたは胡人の末裔と聞いたが」

「は…両親は唐から海を渡って来た宝石を扱う商人で我はこの国の都で生まれました」

と実忠は再び頭を垂れ、長かった人生の記憶が明瞭になってきた順から言葉を紡ぎ出した。

思えば私の人生最初の記憶は、

美しく着飾った唐人の娘が十近くもの球を宙に放って両手で操り、頭に布を巻いた天竺人の男が笛で蛇を操り、胡人の踊り子が胡旋舞を舞う雑事師が行う、都の芝居の光景からです。

あの頃の都は様々な髪と瞳と肌の色の人びとが暮らしていた理想郷のようなところでした。

が…そのような日々は長く続きません。

仏教徒以外の渡来人追放令がお上から出されたのは四才の時。

拝火教は仏教の教えとは相容れないという理由で家族は唐商の船に乗せられ国外追放され、

拝火教の洗礼を受けていなかった私一人だけが良弁和尚に引き取られ弟子となりました。

父親は良弁さまから革袋いっぱいの金を受け取り、私に向かって

「お前をジュド・チフル(よそ者)と名付けて忘れる事にする」

と言って寺から去りました。

振り返りもしなかった父の背中は今でも忘れません。
親に売られた。という事実が辛すぎて自分の元の名前すら忘れてしまいました。

「ジュド・チフルとはどういう意味なのか?」

と泣いている私に良弁さまがお尋ねになられたので

「…よそ者」と答えると良弁さまは一瞬眉をひそめ、
「お前は今よりこの寺の子になったのだから実忠(じっちゅう)、と名付け直す。それでいいかね?」
うん、うなずくと良弁さまは私の手を引いて寺に迎え入れて下さりました。

金色の髪を剃られ、実忠という名を新たに与えられて寺の見習い小僧となった私は良弁さまに特に目をかけられて育ちましたが、

どうせ見かけと愛想だけの寵僧なのだろう?

と周りに言われないように経典を覚え込み人の何倍もの努力もしました。

良弁さまはなぜ渡来人で異教徒の子である私を弟子になさったのか?

毛色の違う弟子を育てて周りに見せびらかしたかったのか。
忠実に働くしもべとして私の容姿を利用し、貴婦人たちから寄進を巻き上げたかったのか。

良弁さまが世を去ってもう37年。未だに我が師の真意が解りませんが、それでも私を育ててくれた事には感謝しています。

長じた私は白い肌で碧眼の美しい僧侶。として都の貴婦人たちから可愛がられ、同僚たちより多くの寄進を得ることが出来ました。

誤解しないで下さい。
「でも、青い目の子供が出来たらどうするのですか?」
という言葉ひとつで女人たちは私と交わることを恐れたので今まで女犯をせずに済んでおりますよ…

良弁さまが東大寺初代別当となり師に引き立てられるように出世しても、

何度も渡海に失敗し、目から光を失ってでもこの国に戒律を伝えに来てくださった鑑真和上や、
貧しき民を救うために自ら橋や溜池をお作りになられた行基大僧正という心清しい師たちに仕え、
毘盧遮那仏建立という事業に参加しても、

ジュド・チフル。

という名前が呪いのように心にこびりついてしまった私は所詮は僧衣の胡人。

この国の何処に居ても自分はよそ者。という空虚を埋められずにいました。

そんな私を満たしてくれたのは唐より伝わった最新の医術。
施薬院に赴き教えを乞うた私はそこで唯一心を許した女人、和気広虫(わけのひろむし)さまに出会いました。

常に好奇の目と同僚の僧たちからの嫉心にさらされていた私は心疲れると必ず施薬院に赴き、
いきなり来訪した私に広虫さまは姉が弟を迎えるように、

「お勤めご苦労様です。ちょうど風呂(ふうろ)(蒸しサウナ)が空いていましてよ」

と病人を癒すための治療施設である風呂に私を入れて下さりました。広虫さまの屈託のなさ、押し付けがましくない優しさにどれだけ救われたか。

広虫さまの弟清麻呂どのには
「…くれぐれも出家の身である姉上には手を出すなよ」と釘を刺されましたがね。ふふっ。

もう昔語りをするのは最期と思われますのでこれだけは白状しときましょう。

私が生涯で本気で愛した女人は二人。
お察しの通りひとりは法均尼(ほっきんに)こと和気広虫さま。そしてもう一人は…当時の国母、光明皇太后こと光明子(こうみょうし)さまなのです。

