第56話 仲成の狼藉

文字数 4,952文字

幾日も続く激しい雨が邸の屋根を打ち付け、まるで石のつぶてが降って来たようだ。と婦人は暗い部屋の中の天井を見上げながら思った。

母の縁者を頼ってここがいちばん安全な場所だから。とさる高貴な御方の(やしき)に逃げ込んでもうどれ位経っただろうか?

夫と子供たちは今頃どうしてるだろうか、あのしつこい男にひどい目に遭わされてはいないだろうか?
と思っただけでずきり、と(つむり)が痛んだので婦人は目をぎゅっとつぶって脇息にもたれたその時である。

婦人を隠すためにの几帳台が前のめりに倒され、侵入者の衣に取りつく邸の家人たちを乱暴に振り払って迫ってきたその男は眉が濃い精悍な顔に卑屈そうな引き攣り笑いを浮かべて、

「やあ、叔母上」
と呼びかけた。
逃げなければ!と婦人は思ったが背後には壁しかなく逃げようにも逃げられない。邸の中の一番奥まった部屋にいたことが、この状況で婦人にとって仇となった。

「どうして藤原式家の頭領どのがこんな下卑た真似をするのです!?」
と言った直後、仲成の平手打ちで婦人の頬がぱあん!と鳴って婦人は壁を背にして倒れた。

「…黙れ」
と仲成は口を塞いで婦人を押し倒し、体の自由を奪った上で酒臭い息を吐きかけて、
「この(とう)仲成(なかなり)の求婚を袖にし続けた報いをお前のからだに思い知らせてやる!」

と強引に腰紐を解いて衣服を剥ぎ、周りの家人たちが唖然と見ている中で婦人のからだを意のままにした。

どうして?どうして私がこんな目に?

義理の甥の仲成に組み敷かれ、犯されている間じゅう婦人は混乱した頭で轟音の鳴る天上を見つめ続けた。


「お前の気持ちは分かる…が、早まった真似はするな。志摩麻呂(しままろ)

と葛野麻呂は雨に打たれて地べたにひざまづく家司(けいし)(三位以上の貴族家の執事)志摩麻呂に、彼と同様煮えたぎる思いを抑えながらつとめて落ち着いた口調で言った。

葛野麻呂の手の中にはついさっき我が家の家司から取り上げた太刀がある。

出入りの商人が長い布包みを持って裏口から出ようとするのを不審に思って呼び止め、逃げようとしたので駆けて捕まえ、相手が変装した志摩麻呂であったことに…

やはりな。と葛野麻呂は思った。
自分の勘働きにはその都度従っておくべきだ。と50年以上生きてきた経験から葛野麻呂は志摩麻呂の凶行を未然に防ぐことが出来たのである。

なれど…なれど。と志摩麻呂は顔を上げて血涙が出そうなほど赤く血走った目で主を見上げて、
「公衆の面前で我が妹が辱められたのですぞ…妹も私もこれ以上生きていられませんっ!かくなる上は」
と呻吟しながら己が心情を吐露する志摩麻呂に葛野麻呂はこれ以上言うのは止せ、と手で制した。

「この太刀で仲成を殺して自分も死のうとでも?無駄だ、相手は式家の頭領。護衛の者たちに阻まれて斬られ、無駄死にする」
「ではどうすればいいのですかっ!このまま泣き寝入りしろとでも!?」
志摩麻呂は拳でぬかるんだ地面を殴り、もう片方の手で濡れた地面に深く爪痕を刻み付ける。

「仲成に侮辱され、あるいは凌辱されて声もあげられず、泣き寝入りしている貴人やその娘たちは大勢いる。それは何故か?彼奴(きゃつ)は今上帝の寵臣だからさ。
しかしお前の妹の事件はよりによって帝の弟御の佐味親王(さみしんのう)さまの邸で起こった。仲成はとうとう皇族までも嘲弄する愚を犯した…私も仲成を処分するよう帝にご意見申し上げるつもりだ」

雨は、勢いを止めず庭園に降り続いている。
「僭越ながら申し上げますが…我が殿よ、処されたとしてもどうせ藤原家の貴族。官位が下がるか地方に左遷されるだけなのでしょう?
私は、仇の死以外のものは望みませぬ」

