第47話
文字数 2,514文字
「よし!今日は此処で夜を明かそう!」
言ってアメリアが馬を止めると、レオン達も馬を止めた。
日が暮れる前に川を見付ける事が出来て良かった。
「それじゃあ…どうする?」
アメリアの問いに、既に察しているらしいレオンが「アルドに任せよう」と言う。
「え?何が?」
解っていないアルドにミゼラが「食料の調達に決まっているじゃない」と告げる。
「え⁉僕なの?」
それを聞いてアメリアは腕を組んで少し考えてから「そうだなぁ…。毎回レオンとアルドに頼むのも何だし、今回は私とミゼラで行こうか」と言った。
「アメリアが行くなら僕が行くよ!」
「それじゃあお願いしま~す」
笑顔で即返したアメリアに、意図を察したアルドが「酷い!騙された!」と嘆いて頭を抱えて項垂れた。
「解った解った。私が一緒に行くから」
流石に可哀相になったミゼラが言ってアルドの背中をさする。
「私はその間にテントとか用意するから…。レオンはあの子達の方を頼める?」
言ってアメリアが愛馬達の方を見ると、それを見てレオンが「解った」と頷いた。
「ある程度終わったらこっち手伝って」
頷いてレオンが愛馬達の方へと向かう。
「だったら僕が一緒に「あら?そんなに私と一緒は嫌なの?」
アメリアの元へ行こうとしたアルドの襟首を掴んでミゼラが笑みを浮かべて言うが、声色は穏やかではない。
「いえ…そういう訳では…」
苦笑し答えたアルドに「そう」と満足そうにミゼラは頷き、アメリアに「それじゃあ、行って来るね~♪」と言い、アルドの襟首を引っ張って歩き出した。
引き摺られるように連れて行かれるアルドに心中で『頑張れ!』と応援し見送る。
「私は何をすれば良いですか?」
首を傾げてリマが問う。
「それじゃあ…一緒に木登りしようか」
「皆さんが一生懸命食材を集めてくれるのに、私達だけ遊ぶつもりですか?!」
怒るリマに「そうじゃないよ」と謝り「木の実を取りたいの」と説明すると、リマの目が輝いた。
「木の実が有るんですか?」
「うん。まぁ、それほど甘い物では無いけど、弱火に当てると中が飲み物になるの」
「そんなのが有るんですか?!」
リマが驚くのも当然だ。
アメリアも教えて貰わなければ知らなかったのだから。
「それじゃあ行こうか」
「はい♪」
頷いてリマが飛んで先に木の上へと向かう。
周囲に生えている大木を見渡し、実が成っていそうな木を探す。
取り敢えず、めぼしい木を登り始めると、上からリマの「頑張って下さーい!」という声が聞こえた。
足場に気を付けながら登り、上の方に到着し「ふぅ」と一息吐く。
「大丈夫ですか?」
リマの問いに「うん」と返事をして辺りを見渡す。
「近くには無いみたいだから…向こうを見てみよう」
言って枝を伝い移動するアメリアにリマが付いて来る。
「あの…」
「何?」
何となく不安げなリマの声に訊き返す。
「魔具という物は、私にも使う事が出来るんですか?」
「まぁ…使う事は出来るけど。それがどうかしたの?」
アメリアは訊き返して止まった。
リマが少し上の枝に座り、俯いたまま「私も…強くなれたらと思って」と言う。
「私の今使えるのは風くらいです。でも、これだけでは皆様を護れない。しかも、後方支援くらいです。そうではなくて、私も前に立って戦えるくらい強くなりたいんです」
言ってリマが真っ直ぐアメリアを見た。
真剣な目は、気休めの言葉では引かないだろう。
アメリアは小さく息を吐き、一度座った。
「妖精用の魔具を作る事は出来る。でも、それは補助的な物。力を増幅したりする物ではない」
「そうだとしても、私に使える魔法は限られています。だから、他にも使えるようになりたいんです!」
そう思う気持ちは解るが、話は簡単ではない。
「私は…妖精用の魔具を作った事が無いの」
「え?」
リマが驚き「でも、昔は」と続けたが言葉を噤んだ。
「確かに昔は仲間の魔具を作っていたよ。でも、妖精用の物は作らなかった。師匠から作り方を聞いてはいたけれど、本当に作れるかは解らなかったし、師匠も私の前で妖精用の魔具を作ってくれた事が無い」
初めて師匠から妖精用の魔具の生成方法を聞いた時は怖かった。