忘れもしません、あれは東大寺大仏開眼供養の夜。

開眼導師の菩提遷那(ぼだいせんな)さまがこの国の楽人に伝えた陪臚(ばいろ)が繰り返し演奏されるのを、確かに力強い曲だがこうしつこく何度も聞かされると…と思って聞いていた私は

「さる尊いお方がお呼びです」

と背後から宮女に袖を引かれて控えの部屋でご休憩なさっていた光明子さまに引き合わされたのです。

「あなたが宮女たちが噂していた実忠なのですね?」
「はい、皇太后さま」

その時は団扇を少しずらして私の顔をちら、とご覧になられただけで「明日から皇太后宮に来るように」と命じられて私は光明皇后のお抱えの僧になりました。

この国一の女人、と呼ばれる光明子さまのお部屋の調度は家具から絨毯、壁の飾りに至るまで唐の最新流行を取り入れた美しい模様に囲まれていました…

基皇子(もといおうじ)を亡くしてからは夫である(おびと)さま(聖武太上天皇)との夫婦仲は終わっています」

自分より18も年上の筈なのに艶々とした豊かな黒髪を結い、張りのあるお声でその美しいお方は私を見るなり開口一番そう仰った。

「夫は『いずれは天皇家を喰らうのであろう?』と藤原家の娘である私を恐れているけれど、財力だけは当てにしているいびつな夫婦関係。
即位して女帝になった娘(孝謙天皇)は藤原家の血のほうを濃く継いでしまった独善的な性格で私の話を聞く耳を持ちません…実忠」

「は」

「国が一つ買えるほど仏教にお金をかけたのに、どうしてこんなに虚しいのかしら?」

「僭越ながら皇太后さまは、心の底では仏の言葉を信じておられていないのかと」

床几に腰掛けてうなだれる光明子さまははっとしたお顔で私を見下ろし、
「当たりよ実忠。どの経典を紐解いてみてもどうせ虚言としか思えないの。
まあ慈善政策は成功して朝廷はひとまず落ち着いているけれど…
」と再び肩を落とす様は十の乙女より弱弱しかった。

「ではなぜ、僧である私をお召しに?」

「お前が美しいからよ」

そう仰った光明子さまは団扇で私の顎を持ち上げてしげしげとお見つめになり、

「仏の生き写しのような顔をしたお前の言葉なら信じられる。と思って」

と観音像のようにお美しいお顔に悪戯っぽい笑みを浮かべてわざと明るい声でお答えになられました。

お分かりいただけましたでしょうか。

光明子さまはご実家の藤原家の有り余る財力でいくつもの救済施設をお建てになり、大仏建立に心血を注いでも少しも心救われなかった…

この国で最も孤独で哀れな女人であらせられたのですよ。

皇太后宮に通うようになった私は仏の説話の中から出来るだけ現世にいる事をを忘れる内容のものを選び、

「…とまあ自分の善き行いによって仏による救済が現れます。何もそれは死後に限ったことではありません」

という話を光明子さまはある時は数珠を手に掛けながら、ある時は卓(ベッド)の端に腰掛けて目を閉じてお聞きになられておりました。

「今を生きている間にも仏の救済があるというの?」

「はい、それは(ひでり)の時に大雨を降らせるとか四天王に変化して敵の軍勢を追い払うとか大それたものではありません、皇太后さま」

「なあに?」

「一緒に外に出て見ませんか」

私が光明子さまを連れて見せたかったもの。それは、ちょうどお昼の光を浴びて庭園の萩の花が生き生きと花を咲かせている様子でした。

「所詮野の花、と宮人たちが通りすぎる景色の中にある美しさに気付かせて下さるのもみほとけの救済のひとつかと」


まあ…とあの方は小さく驚きの声を上げてしばし萩の花に見つめながら万葉集のある恋の歌を諳じなさったのです。

我妹子(わぎもこ)に、恋ひつつあらずは、秋萩の、咲きて散りぬる花にあらましを

あなたに恋しないで、あの秋萩のようにただ咲いて散ってしまった方が良かったのに。
生きていても、あなたは私の恋にこたえてはくれないのだから。

これは天武天皇の皇子、弓削皇子が叶わぬ恋の相手、紀皇女(きのひめみこ)を想って詠まれた歌である。と言われている。

「わたしね、
生まれた時から後宮に入ることが決まっていて相問歌を交わすこともないまま首さまと結婚したの。恋もしたことのない男女が一緒になってうまく行くわけがないわよね…