そう決然と言い放った志摩麻呂の前で我が主人が信じられない行動を起こした。
葛野麻呂は裸足のまま縁側から庭に降り…衣服が泥水で汚れるのも構わずに志摩麻呂の前でひざまずいて、彼の両肩を掴んで強く抱きしめたのである。

「お前は私の乳兄弟(めのとご)(乳母の子)で、幼い頃から私に仕えてきた。同じ乳を吸って育ってきた(えにし)は実の兄弟よりも、深い。お前の妹、志岐子(しきこ)も私の妹同然だ」


藤原北家の貴いご身分の主に兄弟以上だ。と言われて志摩麻呂は感激のあまりその時だけ仲成への憎悪を忘れて葛野麻呂にしがみついて嗚咽した。

「なあ、志摩麻呂。明日よりお前の仇を詮議にかけるがもしあの坊やが王としての義務より私情を優先させたらこの葛野麻呂、あの増長者仲成に犯した所業以上の仕打ちにかけてやる。これは二人だけの約束だ」

この主従の雨の中での約束を、4年後に酷をきわめた仕打ちとして葛野麻呂は実現するのである。


藤原仲成を三月(みつき)の謹慎処分とする。

というとんほとんどお咎めなし、の帝の裁断を聞いた時、朝議の場に居た公卿たちはほぼ全員我が耳を疑った。
中でも中納言、藤原乙叡(ふじわらのたかとし)は、

「馬鹿な、仲成が犯した悪行は数えてもきりが無いのに…特に佐味親王さま、仲成に殴られ怪我を負わされたのですぞ。最低でも遠流(おんる)にすべし!」
と真っ向から抗議の声を上げた。

日頃柔和で上品な乙叡が帝に抗議するとは…。見かけによらず勇気のある奴よ、よくぞ我々の気持ちを代弁してくれた!と周りの公卿たちは口々に「そうである」
我も同じ意見です」乙叡に同調して「帝、お考え直しを」と帝の向かってうやうやしく笏を掲げた。

32才の年若い平城帝は、年齢も政治経験も遥かに豊富な公卿たちに無言の圧力をかけられ、御椅子の背もたれに我が身を押しつけた。
無理もない。公卿たちのほとんどは直接間接にあの式家の増長者(ぞうちょうもの)、仲成の無礼な仕打ちに遭っていたのだ。

…何だと?皆が皆、朕の決定に反対だと言うのか!

平城帝は縋るように味方だと思っている藤原緒嗣と、藤原葛野麻呂を見た。緒嗣は黙って首を振り、葛野麻呂は口調は落ち着いているが、主を責めるような強い眼光で「公平なご裁断賜りたく存じます」と言うのみ。

この朝議の場で沈黙がどれくらい続いただろうか…
それを破ったのは常に帝の横、という自分の立ち位置を踏み越えて兄である平城帝に正対した中務卿(なかつかさのみ)、伊予親王であった。

「帝、貴方はご自分でも無理な裁断をなさっていると解っている筈。(おおやけ)の意見よりも私情を優先なさるか?」

「控えよ、伊予」
「いいえ、皆が思っていることをこの場で言わせていただきまする。仲成を正当に処罰したら連座して妹である尚侍薬子を追放しなければなりません。それが出来ないから兄上は何も判断できないのだ
…さあ!佞臣奸婦ともども宮中から追い払って後顧の憂いを無くすのが今の兄上がやべきことではないのですか!?」

太い眉をぐっと引き上げて伊予親王10近くも年上の兄帝に迫った。それに対して平城帝は飼っていた小動物に噛みつかれたような不快な気持ちで弟を睨み付ける。

二人の衝突を参議たちは黙って見守り、外で振り続ける雨音が滝のように響いて聞こえた…と後に沈痛な気持ちでこの出来事を思い出すのであった。

それから三月(みつき)が経った。

「智泉、あのご婦人に瓜を切って差しあげてくれ」

と師の勤操(ごんぞう)に用事を頼まれた大安寺の見習い僧、智泉(ちせん)ははい、と素直にうなずいてから厨で瓜を切って器に並べ、奥の間にいる客に「どうぞ」と差し出すと、客人である女性は「ありがとうございます」と智泉に合掌してから器の瓜を白い指でつまんでかりり、と上品に食んだ。

