セーフ・アズ・ミルク【第十二話】
文字数 1,385文字
☆
空美野学園高等部風紀委員・金糸雀ラズリちゃんは言う。
「サトミ先生の奪還をしたいのでしょうけれども、そうはさせませんわ。そこの阿呆の佐原メダカも懐柔するつもりなのは丸見え。〈コールド・スリープ病棟〉へは行かせませんことよ。よろしくて?」
フッ、と笑う鏑木盛夏ちゃん。
「よろしいわけないじゃないの、金糸雀ラズリ」
「スタンカフッッッ」
「くどいッ!」
手刀で……いや、手に持っていた〈和綴じの書物〉で飛んできたスタンカフを弾く盛夏ちゃん。
そこに、大きな爆発音が鳴り、爆風が吹き荒れる。
思わず目を閉じてしゃがむわたし。
目を開けると、炎の矢が何本も飛んできて、地面に刺さると同じように爆発し、爆風がそこかしこに吹き上がる。
熱い熱い熱い、爆風が熱いし火の粉が舞ってますぅ〜!
「バカ! 鏑木盛夏に矢を当てなさい、キアラ!」
「こっちだって当てようと必死よ! ていうかあたしをなんだと思っているわけ? 委員長?」
「近江キアラ。あんたはわたしの下僕ですわ」
「やる気なくした……」
炎の矢が飛んできた方角を見ると、それは数日前冤罪で独房に捕まったことがあった爆弾魔の近江キアラちゃんでしたぁ。
「仕方ないわね! スタンカフ!」
また弾く盛夏ちゃん。
「ふゆぅ。単調な攻撃しか出来ないのかしら。あちしを怒らせないで」
手に持った書物を開き、呪文のようなものを読む。
「詠唱? バカかこいつ! こんなところでなにするつもり?」
「爆発をこれだけしておいてあなたたちも同じじゃないかしら。喰らいなさい、〈イマジナリー・エネミー〉」
夜空にぼぅん、と音がしたかと思うとわたしたちみんなを包むくらい大きな魔方陣が出来ていて、そこから、光の矢が雨のように無数に降ってきた。
「な! なんなんですかぁ!」
叫ぶわたし。
「ビブリオマンシーをナメないで」
ダッシュで魔方陣の外まで逃げるラズリちゃんとキアラちゃん。
「え? わたしは置いて逃げるんですかぁ〜ッッッ!」
言うもむなしく、わたしは雨のように降る光の矢に串刺しになりました。
「わたしたちは撤退いたしますわ! グッドラック、阿呆のメダカ! 生きて生還して。期待はしてないわ!」
えぇ〜〜〜〜?
あっれぇ〜〜〜〜?
助けに来たんじゃないのですかぁ?
光の矢がわたしに刺さっていく。
血が飛び出る。
ですが、わたしは。
生きているし、痛みを感じない。
それはまるで自分が機械仕掛けの人形のようで。
いや、わたしは……人間では、……ない、のですか?
身体中に光の矢が刺さりました。
ですが、わたしは生きているのですよぉ?
