ストリクトリー・パーソナル【第十二話】
文字数 1,447文字
☆
「死すべきときに死し、生くべき時に生くるは英雄豪傑のなすところである。軽挙妄動せずして、専ら学問をするがよい。その中には英雄の死すべき時が必ず来る……ってな」
空美野涙子さんが、ミルクティーの入ったカップを右手に持って飲みながら言う。
「それは確かなのだ。その言葉は『三千世界の鴉を殺し、主と添寝がしてみたい』って都々逸をつくったひとの言葉と言われているのだー」
コノコ姉さんが涙子さんにそう返すものだからわたしは、
「誰の言葉なんですかぁ」
と、訊いてしまう。
訊かぬは一時の恥だ。
「『おもしろきこともなき世をおもしろく』と詠んだ高杉晋作の言葉なのだ」
「へぇ」
「勉強は大事だぜ。いつ、なにが役に立つか、わかったもんじゃねーし、〈勉強の仕方〉を〈覚える〉ことも重要なのは間違いねぇ。焦らず、勉学に励み、自らの成すべきことを成すときが来るのを、待つってのは意外にみんな、出来ないんだよな。血気盛んなのはいいが、それじゃ大きな計略は成功しない」
と、涙子さん。
コノコ姉さんはこう返す。
「計略も戦いも〈根比べ〉が、いつだって必要になるのだ。だけど、わたしたちは待ったのだ。で、これからは動かざるを得ないターンだと思うのだ」
「そこで! わたし、金糸雀ラズリと致しましては、朽葉コノコお姉さまを中心とした〈抹茶ラテ・クインテット〉を結成したく思うのですわ!」
ラズリちゃんが、提案する。
「抹茶ラテ・クインテット。一体なにをするのです、そのチームは?」
と、わたし。
「ひとことで言えば……〈斬奸 〉です……わね」
斬奸?
「ところでにゃー、メダカ。にゃたしは今日はパジャマパーティにするって言ってたよにゃぁ?」
と、ラズリちゃんの妹、ラピスちゃんが言う。
「そんなの聞いていないですよぉ!」
わたしは言い返した。
「パジャマパーティなんだっつったろうがにゃぁぁぁぁ」
わたしの両肩を手で掴むと、そのままラピスちゃんはわたしを押し倒す。
「にゃたし特製のおもちゃでいじめにゃうのにゃよ、メダカぁ? 素っ裸で気持ちよくされちゃう用意はいいかにゃああああ?」
「ひっ! やめて、ラピスちゃん、わたしの制服を脱がさないでくださいょ!」
「いーや、許さないにゃぁ!」
「やめなさい、この愚妹がッッッ」
ラピスちゃんの脇腹に足のつま先をぶち込むラズリちゃん。
「ほげふぅッ」
そのまま吹き飛んで絨毯の上を転げ回るラピスちゃん。
わたしは着崩れた服を戻した。
「んじゃよぉ、〈抹茶ラテ・クインテット〉のメンバーの証として、お揃いのブレスレットを用意したから各自受け取ってくれ!」
涙子さんが宝石箱から五人分のお揃いのブレスレットを取り出す。
わたしはそのブレスレットに目を奪われる。
「黒い、ブレスレットですねぇ……素敵ですぅ」
「クインテット……五重奏のことを指す言葉だが……あたし、空美野涙子は〈東西〉の戦いとは違う、オルタナティブな動きをするぜ。この、朽葉コノコ擁するクインテットで、な」
「〈斬奸〉の、その焦点を絞ること、及び内乱の鎮圧、各々、臨機応変に動くこと。意外に難しいミッションですわ。でも、自分から進んで動かなければ、絶対後悔すると思いますの」
涙子さんとラズリちゃんが言うと、ラピスちゃんは、
「ティーパーティなんだから、紅茶をたくさん飲め!」
と、ティーポットを持ってきた。
わたしは抹茶ラテ・クインテットの黒いブレスレットを手首に付けた。