きっとこの御方は高貴な身分の婦人なんだろうな…と部屋を後にして婦人の美しさを思い出してついうっとりしてしまう自分を、おい智泉、何を考えている?自分は僧侶になる身なんだぞ!と裏の井戸で冷水を被り、女人に対する渇望を抑える智泉はこの年17になり、叔父の空海の帰国を待つ身であった。

ここは平城京の寺社から少し離れた勤操の庵。
「わしの秘密の隠れ家じゃ」
と師はにやりと笑うだけで庵に来る客人の事情は自分の内に秘めて弟子である智泉にも話さない。

だが、月に1、2度師に連れられて客人のお世話をしている内にここが、訳ありの女人たちの駆け込み場所である。ということがうすうす解って来た。

勤操和尚は、離れの庵に女人を囲っている破戒僧だ。

と口さがない噂をする僧侶たちもいるが、本当は違う。女人たちは勤操の優しさと口の堅さに縋ってこの庵に集まるのだ。

ある時、ふと閉め切った部屋の格子戸から中を覗くと、年端も行かぬ娘の体はがりがりに痩せて落ち窪んだ眼をしているのにお腹だけは異様に膨らんでいるのを見た事があり、またある時はほああ…ああ…と赤子の泣く声が奥の部屋から聞こえた時もある。

この庵の正体は、犯されて孕んだ娘たちが子を産み落とす場所で、勤操はお産の手助けをする僧侶なのだ。

口が裂けても言えぬ事情を抱えた娘たちは子を産み体力が回復すると「何事も無かった」ように実家に戻り、産み落とされた赤ん坊は勤操のつてで里子に出される。

勤操はじめ庵に勤める僧侶も、智泉も、ここを訪れるもの全てが決して肝心なことを口に出して言わない。

最上の喜びであるはずの子を孕むという事が、女人の事情によっては死にたいほどの苦しみで、恥辱である。と世の中には決して光を当ててはいけない場所もあるのだ。と世の中の光と陰が分かりかけている智泉、17才の夏。


「孕んでいなかった、という事が不幸中の幸いや」

と婦人の診察をした勤操がそう告げると婦人に相談されてこの庵に連れてきた僧、徳一はあからさまに愁眉を見開いた。ま、瓜でも食めや。と勤操が切った瓜を受け取ると謹厳実直な徳一にしては珍しく子供のように瓜にかじりついて甘い汁を啜って「うまい」と呟いた。

「あんさん余程緊張で喉が渇いとったんやな。お役目ご苦労」と徳一を労った勤操は急に顔から表情を消して、

「藤原仲成…あの狂犬が都に帰って来てまたやらかしやがったか。地方で朽ち果てて死ぬれば良かったものの」
と唾でも吐きかけたそうな顔で呟いた。

「また…とは拙僧はよくは知らぬが仲成は以前にもこのような狼藉を?」
ああ、と勤操はひとつうなずいてから

「式家種継の長男であるのをかさにきて、前の都では盗む、犯す、殺すとやりたい放題やった。先帝もこれを看過できず地方赴任ばかり繰り返させて決して宮中にはお近づけにならなかったんや。
不幸なことに今上帝は仲成の過去を知らずに宮中に呼び寄せてしまった…耳に入る噂だと行状は前より酷くなっているな。
皇族のお邸で妻の叔母を凌辱するなぞ前代未聞や!帝も死を賜るか遠くの離れ小島に終生込めておくべきだったのだ!」

よりによって相手に死を望む、なぞ僧侶にあるまじき発言をする先輩僧に徳一は戸惑った。

「ちょっと、勤操和尚…」
「20年前の事や」
「え?」

「ちょうど20年前のことやった。ある貴族の娘が犯されて孕まされてこの庵に来た。わしもここで仕事するようになって日が浅かったし、寺育ちで女性(にょしょう)の心の機微に疎い坊主やったからあの忌まわしいことが起こったんや。

