第94話 因縁

文字数 5,081文字

それは空海と牟良人が伊勢に旅立つ直前の東大寺でのこと。

素絹(そけん)に鈍色の五条袈裟
という装束に身を包み、こころもち緊張している空海を前に実忠は、

「ふむ…それでよいであろう」
と許可し、着付けに当たった僧たちにこれを記録するように指示したのでこれまで十数回着替えさせられた空海もほっ、と体の力を抜いた。

東大寺別当の伊勢参拝は実に50年ぶり。僧侶がどのような装束で参拝していたか詳細な記録が残っていない。そこで、

奈良で最古参の僧侶であり

東大寺の生き字引
とまで呼ばれる実忠の監修のもとで奈良の昔、神事を行っていた僧侶が着ていた装束の再現を試みたのだ。

「ご苦労だったね。後は休むように」という実忠の言葉を受けて僧侶たちが袈裟、衣を丁寧に折り畳んで権別当の前から下がらせ、

「田辺牟良人をこれへ」
とかつて因縁のあった男の孫を呼び出すよう命じた。

東大寺権別当、という現別当の空海よりも偉い存在を前に白い直垂姿の牟良人は烏帽子の顎紐が汗で濡れる程緊張している。

「来たね、面を上げなさい」
かなりの高齢の割には良く通る声で言われ、恐る恐る顔を上げた時、瑠璃の色の瞳がにこにこと笑ってこちらを見ていた。

「そんなに畏まらなくてよい、わしも胡人の子孫だ。そしてお前の祖父もよく知っておる」

え、奈良で一番偉い坊さんがじいさんを?
と反射的にさらに顔を上げた牟良人に実忠は

「あれは65年も前だ。大陸の西に伝わる錬金、という術に長けた胡人が大仏鋳造のために積極的に採用された。
当時のわしは行基大僧正(ぎょうきだいそうじょう)に仕える学僧のひとりで、現場のひとつで働く職人の監督と世話を任されていた」

火花を上げて燃え盛る炉の前で実忠は田辺老人と出会い、同じ胡人ということで若い二人はすぐに意気投合した。

「今思えば毘盧遮那仏建立(びるしゃなぶつこんりゅう)
という国の大きな事業のもと庶民も貴族も僧侶も、忘れ去られていた渡来人も心をひとつにして働いた、人生で一番やりがいのある時代だったよ…」

違う、本当は。
鋳造の際に川に溶け込んだ鉛の毒で山の木々は枯れ、麓の川は白く濁って作物も育たなくなり、

水を服した人々は病で手は痺れ足腰は立たなくなり、舌がもつれ目が見えなくなるという金属の毒による病を…

タタリだから仕方の無いことだ。
と皆、諦めて死んで行った。
そうやって滅んだ村はいくつもあった。

大仏が着々と出来上がって行くその足元では、
一番弱い立場の人々がじわじわと苦しんで死んでいく生き地獄がこの世に再現されたのだ。

金属の毒に無知なこの国の人々にはタタリと言えばそれで済んだ。しかし、気付いていて黙っていられなくなり事を起こそうとした若者たちがいた。

「なぜ俺を見ようとしない?」

自分は心に一片の曇りも無い。といいたげな透き通った心と眼で田辺老人と彼の二人の弟は、
患者の治療に当たっている実忠に病の原因は水に溶け込んだ鉛である事を報告し、

「これは直訴して鋳造をやめてもらうべきだ」
と、とうとう言ってはいけない一言を口にした友を見据え、固く目を瞑り首を振る。

「この国の人たちは女帝やそのご両親までもが唐帰りの玄昉(げんぼう)や無能な大臣、橘諸兄(たちばなのもろえ)に誑かされて毘盧遮那仏さえ作れば仏が全ての苦を消してくださる、と本気で思ってらっしゃる…まことにおめでたき方々なのさ。
国ごと巻き込んだ事業なんだ。もう誰にも止められない」

「ならば、知ってて黙っていろとお前は言うのか?」

「今ここで話している事を他言したら俺たち四人が消される」

実忠は手刀で自分の首を横一文字に斬る仕草をしてみせ、
「命が惜しかったら黙っていることだな」
と凄みを利かせた声で忠告した。

「だけどジュド!!