いつか、三千世界の鴉を殺し、穏やかな日差しのなかでコノコねえさんと添寝をするために。
「死すべきときに死し、生くべき時に生くるは英雄豪傑のなすところである。軽挙妄動せずして、専ら学問をするがよい。その中には英雄の死すべき時が必ず来る……ってな」
空美野涙子さんが、ミルクティーの入ったカップを右手に持って飲みながら言う。
「それは確かなのだ。その言葉は『三千世界の鴉を殺し、主と添寝がしてみたい』って都々逸をつくったひとの言葉と言われているのだー」
コノコ姉さんが涙子さんにそう返すものだからわたしは、
「誰の言葉なんですかぁ」
と、訊いてしまう。
訊かぬは一時の恥だ。
「『おもしろきこともなき世をおもしろく』と詠んだ高杉晋作の言葉なのだ」
「へぇ」
「勉強は大事だぜ。いつ、なにが役に立つか、わかったもんじゃねーし、〈勉強の仕方〉を〈覚える〉ことも重要なのは間違いねぇ。焦らず、勉学に励み、自らの成すべきことを成すときが来るのを、待つってのは意外にみんな、出来ないんだよな。血気盛んなのはいいが、それじゃ大きな計略は成功しない」
と、涙子さん。
コノコ姉さんはこう返す。
「計略も戦いも〈根比べ〉が、いつだって必要になるのだ。だけど、わたしたちは待ったのだ。で、これからは動かざるを得ないターンだと思うのだ」
「そこで! わたし、金糸雀ラズリと致しましては、朽葉コノコお姉さまを中心とした〈抹茶ラテ・クインテット〉を結成したく思うのですわ!」
ラズリちゃんが、提案する。
「抹茶ラテ・クインテット。一体なにをするのです、そのチームは?」
と、わたし。
「ひとことで言えば……〈
斬奸?
「ところでにゃー、メダカ。にゃたしは今日はパジャマパーティにするって言ってたよにゃぁ?」
と、ラズリちゃんの妹、ラピスちゃんが言う。
「そんなの聞いていないですよぉ!」
わたしは言い返した。
「パジャマパーティなんだっつったろうがにゃぁぁぁぁ」
わたしの両肩を手で掴むと、そのままラピスちゃんはわたしを押し倒す。
「にゃたし特製のおもちゃでいじめにゃうのにゃよ、メダカぁ? 素っ裸で気持ちよくされちゃう用意はいいかにゃああああ?」
「ひっ! やめて、ラピスちゃん、わたしの制服を脱がさないでくださいょ!」
「いーや、許さないにゃぁ!」
「やめなさい、この愚妹がッッッ」
ラピスちゃんの脇腹に足のつま先をぶち込むラズリちゃん。
「ほげふぅッ」
そのまま吹き飛んで絨毯の上を転げ回るラピスちゃん。
わたしは着崩れた服を戻した。
「んじゃよぉ、〈抹茶ラテ・クインテット〉のメンバーの証として、お揃いのブレスレットを用意したから各自受け取ってくれ!」
涙子さんが宝石箱から五人分のお揃いのブレスレットを取り出す。
わたしはそのブレスレットに目を奪われる。
「黒い、ブレスレットですねぇ……素敵ですぅ」
「クインテット……五重奏のことを指す言葉だが……あたし、空美野涙子は〈東西〉の戦いとは違う、オルタナティブな動きをするぜ。この、朽葉コノコ擁するクインテットで、な」
「〈斬奸〉の、その焦点を絞ること、及び内乱の鎮圧、各々、臨機応変に動くこと。意外に難しいミッションですわ。でも、自分から進んで動かなければ、絶対後悔すると思いますの」
涙子さんとラズリちゃんが言うと、ラピスちゃんは、
「ティーパーティなんだから、紅茶をたくさん飲め!」
と、ティーポットを持ってきた。
わたしは抹茶ラテ・クインテットの黒いブレスレットを手首に付けた。
いつか、三千世界の鴉を殺し、穏やかな日差しのなかでコノコねえさんと添寝をするために。