弓削皇子も紀皇女も若くして逝かれたけどわたしは身を焦がすほどの恋をしたこの二人が羨ましい。と娘時代から憧れていたの」

そこでさあっ、と秋風が吹き、萩の花びらが散っておの方のお(ぐし)に小雪のように舞い落ちる様子もまた…

仏が我に与えたもうた救済のひとつだ。と思うくらい美しいものでした。

翌年の夏、御病に倒れた光明子さまは枕辺に私をお呼びになり、手を取って

「あの萩の花を覚えていますよ」
と弱々しく微笑まれました。

「心にどんな思いがあろうと…

信じる。という気持ちがなければ人は生きていけない。
それを教えてくれてありがとう、実忠」

と御礼を述べると目を閉じ、何回か深呼吸をなさいましたがその息も止まり浄土に旅立たれました。

天平宝字4年(740年)6月7日、光明皇太后薨去。

あの方の弔いの儀式が一通り終わった後、突然庵を訪れた私を広虫さまは「粥でも炊きましょうか?」と言って迎えてくれました。

私はその一言で自分を支えていたもの。僧としての矜持が背骨を一、二個抜かれたみたいに崩れ、広虫さまに取り縋って生まれて初めて本気で泣きました、

話し疲れた様子の実忠を徳一が気遣い、平城上皇に目配せする。

上皇はひとつうなずき、
「現世に現れる救済の話、深く感じ入った。続きは休んでからにせよ」

と湯と脇息を用意させて実忠に与えると「ありがたいことです」と言って老僧は脇息にもたれかかった…







































































































































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登場人物紹介

空海、本名は佐伯真魚。香川県善通寺市出身の裕福な豪族のせがれ。学業優秀で長岡京の大学寮に入るが、そこで遭った悲劇が彼を仏門に向かわせる。

嵯峨天皇(神野親王)桓武天皇の第二皇子。

問題だらけの平安京に真の平安をもたらす名君。空海とは生涯の友になる。欠点、浮気性でパリピ。

橘嘉智子

嵯峨天皇に最も愛され、橘氏出身の唯一の皇后となる。仏教への傾倒は人生から逃げる術。

私は和気清麻呂。「これから起こる悪い事全部怨霊のせいにしちゃいましょう」と御霊信仰の悪知恵吹き込みました。

本音?桓武帝が起こした人災だろーが。

藤原薬子です。後に悪女呼ばわりされる私も言い分いっぱいあるんですのよー

嘉智子さまお付きの女童、明鏡です。薬子登場でなんだか不穏な予感…

空海に山岳修行教えた勤操ですぅ〜。時々奈良仏教の中間管理職としてぼやきます。桓武帝と戒明じいさんとの因縁ってなんやろな?


役行者六代子孫にして作中最もヤバいおっさんタツミ登場。わし空海のエグい修行生活のはじまりです。

新キャラ藤原葛野麻呂、空海を唐に連れて行く貴族です。私の顔は東寺の帝釈天像がモデルです。イケメンですよー。

兄貴、自分の息子の誕生祝いで不倫ばれてんじゃねーよ…って親父に対して正論で返してるし!義理の叔父、田村麻呂初登場。

by嵯峨帝

ふっふっふ。俺様は修験者の頭タツミ。真魚よ、よくぞ試練を乗り越えたな…っていつまでも妻の手握ってんじゃねえ!

若き日の坂上田村麻呂も絡む平安ミステリー、藤原種継暗殺事件の真相です。


最新話まで話を読んできた登場人物全員の心の声


「そりゃ祟られるわ!!」

実在した前の遣唐使僧、戒明です。史実上の真魚との接点は不明です。唐から偽経を持ち帰ったとして失脚してた私の名誉回復をしてくれたのは空海だから最初に出会った師として登場。

荒行の末に悟ったもの。仏性、すなわち人の心なり。善行も悪行もそれを行う人の心次第。

やっぱりわたくし、親王さまを好きになっていたのね。(浮気者だけれど)

多治比高子です。嵯峨帝側室として寵愛された理由はインテリだった設定。

あれ?「あの四重奏ドラマ」のエンディングシーンみたいなことしてない?