本当に熟練者でなくては作れないような代物だったからだ。
人間の使う魔具を作るのは簡単だ。
魔具によって発動する魔法の力は、魔石に秘められた魔力によって変化する。
だからこそ魔導師は様々な魔具を持ち力を増幅させて魔法を使用する。
身に着けている装飾などがそうだ。
けれど妖精にはそういった補助的な物を必要としない。
魔石に比べれば妖精の方が魔力が高い。
その魔力に耐えられ、尚且つ属性の違う魔具を作るのは難しいのだ。
「…作って下さい」
「何が起きるか解らない!危険なの!」
言ってリマを見ると、彼女は驚く事も無く、真剣な面持ちでアメリアを見ていた。
「アメリア様のお師匠様が気軽にやらなかった事なら、危険なんだろうという事は察しました。でも、私はそれでもアメリア様や、皆様を護れる力が欲しいんです。出来る事を増やしたい。私が精霊になれるのだっていつかなのも解らない。精霊の力を得られるまで待つ事も出来ない。だから…私の為に…魔具を作って下さい」
迷いの無い真っ直ぐな目。
今まで何度こういう目を見ただろう。
最初アメリアにその目を向けたのは嘗ての恋人、アーレンだった。
それから集まった仲間達。
旅の途中で知り合った人々。
―決意した者の意志を変える事など出来ないよ。
嘗て師匠が言っていた。
かの大戦前に集まった者達に剣の手入れや新調を頼まれた時だ。
―お前だって止められたとしても挑むだろ?それと同じさ。
そう言って師匠は笑っていた。
無事に出来るか、作れるほどの実力が有るか解らない。
それでもリマの望みを叶えてあげたい。
そう思ってしまった。
目を閉じ、深呼吸をして目を開けリマを見る。
「解った」
アメリアの言葉にリマの表情が明るくなる。
「でも、此処には必要な物が無いから待ってくれる?」
「はい!」
嬉しそうにリマが言う。
「さて!早く木の実を探しましょう!」
「うん」
リマの言葉に頷き立ち上がったアメリアの前で、リマは嬉しそうに笑っていた。
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言ってアメリアが馬を止めると、レオン達も馬を止めた。
日が暮れる前に川を見付ける事が出来て良かった。
「それじゃあ…どうする?」
アメリアの問いに、既に察しているらしいレオンが「アルドに任せよう」と言う。
「え?何が?」
解っていないアルドにミゼラが「食料の調達に決まっているじゃない」と告げる。
「え⁉僕なの?」
それを聞いてアメリアは腕を組んで少し考えてから「そうだなぁ…。毎回レオンとアルドに頼むのも何だし、今回は私とミゼラで行こうか」と言った。
「アメリアが行くなら僕が行くよ!」
「それじゃあお願いしま~す」
笑顔で即返したアメリアに、意図を察したアルドが「酷い!騙された!」と嘆いて頭を抱えて項垂れた。
「解った解った。私が一緒に行くから」
流石に可哀相になったミゼラが言ってアルドの背中をさする。
「私はその間にテントとか用意するから…。レオンはあの子達の方を頼める?」
言ってアメリアが愛馬達の方を見ると、それを見てレオンが「解った」と頷いた。
「ある程度終わったらこっち手伝って」
頷いてレオンが愛馬達の方へと向かう。
「だったら僕が一緒に「あら?そんなに私と一緒は嫌なの?」
アメリアの元へ行こうとしたアルドの襟首を掴んでミゼラが笑みを浮かべて言うが、声色は穏やかではない。
「いえ…そういう訳では…」
苦笑し答えたアルドに「そう」と満足そうにミゼラは頷き、アメリアに「それじゃあ、行って来るね~♪」と言い、アルドの襟首を引っ張って歩き出した。
引き摺られるように連れて行かれるアルドに心中で『頑張れ!』と応援し見送る。
「私は何をすれば良いですか?」
首を傾げてリマが問う。
「それじゃあ…一緒に木登りしようか」
「皆さんが一生懸命食材を集めてくれるのに、私達だけ遊ぶつもりですか?!」
怒るリマに「そうじゃないよ」と謝り「木の実を取りたいの」と説明すると、リマの目が輝いた。
「木の実が有るんですか?」
「うん。まぁ、それほど甘い物では無いけど、弱火に当てると中が飲み物になるの」
