セーフ・アズ・ミルク【第三話】
文字数 1,287文字
☆
書くことは速度でしかなかった、とは、故・寺山修司の言葉だ。
ウェブ作家・成瀬川るるせの正体であるこのわたし、佐原メダカには、この言葉はグッとくるものがある。
帰宅後、居候先の朽葉珈琲店でバイトを終えてからマイルームで執筆していると、前述の寺山修司の言葉が脳裏をよぎったのですよぉ。
なんでわたしは遅筆で無学で、無教養なのでしょう。
「うぅ、泣きたくなりますぅ、だってわたし、女の子だもん!」
「なに言ってるのだ、メダカちゃん。相田みつをなのだ?」
「ち、が、い、ま、す、よぉ〜! もぅ、話を折らないでくださいコノコ姉さんんんんんんんんん〜!」
今、わたしの部屋の万年床の上に寝そべって、ぽてちを食べながら漫画を読んでいるのはここ、朽葉珈琲店の一人娘、朽葉コノコ姉さんだ。
「うっさいのだ、メダカちゃん。執筆は黙ってするのだ。相田みつをごっこはやめるのだ!」
「せめて有名なバレーアニメの主題歌に入る台詞みたいだね、みたいな返しは出来ないのですかぁ〜!」
「あー、だからうっさいのだぁ! 漫画、今めっちゃ泣けるところだったのだ。台無し、なのだぁー」
「台無しはこっちですよぉ」
「台無しの台とは、仏像を安置する台座のことを指すのだ。台座が無ければ仏像の威厳が無くなっちゃうことがその由来なのだ」
「唐突に入るその〈朽葉ぺでぃあ〉はやめてくださいよぉ〜。わたし、ガチ泣きしちゃいますよぉ」
「それはよかったのだ。わたしの説明に泣いて感心するとは、ちょっと賢くなったのだ?」
「ならないですぅ〜!」
「積み木崩し!」
「言い換えで遊ばないでください!」
「必殺・積み木崩し !」
「ルビを振らないでくださいよぉ〜! 面倒くさいですからぁ!」
「メダカちゃん、メタ発言はやめるのだ」
「メタフィクションはやるな、って編集者さんに言われたことあるんですから、姉さんもそれやめてくださいよぉ〜!」
「おっと。じゃあ、オブジェクトレベルの位相にいるわたしたちは」
「難しい話もノーサンキューですぅ」
「え〜」
「え〜、じゃありません! 自分の部屋に戻ってください、コノコ姉さん。あと、さっきルビでめるとだうなー、って入力してたと思うのですが、そういうの、やめてくださいよね」
「なんでなのだ?」
「だーかーらー! ちょい伏線みたいに思われちゃいますが、そうじゃなくてこれはメタレベルにいる作者からの、ギャグですから」
「ギャグなのだ?」
「あー、もう、どうでもいいですからっ! 戻って! 自室にっ!」
「寺山の話をもっと聞きたかったのだ」
「そこは地の文ですから!」
「つーまーんなーいのだぁー」
「メタフィクションを無駄にやる方がつまらないし、本当に小説が台無しになりますのでッッッ! ご遠慮くださいませッッッ!」
ぎゃーぎゃーやりあって、コノコ姉さんを部屋から追い出すわたし。
全く、これだから姉さんは。
もぅ。
でも、わたしだって、コノコ姉さんのことは好きなんですよ?
「そうなのだ?」
ドアを開けて、コノコ姉さんは言う。
「いいから、帰って!」
また追い出すわたし。
そして、今日も夜の執筆タイムが始まるのです。
これだから、全く、もぉ〜。
書くことは速度でしかなかった、とは、故・寺山修司の言葉だ。
ウェブ作家・成瀬川るるせの正体であるこのわたし、佐原メダカには、この言葉はグッとくるものがある。
帰宅後、居候先の朽葉珈琲店でバイトを終えてからマイルームで執筆していると、前述の寺山修司の言葉が脳裏をよぎったのですよぉ。
なんでわたしは遅筆で無学で、無教養なのでしょう。
「うぅ、泣きたくなりますぅ、だってわたし、女の子だもん!」
「なに言ってるのだ、メダカちゃん。相田みつをなのだ?」
「ち、が、い、ま、す、よぉ〜! もぅ、話を折らないでくださいコノコ姉さんんんんんんんんん〜!」
今、わたしの部屋の万年床の上に寝そべって、ぽてちを食べながら漫画を読んでいるのはここ、朽葉珈琲店の一人娘、朽葉コノコ姉さんだ。
「うっさいのだ、メダカちゃん。執筆は黙ってするのだ。相田みつをごっこはやめるのだ!」
「せめて有名なバレーアニメの主題歌に入る台詞みたいだね、みたいな返しは出来ないのですかぁ〜!」
「あー、だからうっさいのだぁ! 漫画、今めっちゃ泣けるところだったのだ。台無し、なのだぁー」
「台無しはこっちですよぉ」
「台無しの台とは、仏像を安置する台座のことを指すのだ。台座が無ければ仏像の威厳が無くなっちゃうことがその由来なのだ」
「唐突に入るその〈朽葉ぺでぃあ〉はやめてくださいよぉ〜。わたし、ガチ泣きしちゃいますよぉ」
「それはよかったのだ。わたしの説明に泣いて感心するとは、ちょっと賢くなったのだ?」
「ならないですぅ〜!」
「積み木崩し!」
「言い換えで遊ばないでください!」
「必殺・
「ルビを振らないでくださいよぉ〜! 面倒くさいですからぁ!」
「メダカちゃん、メタ発言はやめるのだ」
「メタフィクションはやるな、って編集者さんに言われたことあるんですから、姉さんもそれやめてくださいよぉ〜!」
「おっと。じゃあ、オブジェクトレベルの位相にいるわたしたちは」
「難しい話もノーサンキューですぅ」
「え〜」
「え〜、じゃありません! 自分の部屋に戻ってください、コノコ姉さん。あと、さっきルビでめるとだうなー、って入力してたと思うのですが、そういうの、やめてくださいよね」
「なんでなのだ?」
「だーかーらー! ちょい伏線みたいに思われちゃいますが、そうじゃなくてこれはメタレベルにいる作者からの、ギャグですから」
「ギャグなのだ?」
「あー、もう、どうでもいいですからっ! 戻って! 自室にっ!」
「寺山の話をもっと聞きたかったのだ」
「そこは地の文ですから!」
「つーまーんなーいのだぁー」
「メタフィクションを無駄にやる方がつまらないし、本当に小説が台無しになりますのでッッッ! ご遠慮くださいませッッッ!」
ぎゃーぎゃーやりあって、コノコ姉さんを部屋から追い出すわたし。
全く、これだから姉さんは。
もぅ。
でも、わたしだって、コノコ姉さんのことは好きなんですよ?
「そうなのだ?」
ドアを開けて、コノコ姉さんは言う。
「いいから、帰って!」
また追い出すわたし。
そして、今日も夜の執筆タイムが始まるのです。
これだから、全く、もぉ〜。