三行指帰現代語訳コント風、はじまりまじまり〜

何これ⁉︎空海の書いた話おもしれーじゃん!と吠えて宮女に叱られる神野。三教指帰は日本初の小説と呼ばれる。

空海、実家に帰る。真魚が一番可愛いお母さん。激烈お兄ちゃん、実家あるあるな心配するお父さん。

空海の実家をそのまま父親の名前にしたのはオヤジ、ありがとう…グスッ(泣)の気持ちやったんや。

後の法相宗のトップにして東日本に仏教を伝える男、徳一の本心。

高雄山寺プロレス回。奈良仏教の裏番長、実忠しれっと初登場。

やっと最澄登場。美坊主泰範のせいで既に不穏な比叡山寺。

ある意味最強キャラ、朝原内親王登場。

飛べない小鳥、から明鏡の出生の秘密編へ。

尚侍明信の罪は亡国の姫、明信の若き日の過ち。

「陽の下の露」冬嗣の長男、藤原長良誕生。ちなみに薬子と葛野麻呂の不倫関係は史実です。

「風が吹く」遣唐使に選ばれなかった空海に起こったありえへん奇跡。それにしても徳一口悪ぃな。

桓武帝が仏教勢力を叩いた理由は脱税摘発のため。しかし宗教法人を使った脱税って1200年経った今でもやってますなあ。

「受戒」どーもどーも、三論宗のアイドルにして空海の頭を剃った勤操ですぅー…ってじいさんどないしたー⁉︎

最初の師戒明との別れ。わし、行ってきます。

「船乗り星」朝廷も一目置く宗像氏の濃いマダム登場。

どうもー、空海を唐に送り最澄を唐から連れ帰ってながらも後世にほとんど知られていない葛野麻呂。ここでは準主役です。

徳政論争回。現実的にこれ以上の東国進出は無理だった。徳川家康の次に鷹狩り好きな歴史上の人物として有名な桓武天皇の最後の鷹狩り。

仙境天台山、思えばこのひと時が最澄の一番の幸福だったかもしれない。

「崩御と即位」皇帝陛下の崩御と新皇帝の即位に立ち会っちゃった俺って持ってる〜。からの、カネが無いから2年で逃げ帰れ命令。

「聖俗同船」帰国できなかった遣唐使もいるんですよ…葛野麻呂の最澄へのツンデレっぷりをお楽しみ下さい。

「密の罠」帰国した途端最澄に降り掛かる悪意。

平安京を開いた帝の最期。これから不穏な平城朝が始まるー

秀才、橘逸勢にトリプルの悲劇。留学生たちの寂しさを癒す楽の音。

恵果と戒明との邂逅から三十年。やっと後継者に出会えた恵果。

まるで唐密教の滅びを予測していたかのような恵果の発言。実際にそうなります。

「遍照金剛」かくして遍照金剛空海誕生。で、何で俺様がナレーション?