大きくなる腹を撫でながら娘は聞いた。『生まれたのが男か女かで行く先は決まるのでしょうか?』と。わしは迂闊にも『男子なら寺で育てますが、女子は里子に出します。女子はなかなか貰われにくいですが』と馬鹿正直に答えてしまった…果たして、生まれたのは女の赤ん坊やった。
娘は赤子が泣くと黙らせるために乳をやっていた。しかし出産10日目に泣き声が聞こえないのでもしや、と思い部屋に入った」

「そこで、何を見たのです?」

徳一は、話す内にだんだん顔色を悪くしている勤操に息を呑み、聞いた。

「ちょうど娘が赤ん坊の顔に寝具を押しつけて、息を止めているところやった…
わしは赤ん坊を取り上げたが間に合わへんやった。『こんなものさえなければ、最初から私には何も起こらなかったことになる』と娘は薄く笑っていた。
体が回復したら娘は何事も無かったように家に帰り、何処かの貴族と結婚したと聞く…」

この庵で嬰児殺しの生き地獄が行われていたとは。徳一はこみ上げる吐き気を抑えてながら、
「勤操和尚、あなたの言わんとすることこの徳一、分かってしまいましたぞ。その可哀想な赤子の父親は」

とそこで言葉を切った徳一に向かって勤操は
「そう、藤原仲成。あやつは自ら名乗って娘を襲ったのだ」
と言っていつの間にか外で鳴くひぐらしの声に顔を向けながら答えた。

この虫の音を聞くと夏も終わり秋が近づいている証だが、二人の僧侶の心の中は同じ思いで燃え盛っていた。

仲成、許すまじ。





































































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登場人物紹介

空海、本名は佐伯真魚。香川県善通寺市出身の裕福な豪族のせがれ。学業優秀で長岡京の大学寮に入るが、そこで遭った悲劇が彼を仏門に向かわせる。

嵯峨天皇(神野親王)桓武天皇の第二皇子。

問題だらけの平安京に真の平安をもたらす名君。空海とは生涯の友になる。欠点、浮気性でパリピ。

橘嘉智子

嵯峨天皇に最も愛され、橘氏出身の唯一の皇后となる。仏教への傾倒は人生から逃げる術。

私は和気清麻呂。「これから起こる悪い事全部怨霊のせいにしちゃいましょう」と御霊信仰の悪知恵吹き込みました。

本音?桓武帝が起こした人災だろーが。

藤原薬子です。後に悪女呼ばわりされる私も言い分いっぱいあるんですのよー

嘉智子さまお付きの女童、明鏡です。薬子登場でなんだか不穏な予感…

空海に山岳修行教えた勤操ですぅ〜。時々奈良仏教の中間管理職としてぼやきます。桓武帝と戒明じいさんとの因縁ってなんやろな?


役行者六代子孫にして作中最もヤバいおっさんタツミ登場。わし空海のエグい修行生活のはじまりです。

新キャラ藤原葛野麻呂、空海を唐に連れて行く貴族です。私の顔は東寺の帝釈天像がモデルです。イケメンですよー。

兄貴、自分の息子の誕生祝いで不倫ばれてんじゃねーよ…って親父に対して正論で返してるし!義理の叔父、田村麻呂初登場。

by嵯峨帝

ふっふっふ。俺様は修験者の頭タツミ。真魚よ、よくぞ試練を乗り越えたな…っていつまでも妻の手握ってんじゃねえ!

若き日の坂上田村麻呂も絡む平安ミステリー、藤原種継暗殺事件の真相です。


最新話まで話を読んできた登場人物全員の心の声


「そりゃ祟られるわ!!」

実在した前の遣唐使僧、戒明です。史実上の真魚との接点は不明です。唐から偽経を持ち帰ったとして失脚してた私の名誉回復をしてくれたのは空海だから最初に出会った師として登場。

荒行の末に悟ったもの。仏性、すなわち人の心なり。善行も悪行もそれを行う人の心次第。

やっぱりわたくし、親王さまを好きになっていたのね。(浮気者だけれど)

多治比高子です。嵯峨帝側室として寵愛された理由はインテリだった設定。

あれ?「あの四重奏ドラマ」のエンディングシーンみたいなことしてない?