と胡語でそう呼ばれ、袖を掴まれた実忠は突発的に沸き上がってきた怒りのまま友の手を乱暴に振り払った。

「俺をその名前で呼ぶな」

と言い捨ててから以降、仕事以外で彼らに取り合わなかった。

大仏開眼直前に田辺三兄弟は自ら都を出て姿を消してしまった。

田辺老人ことアミールよ。

こうしてお前の孫に対峙しているとわしは、物事の因縁と結果(けちが)について嫌でも考えざるを得ない。

65年も前にわしがお前ら兄弟の直訴を脅して取り下げさせ、都を棄てさせてしまった罪を今償え。と佛は示してらっしゃるのか?

牟良人の眼は綺麗過ぎて、本当のことを言えなくなってしまうではないか…


「お前の祖父は最後まで職責を果たした立派な男だったぞ」

と仰った実忠さまの微笑がなんだか頼りないものに見えた。

牟良人は里の一族を連れて高野山の頂から下山し、麓の天野(あまの)の里に着くと住民である秦一族が大量の薪を積んだ荷車と養老律令で定められた職人の衣と烏帽子を用意して待っていた。

里の長は秦真比人(はたのまひと)という波瑠玖と同い年の24の若者で、小柄だが(きこり)の仕事で鍛え上げた鋼のような筋肉を衣から覗かせている。

騒速は彼に抱いた第一印象は色白で分厚い一重まぶたの目を伏せがちな、何を考えているのか解らない男。というものだった。

10年前に高野山の丹を掘り尽くした対価の取り分で

「掘ったのは丹生だからこちらが多く貰う」

「いいや、危険を冒して丹の精錬をしたのは秦なのだからこちらが貰う」

と諍いを起こして物別れし、以来お互い生きていく為の物々交換の関係だけになりお互いほとんど口もきかなくなった秦一族が珍しく、

「そのような色だらけの派手な恰好ではお役人に咎められてしまいます、ここで着替えてもらえますか」

と丁寧に接して来て波瑠玖は本当ならば「断る」と言いたいところなのだが…

実は、里の人びとが空海に「食い詰めた高野の民が皆生き延びるための好機やで」と言い含められているのを波瑠玖は知っているのでここは空海の顔を立て、
「衣も薪も有難く使わせてもらう」と鷹揚にうなずいて下界の服装に着替えてから秦一族と合流し、旧都平城京に向かった。

本来の密命を隠すために空海が嵯峨帝に提案したこと。それは…

「奈良に工房を建て密教の法具を作らせる、だと?」

と嵯峨帝は御椅子の上でこれは面白そうだ、と身を乗り出して空海の話を目を輝かせてお聞きになられた。

「はい、我もこれから密教の弟子を増やす使命があるのです。が…阿闍梨号を授けても与える法具が足りないので困っております。ならば新しく工房を構えて鋳造師たちを雇わなけらばならないのです」

「それで火と金属の扱いに長けた高野山の民の技術が必要なわけか」

成程、表向きは新興の宗派である密教の法具作成を依頼してそれを手掛けるのが仏教からも産土神信仰からも距離を置いた異教徒の渡来人一族ならば…

堂々と御鏡を作成できるしこちらの気も咎めない。妙案ではないか。

「三守!」

帝に呼ばれた藤原三守が「は」と笏を掲げ、

「奈良には空いた土地が沢山あります故どこをどう使おうかは別当どののご自由です」

と空海に向けてぎゅっと片目をつむって見せた。
嵯峨帝の最側近の彼でさえもこの会話は密教法具の作成の許可を得る奏上と認識しており、密命の本当の目的を知らない。

あ、今の自分は奈良で何をやっても表向きは何も言われない立場なのだ。

自分が東大寺別当、という奈良仏教界では最高の地位にあることをいちいち言われないと忘れている空海であった。

こうして

奈良の北西に鎮座ずる鏡造坐天照御魂神社(かがみつくりにますあまてるみたまじんじゃ)(現・奈良県磯城郡田原本町大字八尾字)

の近くに金属を溶かすための炉を作り、その上に工房を建て、唐の恵果阿闍梨から頂き、空海自身が書写した密教法具の製法書と図面を広げて職人たちに指導し、真土と呼ばれる粘土と砂が配合された材料を木枠で囲って牟良人の手を借りて鋳型を作成した。