「柳枝の別れ」長安出立前夜に明かされる霊仙の正体。次回から日ノ本、平城朝編。

「平城朝」最後の薬子の表情は読者さんのご想像にお任せします。

「春宮神野」

宮中も 女子回なければ やってらんない

by明鏡 字余り

「天皇の侍医」官僚として、医師として苦労する弘世の人生が始まる。

「謀」とうとう粛清に向けて動きだした薬子。朝原内親王、神野に迫る毒殺の危機。

「比叡山夜話」最澄に迫る危機。平城帝の悪意。

「翡翠の数珠」空海のせいでまた逸勢がヒドい目に遭うお話。

「阿保の本音」父平城帝への不信感が募る阿保親王。後に彼と妻の伊都内親王から生まれたのが在原業平。

前半の薬子の兄、仲成が起こした暴行事件。これ史実です。後半の勤操の述懐は創作ですが。

「咎人空海」空海、やっと帰国。あの三姉妹再び登場。

「海辺のふたり」空海だけを都に帰さなかった藤原縄主の思惑とは。この時代、芋粥は極上スイーツ扱いでした。

「白雪」兄帝の危険性を思い出す神野。

「神泉苑行幸」策謀に満ちた宮中。筑紫で布教を始める空海に届いた悲報…

「藤原家の毒薬」いつの世も女の仕返しって陰湿なのよねえ。

「譲位」嵯峨天皇が即位した夜に明かされる伊予親王の死の真相。冬嗣の胸に去来するのは怒りか、諦めか。

「実ちて帰る」主人公2人がやっと初対面。次回から第3章「薬子」のはじまり。

わたくし藤原薬子が主役の章、「薬子」、開始ですわよ。空海阿闍梨、神野の坊やとの初謁見でいきなりド不敬発言。

「橘の系譜」女性天皇が女性の部下に姓を与えた女性が始祖の橘家。

明鏡、家族と再会し、そして母になる。

「背徳」性描写あり。そして、薬子は悪女になった。

「真言の灯」最澄さまの千利休感と人手不足の密教。ある事で滅多になくブチ切れる空海。

「宮女明鏡」嵯峨後宮ベビーラッシュ。身籠った明鏡がこれまでの人生を振り返る。

「阿修羅」、怒らせるとシャレにならないレベルで怖い空海のダークサイド。

「東国の勇者」アテルイ回前編。13000vs500で朝廷軍にに勝利した巢伏の戦いと田村麻呂との対話。

「王の器」アテルイと田村麻呂の物語、後編。胆沢制圧戦後のアテルイ、田村麻呂、桓武帝。

真の王の器は誰にある?

どぅもー、宮中のイケオジ葛野麻呂です。「負の遺産」、宮女同士のマウントバトルが怖ぇわ…

「征夷大将軍殿の憂鬱」田村麻呂、愛妻とのフルムーン旅→ヒリヒリするような駆け引き。

「小鳥立つ」明鏡、13年ぶりに父との対面で思い切った決断を告げる。そして運命の子は誕生した。

「火の継承」

この時代の年明けのお祭り、修二会。ググった結果検索トップがさだまさしの「修二会」だったので公式の自分がまさしに敗けて悔しい実忠。

「智泉の祈り」

嘉智子さまへのマタハラ案件、「皇子を産め」とのたまう橘家の兄君たちにブチギレる空海阿闍梨。

「豪奢なる遁甲」嵯峨天皇vs平城上皇最後の争いが万葉サーカスの歓声の中始まる。


この回から三人目の主人公、ソハヤ登場。

「私刑」

池波か!とツッコミ上等な回。法具を本来の目的(明王の武器)で使う空海。

「なるほど、これがお役所仕事か」by嵯峨天皇

「隘路」、暗殺者集団土蜘蛛vsタツミ率いる修験者たち。薬子の変クライマックス前編。

「火宅」一万字越えの大作です。嵯峨天皇vs平城上皇最後の戦い後編。


藤原薬子と語らう老婆の正体は…

「徒花散る」失脚がそのまま死に繋がる全然平安で無かった平安初期の、最後の政変。


勝ってもあまり嬉しくない戦いでしたね…


by田村麻呂

第3章「薬子」終わり。後ろ暗い取引をしてもカッコいい俺様であーる。


by修験者タツミ

第54代仁明天皇こと正良誕生でおめでたい事からはじまる弘仁元年。

「弘仁おじさん」と呼ばないで。

by藤原冬嗣

明けましておめでとうございます。嵯峨天皇の叔母にして宮中屈指の美魔女、酒人内親王です。ここぞとばかりに気合い入った命婦たちのファッションと空海vs朝原の新春disり合い回で御座います…

若い頃の実忠さまはやさぐれていたなあ。

この世でやるべきこともやったし…じゃあね!

by和気広世

嵯峨天皇の兄、良岑安世の恋人の真名井でございます。「九条にて」はさあ、これから庶民と渡来人たちが活躍する平安アンダーグラウンドな物語の幕開け。

空海in伊勢神宮。朝原内親王より託されたとんでもない密命。

エミシ最後の戦士、ソハヤの人生のはじまり。

前半、終了。

険しい高野の山道を抜けるとそこは…異文化レベルの集落だった。

「丹生一族」パツキン彫金師、ムラートです。今回は丹生一族と秦一族と高野山のお話。



奈良の大仏建立時の人に言えない過去。老いた僧ほど暗い秘密を抱えているものなのですよ。

by実忠

「集光」実は、この話で作者は話を終わらせるつもりだったのですが、取材で高野参りをし、そこの宿坊でご住職の説法を聞いた時に「物語のラストシーン」が頭に浮かびあと50話位書く事に。