三行指帰現代語訳コント風、はじまりまじまり〜

何これ⁉︎空海の書いた話おもしれーじゃん!と吠えて宮女に叱られる神野。三教指帰は日本初の小説と呼ばれる。

空海、実家に帰る。真魚が一番可愛いお母さん。激烈お兄ちゃん、実家あるあるな心配するお父さん。

空海の実家をそのまま父親の名前にしたのはオヤジ、ありがとう…グスッ(泣)の気持ちやったんや。

後の法相宗のトップにして東日本に仏教を伝える男、徳一の本心。

高雄山寺プロレス回。奈良仏教の裏番長、実忠しれっと初登場。

やっと最澄登場。美坊主泰範のせいで既に不穏な比叡山寺。

ある意味最強キャラ、朝原内親王登場。

飛べない小鳥、から明鏡の出生の秘密編へ。

尚侍明信の罪は亡国の姫、明信の若き日の過ち。

「陽の下の露」冬嗣の長男、藤原長良誕生。ちなみに薬子と葛野麻呂の不倫関係は史実です。

「風が吹く」遣唐使に選ばれなかった空海に起こったありえへん奇跡。それにしても徳一口悪ぃな。

桓武帝が仏教勢力を叩いた理由は脱税摘発のため。しかし宗教法人を使った脱税って1200年経った今でもやってますなあ。

「受戒」どーもどーも、三論宗のアイドルにして空海の頭を剃った勤操ですぅー…ってじいさんどないしたー⁉︎

最初の師戒明との別れ。わし、行ってきます。

「船乗り星」朝廷も一目置く宗像氏の濃いマダム登場。

どうもー、空海を唐に送り最澄を唐から連れ帰ってながらも後世にほとんど知られていない葛野麻呂。ここでは準主役です。

徳政論争回。現実的にこれ以上の東国進出は無理だった。徳川家康の次に鷹狩り好きな歴史上の人物として有名な桓武天皇の最後の鷹狩り。

仙境天台山、思えばこのひと時が最澄の一番の幸福だったかもしれない。

「崩御と即位」皇帝陛下の崩御と新皇帝の即位に立ち会っちゃった俺って持ってる〜。からの、カネが無いから2年で逃げ帰れ命令。

「聖俗同船」帰国できなかった遣唐使もいるんですよ…葛野麻呂の最澄へのツンデレっぷりをお楽しみ下さい。

「密の罠」帰国した途端最澄に降り掛かる悪意。

平安京を開いた帝の最期。これから不穏な平城朝が始まるー

秀才、橘逸勢にトリプルの悲劇。留学生たちの寂しさを癒す楽の音。

恵果と戒明との邂逅から三十年。やっと後継者に出会えた恵果。

まるで唐密教の滅びを予測していたかのような恵果の発言。実際にそうなります。

「遍照金剛」かくして遍照金剛空海誕生。で、何で俺様がナレーション?