先祖より受け継ぐ技術ひとつで異国の地で生きてきたのを誇りとする渡来人の職人たちは、ひとたび作業にかかればもう丹生も秦も関係なく過去の諍いなど思い出す(いとま)も無かった。

高温の坩堝の中に銀を溶かし、液状化した銀を鋳型の中に慎重に流し込む。この作業は手早く、かつ慎重に行わなければならないので熟練の鋳造師である田辺波瑠玖と彼を育てた老職人二人が行った。

中の銀が冷めるのを待ってから木枠を外し、中から三つの爪を持った三鈷杵が現れた時には工房の男たちからおお…!と快哉の声が上がった。

ほんのりと熱を持つ黒ずんだ三鈷杵を手に取った空海はこれが、この国で最初に生まれた法具…恵果さま、とうとう空海めはこの日の本に密教法具を再現することが出来ましたぞ。と思うと亡き師との短いけれど濃密な秘法伝授の日々が脳裏を駆け巡り、

「高野山に住まう秦と丹生の一族よ…あなたたちは本当によくやりました」

と声を詰まらせながら職人の一人一人に労いの言葉をかけるのであった。

ちょうどその頃に賀茂騒速と賀茂素軽は空海警護の任を解かれた。

本来の主である阿保親王からの使者が工房を訪れ、
「直ちに我が邸に戻るように、との親王様よりの命である」

と工房の手伝いに追われて灰だらけになった二人の前でそう告げた。

日が暮れる前に都に帰る事になり、荷物をまとめる騒速の後頭部にこつん、と何かが当たり、振り向くと足元には小石があり格子戸の外はシリン姫がこっちよ、と手招きしている。

小屋から少し離れた木の下に呼び出され、思い詰めてる様子のシリン姫は意を決して騒速と向き合った。

「どうしても行っちゃうの?」
「ああ、親王様の命だから仕方がないんだ」

あっさりと騒速が言うとシリン姫は最初驚き、次に怒りで眉間にしわを寄せて唇をいろんな形に動かした。

「あのさ…言いたい事があるんだったら早く言ってよ」
もう!と言ってシリン姫は自分の前髪に差した櫛を素早く抜き取り、騒速の両手に押しつけた。

それは青銅で出来た櫛で円を幾つも組み合わせて花の形になった珍しい文様が彫られている。銅で出来ているから硬く、歯が欠ける事も無い。

「ありがとな」と言って騒速はためらいも無く烏帽子を脱ぎ、自分の髻の根元に櫛を差すとシリン姫は涙を浮かべながら「待ってるからね!」と旅立つ彼に何度も手を振った。

「あのな、お前な」
都へ帰る道中、いつもは無口な素軽が堪り兼ねて弟分を振り返った。

「何だよ兄者」
「その櫛は恐らくシリン姫が親から受け継いだ形見であろう。しかも高野の頂の里で姫の方から名を問われ、お前は名乗ってしまったそうではないか」

「それがどうしたの?」

…素軽は天を仰いで、この鈍すぎる弟分に今この場で蹴りでも喰らわせてやりたい気分になったが辛うじてそれを抑えた。

「この愚鈍っ!
名乗りが成立して姫の身に付けている櫛まで受け取った、って事はなあ、婚約が成立したって証なのだぞ!」

ようやく事の重大さに気付いた騒速はシリン姫のくるくる変わる表情やわざと突っぱねた態度、その癖山羊の乳で拵えた手作りの醍醐(チーズ)をくれた事などを思い出し、

つまりはそういうことなんだ。と納得すると急に体中が熱くなる。

「どうしよう兄者…」
と頭を抱えてその場でうずくまる弟分の手を強引に引いて次代の修験者の長は、
「とにかく逸く都に帰ってからゆっくり自分の気持ちと向き合うんだな」

とわざと突き放した言い方をした。

空海が高野の民に依頼した法具が半分程出来上がった頃である。

空海、田辺波瑠玖、その弟の牟良人、さらに兄弟の大叔父にあたる職人頭の老人クリシュこと田辺来瑠須(たなべのくるす)が鏡池と呼ばれる池で体を浄め、白衣に身を包んで鏡作神社の御祭神である石凝姥命(いしこりどめのみこと)に御鏡作りの報告と完成の祈願をする。