「田口三千媛」今では虐待と言われる育てられ方をされたと思います。訳を聞かされて納得しても、無理に許さなくてもいいのよ。

「弘仁格式」100年ぶりの法改正にとりかかる嵯峨帝。謎の美僧、泰範の師に対する本音。

平城上皇が会いたかった東大寺の重鎮、実忠の昔語り。前編。光明皇后に仕えた日々。

「光の時代、後」実忠の過去の話。

後半は道鏡事件の真相。

遊女真名井の人生の転機。家族との再会と共に恋人との別れを覚悟する。

「軛」

丹生のシリン姫の花占い。「来る、来ない。来る、来ない…来たあー!」

「灌頂」

死んで生まれ変わりたい気持ちで空海に会いに行った泰範。

最澄はんの「泰範、行かないでくれ」

の熱烈な文が歴史的資料として残っておます。

by空海


ぐすっ、ぐすっ…生きながら生まれ変わる事って出来るんやな…


by泰範

「信源氏」日本史最初の源氏、源信です。あのね、四さいの時にお家(宮中)から出されて明鏡お母様と離されてしまったの。


信源氏物語のはじまりはじまり〜。

高野の麓、天野の里に帰ってきたムラートです。妹の結婚式がゾロアスター教通りの儀式だと⁉️


天野わっしょい物語をお楽しみに。

嵯峨帝と正妻高津内親王との離婚の真相に迫る「高津退場」後宮サスペンス回。

橘嘉智子、立后のお話。

「わたくし、覚悟を決めました」

「常の白珠」

延暦十五年四月(796年5月)、日の本初の公然セクハラ&パワハラの記録でございます。

by明信

あの時は恥ずかしい思いさせてごめんよ…まだ怒ってる?

ねえ明信、こっち向いて(焦)

by桓武帝

お二人とも、犬も喰わない痴話喧嘩を板上でやらないで下さいまし。

by葛野麻呂

「わし、とうとう最澄はんと絶交する覚悟決めました」

空海を本気でブチギレさせた最澄の言動。


そして、高野山開基に向けて動き始める弟子たち。

「高野」

私ムラート、生まれも育ちも高野山でございます。このお山の自然の洗礼に遭う実叡と泰範。

高野を舐めちゃあいけねえよ。


なぜか寅さん口調。

「時鳥」

小野篁初登場回。そして、現世での役目を果たした巫女との別れ。

「落花宴」

民を食わせるために働いた藤原、葛野麻呂の最期。日ノ本初の茶事と花見の宴の記録。



「拠り処」

天皇皇后だってもふもふふくふくで癒されたい。徳一、東国に進出宣言。

「橘秀才」

「弘法も筆の誤り、って肝心な時に大ポカをやらかすって事なんだね」

古今随一の芸術家となった逸勢、空海にツッコミを入れる。

「シリン都に行く」

はーい、私は高野山の麓天野の里に住む主婦シリン。夫に下された辞令で子供たち連れて平安京へお引越しですって⁉️ドギマギしちゃう!

…って魔法少女みたいなあらすじ紹介でいいのかしら?

「篁」

ちーっす、小野篁でーす。僕の風評「なんだかすげえ奴」みたいに言われてるけど、嵯峨帝に出会った頃は脳筋の野生児でしたよ。

「一隅を照らす」

最澄、最期のことば。戒壇認可を遅らせた嵯峨帝の真意。


そして、たそがれ空海。



「進士篁」

ちーっす!篁っす!それでは一句。


竹の子(篁)が ドラゴン桜(三教指帰)で サクラサク


物語の主人公空海阿闍梨から僕に交代っす!

