第11話

文字数 2,404文字

「あ、リブさん!おかえりなさい。今回はどうでした?その様子だと、全然余裕そうですね!」

太陽が頭上を通り過ぎる頃。
冒険者ギルドの中は、賑やかだった。
壁に貼り付けられている掲示板にて依頼を吟味している冒険者達や、備え付けられてある酒場にて酒を飲み交わすパーティ等、各々が各々の時間を過ごしている。

「アルドさん、こんにちは。勿論、楽勝だったわよ。」
私は受付カウンターの横にある、報酬受け取り窓口にて、係の女性へ今回の賞金首討伐の報告をしていた。
「はい、これ。討伐証明の、砂漠イエティの心臓よ。」
窓口の上に、袋詰めした心臓を置く。

「おお、確かに砂漠イエティの心臓ですね。それもかなり大きい……。心臓でこのサイズなら、本体は相当大きかった事が予測されますね。」
「まあまあ大きかったかな。3メートルくらいはあった気がするわ。」
「なんと!砂漠イエティは大型でも2メートル程度と言われてますから、これは相当レアですね。言わばキング砂漠イエティでしょうか。賞金首に登録されるのも頷けます。」

そんなに凄い相手だったのか。
一撃で仕留めたため、あんまり実感がない。

「では、報酬を用意しますね。少々お待ちください。」
彼女は窓口の奥へ下がって行った。

「ねえ、リブ。どうやってそんな特大の砂漠イエティを倒したのよ?」
どうと言われても……。
「普通に、首を斬っただけ、だけど?」
「そんな上手く行くの?」
「なんか馬鹿太い腕で刀を受け止めようとしてたけど、それごと叩き斬ってやったわ。」
「うーん、脳筋。」

褒められてる気はしなかったが、この女はこれで平常運転なのだろう。
相手にしても疲れるだけだ。

「お待たせしました。こちら報酬の1万ゼニーです!」
ドンッと窓口にゼニーが入った巾着袋が置かれたので、受け取る。

「ありがとう。また大きめの賞金首が現れたら教えてちょうだい。出来れば人型で!」
「はい。分かりました!リブさんにはいつもお世話になってますから、御要望に近い賞金首が発生しましたら真っ先にご連絡しますね!」
「いつもお世話?どういう意味かしら?」
「そりゃもう、冒険者ギルドとしては!リブさんには感謝してもしきれないくらいなんですよ!」

窓口のアルドさんは目をキラキラさせながら語り始めた。
「普通、賞金首なんて誰も討伐したがらないんですよ。どの賞金首も、基本的には超強いので、余程の手練な冒険者パーティでもないと、見向きもしないんです。それをですね!なんと1人で!!かなりのハイペースで!!定期的に討伐してくれてるのがこのリブレ・レッドラインさんなんですよ!!」

彼女の鼻息が荒くなってくる。

「冒険者ギルドとしてはですね、賞金首なんて危険な存在は、早々に討伐しちゃいたい訳なんですよ。放っておくと、出現地から近い村や町に被害が出ることもあるので……。そうなると、冒険者ギルドの名誉も傷ついちゃって、依頼の数も減っちゃうんですよ。依頼が減るというのは、冒険者ギルドの収入が減るのと同義なので、何とかそれは回避したいのです。なので、ギルド所属の冒険者以外の方にも賞金首は公開しているのですが……、そもそも冒険者パーティでも討伐出来ないモノを、一般の人が討伐出来るわけもないので、今までは形だけの制度だったんですよ。賞金首ハンターって。」

彼女のテンションはピークに到達していた。

「そんな、にっちもさっちも行かなかった冒険者ギルドに!一人の救世主が!そう!このリブレ・レッドラインさんこそが!その救世主様なのです!!じゃじゃーん!!」

恥ずかしい気もするが、悪い気はしなかった。

「リブさんのおかげで、賞金首はどんどん討伐されてますし、「こんなに小さな女の子でも出来るのなら俺にも出来るぜ!」みたいな人も増えたおかげで、賞金首の討伐報告は過去と比べると見違えるほど増えてるんです。全部リブさんのおかげだと言っても過言ではありません!!」

「アハハ。流石にちょっと褒め過ぎよ。私は自分の趣味の為にやってるだけだから……。」

「そして謙虚!!そして小さい!そして可愛い!!アアアァァァ!!こんなもんファンにならんほうがおかしいでしょうが!!?」
キャラが崩壊し始めている。
いや、これが素なのか?

「はぇー。リブ、貴方ってホントに凄かったのね……。今の今まで疑ってたわ。」
コイツもコイツで、誰のおかげで今日まで生き延びられてると思っているのか。

「はァァァァ。本当、なんでリブさん程の人が冒険者ギルドに所属出来ないのか。所属制限が憎い!」
「所属制限?」
ローレルが首を傾げていた。

「冒険者ギルドに所属して、冒険者になろうと思ったら、いくつかある制限をクリアしないといけないのよ。そのうちの一つを、私はクリア出来なかったのよ。」
「へー。リブでもダメな制限なんてあるのね。ちなみに、それは何かしら?」
「うーん…………。」
「あ、言いたくないならいいわよ。そこまで興味も無いし。」

若干癇に障るが、正直これはあまり人に言いたくなかった。
なんというか、惨めな気持ちになるからだ。
なので、ローレルにはこのまま黙っていようと思った。

「身長制限ですね。」
空気の読めない窓口女がそこに居た。

「ああ、なるほど。」
「何よ!馬鹿にしてんの!?悪かったわね!!規定の150センチに届かなくて!!ええそうよ!!私は148センチしか無いもの!!笑えばいいじゃない!!何よその可哀想なものを見る目は!?よし分かったやるってのねこの私と!!かかってこいやぁ!!?」
「ちょ、ストップ!ストップ!!馬鹿になんかしてないわよ!!自分の身長が低いのが悪いんでしょ!人に当たらないでよ!!あ、刀に手を掛けてる!?マジなの!?ちょ、やめ!ごめんなさい!!ゆるしてくださいいいい!!」

「ああ、恥ずかしがりながら怒ってるリブさんも最高に可愛い……!!」

様子を見かねた他の冒険者達やギルドの職員達に諌められ、その場は収まったのだった……。
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登場人物紹介

リブレ・レッドライン


17歳

赤いツインテールが特徴的な少女。

身長が低く、容姿も子供っぽいため、見た目だけなら13〜14才程度にしか見えない。

2メートル程もある刀、大太刀「リーヴァメルツ」を所持しており、大切にしている。

ローレル・スイートピー


17歳

緑色の髪の毛を持つ少女。

保身のためなら何でもする。

基本的にクソザコなため、戦闘能力は皆無。

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