「そんなのが有るんですか?!」
リマが驚くのも当然だ。
アメリアも教えて貰わなければ知らなかったのだから。
「それじゃあ行こうか」
「はい♪」
頷いてリマが飛んで先に木の上へと向かう。
周囲に生えている大木を見渡し、実が成っていそうな木を探す。
取り敢えず、めぼしい木を登り始めると、上からリマの「頑張って下さーい!」という声が聞こえた。
足場に気を付けながら登り、上の方に到着し「ふぅ」と一息吐く。
「大丈夫ですか?」
リマの問いに「うん」と返事をして辺りを見渡す。
「近くには無いみたいだから…向こうを見てみよう」
言って枝を伝い移動するアメリアにリマが付いて来る。
「あの…」
「何?」
何となく不安げなリマの声に訊き返す。
「魔具という物は、私にも使う事が出来るんですか?」
「まぁ…使う事は出来るけど。それがどうかしたの?」
アメリアは訊き返して止まった。
リマが少し上の枝に座り、俯いたまま「私も…強くなれたらと思って」と言う。
「私の今使えるのは風くらいです。でも、これだけでは皆様を護れない。しかも、後方支援くらいです。そうではなくて、私も前に立って戦えるくらい強くなりたいんです」
言ってリマが真っ直ぐアメリアを見た。
真剣な目は、気休めの言葉では引かないだろう。
アメリアは小さく息を吐き、一度座った。
「妖精用の魔具を作る事は出来る。でも、それは補助的な物。力を増幅したりする物ではない」
「そうだとしても、私に使える魔法は限られています。だから、他にも使えるようになりたいんです!」
そう思う気持ちは解るが、話は簡単ではない。
「私は…妖精用の魔具を作った事が無いの」
「え?」
リマが驚き「でも、昔は」と続けたが言葉を噤んだ。
「確かに昔は仲間の魔具を作っていたよ。でも、妖精用の物は作らなかった。師匠から作り方を聞いてはいたけれど、本当に作れるかは解らなかったし、師匠も私の前で妖精用の魔具を作ってくれた事が無い」
初めて師匠から妖精用の魔具の生成方法を聞いた時は怖かった。
本当に熟練者でなくては作れないような代物だったからだ。
人間の使う魔具を作るのは簡単だ。
魔具によって発動する魔法の力は、魔石に秘められた魔力によって変化する。
だからこそ魔導師は様々な魔具を持ち力を増幅させて魔法を使用する。
身に着けている装飾などがそうだ。
けれど妖精にはそういった補助的な物を必要としない。
魔石に比べれば妖精の方が魔力が高い。
その魔力に耐えられ、尚且つ属性の違う魔具を作るのは難しいのだ。
「…作って下さい」
「何が起きるか解らない!危険なの!」
言ってリマを見ると、彼女は驚く事も無く、真剣な面持ちでアメリアを見ていた。
「アメリア様のお師匠様が気軽にやらなかった事なら、危険なんだろうという事は察しました。でも、私はそれでもアメリア様や、皆様を護れる力が欲しいんです。出来る事を増やしたい。私が精霊になれるのだっていつかなのも解らない。精霊の力を得られるまで待つ事も出来ない。だから…私の為に…魔具を作って下さい」
迷いの無い真っ直ぐな目。
今まで何度こういう目を見ただろう。
最初アメリアにその目を向けたのは嘗ての恋人、アーレンだった。
それから集まった仲間達。
旅の途中で知り合った人々。
―決意した者の意志を変える事など出来ないよ。
嘗て師匠が言っていた。
かの大戦前に集まった者達に剣の手入れや新調を頼まれた時だ。
―お前だって止められたとしても挑むだろ?それと同じさ。
そう言って師匠は笑っていた。
無事に出来るか、作れるほどの実力が有るか解らない。
それでもリマの望みを叶えてあげたい。
そう思ってしまった。
目を閉じ、深呼吸をして目を開けリマを見る。
「解った」
アメリアの言葉にリマの表情が明るくなる。
「でも、此処には必要な物が無いから待ってくれる?」
「はい!」
嬉しそうにリマが言う。
「さて!早く木の実を探しましょう!」
「うん」
リマの言葉に頷き立ち上がったアメリアの前で、リマは嬉しそうに笑っていた。
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