古事記によると、八咫鏡と呼ばれる鏡は天照大神が天岩戸にお籠りになられ高天原が闇に包まれた時、

「天照さまよりも素晴らしい神様がいらっしゃったので皆が喜んでいるのですよ」

と言われ気になった天照がそっと岩戸を開けるとそこに石凝姥命が石を磨いて拵えた鏡を掲げ、「だ、誰なの?」と鏡に映った自分の姿に驚いている内に外に出されて光を取り戻した。という謂れのある元は石鏡だったのである。

この四人の他には誰も知らない場所。

社の裏手にある空き地に小さな炉を作っておき、空海自らが鏡の裏の紋様を拵えて作った鋳型を合わせ、一抱えもある大きな鏡を一部の歪みも無いよう銅と錫の配分を計算し尽くした波瑠玖の手によって金属が溶かされる。
その作業を波瑠玖の師匠である来瑠須がいちいち確認してはうなずく。

秘密の作業の間、皆口をきく事も無く波瑠玖の手によって溶けた金属が鋳型の中に流し込まれた…

大きな鏡なので一晩かけて冷やし、黒い円盤が鋳型から取り出された時にはもう夜明けを迎えようとしていた。

後は御鏡師の牟良人がここに残り、磨きの仕上げ作業に入る。

「頼むで、牟良人はん」

女人の腕で一抱えの大きさもある鏡を手渡す空海はそこでやっと口を開いた。

夜明けの光がまだ黒い円盤をさっと照らした。






















































































































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登場人物紹介

空海、本名は佐伯真魚。香川県善通寺市出身の裕福な豪族のせがれ。学業優秀で長岡京の大学寮に入るが、そこで遭った悲劇が彼を仏門に向かわせる。

嵯峨天皇(神野親王)桓武天皇の第二皇子。

問題だらけの平安京に真の平安をもたらす名君。空海とは生涯の友になる。欠点、浮気性でパリピ。

橘嘉智子

嵯峨天皇に最も愛され、橘氏出身の唯一の皇后となる。仏教への傾倒は人生から逃げる術。

私は和気清麻呂。「これから起こる悪い事全部怨霊のせいにしちゃいましょう」と御霊信仰の悪知恵吹き込みました。

本音?桓武帝が起こした人災だろーが。

藤原薬子です。後に悪女呼ばわりされる私も言い分いっぱいあるんですのよー

嘉智子さまお付きの女童、明鏡です。薬子登場でなんだか不穏な予感…

空海に山岳修行教えた勤操ですぅ〜。時々奈良仏教の中間管理職としてぼやきます。桓武帝と戒明じいさんとの因縁ってなんやろな?


役行者六代子孫にして作中最もヤバいおっさんタツミ登場。わし空海のエグい修行生活のはじまりです。

新キャラ藤原葛野麻呂、空海を唐に連れて行く貴族です。私の顔は東寺の帝釈天像がモデルです。イケメンですよー。

兄貴、自分の息子の誕生祝いで不倫ばれてんじゃねーよ…って親父に対して正論で返してるし!義理の叔父、田村麻呂初登場。

by嵯峨帝

ふっふっふ。俺様は修験者の頭タツミ。真魚よ、よくぞ試練を乗り越えたな…っていつまでも妻の手握ってんじゃねえ!

若き日の坂上田村麻呂も絡む平安ミステリー、藤原種継暗殺事件の真相です。


最新話まで話を読んできた登場人物全員の心の声


「そりゃ祟られるわ!!」

実在した前の遣唐使僧、戒明です。史実上の真魚との接点は不明です。唐から偽経を持ち帰ったとして失脚してた私の名誉回復をしてくれたのは空海だから最初に出会った師として登場。

荒行の末に悟ったもの。仏性、すなわち人の心なり。善行も悪行もそれを行う人の心次第。

やっぱりわたくし、親王さまを好きになっていたのね。(浮気者だけれど)

多治比高子です。嵯峨帝側室として寵愛された理由はインテリだった設定。

あれ?「あの四重奏ドラマ」のエンディングシーンみたいなことしてない?