鏑木盛夏ちゃんが、ゆっくりとわたしに近づいてくる。
もう、魔方陣は虚空に消えました。
「埋め込んだわよ、〈真実〉を」
「〈真実〉?」
おうむ返しに言うわたし。
「あなた、コールドスリープ病棟の記憶がないでしょう?」
「ない、です」
全身に矢が刺さったまま、わたしは言う。
「それには、〈意味〉と〈真相〉があるわ。それはきっと、見つければあなたのなかで〈真実〉に至るわ」
膝ががくがくして、耳元で盛夏ちゃんに囁かれながら、わたしはその場で倒れる。
「いいかしら? あなたは研究所側の人間ではないの」
「そ、それ、は、ど、うい、うい、みで……?」
のーみそが焼き切れたわたしは、そこで意識が途絶えた。
ああ、涙子さんの家に、行くはずだったのに……わたしは。
空美野学園高等部風紀委員・金糸雀ラズリちゃんは言う。
「サトミ先生の奪還をしたいのでしょうけれども、そうはさせませんわ。そこの阿呆の佐原メダカも懐柔するつもりなのは丸見え。〈コールド・スリープ病棟〉へは行かせませんことよ。よろしくて?」
フッ、と笑う鏑木盛夏ちゃん。
「よろしいわけないじゃないの、金糸雀ラズリ」
「スタンカフッッッ」
「くどいッ!」
手刀で……いや、手に持っていた〈和綴じの書物〉で飛んできたスタンカフを弾く盛夏ちゃん。
そこに、大きな爆発音が鳴り、爆風が吹き荒れる。
思わず目を閉じてしゃがむわたし。
目を開けると、炎の矢が何本も飛んできて、地面に刺さると同じように爆発し、爆風がそこかしこに吹き上がる。
熱い熱い熱い、爆風が熱いし火の粉が舞ってますぅ〜!
「バカ! 鏑木盛夏に矢を当てなさい、キアラ!」
「こっちだって当てようと必死よ! ていうかあたしをなんだと思っているわけ? 委員長?」
「近江キアラ。あんたはわたしの下僕ですわ」
「やる気なくした……」
炎の矢が飛んできた方角を見ると、それは数日前冤罪で独房に捕まったことがあった爆弾魔の近江キアラちゃんでしたぁ。
「仕方ないわね! スタンカフ!」
また弾く盛夏ちゃん。
「ふゆぅ。単調な攻撃しか出来ないのかしら。あちしを怒らせないで」
手に持った書物を開き、呪文のようなものを読む。
「詠唱? バカかこいつ! こんなところでなにするつもり?」
「爆発をこれだけしておいてあなたたちも同じじゃないかしら。喰らいなさい、〈イマジナリー・エネミー〉」
夜空にぼぅん、と音がしたかと思うとわたしたちみんなを包むくらい大きな魔方陣が出来ていて、そこから、光の矢が雨のように無数に降ってきた。
「な! なんなんですかぁ!」
叫ぶわたし。
「ビブリオマンシーをナメないで」
ダッシュで魔方陣の外まで逃げるラズリちゃんとキアラちゃん。
「え? わたしは置いて逃げるんですかぁ〜ッッッ!」
言うもむなしく、わたしは雨のように降る光の矢に串刺しになりました。
「わたしたちは撤退いたしますわ! グッドラック、阿呆のメダカ! 生きて生還して。期待はしてないわ!」
えぇ〜〜〜〜?
あっれぇ〜〜〜〜?
助けに来たんじゃないのですかぁ?
光の矢がわたしに刺さっていく。
血が飛び出る。
ですが、わたしは。
生きているし、痛みを感じない。
それはまるで自分が機械仕掛けの人形のようで。
いや、わたしは……人間では、……ない、のですか?
身体中に光の矢が刺さりました。
ですが、わたしは生きているのですよぉ?
鏑木盛夏ちゃんが、ゆっくりとわたしに近づいてくる。
もう、魔方陣は虚空に消えました。
「埋め込んだわよ、〈真実〉を」
「〈真実〉?」
おうむ返しに言うわたし。
「あなた、コールドスリープ病棟の記憶がないでしょう?」
「ない、です」
全身に矢が刺さったまま、わたしは言う。
「それには、〈意味〉と〈真相〉があるわ。それはきっと、見つければあなたのなかで〈真実〉に至るわ」
膝ががくがくして、耳元で盛夏ちゃんに囁かれながら、わたしはその場で倒れる。
「いいかしら? あなたは研究所側の人間ではないの」
「そ、それ、は、ど、うい、うい、みで……?」
のーみそが焼き切れたわたしは、そこで意識が途絶えた。
ああ、涙子さんの家に、行くはずだったのに……わたしは。