第6話

文字数 1,863文字

「貴方がこの奴隷市場の責任者?」
「そうだが、なんの用かね?お嬢ちゃん。」

ローレルの案内により地下施設から脱出した私達は、奴隷バザールの一角にある大きなテントに来ていた。
テントの中では屈強な奴隷を数人引き連れた奴隷商人や、顔中に傷のある見るからに危ない山賊を思わせる集団など、明らかにカタギではない人間が闊歩していた。
その中の最も奥に、筋肉隆々のスキンヘッドの男が座っていた。
彼が、この奴隷市場の責任者らしい。

「なんというか、もっと意地汚い太ったオッサンを想像していたのだけれど……なんだか意外ね。」
「意地汚い太ったオッサンじゃ、この奴隷市場は仕切るのは難しいんでな。」
彼はカラカラと太く笑う。

「で、お嬢ちゃん。こんなところになんの用だ?一般人じゃあなさそうだが?」
「単刀直入に言うわ。この奴隷市場を畳みなさい。」
「………………、あ???」
ドスの聞いた声が帰って来た。
「耳にゴミでも詰まってるの?もう一度言うわよ。この奴隷市場を捨てて、ここから消えろって言ってるのよ。」

奴隷市場の責任者を名乗る男、そしてテントの中に居る全員がこちらに注目し、静まり返った。

やがて、
「プッ!ガハハハハハ!!?」
「ギャハハハハハ!!」
辺りに男達の笑い声が響き渡る。

「おいおいお嬢ちゃん。それは本気か?この俺様に向かって??ガハハハハ!!頭おかしいんじゃねえのか?お前さん。」

ひとしきり笑った後、スキンヘッドの男は挑発的に言ってきた。
「まさか、そんな事を言う為にわざわざここまで来たのか?馬鹿かお前。辞める訳ねえだろうが、こんな旨い仕事をよぉ。」

「奴隷市場っての最高の商売だぜ?そこらに居る人間、適当にさらってよぉ、鞭で叩けば簡単に従順になる。そいつを売るだけでかなりの稼ぎになるんだ。かかるコストの割りに稼ぎがデカすぎるんだよ。辞められるわけねぇだろうが。こんな良い仕事をよぉ。」
醜いスキンヘッドの顔を歪ませながら、
「それとも何か、お嬢ちゃん?テメェがこの商売をぶっ潰すつもりか??辞めとけ辞めとけ。ガキのテメェにゃ絶対に無理だ。ほら、分かったならさっさと帰りな。」

スキンヘッドの男はひとしきり言い終えると、今度は私の隣で静観していたローレルの方へ目を向けた。
「テメェ、名前は確かローレル何とかって女だな?うちの奴隷商人の。」
「ヒッ!は、はい……、そうです。」
「テメェはここに残れ。」
「え……?」
「テメェに貸していたよぉ、地下施設でな、ウチの奴隷調教師が死んでたんだわ。オマケに、あの地下倉庫もズタズタになってるそうじゃねえか?おい。説明しろや。」
「ひぃっ!い、いえあのあれは!!あれは……。」
「ハッキリ言わんかい!?」
「こここここっ!!コイツです!?コイツに全部やられました!!」
そう言ってローレルは私を指さした。
実際、奴隷調教師を殺したのも倉庫を切り裂いたのも私だった。
特に反論はない。

スキンヘッドの男はこちらとローレルを交互に見る。
「…………。」
「…………。」
「お前馬鹿か?」
「……え?」
「誰がそんな嘘に引っかかると思ってんだ!?あぁ!?テメェは前々からそうだったな!?平気で嘘を付く!!しかもよりにもよってこの俺様に嘘を付くとは救えねぇぜおい!?」
「えええええ!?いや、嘘じゃないんです!?本当にこの子が!!」
「もういい黙れ!テメェもう終わりだぜ。テメェは今日から奴隷だ。今までご苦労さん。これからは新しい飼い主様とよろしくやってくれや。」
「……は?私が、奴隷………???」
ローレルの周りを屈強そうな男達が囲む。
「い、嫌よ!そんなのあんまりよ!!」
「連れて行け。」
「嫌!!嫌ああああ!!」
男がローレルの腕を掴んだ。

ズバッ。

その腕を、私が切った。

「あの、私の事忘れてない?奴隷商売を辞めろって言ってる人間の前で奴隷を作るとか、アホなの?」
「ぐわああ!?」
テント中の人間が、こちらに注目する。
「……おいガキ?冗談じゃ済まされんぞ?」
スキンヘッドの頭に青筋が浮かでいた。

「話し合いが通じないなら、実力行使しかないわよね?」
目の血走っている奴隷商売軍団に、宣戦布告する。

「こっちはねぇ、このバザールに来てからと言うもの!!見たくも無いもん見させられたり!友達だと思ってた奴に騙されたり!!ていうかそもそもクソ暑いし!!!超ムシャクシャしてんのよ!!?なんでもいいからストレス発散しないと、気が済まないのよ!!あんた達まとめてぶった斬ってやるからさぁ!!全員、かかってこいやぁ!!?」

「野郎共!!この女共を捕まえろ!!奴隷にして売っぱらっちまえ!!」
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登場人物紹介

リブレ・レッドライン


17歳

赤いツインテールが特徴的な少女。

身長が低く、容姿も子供っぽいため、見た目だけなら13〜14才程度にしか見えない。

2メートル程もある刀、大太刀「リーヴァメルツ」を所持しており、大切にしている。

ローレル・スイートピー


17歳

緑色の髪の毛を持つ少女。

保身のためなら何でもする。

基本的にクソザコなため、戦闘能力は皆無。

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