三行指帰現代語訳コント風、はじまりまじまり〜

何これ⁉︎空海の書いた話おもしれーじゃん!と吠えて宮女に叱られる神野。三教指帰は日本初の小説と呼ばれる。

空海、実家に帰る。真魚が一番可愛いお母さん。激烈お兄ちゃん、実家あるあるな心配するお父さん。

空海の実家をそのまま父親の名前にしたのはオヤジ、ありがとう…グスッ(泣)の気持ちやったんや。

後の法相宗のトップにして東日本に仏教を伝える男、徳一の本心。

高雄山寺プロレス回。奈良仏教の裏番長、実忠しれっと初登場。

やっと最澄登場。美坊主泰範のせいで既に不穏な比叡山寺。

ある意味最強キャラ、朝原内親王登場。

飛べない小鳥、から明鏡の出生の秘密編へ。

尚侍明信の罪は亡国の姫、明信の若き日の過ち。

「陽の下の露」冬嗣の長男、藤原長良誕生。ちなみに薬子と葛野麻呂の不倫関係は史実です。

「風が吹く」遣唐使に選ばれなかった空海に起こったありえへん奇跡。それにしても徳一口悪ぃな。

桓武帝が仏教勢力を叩いた理由は脱税摘発のため。しかし宗教法人を使った脱税って1200年経った今でもやってますなあ。

「受戒」どーもどーも、三論宗のアイドルにして空海の頭を剃った勤操ですぅー…ってじいさんどないしたー⁉︎

最初の師戒明との別れ。わし、行ってきます。

「船乗り星」朝廷も一目置く宗像氏の濃いマダム登場。

どうもー、空海を唐に送り最澄を唐から連れ帰ってながらも後世にほとんど知られていない葛野麻呂。ここでは準主役です。

徳政論争回。現実的にこれ以上の東国進出は無理だった。徳川家康の次に鷹狩り好きな歴史上の人物として有名な桓武天皇の最後の鷹狩り。

仙境天台山、思えばこのひと時が最澄の一番の幸福だったかもしれない。

「崩御と即位」皇帝陛下の崩御と新皇帝の即位に立ち会っちゃった俺って持ってる〜。からの、カネが無いから2年で逃げ帰れ命令。

「聖俗同船」帰国できなかった遣唐使もいるんですよ…葛野麻呂の最澄へのツンデレっぷりをお楽しみ下さい。

「密の罠」帰国した途端最澄に降り掛かる悪意。

平安京を開いた帝の最期。これから不穏な平城朝が始まるー

秀才、橘逸勢にトリプルの悲劇。留学生たちの寂しさを癒す楽の音。

恵果と戒明との邂逅から三十年。やっと後継者に出会えた恵果。

まるで唐密教の滅びを予測していたかのような恵果の発言。実際にそうなります。

「遍照金剛」かくして遍照金剛空海誕生。で、何で俺様がナレーション?