「柳枝の別れ」長安出立前夜に明かされる霊仙の正体。次回から日ノ本、平城朝編。

「平城朝」最後の薬子の表情は読者さんのご想像にお任せします。

「春宮神野」

宮中も 女子回なければ やってらんない

by明鏡 字余り

「天皇の侍医」官僚として、医師として苦労する弘世の人生が始まる。

「謀」とうとう粛清に向けて動きだした薬子。朝原内親王、神野に迫る毒殺の危機。

「比叡山夜話」最澄に迫る危機。平城帝の悪意。

「翡翠の数珠」空海のせいでまた逸勢がヒドい目に遭うお話。

「阿保の本音」父平城帝への不信感が募る阿保親王。後に彼と妻の伊都内親王から生まれたのが在原業平。

前半の薬子の兄、仲成が起こした暴行事件。これ史実です。後半の勤操の述懐は創作ですが。

「咎人空海」空海、やっと帰国。あの三姉妹再び登場。

「海辺のふたり」空海だけを都に帰さなかった藤原縄主の思惑とは。この時代、芋粥は極上スイーツ扱いでした。

「白雪」兄帝の危険性を思い出す神野。

「神泉苑行幸」策謀に満ちた宮中。筑紫で布教を始める空海に届いた悲報…

「藤原家の毒薬」いつの世も女の仕返しって陰湿なのよねえ。

「譲位」嵯峨天皇が即位した夜に明かされる伊予親王の死の真相。冬嗣の胸に去来するのは怒りか、諦めか。

「実ちて帰る」主人公2人がやっと初対面。次回から第3章「薬子」のはじまり。

わたくし藤原薬子が主役の章、「薬子」、開始ですわよ。空海阿闍梨、神野の坊やとの初謁見でいきなりド不敬発言。

「橘の系譜」女性天皇が女性の部下に姓を与えた女性が始祖の橘家。

明鏡、家族と再会し、そして母になる。

「背徳」性描写あり。そして、薬子は悪女になった。

「真言の灯」最澄さまの千利休感と人手不足の密教。ある事で滅多になくブチ切れる空海。

「宮女明鏡」嵯峨後宮ベビーラッシュ。身籠った明鏡がこれまでの人生を振り返る。

「阿修羅」、怒らせるとシャレにならないレベルで怖い空海のダークサイド。

「東国の勇者」アテルイ回前編。13000vs500で朝廷軍にに勝利した巢伏の戦いと田村麻呂との対話。

「王の器」アテルイと田村麻呂の物語、後編。胆沢制圧戦後のアテルイ、田村麻呂、桓武帝。

真の王の器は誰にある?

どぅもー、宮中のイケオジ葛野麻呂です。「負の遺産」、宮女同士のマウントバトルが怖ぇわ…

「征夷大将軍殿の憂鬱」田村麻呂、愛妻とのフルムーン旅→ヒリヒリするような駆け引き。

「小鳥立つ」明鏡、13年ぶりに父との対面で思い切った決断を告げる。そして運命の子は誕生した。

「火の継承」

この時代の年明けのお祭り、修二会。ググった結果検索トップがさだまさしの「修二会」だったので公式の自分がまさしに敗けて悔しい実忠。

「智泉の祈り」

嘉智子さまへのマタハラ案件、「皇子を産め」とのたまう橘家の兄君たちにブチギレる空海阿闍梨。

「豪奢なる遁甲」嵯峨天皇vs平城上皇最後の争いが万葉サーカスの歓声の中始まる。


この回から三人目の主人公、ソハヤ登場。

「私刑」

池波か!とツッコミ上等な回。法具を本来の目的(明王の武器)で使う空海。

「なるほど、これがお役所仕事か」by嵯峨天皇

「隘路」、暗殺者集団土蜘蛛vsタツミ率いる修験者たち。薬子の変クライマックス前編。

「火宅」一万字越えの大作です。嵯峨天皇vs平城上皇最後の戦い後編。


藤原薬子と語らう老婆の正体は…

「徒花散る」失脚がそのまま死に繋がる全然平安で無かった平安初期の、最後の政変。


勝ってもあまり嬉しくない戦いでしたね…


by田村麻呂

第3章「薬子」終わり。後ろ暗い取引をしてもカッコいい俺様であーる。


by修験者タツミ

第54代仁明天皇こと正良誕生でおめでたい事からはじまる弘仁元年。

「弘仁おじさん」と呼ばないで。

by藤原冬嗣

明けましておめでとうございます。嵯峨天皇の叔母にして宮中屈指の美魔女、酒人内親王です。ここぞとばかりに気合い入った命婦たちのファッションと空海vs朝原の新春disり合い回で御座います…

若い頃の実忠さまはやさぐれていたなあ。

この世でやるべきこともやったし…じゃあね!

by和気広世

嵯峨天皇の兄、良岑安世の恋人の真名井でございます。「九条にて」はさあ、これから庶民と渡来人たちが活躍する平安アンダーグラウンドな物語の幕開け。

空海in伊勢神宮。朝原内親王より託されたとんでもない密命。

エミシ最後の戦士、ソハヤの人生のはじまり。

前半、終了。

険しい高野の山道を抜けるとそこは…異文化レベルの集落だった。

「丹生一族」パツキン彫金師、ムラートです。今回は丹生一族と秦一族と高野山のお話。



奈良の大仏建立時の人に言えない過去。老いた僧ほど暗い秘密を抱えているものなのですよ。

by実忠

「集光」実は、この話で作者は話を終わらせるつもりだったのですが、取材で高野参りをし、そこの宿坊でご住職の説法を聞いた時に「物語のラストシーン」が頭に浮かびあと50話位書く事に。

