ストリクトリー・パーソナル【第十八話】
文字数 1,281文字
☆
壊色ちゃんはケタケタ笑う。
「さぁ、あたし、夢野壊色の術装で大人しく死にな」
吹き抜けになった部屋に、強風が吹く。
わたしは「うひー」と手で顔をかばうようにする。
向かい風ですよぉー!
「拘束具使いが倒れたところで、次は弱そうな奴をぶっ倒すか。そこの阿呆っぽそうな奴。死にな」
「ええええッッッ! あのひと、絶対わたしのことを言ってますぅ!」
わたしはたじろぐ。
「〈ロギア・シノプシス〉!」
ゴロゴロと音がする。
今夜は晴れているのに、カミナリの音ですよ?
「ひぃー! カミナリに打たれてバッドエンドですよぉ〜?」
「はぁ。騒ぐのはやめるのだ、メダカちゃん」
「だって、コノコ姉さん」
「任せるのだ、メダカちゃん」
服の胸ポケットから文庫本を取り出すコノコ姉さん。
「厄災を振り払うのだ、我が術装! 〈目覚めの珈琲〉は如何なのだ? 行け、〈裸のランチ〉ッッッ」
閃光が走った。
壊色ちゃんが叫ぶ。
「スタングレネードか! 発光で目が見えないッ!」
「目覚めの珈琲で目を覚ますのだ」
光が収束すると、風もカミナリの音も止んだ。
「壊色ちゃん、だったのだ? 〈天災〉の〈術装〉ではあるけど、惜しいのだ。最初に自分から〈精神に干渉する術装〉だ、と言っちゃっていたのだ。だから、わたしの〈病 〉である〈目覚めの珈琲〉の元型 である水戸学の術装、〈裸のランチ〉で精神に干渉する攻撃を無効化させたのだ。つまり、みんなの精神を〈目覚めさせた〉のだ」
「やべっ! 口が滑っていた! クッソ」
そこに涙子さんが割り込む。
「もう一度アバドーンを喰らうか?」
「ちっ!」
と、そこに部屋の外の廊下から大きな声がする。
「壊色先輩! 逃げるっすよ!」
振り返る壊色ちゃん。
「鵜飼! おまえ、攻撃タイプの能力者じゃねーんだから来るなって言っただろ!」
「先輩が心配で心配で、来てしまったっす」
「ああ、もう! んじゃ、逃げるぞ」
「逃走用の古代機械は用意してるっす」
「じゃ、逃げるか!」
そこに涙子さん。
「逃がすかよ!」
「……逃がさないのはこっちの方よ」
さらに声がした。
「弘道館塾生・鏑木盛夏。お姫さまはお姫さまらしく囚われなさいな」
現れた盛夏ちゃんが本から飛び出る光の矢を乱発して繰り出す。
それは〈鳥籠〉となって、涙子さんを囲った。
「ふゆぅ。その危ない〈ディスオーダー〉は封じたわ。鵜飼! 古代機械で運んで頂戴!」
「うぃっす!」
見えないがそこにあるらしい〈古代機械〉が、水兎学の徒たちと涙子さんを運んでいく。
壊色ちゃんは、その姿を消す前に、
「朽葉コノコ。おまえも〈書物使い〉なんだな? 次は絶対、殺す!」
と、吐き捨ててから、去る。
わたしには、なにが起こっているのか、またわからなくなったのでした。
ただ残されたわたしたちの前には、破壊された高級マンションの一室があっただけ。
今さらながらスプリンクラーがまわって、わたしたちにシャワーを浴びせかけるのです。
「……にゃたしたちには、逃げ場はにゃいのにゃな」
ラピスちゃんが呟き、虚無感が夜の空美野市を包んでいるかのように、その呟きもまた、かき消されたのです。
壊色ちゃんはケタケタ笑う。
「さぁ、あたし、夢野壊色の術装で大人しく死にな」
吹き抜けになった部屋に、強風が吹く。
わたしは「うひー」と手で顔をかばうようにする。
向かい風ですよぉー!
「拘束具使いが倒れたところで、次は弱そうな奴をぶっ倒すか。そこの阿呆っぽそうな奴。死にな」
「ええええッッッ! あのひと、絶対わたしのことを言ってますぅ!」
わたしはたじろぐ。
「〈ロギア・シノプシス〉!」
ゴロゴロと音がする。
今夜は晴れているのに、カミナリの音ですよ?
「ひぃー! カミナリに打たれてバッドエンドですよぉ〜?」
「はぁ。騒ぐのはやめるのだ、メダカちゃん」
「だって、コノコ姉さん」
「任せるのだ、メダカちゃん」
服の胸ポケットから文庫本を取り出すコノコ姉さん。
「厄災を振り払うのだ、我が術装! 〈目覚めの珈琲〉は如何なのだ? 行け、〈裸のランチ〉ッッッ」
閃光が走った。
壊色ちゃんが叫ぶ。
「スタングレネードか! 発光で目が見えないッ!」
「目覚めの珈琲で目を覚ますのだ」
光が収束すると、風もカミナリの音も止んだ。
「壊色ちゃん、だったのだ? 〈天災〉の〈術装〉ではあるけど、惜しいのだ。最初に自分から〈精神に干渉する術装〉だ、と言っちゃっていたのだ。だから、わたしの〈
「やべっ! 口が滑っていた! クッソ」
そこに涙子さんが割り込む。
「もう一度アバドーンを喰らうか?」
「ちっ!」
と、そこに部屋の外の廊下から大きな声がする。
「壊色先輩! 逃げるっすよ!」
振り返る壊色ちゃん。
「鵜飼! おまえ、攻撃タイプの能力者じゃねーんだから来るなって言っただろ!」
「先輩が心配で心配で、来てしまったっす」
「ああ、もう! んじゃ、逃げるぞ」
「逃走用の古代機械は用意してるっす」
「じゃ、逃げるか!」
そこに涙子さん。
「逃がすかよ!」
「……逃がさないのはこっちの方よ」
さらに声がした。
「弘道館塾生・鏑木盛夏。お姫さまはお姫さまらしく囚われなさいな」
現れた盛夏ちゃんが本から飛び出る光の矢を乱発して繰り出す。
それは〈鳥籠〉となって、涙子さんを囲った。
「ふゆぅ。その危ない〈ディスオーダー〉は封じたわ。鵜飼! 古代機械で運んで頂戴!」
「うぃっす!」
見えないがそこにあるらしい〈古代機械〉が、水兎学の徒たちと涙子さんを運んでいく。
壊色ちゃんは、その姿を消す前に、
「朽葉コノコ。おまえも〈書物使い〉なんだな? 次は絶対、殺す!」
と、吐き捨ててから、去る。
わたしには、なにが起こっているのか、またわからなくなったのでした。
ただ残されたわたしたちの前には、破壊された高級マンションの一室があっただけ。
今さらながらスプリンクラーがまわって、わたしたちにシャワーを浴びせかけるのです。
「……にゃたしたちには、逃げ場はにゃいのにゃな」
ラピスちゃんが呟き、虚無感が夜の空美野市を包んでいるかのように、その呟きもまた、かき消されたのです。