白秋の章、「嵯峨野」のはじまり。淳和帝即位。遡って嵯峨帝による黄櫨染御袍プロデュース秘話。

「正子と正良」

嵯峨上皇と嘉智子お母様の息子、正良(後の仁明帝)です。十四で結婚したお嫁さんが可愛過ぎてキュートなハートにズキンドキン!です。

「祈雨(きう)」

元服した源信信です。空海阿闍梨による伝説の雨降らしの祈祷の裏に蠢く大人たちの陰謀に、

うわあああ…

皆さんお久しぶり。田村麻呂です。平安初期の貴族たちは麻呂麻呂っなくて武士武士ってたんですよ。


ごきげんよう、小野篁です。

(官吏になったのでパシリ口調はやめました)

今回は私のルーツとソハヤ、シルベに隠された秘密が明かされる回です。

「在るがまま」

平城上皇の第三王子、高岳親王です。今回は父の最期の想いと私の出家の物語。


◯ウケンシルバーのモデルになった私の人生の出発でしたねえ。

「哀しい哉」

このエピソード書くために作者、高野山にお参りに行き智泉の御廟(お墓)に手を合わせました。

「天長二年の旅立ち」

久しぶりの金髪仏師ムラートです。東寺の立体曼荼羅完成秘話。あの時の空海さんは某劇作家か!って位ダメ出しして来て参りましたよ…


そしてラスト主要人物、在原業平初登場。

「夫人たちの夏」嵯峨帝の側室、藤原緒夏です。後宮で生きる憂鬱と高子さまとの友情の回。


「頭の冬嗣」

今年の◯河はやり過ぎちまった私の愚孫どものいざこざですが一人ちゃんと遺言を守った奴がいたようです。

「心の中の明王」

篁と徳一の出会い。東国にて。

空海と最澄を支援した破天荒僧侶、勤操の最期。さよならだけが人生や。

喫茶去(きっさこ)は禅語で「ま、茶でも一服」の意味。人生最後の対面を惜しむ主人公二人。

「光明」全ての務めを終えた空海の眠り。次回から次世代編へ。

「流人篁」百人一首で有名な「わたの原」から始まる篁の反骨最骨頂行動と流人生活。


ちゃっかり現地妻作ってました。

「落日」

葛野麻呂の息子で遣唐大使、藤原常嗣サイドの最後の遣唐使節の行程。


支援者の張宝高は新羅の海将で外交官で大商人。

この回のゲストは唐代の大文人。

「円仁の旅・使命」

どうも、遣唐使団からバックれた不法滞在僧侶の円仁(最澄の弟子)です。私の9年以上に及ぶ旅はいきなりホラーな展開から始まります。

実質、最後の遣唐使である円仁の旅の後編。空海より託された三つの遺言は果たしたものの武宗による仏教弾圧を受ける苦難の復路。オカルトな場面あり。

「胡蝶」

「胡蝶の夢」になぞらえた常嗣の帰国後の辛い立場と責任を感じる篁。二人とも苦しんだんだ。

「観月」

嵯峨上皇が家族たちにそして遥か未来の子孫に向けて述べた言葉。

人生最後の観月の宴。



「草木のままに」

我が夫、嵯峨天皇の最期。お休みなさい、あなた…


あと10話で完結です。

最終章「檀林」、それはカリスマ嵯峨天皇が去るのを待っていたかのように始まった粛正の嵐。

承和の変。三筆最後の一人逸勢の退場。

「繭」政変で息子、仁明帝の行いと本心を知った皇太后嘉智子の絶望。

「反骨の種子」政変の真相を知った篁の決意と、蹂躙される政変の敗者の家族たち。

昔男、と呼ばれたチャラいクズ。在原業平の奔放な恋の本心は…な回。

「椙山にて」この日、エミシの武人親子三代の真相が知らされ祖父の願いがシルベに託された。

「橋を架ける」

言葉を大事にして秩序を保つのも、言葉をぞんざいにしてこの世を地獄同然にするのも全て、人間の行いなのだと思います。


この国の教えの百年先を見越して禅僧を呼び寄せた国母、橘嘉智子。

「参議篁」

私の少年期から始まる篁四部作これにておしまい。良房の企みなんて知ったことかよ。

「襲撃」

日本初の警察機構である検非違使に務める下級役人、志留辺の人生の転機。

「桜」宮中編「一代限りの橘」の物語、これで終わりでございます。

この長い物語、次回の「平安時代」で完結です。



「平安時代」さてさて、ラストシーンで新しいバディが組まれ、彼らの本当の人生が始まります。


皆が知っている「平安時代」はこれから始まるのです。

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