「田口三千媛」今では虐待と言われる育てられ方をされたと思います。訳を聞かされて納得しても、無理に許さなくてもいいのよ。

「弘仁格式」100年ぶりの法改正にとりかかる嵯峨帝。謎の美僧、泰範の師に対する本音。

平城上皇が会いたかった東大寺の重鎮、実忠の昔語り。前編。光明皇后に仕えた日々。

「光の時代、後」実忠の過去の話。

後半は道鏡事件の真相。

遊女真名井の人生の転機。家族との再会と共に恋人との別れを覚悟する。

「軛」

丹生のシリン姫の花占い。「来る、来ない。来る、来ない…来たあー!」

「灌頂」

死んで生まれ変わりたい気持ちで空海に会いに行った泰範。

最澄はんの「泰範、行かないでくれ」

の熱烈な文が歴史的資料として残っておます。

by空海


ぐすっ、ぐすっ…生きながら生まれ変わる事って出来るんやな…


by泰範

「信源氏」日本史最初の源氏、源信です。あのね、四さいの時にお家(宮中)から出されて明鏡お母様と離されてしまったの。


信源氏物語のはじまりはじまり〜。

高野の麓、天野の里に帰ってきたムラートです。妹の結婚式がゾロアスター教通りの儀式だと⁉️


天野わっしょい物語をお楽しみに。

嵯峨帝と正妻高津内親王との離婚の真相に迫る「高津退場」後宮サスペンス回。

橘嘉智子、立后のお話。

「わたくし、覚悟を決めました」

「常の白珠」

延暦十五年四月(796年5月)、日の本初の公然セクハラ&パワハラの記録でございます。

by明信

あの時は恥ずかしい思いさせてごめんよ…まだ怒ってる?

ねえ明信、こっち向いて(焦)

by桓武帝

お二人とも、犬も喰わない痴話喧嘩を板上でやらないで下さいまし。

by葛野麻呂

「わし、とうとう最澄はんと絶交する覚悟決めました」

空海を本気でブチギレさせた最澄の言動。


そして、高野山開基に向けて動き始める弟子たち。

「高野」

私ムラート、生まれも育ちも高野山でございます。このお山の自然の洗礼に遭う実叡と泰範。

高野を舐めちゃあいけねえよ。


なぜか寅さん口調。

「時鳥」

小野篁初登場回。そして、現世での役目を果たした巫女との別れ。

「落花宴」

民を食わせるために働いた藤原、葛野麻呂の最期。日ノ本初の茶事と花見の宴の記録。



「拠り処」

天皇皇后だってもふもふふくふくで癒されたい。徳一、東国に進出宣言。

「橘秀才」

「弘法も筆の誤り、って肝心な時に大ポカをやらかすって事なんだね」

古今随一の芸術家となった逸勢、空海にツッコミを入れる。

「シリン都に行く」

はーい、私は高野山の麓天野の里に住む主婦シリン。夫に下された辞令で子供たち連れて平安京へお引越しですって⁉️ドギマギしちゃう!

…って魔法少女みたいなあらすじ紹介でいいのかしら?

「篁」

ちーっす、小野篁でーす。僕の風評「なんだかすげえ奴」みたいに言われてるけど、嵯峨帝に出会った頃は脳筋の野生児でしたよ。

「一隅を照らす」

最澄、最期のことば。戒壇認可を遅らせた嵯峨帝の真意。


そして、たそがれ空海。



「進士篁」

ちーっす!篁っす!それでは一句。


竹の子(篁)が ドラゴン桜(三教指帰)で サクラサク


物語の主人公空海阿闍梨から僕に交代っす!

