第23話

文字数 1,860文字

私は、超が3つも4つも付くような、所謂、大天才だった。

幼い頃から魔法は使えた。

特に、氷系統の魔法が得意だった。

魔法道具の作成もお手の物だ。

皆、私を褒めてくれた。

特に両親に褒められるのが大好きだった。

私が魔法のテストで満点を取ると、両親は自分の事のように喜んでくれた。

パパもママも、大好きだった。

私は13歳の時、既に魔法大学を飛び級で卒業していた。

周りは20歳を越えた大人達ばかりだった。

友達は居なかった。

でも両親が居たから寂しくなかった。

「エリシア、君は、困っている人を皆助けられる、素晴らしい魔法使いだ。パパは、そんな君がとても誇らしい。」

パパは言ってくれた。

私が皆を助けるんだ。

「エリシア、貴方ならどんな困難でも乗り越えられるわ。このマナランドで、最強の魔法使いだもの。」

ママは言ってくれた。

私は最強の魔法使いなんだ。

「私、将来は皆を幸せに出来る凄い魔法使いになる!だって、魔法は人を幸せにする為にあるんだもの!」

私は言った。

魔法は人を幸せにする為にあるのだ。

そして……。

そして…………。

「な、なんで!?パパ!!ママ!!」

パパとママが血を流して倒れている。

もう息はしていない。

「君がエリシアちゃんだね?悪いが、ついてきてもらえるかい?君程の大天才を、この凡人共に任せるのは実に惜しい。君は私達と共に、魔法使いの未来を創るのだ。」

パパとママを殺した人間が居た。

10人は居るだろうか。

「なんでパパとママを殺したの?」

「君を、我々に引き渡すのを拒んだからだ。」

魔法使いは言った。

「我々と共に、マナランドに繁栄と栄光をもたらそうではないか!」

狂ってる。

そんな事の為にパパとママを殺したの?

「ふざけるなっ!私の両親を返してよ!!」

私は激昂した。

コイツらを許しはしない。

絶対に殺してやる。

「…………あれ?」

だが、魔法は使えなかった。

「魔法妨害装置をここいら一帯に展開している。大人しく着いて来なさい。」

「こんな事をして、マナランドの魔法警察が黙ってないわよ?」

「何か勘違いをしているようだね。」

魔法使いは言った。

「我々が魔法警察だよ。国から君の捕縛命令が出ている。君の両親は、都市国家反逆罪で処分されたのだよ。」

何を言っているのか理解出来なかった。

「そんな……、マナランドは魔法使いの国で、魔法で皆を幸せにする国なのに……、なんで……?」

「君の魔法の才能、そして魔法道具作成の才能。それらは、非常に国にとって有益だ。力を貸してほしい。」

「嫌よ……!なんでパパとママの仇のお前らなんかに!!」

「仕方がない。服従の首輪を用意しろ。」

服従の首輪……?

「これは、付けられた人間に逆らう事の出来なくなる魔法道具だ。たしか、これを作り世に広めたのは、君だったね?効果もよく知ってるはずだ。」

私の考案した魔法道具だった。

本来は、罪を犯した凶悪犯に使用する事を想定して制作したものだ。

それが、こんな使い方をされるなんて……。

「さあ、エリシア君。」

私は、なんて物を作ってしまったのだ……。

後悔しても、もう遅い。

魔法使いは首輪を私に取り付ける。

私は、抵抗しなかった。


魔法使い達に連れて行かれたのは、魔法都市マナランドの中枢。

魔法管理局だった。

この国の全てを管理している場所だ。

「君が、エリシア君かね?」

厳かな雰囲気を持つ、長い白髭を蓄えた老人だった。

「……。」

「君はこれから、このマナランドの為に尽力してもらうことになった。よろしく頼むよ。」

この人が、管理局のトップだろうか。

まあ、もう何でもよかった。

全てが、どうでもよかった。

ボトッ。

服従の首輪が地面に落ちた。

「!?」

その場に居た、魔法使い10数人、白ひげの老人、老人の護衛と思われる魔法使い……全ての人間が凍りつく。

「皆知ってる?これ、私が作った魔法道具なんだ?私だけが知ってる解除の方法も用意してるんだ。こうなっちゃった時の為に。」

「な、何をしておる!この娘を捕え」

全てを言い終わる前に、その場に居た全員が、文字通り、凍りついた。

「魔法の大天才……かぁ。こんな事になるなら、こんな才能なんて要らなかったな……。」

一瞬にして、この管理局全体を氷が包み込んでいた。

パパ、ママ、ごめんね。

私は、皆を幸せに出来る魔法使いにはなれそうにない。

パパとママを殺したコイツらを、この国を、許せそうにない。

この国を潰すには、どうすればいいだろうか。

「まずは、この国の偉い人を全員、皆殺しかな……!キャハハ☆」

全部殺す。

もう、自分ではこの衝動を抑えるのは不可能だった。

目尻から熱いものが流れるのを感じながら……。
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登場人物紹介

リブレ・レッドライン


17歳

赤いツインテールが特徴的な少女。

身長が低く、容姿も子供っぽいため、見た目だけなら13〜14才程度にしか見えない。

2メートル程もある刀、大太刀「リーヴァメルツ」を所持しており、大切にしている。

ローレル・スイートピー


17歳

緑色の髪の毛を持つ少女。

保身のためなら何でもする。

基本的にクソザコなため、戦闘能力は皆無。

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