「柳枝の別れ」長安出立前夜に明かされる霊仙の正体。次回から日ノ本、平城朝編。

「平城朝」最後の薬子の表情は読者さんのご想像にお任せします。

「春宮神野」

宮中も 女子回なければ やってらんない

by明鏡 字余り

「天皇の侍医」官僚として、医師として苦労する弘世の人生が始まる。

「謀」とうとう粛清に向けて動きだした薬子。朝原内親王、神野に迫る毒殺の危機。

「比叡山夜話」最澄に迫る危機。平城帝の悪意。

「翡翠の数珠」空海のせいでまた逸勢がヒドい目に遭うお話。

「阿保の本音」父平城帝への不信感が募る阿保親王。後に彼と妻の伊都内親王から生まれたのが在原業平。

前半の薬子の兄、仲成が起こした暴行事件。これ史実です。後半の勤操の述懐は創作ですが。

「咎人空海」空海、やっと帰国。あの三姉妹再び登場。

「海辺のふたり」空海だけを都に帰さなかった藤原縄主の思惑とは。この時代、芋粥は極上スイーツ扱いでした。

「白雪」兄帝の危険性を思い出す神野。

「神泉苑行幸」策謀に満ちた宮中。筑紫で布教を始める空海に届いた悲報…

「藤原家の毒薬」いつの世も女の仕返しって陰湿なのよねえ。

「譲位」嵯峨天皇が即位した夜に明かされる伊予親王の死の真相。冬嗣の胸に去来するのは怒りか、諦めか。

「実ちて帰る」主人公2人がやっと初対面。次回から第3章「薬子」のはじまり。

わたくし藤原薬子が主役の章、「薬子」、開始ですわよ。空海阿闍梨、神野の坊やとの初謁見でいきなりド不敬発言。

「橘の系譜」女性天皇が女性の部下に姓を与えた女性が始祖の橘家。

明鏡、家族と再会し、そして母になる。

「背徳」性描写あり。そして、薬子は悪女になった。

「真言の灯」最澄さまの千利休感と人手不足の密教。ある事で滅多になくブチ切れる空海。

「宮女明鏡」嵯峨後宮ベビーラッシュ。身籠った明鏡がこれまでの人生を振り返る。

「阿修羅」、怒らせるとシャレにならないレベルで怖い空海のダークサイド。

「東国の勇者」アテルイ回前編。13000vs500で朝廷軍にに勝利した巢伏の戦いと田村麻呂との対話。

「王の器」アテルイと田村麻呂の物語、後編。胆沢制圧戦後のアテルイ、田村麻呂、桓武帝。

真の王の器は誰にある?

どぅもー、宮中のイケオジ葛野麻呂です。「負の遺産」、宮女同士のマウントバトルが怖ぇわ…

「征夷大将軍殿の憂鬱」田村麻呂、愛妻とのフルムーン旅→ヒリヒリするような駆け引き。

「小鳥立つ」明鏡、13年ぶりに父との対面で思い切った決断を告げる。そして運命の子は誕生した。

「火の継承」

この時代の年明けのお祭り、修二会。ググった結果検索トップがさだまさしの「修二会」だったので公式の自分がまさしに敗けて悔しい実忠。

「智泉の祈り」

嘉智子さまへのマタハラ案件、「皇子を産め」とのたまう橘家の兄君たちにブチギレる空海阿闍梨。

「豪奢なる遁甲」嵯峨天皇vs平城上皇最後の争いが万葉サーカスの歓声の中始まる。


この回から三人目の主人公、ソハヤ登場。

「私刑」

池波か!とツッコミ上等な回。法具を本来の目的(明王の武器)で使う空海。

「なるほど、これがお役所仕事か」by嵯峨天皇

「隘路」、暗殺者集団土蜘蛛vsタツミ率いる修験者たち。薬子の変クライマックス前編。

「火宅」一万字越えの大作です。嵯峨天皇vs平城上皇最後の戦い後編。


藤原薬子と語らう老婆の正体は…

「徒花散る」失脚がそのまま死に繋がる全然平安で無かった平安初期の、最後の政変。


勝ってもあまり嬉しくない戦いでしたね…


by田村麻呂

第3章「薬子」終わり。後ろ暗い取引をしてもカッコいい俺様であーる。


by修験者タツミ

第54代仁明天皇こと正良誕生でおめでたい事からはじまる弘仁元年。

「弘仁おじさん」と呼ばないで。

by藤原冬嗣

明けましておめでとうございます。嵯峨天皇の叔母にして宮中屈指の美魔女、酒人内親王です。ここぞとばかりに気合い入った命婦たちのファッションと空海vs朝原の新春disり合い回で御座います…

若い頃の実忠さまはやさぐれていたなあ。

この世でやるべきこともやったし…じゃあね!

by和気広世

嵯峨天皇の兄、良岑安世の恋人の真名井でございます。「九条にて」はさあ、これから庶民と渡来人たちが活躍する平安アンダーグラウンドな物語の幕開け。

空海in伊勢神宮。朝原内親王より託されたとんでもない密命。

エミシ最後の戦士、ソハヤの人生のはじまり。

前半、終了。

険しい高野の山道を抜けるとそこは…異文化レベルの集落だった。

「丹生一族」パツキン彫金師、ムラートです。今回は丹生一族と秦一族と高野山のお話。



奈良の大仏建立時の人に言えない過去。老いた僧ほど暗い秘密を抱えているものなのですよ。

by実忠

「集光」実は、この話で作者は話を終わらせるつもりだったのですが、取材で高野参りをし、そこの宿坊でご住職の説法を聞いた時に「物語のラストシーン」が頭に浮かびあと50話位書く事に。