白秋の章、「嵯峨野」のはじまり。淳和帝即位。遡って嵯峨帝による黄櫨染御袍プロデュース秘話。

「正子と正良」

嵯峨上皇と嘉智子お母様の息子、正良(後の仁明帝)です。十四で結婚したお嫁さんが可愛過ぎてキュートなハートにズキンドキン!です。

「祈雨(きう)」

元服した源信信です。空海阿闍梨による伝説の雨降らしの祈祷の裏に蠢く大人たちの陰謀に、

うわあああ…

皆さんお久しぶり。田村麻呂です。平安初期の貴族たちは麻呂麻呂っなくて武士武士ってたんですよ。


ごきげんよう、小野篁です。

(官吏になったのでパシリ口調はやめました)

今回は私のルーツとソハヤ、シルベに隠された秘密が明かされる回です。

「在るがまま」

平城上皇の第三王子、高岳親王です。今回は父の最期の想いと私の出家の物語。


◯ウケンシルバーのモデルになった私の人生の出発でしたねえ。

「哀しい哉」

このエピソード書くために作者、高野山にお参りに行き智泉の御廟(お墓)に手を合わせました。

「天長二年の旅立ち」

久しぶりの金髪仏師ムラートです。東寺の立体曼荼羅完成秘話。あの時の空海さんは某劇作家か!って位ダメ出しして来て参りましたよ…


そしてラスト主要人物、在原業平初登場。

「夫人たちの夏」嵯峨帝の側室、藤原緒夏です。後宮で生きる憂鬱と高子さまとの友情の回。


「頭の冬嗣」

今年の◯河はやり過ぎちまった私の愚孫どものいざこざですが一人ちゃんと遺言を守った奴がいたようです。

「心の中の明王」

篁と徳一の出会い。東国にて。

空海と最澄を支援した破天荒僧侶、勤操の最期。さよならだけが人生や。

喫茶去(きっさこ)は禅語で「ま、茶でも一服」の意味。人生最後の対面を惜しむ主人公二人。

「光明」全ての務めを終えた空海の眠り。次回から次世代編へ。

「流人篁」百人一首で有名な「わたの原」から始まる篁の反骨最骨頂行動と流人生活。


ちゃっかり現地妻作ってました。

「落日」

葛野麻呂の息子で遣唐大使、藤原常嗣サイドの最後の遣唐使節の行程。


支援者の張宝高は新羅の海将で外交官で大商人。

この回のゲストは唐代の大文人。

「円仁の旅・使命」

どうも、遣唐使団からバックれた不法滞在僧侶の円仁(最澄の弟子)です。私の9年以上に及ぶ旅はいきなりホラーな展開から始まります。

実質、最後の遣唐使である円仁の旅の後編。空海より託された三つの遺言は果たしたものの武宗による仏教弾圧を受ける苦難の復路。オカルトな場面あり。

「胡蝶」

「胡蝶の夢」になぞらえた常嗣の帰国後の辛い立場と責任を感じる篁。二人とも苦しんだんだ。

「観月」

嵯峨上皇が家族たちにそして遥か未来の子孫に向けて述べた言葉。

人生最後の観月の宴。



「草木のままに」

我が夫、嵯峨天皇の最期。お休みなさい、あなた…


あと10話で完結です。

最終章「檀林」、それはカリスマ嵯峨天皇が去るのを待っていたかのように始まった粛正の嵐。

承和の変。三筆最後の一人逸勢の退場。

「繭」政変で息子、仁明帝の行いと本心を知った皇太后嘉智子の絶望。

「反骨の種子」政変の真相を知った篁の決意と、蹂躙される政変の敗者の家族たち。

昔男、と呼ばれたチャラいクズ。在原業平の奔放な恋の本心は…な回。

「椙山にて」この日、エミシの武人親子三代の真相が知らされ祖父の願いがシルベに託された。

「橋を架ける」

言葉を大事にして秩序を保つのも、言葉をぞんざいにしてこの世を地獄同然にするのも全て、人間の行いなのだと思います。


この国の教えの百年先を見越して禅僧を呼び寄せた国母、橘嘉智子。

「参議篁」

私の少年期から始まる篁四部作これにておしまい。良房の企みなんて知ったことかよ。

「襲撃」

日本初の警察機構である検非違使に務める下級役人、志留辺の人生の転機。

「桜」宮中編「一代限りの橘」の物語、これで終わりでございます。

この長い物語、次回の「平安時代」で完結です。



「平安時代」さてさて、ラストシーンで新しいバディが組まれ、彼らの本当の人生が始まります。


皆が知っている「平安時代」はこれから始まるのです。

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