「田口三千媛」今では虐待と言われる育てられ方をされたと思います。訳を聞かされて納得しても、無理に許さなくてもいいのよ。

「弘仁格式」100年ぶりの法改正にとりかかる嵯峨帝。謎の美僧、泰範の師に対する本音。

平城上皇が会いたかった東大寺の重鎮、実忠の昔語り。前編。光明皇后に仕えた日々。

「光の時代、後」実忠の過去の話。

後半は道鏡事件の真相。

遊女真名井の人生の転機。家族との再会と共に恋人との別れを覚悟する。

「軛」

丹生のシリン姫の花占い。「来る、来ない。来る、来ない…来たあー!」

「灌頂」

死んで生まれ変わりたい気持ちで空海に会いに行った泰範。

最澄はんの「泰範、行かないでくれ」

の熱烈な文が歴史的資料として残っておます。

by空海


ぐすっ、ぐすっ…生きながら生まれ変わる事って出来るんやな…


by泰範

「信源氏」日本史最初の源氏、源信です。あのね、四さいの時にお家(宮中)から出されて明鏡お母様と離されてしまったの。


信源氏物語のはじまりはじまり〜。

高野の麓、天野の里に帰ってきたムラートです。妹の結婚式がゾロアスター教通りの儀式だと⁉️


天野わっしょい物語をお楽しみに。

嵯峨帝と正妻高津内親王との離婚の真相に迫る「高津退場」後宮サスペンス回。

橘嘉智子、立后のお話。

「わたくし、覚悟を決めました」

「常の白珠」

延暦十五年四月(796年5月)、日の本初の公然セクハラ&パワハラの記録でございます。

by明信

あの時は恥ずかしい思いさせてごめんよ…まだ怒ってる?

ねえ明信、こっち向いて(焦)

by桓武帝

お二人とも、犬も喰わない痴話喧嘩を板上でやらないで下さいまし。

by葛野麻呂

「わし、とうとう最澄はんと絶交する覚悟決めました」

空海を本気でブチギレさせた最澄の言動。


そして、高野山開基に向けて動き始める弟子たち。

「高野」

私ムラート、生まれも育ちも高野山でございます。このお山の自然の洗礼に遭う実叡と泰範。

高野を舐めちゃあいけねえよ。


なぜか寅さん口調。

「時鳥」

小野篁初登場回。そして、現世での役目を果たした巫女との別れ。

「落花宴」

民を食わせるために働いた藤原、葛野麻呂の最期。日ノ本初の茶事と花見の宴の記録。



「拠り処」

天皇皇后だってもふもふふくふくで癒されたい。徳一、東国に進出宣言。

「橘秀才」

「弘法も筆の誤り、って肝心な時に大ポカをやらかすって事なんだね」

古今随一の芸術家となった逸勢、空海にツッコミを入れる。

「シリン都に行く」

はーい、私は高野山の麓天野の里に住む主婦シリン。夫に下された辞令で子供たち連れて平安京へお引越しですって⁉️ドギマギしちゃう!

…って魔法少女みたいなあらすじ紹介でいいのかしら?

「篁」

ちーっす、小野篁でーす。僕の風評「なんだかすげえ奴」みたいに言われてるけど、嵯峨帝に出会った頃は脳筋の野生児でしたよ。

「一隅を照らす」

最澄、最期のことば。戒壇認可を遅らせた嵯峨帝の真意。


そして、たそがれ空海。



「進士篁」

ちーっす!篁っす!それでは一句。


竹の子(篁)が ドラゴン桜(三教指帰)で サクラサク


物語の主人公空海阿闍梨から僕に交代っす!

白秋の章、「嵯峨野」のはじまり。淳和帝即位。遡って嵯峨帝による黄櫨染御袍プロデュース秘話。

「正子と正良」

嵯峨上皇と嘉智子お母様の息子、正良(後の仁明帝)です。十四で結婚したお嫁さんが可愛過ぎてキュートなハートにズキンドキン!です。

「祈雨(きう)」

元服した源信信です。空海阿闍梨による伝説の雨降らしの祈祷の裏に蠢く大人たちの陰謀に、

うわあああ…

皆さんお久しぶり。田村麻呂です。平安初期の貴族たちは麻呂麻呂っなくて武士武士ってたんですよ。


ごきげんよう、小野篁です。

(官吏になったのでパシリ口調はやめました)

今回は私のルーツとソハヤ、シルベに隠された秘密が明かされる回です。

「在るがまま」

平城上皇の第三王子、高岳親王です。今回は父の最期の想いと私の出家の物語。


◯ウケンシルバーのモデルになった私の人生の出発でしたねえ。

「哀しい哉」

このエピソード書くために作者、高野山にお参りに行き智泉の御廟(お墓)に手を合わせました。

「天長二年の旅立ち」

久しぶりの金髪仏師ムラートです。東寺の立体曼荼羅完成秘話。あの時の空海さんは某劇作家か!って位ダメ出しして来て参りましたよ…


そしてラスト主要人物、在原業平初登場。

「夫人たちの夏」嵯峨帝の側室、藤原緒夏です。後宮で生きる憂鬱と高子さまとの友情の回。


「頭の冬嗣」

今年の◯河はやり過ぎちまった私の愚孫どものいざこざですが一人ちゃんと遺言を守った奴がいたようです。

「心の中の明王」

篁と徳一の出会い。東国にて。

空海と最澄を支援した破天荒僧侶、勤操の最期。さよならだけが人生や。

喫茶去(きっさこ)は禅語で「ま、茶でも一服」の意味。人生最後の対面を惜しむ主人公二人。

「光明」全ての務めを終えた空海の眠り。次回から次世代編へ。

「流人篁」百人一首で有名な「わたの原」から始まる篁の反骨最骨頂行動と流人生活。


ちゃっかり現地妻作ってました。

「落日」

葛野麻呂の息子で遣唐大使、藤原常嗣サイドの最後の遣唐使節の行程。


支援者の張宝高は新羅の海将で外交官で大商人。

この回のゲストは唐代の大文人。

「円仁の旅・使命」

どうも、遣唐使団からバックれた不法滞在僧侶の円仁(最澄の弟子)です。私の9年以上に及ぶ旅はいきなりホラーな展開から始まります。

実質、最後の遣唐使である円仁の旅の後編。空海より託された三つの遺言は果たしたものの武宗による仏教弾圧を受ける苦難の復路。オカルトな場面あり。

「胡蝶」

「胡蝶の夢」になぞらえた常嗣の帰国後の辛い立場と責任を感じる篁。二人とも苦しんだんだ。

「観月」

嵯峨上皇が家族たちにそして遥か未来の子孫に向けて述べた言葉。

人生最後の観月の宴。



「草木のままに」

我が夫、嵯峨天皇の最期。お休みなさい、あなた…


あと10話で完結です。

最終章「檀林」、それはカリスマ嵯峨天皇が去るのを待っていたかのように始まった粛正の嵐。

承和の変。三筆最後の一人逸勢の退場。

「繭」政変で息子、仁明帝の行いと本心を知った皇太后嘉智子の絶望。

「反骨の種子」政変の真相を知った篁の決意と、蹂躙される政変の敗者の家族たち。

昔男、と呼ばれたチャラいクズ。在原業平の奔放な恋の本心は…な回。

「椙山にて」この日、エミシの武人親子三代の真相が知らされ祖父の願いがシルベに託された。

「橋を架ける」

言葉を大事にして秩序を保つのも、言葉をぞんざいにしてこの世を地獄同然にするのも全て、人間の行いなのだと思います。


この国の教えの百年先を見越して禅僧を呼び寄せた国母、橘嘉智子。

「参議篁」

私の少年期から始まる篁四部作これにておしまい。良房の企みなんて知ったことかよ。

「襲撃」

日本初の警察機構である検非違使に務める下級役人、志留辺の人生の転機。

「桜」宮中編「一代限りの橘」の物語、これで終わりでございます。

この長い物語、次回の「平安時代」で完結です。



「平安時代」さてさて、ラストシーンで新しいバディが組まれ、彼らの本当の人生が始まります。


皆が知っている「平安時代」はこれから始まるのです。

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